東方壊命録   作:鼠返し

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 どうも皆さん、メリークリスマス! 鼠返しです!

 言うのが遅いですか? ……見逃していただければ幸いです……

 クリスマスイブに投稿しようと頑張りましたが、
なんか話がなかなか終わらず、クリスマス当日になってしまいました。

 宴会(=パーティ)ということで、なんかクリスマス気分で(?)
楽しくキーボードが打てました!

 さてさて、今回は宴会です!

 一応終わらせましたので、ご安心ください!

 それでは、第十七話本編をどうぞ!


第十七話 宴会

「「「「「乾杯!」」」」」

 

 そう皆が叫ぶと共に、全員がグラスを傾けて、

中に入っているワインを口の中へと流し込んでいく。

 

 周りを見渡すと、チルノ達三人も含めて何のためらいもなく飲んでいる。

 

 今まで酒を飲んだことがなく、不安だった拓人だったが、

 

  ……もう、俺子供じゃないしいっか。

 

 そう自分に言い聞かせて、そこまで大きくないグラスに口をつけ、

とりあえず少しだけ飲んでみる。

 

  ……何だこれ……めちゃくちゃうめぇ……

 

 生まれて初めて飲む酒の味をしめてしまい、残りのワインを夢中で飲み干す。

 

 アルコールであろう成分が適度に喉を焼いていく。

 

 以前飲んだ、ノンアルコールという名ばかりのビールとは比べ物にならない美味しさだ。

 

「美味しいわねこの酒!

 咲夜、これの材料とか分かる?」

 

 霊夢が感心したように問いかけられた咲夜は、グラスの中身を空にしてから口を開く。

 

「これはぶどうから作ったと聞いているわ。

 なんでも、幻想郷(ここ)に来る前にお嬢様が持ってきたそうよ」

 

「来る前に捨てるかどうか悩んだけど、どうせならと思って持ってきたのよ。 

 やっぱり正解だったようね!」

 

 いつの間にか飲み干していたらしいレミリアが、

必要性もないのに胸を張りながら注釈を加えてくる。

 

 そこに誰も突っ込んであげないのは、先ほどのガラスの如き脆いメンタルを見て、

ここで突っ込んだらかわいそう、だと思ったからであろう。

 

 現に拓人がそうであるが、直接本人に言うとまたパチュリー直行の予感がするので、

口には絶対出さないようにしておく。

 

 無駄な事や余計なことはしない。

 

 これが、拓人が幻想入りしてから学んだことの一つである。

 

 余談だが、ワインの原材料は全てぶどうである。

 

 拓人は、食べ物に嫌いなものはほとんどないが、果物は全て大好物だ。

 

 野菜等も基本的には好物のものが多い。

 

「それで拓人、これからどうすればいいの?」

 

 頭の中で余計なことを考えていると、レミリアから質問が飛んでくる。

 

「後はもう、食べたり飲んだり誰かと話したりと自由です」

 

「「さぁ、いっぱい食べるわよ(ぜ)!」」

 

 拓人が言うと、早速霊夢と魔理沙が食べ物に向かって猛スピードで突っ込んでいく。

 

 その光景に、本人達とチルノとルーミア以外は苦笑いをするも、それぞれ自由に動き始める。

 

 これからどうしようかな、と考えていると、傍にいるフランから服の裾を、

くいくい、と引っ張られる。

 

「どうしたフラン?」

 

「ねぇねぇ、ワインって何? とっても美味しかったんだけど」

 

「あぁ、それ私も気になります!」

 

 近くで話を聞いていたらしい美鈴も話に交じってくる。

 

「それでは少し説明を……ワインというのは、知っている通りお酒の一種です。

 原材料はぶどうのみで、私たちが飲んだワインは赤ワインと外の世界では言われており……」

 

 昔に、父から酔っている間に叩き込まれた酒の知識を、美鈴とフランに説明していく。

 

 その話は、すぐに終わることはなかった。

 

 

 

 

 

 その頃、猪突猛進という言葉がぴったり当てはまるような勢いで、

豪華な料理たちへと突っ込んでいった霊夢と魔理沙というと。

 

「二日連続でお肉が食べられるなんて!

