今回のタイトル……「の」が多いですね。
何とかしたいとは思ったのですが、無駄でした。
さて、今回のお話ですが、途中の時空列(?)がめちゃくちゃになっています。
こんなお話でよければ、本編をどうぞ!
拓人が部屋を出た後、魔理沙は部屋中をうろうろ歩き回っていた。
自分達抜きで話したいという内容が気になるのだ。
そんな魔理沙にイラついたか少し強めの口調で問いかける。
「魔理沙、とりあえず落ち着いたら?」
「だってさ、気にならないか? 私達抜きで話したいっていう内容」
「まぁ、気にならないってわけじゃないけど……
部屋中をうろうろするのはやめてほしいわ」
渋々と聞き入れ、壁に背を預ける。
しかし、落ち着かずに何度も右足を揺らす。
それに気づいた霊夢が、フランドールを起こさないように小さな声で、
だが、強めの口調で魔理沙に檄を飛ばす。
「ちょっと、貧乏揺すりはやめてよ! お金が逃げるじゃない!」
「こんなので金が逃げるわけないだろ?」
「もし逃げたらどうするのよ!」
霊夢と軽口を叩いている間も、魔理沙の足は小刻みに揺れている。
気になって仕方ないんだぜ……
でも、二人だけで話したいって言ってたし……
生まれつき持ち合わせている好奇心のおかげで、どうしても気になってしまう。
いつの間にか無意識に足の揺れは大きくなっていき、床を音高く鳴らし始める。
「ちょ、ちょっと、起きちゃうじゃない!」
げっ、と思いすぐそばのベッドで寝ているフランドールを見るが、
幸い起きる様子はなく気持ちよさそうに寝息をたてている。
「……ごめんだぜ」
「まったく……」
どうにか小刻みに揺れる足を制し、傍にあった椅子を取り寄せて座る。
「あ~、暇だな~、気になるぜ~」
「はぁ、鬱陶しいわね……気になるなら行って来れば?」
「でもな~、私場所分かんないしな~」
盗み聞きでもすればいいのでは、と考えたのだが、
肝心の拓人がどこの部屋でレミリアと話しているのかわからないのだ。
それは霊夢も同じだと思ったのだが、霊夢の口から意外な言葉が出てくる。
「私、場所分かるわよ」
「……は?」
「だから、場所が分かるって言ってるのよ」
まさか霊夢が分かるとは思っておらず、間抜けな声と同時に問い返していた。
しかし、どうやって場所が分かったのだろうか、と考えていると
霊夢がこちらの考えを汲み取ったのか種明かしをしてくれる。
「この部屋に来るときに、こっそり拓人の服に私特製の札をいれておいたのよ」
「よくそんな暇があったな……それで?」
「この札が引き合ってるから、札が動く方向で場所が分かるの」
場所が分かるとなれば、拓人が気になる魔理沙は行動を起こさずにはいられなかった。
「よし、今から行くぜ!」
「それじゃ、この札と……あとこれ持っていきなさい」
霊夢が袖の中に手を突っ込んでガサゴソとあさり、何か丸い球のようなものを取り出す。
霊夢の袖はどうなってるんだ……?
しかし、霊夢が取り出した物が目に入ると考えをやめた。
それは魔理沙にとって、ほんの少しだが見覚えのあるものだった。
「陰陽……玉?」
「そう、これで私と会話ができるわ」
拳大の大きさの陰陽玉と札を投げてくるので右手で受け止め、服の中にしまう。
「陰陽玉ってこんなのに使う物だったか?」
「まぁ、使えればいいのよ。 使えれば」
霊夢の言葉に納得し、素直に頷く。
これで、準備は万端である。
「よし、行ってくるぜ」
「はいはい、行ってらっしゃい」
部屋のドアを開けて、長い廊下に出る。
「そういえば、札が教えてくれるんだっけな……」
霊夢に投げ渡された札を服の中から取り出して手のひらに乗せる。
すると、札が右にわずかだが動き始める。
「こっちだな」
そして、魔理沙は札が動く方向へと歩き始めた。
「ほら、早く!」
「分かった、分かったから!」
慌ただしく部屋から魔法使いと人間が出ていき、部屋にはレミリアと咲夜だけが取り残される。
これから会いに行くと言ってしまい、
仕方なく行こうと腰を上げると、咲夜から声がかかる。
「お嬢様、行かれるのですね」
「えぇ、もう言ってしまったしね」
「……私が生まれる以前から会ってなかったのですね」
「そう、なるわね」
二十年前といえば、確かに咲夜が生まれる前となり、
それ以来、フランとは一度も会ってない。
