あらすじの通り、急展開・誤字脱字があると思います。
それでも大丈夫と言う方は続きをどうぞ。
どこにでもいそうな普通の十八才、
拓人は今、自宅からかなり離れた無人の山奥でさ迷っている。
とある事情により、まっすぐ下山して三時間。
本来ならとうに 麓にたどりつく距離をあるいてきたのだが、一向にたどり着く気配がしない。
「はぁ、はぁ、はぁ……おかしい。
なんで麓にたどり着かないんだ?」
問いかけてみるが、答える者はだれもいない。
そしてここから、五十嵐 拓人の長い冒険が始まる。
拓人は世の中に絶望感を抱いていた。
子供の頃から体が弱く、周りの同級生からはいじめの対象となった。
いじめから逃げるように小学校のときは柔道、中学は剣道、高校は弓道を習い、
生まれつきの異常なまでの集中力でこれらを恐るべき早さで極めた。
小・中学は地元の学校、高校はとある事件により家族を無くして一人だけ生き残った拓人は、
都会の方に住んでいる親戚にお世話になることになり、近くにあった高校へ一年遅れで入学した。
しかし、お世話になった親戚も両親と同じような事件に会い、
またしても一人だけで生き残った。
その事が学校や地域に知れわたり、拓人は『悪魔の使い』と呼ばれるようになり、
学校の教師にすら避けられるようになった。
そして、高校を卒業した拓人は職に就こうとした。
しかし、家族や親戚の残った少ないお金では引っ越すこともできず、
悪評がかなり広範囲にまで広まっており、それを知っている店・会社・企業は、
拓人を雇おうとはしなかった。
どれだけ受け入れてもらおうとしても、誰からも受け入れてもらえず、
この世界から絶望しか見いだせなくなっていった。
もう誰の力も借りない……自分の力だけで生きぬいてやる!
そう思った拓人はここから遠く離れた、
誰も立ち入らない山で一人で生き抜くことを決意した。
どうせすぐにこの世に見放されて、直ぐに死んでしまうだろうことを自覚しながら。
しかし、生活援助に頼ってまで生きたいとは思わなかった。
どうせなら一人だけでいけるところまでいこうと思った。
持てるだけの道具を持ち、いい思い出がなかった町に別れを告げ、一人で山を目指した。
山に入り、一時間ぐらいした頃。
辺りに目の前の数メートル先すらも見えなくなるほど濃い霧が辺りに立ち込めた。
「うわぁ……なにもみえねぇ。 とりあえず、下ってみるか。」
こういうときは動かずにじっとしておくのが最善策なのだろうが、
何も知らない拓人は下山を始める。
下山すること三時間。
本来ならば麓にたどり着いてもよいくらい歩いたのだが、濃い霧はおさまらず、
いまだに森の中である。
「はぁ、はぁ、はぁ……おかしい。
なんで麓にたどりつかないんだ?」
当然だが、この疑問に答える者はいない。
無意識に独り言を放ってからさらに進むこと数十分。
「そ、そろそろ何か見えてもいいんじゃないか? 」
そんなことを言っていると少し霧が晴れ、周りの景色が少し見えるようになる。
辺りを見渡してみると一本の道が見えた。
しかし、その道はほとんど舗装されておらず、一昔前の田舎の風景のようだ。
「おっ、道が!……この辺に道なんてあったか?」
この辺りに道はなかったと記憶していたが、まぁいいか、と道なりに進んでいく。
そして五分程歩くと霧もだんだん晴れ、辺りが見渡しやすくなった。
気がつくと辺りは暗くなっており、腕時計も八時を指していた。
「やべ、そろそろテント張らないと……なんだあれ?」
拓人が辺りを見渡すと、右にかなりの大きな森が広がっており、
前に数百メートルいったところには石段らしきものがある。
石段を下から目で追っていくと、その先には神社のような物が建っていた。
「あそこで泊まらせてもらおうかな。
近いし、テントぼろぼろだし。」
なんとも神社の人に失礼なことを考えてから神社に向かおうとした。
そのときである。
近くの森からガサガサ……ガサガサと葉擦れの音が聞こえてくる。
「なんだ……?」
聞こえてきた音は小さいが、段々と大きくなるところから
何かが走ってこちらに向かってきていると推測した。
……猪か?
最初、拓人はそう思った。
山や森から走って来るといったら猪だと答える人が多いだろう。
拓人は家から持ってきた竹刀を正面に構えると走ってくる何かに備える。
さっさと勝って神社に行こう……
猪ぐらいならなんとかなると拓人は思っていた。
しかしそう思った次の瞬間、拓人の予想していた猪とは違う何かが拓人の前に現れる。
それを一言で例えるなら、巨大な蜘蛛である。
体の大きさは身長百六十五センチと男性としては小さめの拓人だが、
それでも三~四倍はある。
体から生えている多数の足。
月に照らされ黒光りし、存在感を醸し出している口。
ただ蜘蛛を大きくしただけのような姿だが、なにせ大きさが尋常ではない。
拓人に生理的恐怖を与えるには十分すぎるほどである。
「あ、あ……む、無理だ。
お、俺が、こ、こんなのに、勝てる、訳が」
「キシャーーーーーーーーー!!」
「ヒィッ!!」
巨大蜘蛛が鳴き声をあげた。
その時拓人は、自分が情けない悲鳴を上げていることに気づいた。
なにをすくんでる!なんのために武道を極めようとした!