 今年の分まで全部食べてやるわ!」

 

「おーい霊夢ー! こっちも美味いのいっぱいあるぞー!」

 

「待ってー! これ食べ終わったら!」

 

 底なし沼の如き胃袋へ、次々と食べ物を押し込んでいた。

 

 いつも質素な生活を送っており、毎日何とかして食べられるのは、

ただの白ごはんと味噌汁のみ。

 

 昨日咲夜に無理矢理貰った晩御飯と合わせ、二日連続で豪華な料理に

舌鼓を打つことができたことに、霊夢はとても幸せな気分である。

 

 同様にして、魔理沙も同じ気分であると予想できる。

 

 いつもはたまに人里から仕入れてくる野菜を口にする程度で、

だいたいがキノコを主食としている魔理沙だ。

 

 口いっぱいにとても嬉しそうに頬張っている魔理沙を見ていると、

こちらも負けじとこの場にある食べ物を全て食い尽くしたくなってくる。

 

 とりあえず、今咥えている、材料は謎の肉を飲み込み、魔理沙の元へ近づく。

 

「魔理沙、何食べてるの?」

 

「霊夢、この葉っぱみたいなのすごい美味いんだよ!

 ちょっとそこの肉に巻いて食べてみろよ!」

 

 魔理沙に手渡された手のひら程の大きさの葉っぱを手に取り、

傍にあったまたしても材料は謎の肉を適量取り、言われた通りに巻いて口の中へ放り込む。

 

 奥歯でかんだ途端、葉っぱが心地よい音と共に噛み砕かれ、

肉から大量の旨みを含んだ汁があふれ出してくる。

 

 あまりの量にこぼれないように手で口を押えながら、

意外に噛みごたえのある肉を葉っぱと共に飲み込む。

 

「こんなの初めて食べたわ! あんたよく気づけたわね」

 

「だろ? 葉っぱ食いながら肉も食ってみたら美味かったからさ、

 とりあえず巻いてみたら美味かったんだ。 いや~、毎日一回ぐらいは食べたいぜ」

 

「そうよね~」

 

 二人で笑いながらテーブルの上に並んでいる食べ物を順に見ていく。

 

 底の深い丸い皿に入った色とりどりの葉っぱのような物、鮮やかな色を放っている果物、

先ほど食べた肉、等々霊夢達を飽きさせることのなさそうな物ばかりだ。

 

 どんどん先へ視線を送っていると、黒光りしている数十本の瓶が目に入る。

 

 乾杯するときに、咲夜がグラスに注いでいたワインというものだ。

 

「ねぇ魔理沙……ワインってお酒よね」

 

「そうだな。 あの喉が焼けるような感じ……あれが酒じゃなかったら、

 今までの酒は酒じゃなくなるぜ」

 

 魔理沙に確認を取り、ワインが数十本並んでいる所まで歩き、適当に選んで手に取る。

 

「だったら魔理沙……飲み比べ、しない?」

 

「……私に勝てるのか? ここ最近、私がずっと勝ってるんだぜ?」

 

 たまたま村人からの依頼の報酬で酒がもらえたりする時、

魔理沙を呼んで一緒に飲むことが多い。

 

 いつしか、魔理沙も人里から酒を貰った、又は盗んだ物と合わせて飲み比べをするようになり、

最近の勝負は魔理沙が勝ち逃げ状態だ。

 

 だが、今回飲むのはいつもと違う酒だ。

 

  酒が違えば……久しぶりに勝てるかも……!

 

「今回はお酒が違うのよ? 案外私が勝ったりして」

 

「さぁ……どうだろうな……?」

 

 魔理沙が独り言のように呟きながら、一本を手に取る。

 

 どちらともなく、親指で瓶についている栓を弾き飛ばす。

 

「「まずは一本目!」」

 

 瓶に口をつけ、豪快に中に入っている液体を喉へ流し込む。

 

 いつもの酒と違い、喉につっかえるような感じがなく、素直に胃袋へと収まっていく。

 

  今回……いける!