正直に言って、殺されるという恐怖感があったために会わなかったのは事実だ。
だが、会わなかった理由はそれだけではない。
姉として、どう妹に接すればいいのかわからなかったのだ。
長い時間をほとんどを一人で過ごしてきたレミリアには、
家族がどういうものかを忘れてしまったのだ。
家族として、姉として、どう接してやればいいのか。
それが、レミリアが今まで悩んできた内容の半分程を占めるものである。
もう半分は、どうすれば妹を抑えられるか。
何百年と考えてきて、結局今まで答えは出てこなかったが、
先ほどの人間が一瞬で解決してしまった。
レミリアは、今まで食料としか見ていなかった人間に興味が湧いてきた。
どうやって、妹に打ち勝てるだけの力をどうして身につけたのか。
どうして、こんな自分たちだけの問題に真剣になって怒ったのか。
なぜ、自分がこうも素直に言いなりになってしまったのか。
ますます人間に対する謎は深まり、興味が湧いてくるばかりである。
どうして、こんなにもあの人間が気になるのかしら……
いつもの自分らしくない考えが頭の中をよぎる。
知りたい、あの人間のことを。 もっと、もっと……
「あの……お嬢様?」
突然、咲夜に呼び掛けられ現実へと意識が切り替わる。
咲夜が、少し困惑した顔でこちらを覗いている。
どうやら、考え事でその場に突っ立ったままだったようだ。
「少し……考え事よ」
「そう、ですか」
そういうと、咲夜はドアの前まで歩きドアノブに手をかける。
レミリアは無意識に口を開き、咲夜を呼び止める。
「咲夜」
ドアを開けようと伸ばしていた手を止めて、体ごとこちらに向いたのを確認して口を開く。
「なんでしょうか、お嬢様」
今まで頭の片隅にあった小さな、しかしとても重い悩み。
それは、今ここで咲夜に言っておかなければならないと思い、口にだす。
「その……ごめんなさい!」
その言葉と共に咲夜に向かって頭を深く下げる。
「え!? あ、あの、お嬢様!? 顔を上げてください!」
咲夜が近寄って頭を下げないように制止するが、構わずにレミリアは言葉を続ける。
「今まで、あの子のことでいろいろ迷惑かけてごめんなさい!
あなたには、何も関係なかったのに……本当にごめんなさい!」
悩みとは、咲夜のことである。
今まで、当たり前のように咲夜に妹のことを任せていたが、
元は一切関係がなかったのだ。
そう思うと、咲夜に対して申し訳なく思えてくる。
咲夜は従者であり、主である自分のために尽くすことが当たり前だとしても。
「お嬢様……顔を上げてください」
咲夜に言われ、顔を上げる。
そして、いつにもなく優しい顔で語りかけてくる。
「確かに、私には関係がなかったのかもしれません。
しかし、それはもう過去のことで、今はお嬢様に仕える従者です。
主の為に尽くすのは当然であり、私にとってはそれが一番の幸せなんです」
咲夜が両腕を伸ばし、こちらの頭を胸にあてて抱きしめる。
「だから、ほんの少しも迷惑だなんて思ってません。 安心してください」
「咲、夜……」
抱きしめられ、咲夜の体から熱のほかに伝わってくるものがあった。
それは言葉にできないが、とても暖かいものだった。
どれくらいそうしていたかわからなくなった頃、咲夜が両腕をレミリアの頭から離し、
ドアノブへ手を掛け、外に開く。
「さぁ、拓人様が待ってます。 行きましょう、お嬢様」
「……えぇ、そうね。 咲夜、これだけは言っておくわ」
そして一瞬の間を置いて、今まで口にしたとしても現実性が見えなかった言葉を口にする。
「今日で、終わりにしてみせる!」
「……はい!」
そして、レミリアは力強く踏み出した。
あの日の決意を、約束を、実現させるために。
「おっ、ここだな」
札に従って廊下を歩き続けること五分。
札の動きがかなり強くなり、盛んに示している部屋にたどり着いた。
扉に耳を当てて中に誰かいるかどうかを探る。
『………前……やってもら…………ます』
『なに……言って……い』
『フラ……会っ……話………ださい』
拓人とレミリアの声と思われる声が聞こえてくる。
しかし、声量が小さいのか遠く離れているのかは分からないが、
断片的にしか聞き取れない。
聞こえてきた内容からすると、拓人がレミリアに何かをお願いしていることは分かった。
……なに頼んでんだ?