強いやつに吠えられてビクビクするためじゃない!
自分の身を、自分で護るためだ!
拓人はそう自分に叱咤して勇気を振り絞り、
一度落としかけた竹刀をしっかりと握り直した。
その瞬間巨大蜘蛛はこちらを喰い殺そうとするかのように突進してきた。
恐怖心を頭の隅におしやり、何年もかけて鍛えてきた反射神経の良さで
当たる寸前で左に大きく避け、がらあきの腹に渾身の突きを放つ。
これをくらえば少しは怯むはず。
その隙に森に逃げ込む!
拓人の知っている蜘蛛のレベルならそれは実行可能だっただろう。
そう、拓人の知っている蜘蛛であれば。
予想に反し、拓人の渾身の突きは、
ガツン!と堅い木に打ち込んだような音と共にはじかれる。
突きが弾かれて一瞬隙ができるが、そこを蜘蛛は逃さず追撃し、
巨体を振り回し、長く堅い足に蹴飛ばされてしまう。
蜘蛛の蹴りは強く、森の方向へ十五メートルほど吹っ飛ぶ。
着地に受け身を使い素早く立った拓人は、
この時を待っていたとばかりに全力で森へ駆け出した。
しかし、どういうわけか、
森まであと数メートルのところで蜘蛛に追い付かれそうになる。
しかもものすごい速さで追いかけてきており、
拓人の心に恐怖が芽生え、それが反撃という形になり蜘蛛に襲いかかる。
「ああぁぁぁぁ!!! くるなぁ! くるなぁーーー!!!」
速さ、威力共に乗った渾身の面打ちの体勢に入る。
いつしか拓人の頭のなかでは本物の刀を振るっているイメージしかなかった。
このままいけば拓人の竹刀は蜘蛛の頭に命中し、暫くの間だが蜘蛛に隙ができるだろう。
しかし、拓人は竹刀を握っていなかった。
先程蹴り飛ばされたときに手から抜け落ちていたのだが、その事に拓人はまだ気づけていない。
このままいけば拓人の攻撃は空振り、蜘蛛が拓人を喰い殺すだろう。
だが、振りかぶった両手にはしっかりと『刀』が握られていた。
刀の刃は蜘蛛の眉間に吸い込まれるように動き、そして、
「ギシャャャァァァァァァ…………」
頭を真っ二つに一刀両断した。
頭を二つに切られた蜘蛛は数秒ほど狂った操り人形の様にジタバタしていたが、
プツンと糸が切れたように地面にぐったりと横たわり息絶える。
「はぁ、はぁ、はぁ」
拓人にとってこんなに大きな生き物を殺したのは初めてある。
それに対する罪悪感に侵されながらも、数分間深呼吸を繰り返し、落ち着くことに成功した。
落ち着いた拓人は冷静に今、何があったかを思い出していく。
巨大な蜘蛛に遭って、蹴飛ばされて、逃げて、刀振るって……刀?
はっ、と自分が持っているはずのない物を持っている事に気付き、
自分の右手に握られているものを確かめる。
「……え!? な、なんで俺、刀なんか持って……」
自分が刀を持っているはずがないと自覚した途端、ふっ、
と刀が音もなく光の粒となって拓人の手の中からこぼれ、土に触れた途端に消えていく。
「消えた!?……どうなってんだこれ」
突然起こった不思議な現象に右手を見ていると、
蜘蛛を切った時に付いたのであろう、返り『血』が付いている事に気が付いた。
その瞬間、蜘蛛に遭った時以上の寒気に襲われ、両足から力が抜けてゆく。
「……あ、あ血、血が、血が、
う、うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
いきなり拓人は血のついた手を地面に擦り付ける。
それが血だとわからなくなるまで、何度も、何度も。
土に手のひらを擦り付けていると、幸い気の動転はすぐに収まった。
拓人は地面に顔を突っ伏たまま、立ち上がる気になれず、しばらくじっとしている。
実は、拓人は小さい頃の事件の影響で血液恐怖症になっていた。
すると、前から人が歩いてきた。
「もう、なんなのさっきの悲鳴?」
誰か人が来たようだった。
「うわっ、なにこの蜘蛛?
