一方通行六歳転生(呪術廻戦)   作:木原レイリ

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さしす世代御三家ルートの醍醐味といえば幼少時代の五条悟とのバトルですよねえ

高評価と誤字報告、とてもとてもありがとうございます。
あと一部設定を他の二次創作から引用しました(引用元はあとがきに)
偽夏油さんも「いいね、私も萌えシチュの共有は積極的に行っていくべきだと思うよ」と言ってくれるはずです。


第6話 最強 上

2000年 5月 15日

 

第二次禪院家血の海事件から四年と半年。

初夏の頃。

第五百と数回目の呪術学研究会にて。

 

伝統的な日本家屋の日当たりの悪かった北側の陰気な広間の一室は、いまや一晩中LEDが煌々と照り、特級呪具にも劣らない値段のコンピュータや機材が乱立する時代の最先端を突き進んでいた。

 

白髪の怪物少女こと百合華が、多忙な任務のせいで参加できなかった前数回の分の報告書の束を受け取って、部屋の隅のパイプ椅子に深く寄りかかり、目を通し始めたところから研究会は始まる。

なお魔術サイドの透明異形少女の悪魔は議論に参加する気が全くなく、部屋の端っこに散乱するコードに自分から絡まって転がっている。

静かにひっくり返っているだけでいちいち冒涜的になるのは悪魔故か。

 

「それでさあ、前回までやってた結界内部の呪力場と空間曲率の計測の話だけどさ」

 

会議用のテーブルの前で立ちながら、資料を持って、前回までの振り返りと今後の方針の検討をつらつらと話していくのは禪院明日香(16)だ。

術式の才能も呪力の出力もなかったものの、呪術に対する発想力と興味の偏重は一級術師を超える才能がある。

一方通行(アクセラレータ)からもたらされた科学知識をあっという間に吸収し、次期当主権限で雑用から解放されると一日中研究に没頭するようになった。

第1回では唐突な流血沙汰に驚いて逃げたものの、第3回くらいから参加し、ほとんど皆勤である。

というか、もはやほとんどのプロジェクトが明日香を中心に回っているため、明日香の出られない回は延期が決定されるほどだ。

最近は市内の国立大学の物理学科への進学を考えて大検*1の勉強をしているらしい。

いまさら学ぶことがあンのか、と思わず反射で言った白髪感情逸般人娘は、これは勉強のためじゃない、ロマンだ、と熱弁されたので、普段の謝礼もかねて研究費から学費(割合的にほんの一部)が出ることになった。

一方通行(アクセラレータ)にはよくわからないが、何やら『博士枠』という言葉に惹かれたようだ。

育った環境柄、古文も英語も科学も余裕であるが、禪院家の裏資料が足を引っ張り歴史公民が苦手らしい。

 

世間では織田信長を殺したのは禪院直隆じゃないらしい。

誰だよ明智光秀。

 

「あ、そういえば超思いついたんですけど、確か黒閃って呪力の励起による空間の歪みの反動でしたよね」

 

と思い出したように突如話を変えるパイプ椅子に座る少女は禪院喜愛(9)である。

第1回の実験の被験者であり向量操術は反射と空気分子を用いた防御を得意とする。

 

「結界による空間トポロジーの変化後の呪力の流体力学的な流れを前回作ったナビエ-ストークス方程式モドキで表せるようになったってのは超収穫でしたけど、そしたら超例えば弾丸型の結界で呪力の流れを制御することで任意に黒閃を発生させることが超可能じゃないですか」

 

と、嬉しそうに明日香に思いつきを報告する。

 

「はァ、本気で言ってるとしたら抱きしめたくなっちまう程哀れだわ」

 

「ア゙?」

 

こう煽ったのは隣に座る禪院(みどり)(9)。

喜愛と同じく第1回の実験の被験者であり、向量操術では空気分子の操作による槍、あるいは砲撃など、攻撃を得意とする。

このように攻撃スタイルは喜愛とは真反対であり模擬戦では決着がつかない。

なお、翠は現在トランプの罰ゲームで黒い猫耳カチューシャをつけさせられており全く威厳がなく、剣呑な雰囲気になったのは翠と喜愛との間のみである。

 