 

 そう確信し、ただひたすらにワインを飲み続ける霊夢だった。

 

 

 

 

 

「……でして、栓をして一年から十年で開けるものもあれば、

 二十年から三十年といった長い間寝かせるものもあります。

 ぶどうの良し悪しもありますが、寝かせるほどに質が高くなり、

 値段もそれに比例していきます」

 

「へぇ~……ワインって奥が深いんだね」

 

「むむむ……初めて聞くことばかりです。 拓人さんは物知りなんですね」

 

「まぁ、こんな知識があっても使いどころがありませんけどね」

 

 拓人の言葉で、説明を聞いていた二人は笑い始める。

 

 まずワインの大まかな種類から始まり、ぶどう作り、醸造方法など、

ワインが生まれた文化以外の事についてほとんどを説明し終えた。

 

 少し、という言葉は嘘になってしまったが、二人は一切気にしていないようだ。

 

 まさか、いらないと思っていた知識がこんなところで役立つとは思わず、

目の前の美鈴とフランとは別の理由で笑いの声をこぼす。

 

 三人で暫く笑い合い、次の話の話題を考えていると、小悪魔が歩いてくる。

 

「どうしたんですか、こぁさん」

 

「あの~、少しお話が……ちょっと来てもらえませんか?」

 

 少し腰を折って、小さく手招きしている小悪魔に一つ頷く。

 

「えぇ、いいですよ。 それでは美鈴さん、失礼します」

 

「わかりました。 興味深いお話、ありがとうございました」

 

 美鈴に軽く頭を下げ、小悪魔に手招きされるままについていく。

 

 だが、小悪魔が服の裾を握ったまま離さないフランを見て、

こちらにだけ聞こえる声で話しかけてくる。

 

『拓人さん、お一人で来てもらえますか? 妹様には少し話しづらい内容ですので……』

 

  話しづらいって……どんな内容なんだ……?

 

 そう疑問に思ったが、ここまで来て断るわけにもいかないので素直に言う事に従う。

 

 決して、小悪魔がにやにや笑っているから内容が気になる、という理由ではないと思いたい。

 

 しかし、いきなりフランを離せ、と言われてもどうすればよいのかわからない。

 

 いろいろと策を練っては即座に脳内のゴミ箱へ投げ込んでいると、

 

「だめだよチルノちゃ~~~ん! 怒られたらどうするの~~~!?」

 

 何故かチルノの腰をがっしりとホールドしている大妖精の姿が視界に入ってくる。

 

 すぐ近くにルーミアもいるが、唯見ているだけのようだ。

 

「大ちゃん、離してよ!」

 

「おいおいどうしたんだチルノ? 大ちゃんも何やってるんだ?」

 

 こちら問いかけに、チルノは意にも介さない様子で全身を続ける。

 

 大妖精はチルノを抑えるのに必死で、こちらの声は聞こえてないようだ。

 

「そこのあんた!」

 

 チルノがフランを指さしながら呼び止める。

 

「……私?」

 

「そうよ! あんた、なまえは?」

 

 チルノの強気な態度に怯えたのか、フランが体を縮めながら拓人の影に隠れる。

 

 その姿に男として笑みがこぼれそうになるが、ぐっと堪えてフランに話しかける。

 

「ほらフラン、隠れてないであいさつしたらどうだ?」

 

 そう言って未だ隠れているフランの背中を軽く押すと、対して抵抗もせず、

チルノたちの前に姿を現す。

 

 まだ不安なのか、恐る恐るといった感じでフランが口を開く。

 

「私……フランドール…………スカー、レット……」

 

 何とか絞り出したような自己紹介を聞いて、チルノは少し考えた後に話しかける。

 

「……ながいからフランね! あたいはさいきょーのチルノ! 

