最近色々と面倒くさいことが起こりまして、気分が落ち込んでます……
東方に癒しを求めて、気分を幻想入りさせて完成させました。
これ以上書くことが見つからないので……第十五話、ご覧下さい!
第十五話 開催決定
「「「「「「「……え?」」」」」」」
拓人以外の全員の疑問の声が部屋中に響き渡り、微かな残響を残して消えていった。
「え、宴会?」
霊夢が訳が分からないとばかりに質問してくる。
その問いに、思っていることを回答として霊夢に話す。
「そう、宴会。
これからこの幻想郷で皆暮らしていくわけだし、お互い仲良くしていこうって意味もある。
やっぱり、生きるなら楽しく生きていかないと、な?」
最後のほうはフランに向けた言葉だ。
確認の意味を込めてフランへ向けて顔を傾けると、満面の笑みで答える。
「……うん!」
そこには、つい数時間前まで絶望に囚われ、狂気に踊らされていた者とは思えない
素晴らしい笑顔があった。
「宴会……えぇ、悪くないわね」
「そうだな。 なんか楽しそうだぜ!」
霊夢たちは少し考えはしたものの、こちらの考えに同意してくれた。
続いて、紅魔館メンバーにも話を振る。
主役がいなくては、楽しい宴会も台無しである。
「どうですか、みなさん?」
「……私はいいと思います。 パチュリー様は?」
「こぁと同じく。 たまには羽伸ばすのも、悪くないわね」
小悪魔とパチュリーは顔に笑みを浮かべながら答えてくれた。
「お嬢様、いかがなさいますか?」
「……まぁ、悪くはないわ。
だけど、一つだけ言っておきたいわ。 拓人」
いきなり話を投げかけられて多少驚くが、表情に出ないようにぎりぎりで抑える。
そして、まだ少し頬を紅く染めているレミリアに聞き返す。
「はい、なんでしょう?」
「宴会自体は悪くないわ。
でも、フランの事を考えると紅魔館でしたほうがいいと思うのだけれど」
「確かに、そのほうがいいかもしれません。
フランもそれでいいか?」
「うん、大丈夫!」
この場にいる全員の同意を得られたことで、宴会の開催が決定した。
一応、内容の確認をとっておく。
「それでは、改めて確認を……
宴会の開催は、ここ紅魔館にて。 時間は……どうする霊夢?」
「そうね、食材はここにあるだろうし……というか、今は朝なの? 夜なの?」
「あ、それ私も気になったんだぜ」
霊夢と魔理沙の会話を聞いて、今が何時か思い出そうとするが、全然出てこない。
ここ一連の出来事のおかげで時間間隔が狂っているようだ。
自力での解決を諦め、頼もしい左手の腕時計をみると、短針長針共に十二を示している。
「思いっきり真夜中だ。
そういえば、眠くないのかお前ら?」
「まぁ、眠いといえば少し眠いけど大丈夫よ。
それじゃ、明日の夜にでもしようかしら。
食材とかはここにあるんでしょ?」
霊夢がレミリアに話を振る。
レミリアは少し考えたのちに、咲夜に問いかける。
「咲夜、どのくらいあるかしら?」
「この人数なら、宴会が五回程できる量はあります」
五回……すごいな……
あまりの量の多さに驚くが、これで宴会の開催は大丈夫なようだ。
「あっ……誰か忘れているような……」
不意に咲夜が独り言のようにつぶやく。
その場にいた全員が聞こえていたようで、それぞれが頭や顎に手を当てて考え始める。
そして、はっきり言って完璧に忘れていた一人の名前が浮かび上がる。
「……美鈴さん、忘れてた……」
「「「「「「「……あ」」」」」」」
拓人がそう言った途端、その場にいる全員が同じ反応をし、
少し前と同じように、広い部屋に声が木霊して消えていった。
一応事情を説明するために、
門前に立っているであろう美鈴の所までやってきた拓人。
ついてきたのは、霊夢と魔理沙、そして咲夜だ。
フランは「私も行きたい!」とついてこようとしたが、