より詳しく内容を聞き取るため、扉により強く耳を当てる。
『話? 何を……よ?』
『フ……気持ちを…………い、といえば……すか?』
『気持ち? そん……とっく………てるわ』
『果たし…………うでしょうか?』
やはり、どれだけ強く耳を当てようともこれぐらいが限界のようだ。
くそっ、もっと聞けないのかよ……
諦めずにさらに強く耳を当てようとした時、服の中から声が聞こえてきた。
『魔理沙! 魔理沙!』
一瞬なんだ!と思ったが、陰陽玉があるのを思い出し、
服の中から陰陽玉を取り出して部屋の中まで声が届かないように声を抑えながら会話する。
「どうした霊夢?」
『とりあえず、急いで戻ってきて!
フランドールが起きたと思ったら泣きながら拓人拓人ってうるさいのよ!』
「げっ! まじかよ!」
『できれば拓人も連れて帰ってきて!』
『どこ~~~! 拓人~~~!!』
陰陽玉からフランドールと思しき濡れた声が聞こえてくる。
「わ、わかった! 私に任せろ!」
『頼んだわよ!』
服の中に陰陽玉をしまい、すぐさま扉を開け放ち中に入る。
「おい拓人、いるか!?」
部屋は案外広く、正面に拓人、左の脇に少し離れているのが咲夜、
拓人の奥にレミリアがいた。
「魔理沙!? なんでここに?」
「説明は後だ!
フランドールが起きたと思ったらいきなりお前の名前叫びながら泣き始めて大変なんだ!」
「ちょっと待て、一体何が何やら……」
早口で話したため、あまり理解できていないだろうが、今は一秒でも時間が惜しい。
無理やりでも連れて行こうと拓人の袖を掴み、力に物を言わせて出口へ引きずっていく。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「とりあえず来てくれ!」
「あ、ちょ、ちょっと待てって!」
かなりの力で掴んでいたはずの手からあっさりと拓人は抜け出すと、
レミリアと向かい合い口を開く。
「ということなので、今すぐに来てください」
「……仕方ないわね……」
話が一段落ついたところでもう一度、今度は逃がさないようにしっかりと袖を掴む。
「ほら、早く!」
「分かった、分かったから!」
そして、こけそうになる拓人を引きずりながら部屋を飛び出した。
「なるほど、そういうことか」
廊下を走りながら、魔理沙から事の経緯を聞き出した。
まさか、こんな短時間でフランが起きるとは思っていなかったのだ。
正直、拓人は今かなり焦っている。
「あ~え~っと、どっちだっけ? あっちか」
「こっちだよ魔理沙!」
逆の道に行こうとする魔理沙の首根っこを掴んで、軌道を修正する。
「ちょ、苦、苦しい……」
「だったら自分で歩け! 時間がないんだろ!?」
掴んでいた魔理沙を離し、白黒の衣服をまとった体がバランスを崩して
床に鈍い音を立てて落ちる。
「ゴフッ!」
「置いてくぞ魔理沙!」
「ちょ、それはひどいんだぜーーー!」
魔理沙の叫びを無視して、フランのいる部屋まで能力で手に入れた館内の情報を駆使して、
一歩たりとも止まらずに駆け抜ける。
右に左に曲がりながら一つの部屋を目指して走る。
三十秒ほど経った頃、やっと部屋が見えてきた。
『拓人~~~!』
中からフランの泣き声が聞こえてくる。
これ以上居ても立っても居られず、扉を乱暴に開けて中に入り、後ろ手で扉を閉める。
「フラン!」
「あぁもう、遅いわよ拓人!」
部屋にはベッドに座って泣きじゃくっているフランと、
そのフランをあやす様に背中をさすっている霊夢の姿があった。
「た、拓人!」
フランはこちらに気付くと、猛スピードでベッドから飛び降り、
拓人目がけて文字通り飛び込んでくる。
いくら見た目が幼い少女と言っても、
鬼の力に天狗の速さを持っているといわれる吸血鬼である。
もちろん、そんな馬鹿力に普通の人間である拓人が耐えられるはずもなく。
「ゴッファ!」
訳のわからない悲鳴を上げて扉に打ち付けられる。
扉は拓人の体にフィットするように、
瞬時に歪な形へと今まで聞いたことのない音と共に変形する。
この際、扉の耐久度なんかは気にしてはいけない。
「拓人、拓人拓人~!」
「う……ご、が、が…………」
フランが、顔を胸に当て泣きじゃくっているが、
痛みのせいでまともにしゃべれず、誰にも解読不可能な言葉しか口に出せなかった。
「ちょっと、拓人から離れなさい!」