 こっちは大ちゃん、それでこっちがルーミア!」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「よろしくなのかー」

 

 チルノから大雑把な紹介を受けた、大妖精とルーミアがそれぞれ挨拶する。

 

「ねぇねぇ、あたいたち、ともだちになろうよ!」

 

  な!? 展開速くね!?

 

 チルノのいきなりの発言に驚いたが、考えを改める。

 

 フランは一言で言ってしまえば人見知りで、他人に自ら関わることはしないということは、

先ほどのフランの反応を見れば容易に推測できる。

 

 つまり、自分からは何もしないということだ。

 

 ちゃんと適切な順番で、などと悠長なことを言っていると、

いつまでたっても友達などできない。

 

 寧ろ、チルノのように強引過ぎるくらいがフランには丁度いいのかもしれない。

 

 そこまで思ったところで、フランが不安そうにこちらの顔を見上げてくる。

 

 何か助言してほしい、といった眼差しで見てくるが、

何もかも手伝っていてはフランのためにならないので、敢えて自分で考えさせることにする。

 

 軽い笑みだけを返して、話を続けることを促す。

 

「…………うん、いい……よ」

 

 先ほどと同じように、短くだが答える。

 

「それじゃ、これからあたいたち、ともだちだね!」

 

 チルノはとびきりの笑顔を浮かべながら、フランへ右手を伸ばす。

 

 フランは、チルノが何をしたいのかわからない、といったようにこちらを見上げてくる。

 

「ほら、握手してやれよ」

 

「……うん」

 

 ゆっくりとだが頷き、チルノへと手を伸ばす。

 

 触れ合う直前に腕をびくつかせて止めるが、すぐ後にはしっかりとチルノの手を捉えていた。

 

「よろしくね、フラン!」

 

「よ……よろしくね、チルノ」

 

 お互い、手を握り合ったまま少しの間じっとしていたが、チルノの方から話を切り出し始める。

 

「ねぇ、なんかおはなししよ!」

 

「……で、でも……」

 

 先ほどから服の裾を握ったままのフランが、こちらの顔を見ながら口ごもる。

 

 そんなフランに、少しだけ笑った後、美鈴に視線を移して口を開く。

 

「美鈴さん、フランの事頼めますか?」

 

「大丈夫です、任せてください!」

 

 右腕でガッツポーズを決めながら、力強く美鈴は頷いた。

 

「ほら、美鈴もついてくれるから大丈夫。 行っておいで」

 

  まるで父親みたいだな……

 

 と思ったが、そのことを表情に出さずにこらえる。

 

「……う、うん」

 

 フランは何とか頷き、暫く掴んでいた服の裾をようやく離し、

美鈴と共にチルノたちの輪の中へと入っていった。

 

 ふぅ~、と息を吐き、小悪魔の方へと振り向く。

 

「すみません、遅くなりました」

 

「いえいえ、大丈夫です。 さ、こちらへ」

 

 小悪魔に、料理は近くにあるがあまり目立たない場所へと案内される。

 

 そこには、本を片手に料理を食べているパチュリーの姿があった。

 

「パチュリー様、連れてきました」

 

「ありがとう、こぁ。 それで、拓人といったかしら。 

 少し頼み事があるのだけれど、聞いてもらえないかしら」

 

「えぇ、いいですよ。 治療してもらったお礼もまだですし、私にできることならなんでも」

 

 と拓人が答えた瞬間、小悪魔とパチュリーが笑った、ような気がした。

 

 気のせいであることを願いつつ話を進める。

 

「……それで、頼み事というのは?」

 

「少し話は変わるけど、私は、もう気づいている通り、魔理沙と同じ魔法使いよ。

 ここ何十年も魔法の研究を続けているわ。 

 そんな中、私が持っている無数の本の中に興味を惹かれるものがあったの。 なんだと思う?」

 

「……さぁ、皆目見当もつきません」

 

「それは……『感情』よ」

 

  感情……か……

 

 と思ったが、それ以上考える暇もなく、パチュリーの口は動き続ける。

 

「人間についての感情よ。 喜び、怒り、悲しみ、驚き、嫌悪、恐怖。

 様々な感情が私にも同じようにあり、私はそこに興味を持っていろいろ調べてみたの。

 だけど、どうしてもわからなかった感情が一つ」

 

「そ、それは……?」

 

「そう……『愛』。 厳密に言うと、恋愛感情よ」

 

  な……なんだって~!?