外に出すのは危険だと判断したレミリアと拓人で駄々をこねるフランを何とか説得し、
今は部屋で大人しくしているはずである。
そして現在、美鈴はというと。
「Zzz……Zzz……」
見事に鼻提灯を膨らませながら、しかも地面に寝転がって爆睡していた。
とりあえず近くに近寄って座り、体を揺らして起こそうと試みる。
「美鈴さん、起きてください」
「…………拓人しゃん……だめ、れすよぉ……」
謎の寝言を呟き、起きる気配を見せず、しかも何故か顔は笑っている。
「はぁ……拓人様、少しどいてもらえますか?」
「え、えぇ、分かりました……」
咲夜からどいてもらうように言われたが、最後の方は少し殺気が混じっていたような気がした。
「それでは……」
そういうと、咲夜はスカートに隠れて見えないが、太ももに付けているホルスターのような
何かから、月明かりに照らされて綺麗に光っている銀色のナイフを三本ほど抜く。
そして、次の瞬間に取り出されたナイフは消えて、
空から美鈴目がけて数十本のナイフが現れ落下してくる。
ある程度落下した頃、いきなり美鈴の花提灯が割れて目を覚ます。
しかし、目を開けると、視線の先には自分に向かって落ちてくる大量のナイフがある訳で。
「ぬ、ぬおおぉぉぉぉ!!??」
女性らしからぬ声と共に眠気が一気に覚めたようだが、いきなりの事に驚いたようで、
そのまま固まってしまう。
そして、落下したナイフはぎりぎり美鈴の服を掠り、
ナイフで人型を描くように地面に突き刺さり、まるで拘束されたような美鈴が出来上がった。
……うん、お見事。
心の中では、美鈴を心配する気持ちより、咲夜のナイフさばきに感心していた。
いやいや感心してる場合じゃない、と考えを改め、再度美鈴に近づいて話しかける。
「美鈴さん、起きましたか?」
「……は、はい、何とか……」
返事はするものの、起き上がる気配を見せない。
一瞬考えた後、ナイフのせいで動けないことを察し、地面に刺さったナイフを一本、
また一本と抜いていく。
やがて全て抜き終わり、手に取ったナイフを咲夜に渡していると、
ゆっくりと美鈴が立ち上がる。
余談ではあるが、ナイフは合計百本ほどあり、能力で時間を止めている間に運んでいるのか、
渡していく端から次々と消えていく。
さぞかし大変だろうな、とか考えていると、立ち上がった美鈴が独り言のように呟く。
「し、死ぬかと思いました……」
よく顔を見てみると、青ざめているのがよくわかる。
「中国、門番の仕事はどうしたの?」
「あ、いや、そのですね、え~っと……」
咲夜に問い詰められ、非常に強張った顔をしながら必死に弁護しようとしている。
少しかわいそうだと思ったので、代わりに弁護することにする。
「咲夜さん、ここに来るときに美鈴さんと戦ったのですが、
そのときに叩きのめしてしまいまして、そのまま気絶してたんですよ」
美鈴は、こちらが助け舟を出したことに気づいたのか、
物凄くきらきらとした目を向けてきており、その瞳は薄い水の膜が張っていた。
このままでは助け舟を出した意味がないので、視線で話の続きを促す。
「は、はいそうなんですよ!
いや~拓人さん強くてですね、全く歯が立たなかったんでギャッ!」
咲夜が、美鈴の頭をいつの間にか持っていたナイフの柄で殴ったため、
セリフの最後が乱れてしまう。
「『さん』じゃなくて『様』でしょ中国」
「中国じゃなくて、美鈴ですよ咲夜さん……」
「分かったら返事!」
「は、はい!」
綺麗な「気を付け」の姿勢を取る美鈴。
どうやら、美鈴は咲夜に足を向けて寝れない立場のようだ。
てっきり立場的にはだいたい同じだと思っていた拓人にとっては思わぬ収穫ではあるのだが、
使えるかどうかは別である。
「そ、それで信じてくれますか咲夜さん?