拓人が危ないと気付いたのか、霊夢がフランの体を抱きかかえて拓人から引き離す。
「拓人、大丈夫!?」
「あ、が、ごふ……だ、いじょう、ぶじゃ、ないか、も……」
そう言いながら、強制的に自分の体を能力の肉体修復系で元に戻し始める。
さすがに痛みが持続しているため集中力が大分削がれたので、
体を元に戻すのに三十秒ほどかかる。
やがて、段々と痛みが消えていき元からそんなことなかったような体に修復される。
「便利だな……俺の能力」
体を修復して立ち上がって無意識に口から出た第一声がこれだった。
はっきり言って、三十秒で体を元通りに治せるというのはもはや人間技ではない。
あぁ……俺、まだ人間でいたいな……
そんなことを思っていると、扉の外から魔理沙と思われる声が聞こえてくる。
『うわ、なんなんだぜこれ!?』
「どうした、魔理沙?」
魔理沙に質問する間に、魔理沙の言葉の意味を理解する。
変形した扉を力任せに体当たりで無理やりこじ開けると、
外側の方へ回り込んで扉の惨状を目の当たりにする。
「う、うわーなんだこれはー」
「拓人、棒読みだぞ」
扉は、外側へきれいに人型に膨らんでいた。
傍から見れば滑稽に見えるだろうが、これを作ったのが自分だと思うと笑いを通り越して
もはや呆れるほどの惨状だった。
とりあえず、能力で扉を元に戻してから部屋に入る。
「こら、ちょっと、大人しくしなさい!」
「拓人、拓人~!」
「……なぁ、なんなんだぜ、これ?」
「さぁ、俺にもさっぱり……」
魔理沙と短い会話を済ませると、フランを拘束している霊夢に近寄る。
「あ~、もういいよ霊夢」
「はぁ~、疲れたわもう~」
霊夢の拘束が解けた瞬間に、フランがもう一度、
タックルと言っても差支えないほどの速さで突っ込んでくる。
そして、今度はしっかりと腹に力を込め両足でなんとか踏ん張る。
流石、吸血鬼……
やはり見た目とは裏腹に相当の力を持っており、何センチか後退してしまう。
そんなことは一切気にしないフランがさらに泣きじゃくって、胸板に顔を押し付けてくる。
「拓人、拓人~!」
「はいはい、フラン、何があったんだ?」
「傍にいてくれるって言ったじゃない、ずっと傍にいて、結婚してくれるって言ったじゃない!」
フランは爆弾にも等しい言葉を部屋に投下した。
その言葉を聞いて霊夢と魔理沙が一斉に、ギョッ、としてこちらを見つめる。
「ちょ、ちょっと二人とも?」
「あんたまさか……」「拓人お前……」
そして、二人声を合わせて。
「「変態だったのね(か)!!??」」
一瞬の間を置いて、拓人は二人が言った言葉の意味を理解し、驚愕と共に反論する。
「んな訳あるか! どうしてその結論に至ったのか説明していただきたいね!」
「そんな小さな子に結婚って変態以外ありえないでしょ!?」
「待て待て、確かに結婚とはいったが別に俺から求婚したわけじゃないからな!?」
「そもそも結婚って発想自体が変態なんだぜ!」
「待て魔理沙、お前の頭の中はどうかしてるのか!?」
「え!? 拓人、私と結婚いや、なの?……」
突然フランが傷ついたような表情を浮かべて問いかけてくる。
「あっ……いや、まぁ、そのあれだ……」
「なにもったいぶってるのよ。 はっきり言いなさいよ」
こちらが、恐らく幻想入りしてから考え込んだランキング第一位に
堂々と入賞するほどの考えの結論を、ニヤニヤと笑いながら強制してくる。
「まぁ、その…………嫌ってわけじゃ、ないけどさ」
「拓人、嬉しい……」
「「やっぱり変態だったのね(か)!!??」」
「だーかーら! お前らその汚れた考えをさっさと捨てろ!」
霊夢と魔理沙とギャーギャー騒いでいると、扉がコンコン、とノックされる。
『拓人様、中が騒がしいようですが如何なさいましたか?』
「い、いえ! 大したことではないので! 少し待ってください!」
そう言って、フランの両脇に手を当て持ち上げて、ベッドに座らせる。
「いやだ、いかないで……」
瞳を涙で潤ませながら服の袖をつかんでくる。
「大丈夫、もうどこにもいかないから。
……あと、これからいうことをよく聞いてくれ」
涙を拭きながらも話に集中するフランを片目に話を続ける。
「これから、フランのお姉さんが部屋に入ってくる。
そしたら、今まで思ってたことお姉さんに全部言ってしまったらいい」
「お姉……様が……」