……頭が真っ二つって、一体だれがやったのかしら。」
拓人はなんとか話を聞こうと頭をあげる。
目に入ってきたのは女性で、綺麗な黒の髪をしており、それを結わえる赤色のリボン。
紅白色をした脇が開いた寒そうな服、そして右手には神社でよく見かけるお払い棒。
その姿は拓人がはまっていた弾幕シューティングゲームの主人公、
そのうちの一人によく似ていた。
女性はこちらに気がついたみたいで近づいて話しかけてきた。
「そこのあなた。 大丈夫かしら?」
特にどこも体は痛くなく立ち上がりながら、大丈夫です、と答えようとする。
「えぇ、大丈夫で……」
突然、肺の辺りに激痛が走り立ち上がれず胸に手を当てながら膝をついてしまう。
「痛ッッ!!!ガハ!」
「ちょっとみせて!」
そういうと彼女は拓人の服を脱がしていく。
彼女は胸の辺りを確認すると少し笑みをこぼす。
「大丈夫よ、肋骨が二本か三本折れただけ。
肺には刺さってないみたいだから安心して」
先ほど、蜘蛛に蹴り飛ばされたときに受けた怪我だと推測できた。
戦闘に夢中になりすぎて、痛みを忘れていたのだろう。
なんとか痛みを克服し、話せるようになったので名前から尋ねようと話しかける。
「あの、つかぬことをお聞きしますがあなたは?」
「あぁ、ごめんなさい。 自己紹介がまだだったわね」
拓人には予想できていた。
「私の名前は」
彼女の名は、
「博麗霊夢。 そこの博麗神社の巫女よ。
よろしくね」
博麗神社の巫女、博麗霊夢。
そう彼女が自己紹介すると右手を差し出してきた。
いままでこんな風にされたことは今まで周りから『悪魔の使い』
と呼ばれ続けた拓人にとっては、初めてで、とても嬉しかった。
拓人は目尻に涙を少し浮かべて自己紹介する。
「五十嵐……拓人です。 よろしく、博麗さん」
「ふふっ、霊夢でいいわよ。 よろしく、拓人」
そういうと、こちらも手を伸ばし、霊夢とお互いの手を握りあう。
久しくもらっていなかった、今は亡き家族以外の温もりに、拓人の目から涙が溢れだしていく。
「……なんで泣いてるのよ、あなた」
霊夢の言葉は拓人の耳には入らず、無意識に口から言葉が漏れる。
「人の手って、こんなに、暖かかったんだ……」
そう言った途端、霊夢が少し体を震わせる。
少しの間そうしていたが、握っている手に力を込めてくるので、
さらに涙をこぼしながらほぼ無意識に握り返す。
「もう、へんなの。
……治療させてあげるからうちに来なさい」
「いいんですか、霊夢さん?」
「一人暮らしだし、大丈夫よ。
あと、敬語いらない……タメ口でいいわ」
「わかりま……わかったよ、霊夢。
それじゃ、お言葉に甘えて」
「やっぱりこっちの方が楽だわ。 堅苦しいのはだめね。
改めてよろしくね、拓人」
「ああ、改めてよろしく、霊夢」
この会話の最後まで霊夢の顔が赤かったのは気のせいだろうか、と思い、
風邪を引いていてはいけないので、自分の額と霊夢の額をあわせてみる。
「っ! ななな、なにしてんのよ!?」
「うーん、熱はないみたいだな」
「あんたは、ま、まず、じ、自分の心配しなさいよ!」
「ふっ、それもそうだな」
顔を赤らめながら霊夢は後ろを向いてしゃがみ、おんぶをする体勢になる。
「ん?どうした、霊夢?」
質問するも、無言で、乗れ!と言わんばかりに背中を強調している。
この傷では歩いては帰れないだろうと考え、仕方なくご厚意に甘えることにした。
「それじゃ、頼むよ霊夢」
「…………」
霊夢は無言でうなずき立ち上がると、足を宙に浮かせる。
……待てよ。 霊夢がいるってことはここは幻想郷になる。
幻想郷の実力者は空を飛べる。 足が浮いたってことは……
飛ぶんですね、分かります。
急上昇に耐えるために準備していたが、拓人を気遣ってくれてか、
上昇速度もそこまでなく、ゆっくりとした速さで博麗神社に向かっている。
故に逆に飛行を楽しむ余裕すらあった。
「すごい、飛んでる、飛んでる!」
「そんなに空飛ぶのがすごいの?」
「ああ、俺の人生、初飛行だ!」
「……もしかして、あなた外来人?」
拓人は少しギクッ、とした。
この質問に対して「はい、そうです」などと答えれば、
なぜ『外来人』という言葉を知っているのか?と面倒になるのでわからないふりをする。
「ん? が、がいらいじん? なんだそれ?」
「……なるほどね。 家についたら説明するわ」
「そ、そうか。」
なんとか誤魔化せたようだ。
知識をもって幻想入りしたから、こういうことには注意しないといけない、
と脳内でメモをして、ふわふわ浮かぶ霊夢におぶされながら博麗神社を目指す拓人であった。
こうして、どこにでもいそうな普通の十八才、五十嵐 拓人の幻想郷の冒険が始まった。
第一話でしたがどうだったでしょう。
ノリで書いてしまったのでかなりの急展開になってしまいました。
誤字脱字の報告等ありましたら、感想の方にお願いします。
なお、感想の返答はあまりできないかと思います(現実で忙しいので)。
暇があれば返していきたいと思います。 ……する方がいればですが。
第二話では拓人君の詳しい過去を書いていきたいと思います。
それでは次回、お楽しみに!