私、本当に気絶してたんですよ!」
現在、必死にこちらの助け舟に乗ろうとしている美鈴の図が頭に思い浮かぶ。
船が転覆するか、無事に船に乗れるかは、咲夜の回答次第で変わってくる。
「…………まぁ、そういうことにしておくわ。
今後もし寝ている姿を見たら……分かってるわね?」
「は、はい! もちろんです!」
なんとか、ぎりぎり這い上がって乗船できたようだ。
一応茶番らしきものが終わったところで、話を本題に戻す。
「咲夜さん、そろそろ本題に入ってもいいですか?」
「あ、すみません拓人様。 大丈夫です」
「そうですか。 それでは……」
それから、美鈴を破った後のことを大雑把に話した。
大雑把と言っても結構な量を話したが。
全て話し終わり、美鈴はゆっくりと口を開く。
「そうだったんですか。 それで、宴会を紅魔館で開きたい、と。
お嬢様が大丈夫なら私も大丈夫です」
これで、本当に全員の許可が取れ、満足に宴会が開けることになり、
ほっ、と胸を撫で下ろす。
「じゃ、決まりだな」
「そうね。 あ~、やっと終わったわ~」
「今日は疲れたぜ。 ふわぁ~~~、眠い、眠いぜ」
霊夢は両手の指を絡めて上に伸ばし、魔理沙は盛大な欠伸をした。
そして、魔理沙の欠伸で思い出した問題があったので、
霊夢に問いかけてみる。
「なぁ、霊夢。 これからどうする?」
「そうね……とりあえず、家に帰って寝たいわ」
「そうだな、私も帰ってキノコ食って寝たいぜ」
「魔理沙、お前には聞いていない。 そしてなぜキノコなんだ」
「キノコ、おいしいだろ?」
魔理沙と茶番を繰り広げていると、拓人と魔理沙以外の
その場にいる全員が小さくだが笑い始める。
そんなにこの茶番が面白いだろうか、と考えていると、問いただす暇もなく
霊夢に話の主導権を持っていかれる。
「それじゃ、私たちはこれで帰るわ。 何か問題ある?」
「いいえ、何も問題ないわ。
一応聞いておくけど、明日手伝いに来る気は?」
「ないわ。 当然よ」
「だろうと思ったわ」
霊夢のきっぱりとした言い方に、咲夜がため息交じりの声を出し、
少しだけ肩を下げる。
手伝いとなると、一応提案した自分には手伝う義務があるのではないか、
と思ったので、咲夜に申し出てみる。
「咲夜さん、私でよければ手伝いますよ」
「いえいえ、拓人様は疲れているでしょうから、
明日の宴会までゆっくりと休んでいてください」
「でも、提案者が手伝わないわけには……」
「身内の問題を解決していただいたお礼もまだですから。
どうか、私『達』にお任せ下さい」
何故か「達」の部分を強調してくることに疑問を抱いたが、
考える必要性はあまりない、と判断して本題の方へ頭を戻す。
確かに、お礼と言われれば他に反論する材料はない。
仕方なく、とは少し違う気もするが、言葉に甘えて休ませてもらうことにする。
「……そうですか。 それではお言葉に甘えて。
宴会の準備、お願いします」
「畏まりました」
咲夜が丁寧に、両手を前に合わせてお辞儀をする。
拓人は、フランのこともあるので今夜は紅魔館に泊まろうか、
それとも霊夢と一緒に帰ろうか、と考えていると、霊夢に腕を掴まれ問答無用で引っ張られる。
「それじゃ、帰るわよ拓人」
「え!? ちょ、ちょっと霊夢!?」
「ほら、私眠いんだから、さっさと帰って寝るわよ」
そう言って勝手にこちらの腕を掴んだまま飛び始めてしまうので、
仕方なくこちらも足から霊力を出して霊夢に合わせる。
ここで、別れの言葉がまだだったことに気づき、体を頑張って捻り、
咲夜と美鈴に聞こえる声で手を振りながら口を開く。
「それでは! お先に失礼します!」
「「お気をつけて!」」
二人からの声が聞こえたのを確認して体の向きを直し、
霊夢といつの間にかついてきていた魔理沙と速度を合わせて飛び始めた。
一方そのころ、紅魔館門前にいる咲夜と美鈴は、
空飛ぶ二人の少女と一人の少年の姿を見えなくなるまでその場で見送っていた。
見えなくなると、咲夜がふぅ~、と息を漏らしながら肩を下げる。
「どうしたんですか?」
「何でもないわ。 ただ、今日はいろんなことが起きたなって……」
確かに、美鈴にもその気持ちは分かる。
わかるといっても、門前で爆睡、もとい気絶していた美鈴には
咲夜程に理解はできないのであるが。
能力を持っているとはいえ、ただの人間である拓人が、
咲夜やレミリアが何年かけても解決できなかったことを一日で終わらせた。