「不確定性原理も忘れたのか。基礎の基礎だろォがよ。呪力をどンなに精密に打ち込ンだところで、結局発生は確率に依ンだろうが」

 

「そんな表面的な話は超してねェンですよ。十分大きな結界なら古典力学で表せるのは超当たり前じゃ無いですか」

 

時々助手・被検体として屋敷の人間が駆り出されることはあるが、常連の参加者は百合華を含めたこの三人のみである。

外部から招集するのは、秘密保持の観点と、呪術学の研究とかいうイロモノで一般人のキャリアを台無しにするのは忍びないという理由で行われていない

 

にらみ合う二人を見てほほえま~とはにかみながら明日香が言う。

 

「みどりニャンはさあ」

 

「ぶち殺すぞ」

 

「もうちょっと丸く穏やかに議論しようね、かわいいんだし」

 

キッと睨みつけられるが、お姉さん面する明日香はどこ吹く風で続ける。

 

「喜愛ちゃんの発想も面白いけど、結局は全部結界内の空間の曲率を制御できるようになってからかなあ。今のところ結界内の呪力のエネルギー密度を十分自在に操れるのって百合華ちゃんだけだし。この問題が解決しないと行き詰まってる異界(術式)と呪力のエネルギー特性の研究も進まないよね」

 

っていうか当初の予定ではそろそろ領域展開の補助呪具くらいはできてる予定だったんだけどなあ、と黄昏ながら。

みどりニャンも自分の意見を言えて偉い偉い、と猫耳の上から翠を撫でる。

 

「……世の中の全ての人間が、よしよし褒められれば喜ぶとか思ってンじゃねェぞ!」

 

「超ツンデレめんどくさいです」

 

「ア゙ぁ?」

 

と、怪物の能力を持つ二人のほんの軽いじゃれあいが発生しそうになったところで。

 

「百合華ちゃんおる?」

 

と禪院直哉が笑顔で走りこんできた。

禪院直哉は初めこそ呪術学研究会に顔を出していたが話に全くついていけずに、今ではほとんど参加せずに自主鍛錬に費やしている。

しかし自身の成長に役に立ちそうな回だけはちゃっかり顔を出しては急成長するので、同じく白髪の怪物を目指して強くなりたい翠と喜愛からは研究泥棒を見るような目で見られている。

なお、ときどき百合華の真の舎弟(?)枠をめぐってクリファパズル545と醜い言い争いが勃発したりする。

そんなときはいちいち構うから付け上がるのだと経験を通して知っている白髪少女は、すべての音を反射にして無視していることが多い。

 

怪物少女は顔を上げる。

 

「なンだ」

 

「いや、邪魔したくはないんやけどね。パパたちが呼んで来いって言うとったから」

 

「何の用だ」

 

横流しに見られ、気まずげに、う、と言葉に詰まった直哉が詳細を告げる。

 

「あの五条悟くんがうちに来とるらしいねん。百合華ちゃんと戦いに」

 

「はァ?……居留守使えねェのか?」

 

えっと、と尊敬し奉る百合華ちゃんの疑問を汲み取って、説明が付け足された。

 

「なんかパパが百合華ちゃんの自慢を散々したら悟くんの興味を引いたみたいやね。あと、動向は完全に把握されとった」

 

「……めんどくせェ」

 

 * * *

 

五条悟は生まれた時から強者であった。

皆、自分を特別として扱う。

寂しいわけじゃない。

ただ周りの人間は等しく脆く儚く、生物としての線引きがあった。

ただ、退屈だけがあった。

 

そうして日々を過ごすうちに、とある噂を、9割は頭に血が上ったように直毘人と禪院家の悪口を叫ぶ五条家当主である父の口から、聞くようになった。

 

6歳にして禪院家の居並ぶ術師たちを血祭りにあげ次期当主の座を手に入れた怪物。

史上最年少で単独任務に駆り出される少女。

異常に難解で精密な術式を鳥が舞うように自然に扱う、現代の異能。

 