「そうだ。 遠慮なんかせずに全部言えばいいんだ。
もうお姉さんには全部伝えてある」
話を区切りながら立ち上がり、フランから離れて扉まで歩くと、
少しだけ開いて顔を覗かせ、部屋の中に聞こえないように話す。
「お待たせしました。
フランにはさっき話したので、すぐに話に入ってもらって構いません」
「分かりました。 お嬢様、行きますよ」
「えぇ、分かったわ……」
言葉では肯定しながらもまだ何か迷っているような表情を浮かべるレミリアに
大丈夫、と念を込めた笑顔と視線を向ける。
するとそれが通じたのか、背中の羽をパタパタと少し振る。
顔には少し余裕が戻ってきているのが分かった。
「それでは……」
部屋に顔を戻すと同時に扉を開け放つ。
「失礼します」
咲夜が礼をして入り、拓人が入口から向って右に、咲夜が左にずれる。
場の空気を感じたのか霊夢と魔理沙も左右にずれ、
部屋の真ん中のベッドに座っているフランとレミリアが正対する。
二十年ぶりの再会。
それは、拓人が今まで生きてきた人生よりも長い時間。
その時間こそが、今の二人の壁となっている。
周りは誰も一言も口に出さず、かといって正対している二人が話しているわけでもなく、
部屋に緊迫した沈黙が訪れる。
そして、その沈黙を最初に破ったのは首を垂れたままのフランだった。
「お姉様……」
「フラン……」
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
「……いいわ」
「お姉様は、私を見捨てたの?」
「そ、そんなわけない!」
レミリアがフランの言葉を全力で否定する。
「私は、あなたを見捨てたことなんて、一度もない!」
「じゃあ、なんで会ってくれなかったの!」
「ッ!」
フランが顔を上げて叫ぶ。
その顔には、部屋の明かりに照らされる二本の筋があった。
「私、ずっと寂しかったんだよ、ずっと遊んで欲しかった、構って欲しかった……
なのに、どうして、どうして……!」
「……ごめんなさい、フラン」
「足りない! そんなのじゃ全然足りない!」
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!
ごめんなさい、フラン!……うっ、うう……」
レミリアはその場に嗚咽の声を漏らしながら泣き崩れる。
そこに咲夜も、周りの誰も介入しようとはしない。
これは、二人だけの問題だから。
「……お姉様、一つだけ約束して」
泣きながらも、レミリアは顔を上げフランの顔を見据える。
「ッ! する、なんでもするわ!」
「もう、私を……一人にしないで!
もう、あんな暗くて寒い場所はいや!
私はもう一人で居たくない…………一人にしないで……」
部屋中にフランの悲痛な声が響く。
レミリアは何かに気付いたような表情を浮かべている。
ようやく、気付いたか……
やっと気付けたのだろう。
今まで助けようとしていた妹の本当の気持ちを。
「わかった、もう、フランを一人にしない!
これから、絶対に一人にしないわ!」
「本当なの、本当に一人にしないの!?」
「本当よ、許してフラン……こんな、たった一人の妹のことも分からなかった姉を許して……」
そして、レミリアは顔に手を当ててもう一度泣き始める。
「お姉……様……」
フランはいつの間にかベッドから降りていた。
まっすぐとレミリアの元まで歩いて目の前まで立つ。
「お姉様、顔上げて……」
顔から手を外し、フランの顔を見た瞬間、
フランがレミリアの襟元に寄りすがって泣き始める。
「ずっと、ずっとこうしたかった!
寂しかった、寂しかったんだからぁぁ……」
「あ、あぁ、フラン……」
声を震わせながら、恐る恐るフランの体を抱きしめる。
最初は弱かったが、段々と強く抱きしめていく。
「フラン、フラン!」
「お姉様、お姉様あぁぁ!」
二人の目から同時に堰を切ったように大量の涙があふれ出す。
そして、長い時を経て和解した二人の泣き声は、止まるところを知らなかった。
気合で終わらせた第十三話でした。
最後の対話シーン、自分で書きながら何故か涙があふれてきてしまいまして。
自分の涙腺の弱さを思い知りました……弱すぎですね。
次回、どうなるか……ほとんど考えておりません。
今後の展開、どうぞ期待していてくださるとありがたいです。
それでは、この辺で。 さよなら、さよならさよなら。