当然、もう思い出せないほど昔、レミリアの下についた時に一緒に悩んだが、
答えは今まで出てこなかった。
何十年も何百年もかけてもできなかったことを一瞬にも等しい時間で終わらせ、
敬愛するレミリアとフランの仲を取り戻してくれた拓人には感謝してもしきれない。
「えぇ……本当に、いろいろありましたね……
これで、お嬢様は頭を抱えずに済むんですね」
「私も、だけれど。
もうこれで、妹様について悩むことは……」
咲夜が話している途中で、誰かの声が館の中から耳に届く。
『拓人~~~!』
『フラン、待ちなさーい!』
しばらく唖然としていたが、咲夜と目が合い、どちらともなく微笑を浮かべる。
「……別のことで悩みそうね。
こっちの方が楽だし、意外と楽しそう……そう思わない?」
「……はい……全くもってその通りですよ、咲夜さん」
その言葉を節に、しばしの沈黙が訪れる。
咲夜は、今まで見てきた中で一番の笑みを浮かべており、
自分も頬が少し吊り上がっている自覚はあったが、直そうとはしなかった。
今までで最高級の笑顔を十分に交換し終えると、咲夜が回れ右をして、
館の中へと歩んでいく。
さて、真面目に門番でもしましょうか……
そう思ったが、もう少し全身で夜風にあたりたかったので、その場に微動だにせずに残る。
だが、咲夜が門をくぐったところで何故か後ろを振り返ってこちらを見ると、
片手を上げて手招きをしてくる。
「ほら、あなたも入りなさい」
「え、でも、私には門番という仕事が……」
「宴会の準備、手伝って欲しいのよ。
妖精メイドじゃ手伝いにならないから」
「あれ? さっき宴会の準備しておくって言ってませんでしたっけ?」
「何言ってるのよ。 私はちゃんと、私『達』と言ったはずだけど」
言われてみればそうかもしれない、と思ったが、自分の考えの浅さに落胆する。
結論を言うと、問答無用で「手伝え」ということなのだ。
「あの~、私がいないと門番誰もいなくなりますけど……」
「あなた、確か便利な能力持ってたわよね」
うぐっ……痛いところ突いてきますね……
美鈴は、「気を使う程度の能力」を持っている。
「気」を使う、というのは気配りという意味ではなく、
武術などの不可視なオーラ的な方の「気」を指す。
その補助的なものとして、他人の気を察する程度ならばいくらか可能なのだ。
「もしかして、門番しながら手伝えってことですか……?」
「えぇ、そうよ。 人手も時間も足りないから、てきぱき働いてもらうわよ」
いくら可能であるとはいっても集中していればの話であり、
手伝いなどしていれば無理であることはかなり昔に実証済みである。
「え~!? 無理ですよ、無理無理!」
両手を上げて降参のポーズをとりながら、自分には出来ないことをアピールする。
「紅魔館のメイド長として命令します。 やりなさい」
だが、メイド長には関係ないらしく、まさかの命令を下してきた。
無茶だ、横暴だ、理不尽だ、等と心の中で列挙するが、権力には勝てずに渋々了承する。
「……わかり……ました……」
「それじゃ、今夜寝る前にある程度終わらせるわよ」
「……職権乱用」
ぼそっ、と言ったつもりだったのだが、どうやらメイド長の耳は地獄耳のようで、
しっかりと聞き取って反応してくる。
「何か言ったかしら中国?」
「いいえ、何も……それと、私は美鈴です!
いい加減覚えてくださいよ!」
「そうね……善処するわ」
「絶対ですよ! 咲夜さん、絶対ですよ!」
軽口を叩きながらも、上司の命令に従って宴会の準備をするため、
館の入口まで小走りで駆け寄る。
大変なことになったなぁ、と思いながら、
咲夜と横に並んで入口の大きな扉を一緒に開けて中に入る。
そして、いつも暗かった紅魔館の雰囲気は、今までと違って明るかった。
「……ふわぁ~~~、よく寝た~~~」
大きな欠伸をかましながら、上体を起こす。
昨日、または今日なのかもしれないが、無理矢理神社に連れられて帰った後、
ささっと風呂に入って軽く汗を流して速攻で寝た。
貧血で五時間寝続けたことを考えると不規則極まりない生活リズムだが、
そんなことはほとんど意識していない。
起き上がった拓人はとりあえず周りを見渡してみる。
右にはもう見慣れたちゃぶ台、左には意外と広い庭がみえており、
そこから差し込んでくる、多分上方向から降り注いでいるであろう光が
庭の至るところで反射しており、無意識に目を閉じてしまう。
……朝日じゃ……ない?