退屈が裏返る予感がした。

戦ってみたいと思った。

何度もアポを取ったが任務で忙しいとはぐらかされ続けたため、家の者に在宅状況を調べさせ、アポなしで禪院家に押し掛けた。

 

だが、そこで待たされるうちに、冷静になっていく。

だんだんと高揚感がしぼんでいく。

どうせ、誰も自分に近づけない。

期待外れだった時の失望が怖くなり、もういいや帰ろうかな、と思いかけたとき。

 

タアン、と。

 

襖が開いた。

 

悪魔を侍らせた禪院の怪物少女とその一行が入ってくる。

そこには、自分と同じ白髪の、紛れもない強者がいた。

 

 * * *

 

禪院家の怪物少女、禪院百合華(10)。

次期当主にして直毘人の自慢の種。

五条悟と同じ白髪の奥に血のような赤い瞳が覗く。

130cm程度の背丈、栄養不良を心配させるほどの真っ白な肌と華奢な手足。

汚れの一つもついていない眩しいほど白い高級な生地の着流しが、彼女の能力を表している。

 

公称式神、クリファパズル545。

自称メイドインUKの人造の悪魔。

海洋生物を思わせる異形の少女。

纏うドレスはロールシャッハテストのように見る者によって異なる不快な記事を描き出す。

式神でありながら呪力ではない謎のエネルギーを用いる。

 

相伝術式の投射呪法をもつ、禪院直哉(9)。

たゆまぬ訓練によって最速の術師直毘人に迫りつつある。

いつも百合華について回っていることから、他称、次期当主の舎弟。

一行の中で、百合華を含めて最初に反転術式を習得した。

 

禪院翠と禪院喜愛。

分家の末端出身で何の才能もなかったが、後天的に向量操術を習得した。

六眼では彼女たちの術式はぼんやりと不思議に浮かんで見える。

言動が百合華を彷彿とさせるためと、過去の血の海事件により、禪院家の人間全体から疎まれるか恐れられている。

 

自称禪院の博士枠こと禪院明日香。

白衣コーデをおしゃれに着こなす丸眼鏡の少女である。

ちなみに丸眼鏡は呪具であり度は入っておらず、呪力量が少なくても呪力や呪霊が見える仕様になっている。

分家の末端出身かつ才能もないが、禪院家の血を引くだけあって禪院家内健康診断では視力は2.9ほどだった。

(ちなみに禪院家では呪力強化ありで15.0まで計測する。参考までにマサイ族の記録は11.0)

 

 * * *

 

怪物とその一行を見て、五条悟は笑った。

退屈とは無縁の世界がそこにあった。

 

呼びつけられた怪物は五条を見て不機嫌そうに言う。

 

「分かってると思うが、オマエが挑戦者(チャレンジャー)だからなァ?」

 

五条悟の高揚感(ボルテージ)が上がる。

 

 

 

「百合華ちゃん大丈夫やろか」

 

はあ?と、人造の悪魔がこいつ正気か、といった顔で直哉の顔を覗き込む。

 

「いやあんたも悟くんの無下限呪術は知っとるやろ?」

 

『いっくら強い術式を持ってても、たかだかいいとこの10歳児のガキに天下無双鬼畜野郎の歴戦ご主人様が負けるはずないじゃないですかあ!』

 

 

*1
大学入試資格検定。現代の高等学校卒業程度認定試験(高認)のこと




【参考文献】
>>世間では織田信長を殺したのは禪院直隆じゃないらしい。
『羂索とイチャラブしてたら世界が平和になった話(フロッグマン)』より
https://syosetu.org/novel/323571/3.html (2024/05/15 21:24閲覧)

【関連文献】
『五条悟からは逃げられない!(創作好き)』
https://syosetu.org/novel/327824/ (2024/05/15 23:20閲覧)
禪院家に生まれた十種影法術持ちのイカレ転生者が五条悟と戦って仲良くなる()話。
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