そう思った拓人は寝ぼけ眼なままで庭まで床を這うように移動し、
ぎこちない動作で靴を履いて日に照らされている場所まで歩く。
自分を照らしている光の方を向くと、首が上方向に約九十度ほど曲がる。
顔全体が光にあたり、まぶしくないように目を閉じる。
もう……昼ですか……
まだ完全に回転し始めていない頭では、事実を言葉にすることはこの程度が限界だった。
そのまま上を向いたまま固まる。
別に固まりたかったわけではなく、動くのが面倒くさかったからだ。
拓人は寝起きに弱く、さらに考え方も普段とは違ってくる。
自覚はしているのだが、それは完全に覚醒してからの事であり、
こうやって寝ぼけている間はほとんど何も感じない。
ぼけ~っと猫よろしく日向ぼっこ紛いなことをしていると、後ろから声が聞こえてくる。
「拓人ー、何やってるのよー」
「ぼけ~~~~~~…………」
ついでに述べると、寝ぼけている間は頭がおかしな人と思われても不思議ではないほど、
感じたことをそのまま言葉にしたり擬音語を口に出したりする。
もちろん、今はほとんど自覚していない。
霊夢の言葉に返答する気が起きず、意味不明な擬音語を口に出して、
また日向ぼっこを続ける。
しばらく日の光にあたっていると、突然額に何かがぶつかったような衝撃が走る。
「痛っ!?」
「こんな所で何やってるのよ、まったく」
器用に右手だけでお玉をクルクルと回している霊夢の姿が見える。
どうやら、何か料理している途中で殴りに来たのだろう。
額への衝撃により、ようやく意識が覚醒し始め、周りのぼやけていた景色が
だんだんとピントが合ってくる。
「……あぁ、おはよう、霊夢……」
まだ眠気が残っており、力のない声であいさつしたのだが、
返ってきたのは呆れた霊夢の声だった。
「はぁ……今、もう昼なんだけど」
「……ん? 昼か……そうだな……」
「ちょっと、寝ぼけてないで早く起きなさい!」
クワンッ!と金属特有の軽い音とともに、霊夢の持ったお玉が側頭部へ命中する。
「カフッ!?」
自分でもびっくりするほどの珍妙な叫び声を上げ、眠気が一気に吹っ飛ぶ。
「どう? 目が覚めたかしら?」
「お、おぉ。 ばっちり、完全に、完璧に目が覚めた」
これ以上殴られないよう、目が覚めた事へのアピールとして両手を腰にあてるという
謎のポーズを取る。
そんなことに霊夢は意も介さない様子で会話を続ける。
「目が覚めたなら、そろそろお昼にしましょ。
私は朝から掃除やら何やらでお腹すいてるのよ」
「わ、わかった」
霊夢のハイペースな話し方に少し戸惑うが、そそくさと居間へ入っていく霊夢の後姿を追って、
靴を脱いで部屋の中へ入る。
もう自分がどうやって出たのか分からない部屋にあるちゃぶ台の上には、
簡素な白飯と味噌汁が並んでいた。
そこまでお腹は空いていないのだが、作ってくれた霊夢のためにも食べることにする。
部屋の奥側に霊夢、庭側の方へ拓人が座り向き合うような形になる。
そして、今までの人生の中で何回したか忘れた、両手を合わせて行う
食事前恒例のあいさつをしようとする。
「いただき……」
そこまで言ったところで、
「おーい霊夢ー、飯くれー」
白黒魔法使いが乱入してきた。
体を百八十度頑張って捻って庭の方へ向くと、
すでに箒を片手にこちらに歩み寄ってきている魔理沙の姿が見える。
「あんたの分用意してないわよ」
「じゃあ作ってくれよ。 どうせ暇だろ?」
「どうせって何よ。 あと、作るのは面倒くさいから却下」
「え~いいじゃんか。 霊夢のけち!」
まるで子供だな、と思いつつも、魔理沙に一つの提案をする。
「だったら俺の食べるか? そこまで腹減ってないし」
「お? いいのか貰って」
「良くなかったらこんなこと言ってないよ」
そういうと、魔理沙が納得したように頷く。
立ち上がって魔理沙と場所を移動する。
「まったく、図々しいわね」
一言つぶやいてから、霊夢がぎこちなく両手を合わせて、いただきます、
と唱えてからご飯に箸をつける。
それに続くように魔理沙も霊夢と同様にしてから、味噌汁を勢いよく飲み始める。
しかし、ずるずると味噌汁を飲み干している魔理沙の顔は、どこかつまらなさそうだ。
「どうした魔理沙。 物足りなさそうな顔して」
「いや、味噌汁にキノコ入ってないな~ってさ」
「あんたいつでもどこでもキノコキノコ。
なんでそんなにキノコ好きなのよ」
呆れたような声で霊夢が問うと、魔理沙は人差し指を立てて説明し始める。
「元々好きっていうのもあるけどさ、キノコって魔力の元になったり、
研究の材料になったりと色々便利なんだよな~。
これで好きにならないほうがおかしいぜ」
拓人にとって、キノコはあくまで「食材」であり、「魔力の元」や「研究の材料」等と
いったものに使われているとは露程も知らなかったため、思わず感嘆の声を漏らす。
「へぇ~、キノコの汎用性すごいな」
「だろ~? 拓人はキノコ好きか?」
「あぁ、シメジから松茸まで何でも大好物だ」
「『しめじ』とか『まつたけ』は何か知らないけど、やっぱり好きだよな!」
二人で軽くキノコについて語っていると、霊夢からまたもや呆れた声が飛んでくる。
「よくキノコだけでそんなに会話できるわね。
別の意味で尊敬するわ」
「「それはどうも(だぜ)」」
見事に魔理沙と声が重なり、お互い顔を見合わせると、
同時に、ぷっ、と吹き出して大声を出しながら笑いあう。
特に話す話題も見つからずに適当な話をしていると、霊夢と魔理沙が食べ終わる。
その後は普通に話し合ったり、軽く弾幕の作り方などを議論していると、
いつの間にか日がだいぶ傾いており、綺麗な橙色に染め上げられた空が目に入る。
あと数十分で日は完全に沈み、宴会の時間が訪れるであろう。
「さて、そろそろ行くか」
「そうね。 ゆっくり行けばいい時間になるわ」
霊夢と魔理沙に合わせてこちらも腰を上げる。
思いっきり体を反ったりして筋肉を伸ばしていると、
いつの間にか霊夢と魔理沙は既に宙に浮いていた。
「ほら、置いていくわよ。 早くしなさい」
「わかってるよ」
縁側まで歩いて靴を履き、足裏から霊力を出して空中へ身を躍らせる。
飛べるようになってからというもの、空を飛べるという感覚は素晴らしいものだ、
と思いながらも、あまり待たせてはいけないので二人の傍まですぐに上昇する。
「よし、準備できたわね。 それじゃ、行きましょうか」
「よっしゃ! 宴会楽しみだぜ!」
「あまり食べすぎるなよ魔理沙」
「それはわかってるんだぜ!」
全然わかっていない事を見せつけるかのように魔理沙が朗らかに笑う。
このままだといつまでも話が続きそうなので、話に割って入る。
「忘れるなよ。 ……それじゃ、行こう!」
「それさっき私言ったわよね?」
「細かいことは気にしない気にしない!」
そして、半ば二人を置いていくようにして紅魔館へと向かう。
精一杯に皆と宴会を楽しむこと。
拓人は、それが今一番重要な事だ、と心の底から思った。
え~、どうでしょうか?
本当はもっと話を進める予定だったのですが、
途中で予期せぬ話(咲夜と美鈴の会話)が入ってきてしまい、中途半端で終わってしまいました。
長くなってますね……いつぞやの七千文字という上限はどこへ消えたのか。
……今後は一万文字を上限にします……なんかすみません……
そろそろ滝村氏に挿絵描いてもらおうかなぁ~、と思っているこの頃。
次の次か、そのまた次くらいには挿絵が載ると思います。
これは嘘ではありません……本当です、絶対です。
それでは、この辺で。
皆さん、気分転換を大切に。