 

 と心の中で絶叫し、頭の中であれこれ考えていると、まだまだパチュリーの口は動き続ける。

 

「恋愛感情とは、男女において互いが互いを愛し合う、という感情を指すそうだけど、

 私の周りには異性がいないから知る由もないわ。 

 でも、昨日のレミィの様子を見て分かったの」

 

「な、何がわかったんですか……?」

 

 拓人が嫌な予感を感じながらも質問すると、パチュリーと小悪魔は息を合わせてこう言い放つ。

 

「「それは、レミィ(お嬢様)が、あなたに『恋』をしているということよ(です)!」」

 

 それを聞いて理解した瞬間、拓人の頭の回転速度は、急速に低下して停止寸前まで陥いる。

 

 だが、かろうじて残った思考力で聞き返す。

 

「……こ、恋? いやいや、そんなのって……」

 

「じゃあ、拓人さんは心当たりがないと仰るんですか?」

 

 と小悪魔に指摘される。

 

 心当たり、というものを、記憶のタンスの中から漁っていく。

 

 『……み、みんな見てるのよ? ここじゃ、だめ……だから……』

 

 という昨日のレミリアの言葉と、

 

 『フ、フラン! そ、そこ、ちょっと私と代わ……じゃなくって!』

 

 『う、羨ましいに決ま……じゃない、ぜ、全然、これっぽっちも羨ましくないわよ!』

 

 乾杯をする前の、一瞬本音が出たような二文が脳裏に浮かんだ。

 

 経験が無いとはいえ、拓人は男であり、年相応の知識はある。

 

 ラノベの主人公の如くクリティカルに気づかないほど、拓人は馬鹿な男ではない。

 

「……いえ、ないというわけでは……でも、一昨日に初めて会ったばかりですよ?」

 

「でも、私が読んだ本にはこう書かれていたわ。

 『愛する気持ちに、時間は関係ない』と」

 

  ……どんな本読んでんだよ……

 

 思いはしたが、言ったところで意味がないので口から出る前に飲み込み、

代わりに話を本題へと戻すことにする。

 

「……それで、結局頼み事ってなんですか?」

 

「私たちの頼みは至って単純よ。 レミィと一緒に行動してもらうだけ。 

 私たちは、その時のレミィの様子を観察するの」

 

  ……あれ? 思ったより簡単……

 

 と一瞬安堵したが、

 

「ただ、指定する行動をとってもらうけど。

 例えば、頭をなでるとか、肩を抱く、といった感じよ」

 

 続いたパチュリーの言葉に、完璧に安堵の感情は玉砕されてしまった。

 

「私は、一人の女としても親友としても、レミィはかなり綺麗だと思うの。 

 よかったら、そのままレミィを嫁にしてもいいんじゃないかしら。

 どう? 悪くない話でしょ?」

 

 さらに続けて話し続けるパチュリーの言葉の内容に唖然とする。

 

  ……嫁? いやいや、五百歳児を嫁にしたら法に触れるだろ……

 

 と自分なりの言い訳を考えてみたが、

 

  五百歳……って、普通ありえないけど一応合法じゃん……やべぇ! 逃げ道消えた!

 

 自分で矛盾点を見つけ出して論破してしまった。

 

 一度承諾してしまった以上、もう断ることはできない。

 

「…………わかりました、協力します……」

 

 渋々了承すると、パチュリーと小悪魔はお互いの顔を見合わせ、笑顔で頷き合う。

 

  何があっても嫁にするのだけは避けよう……

 

 そう拓人が決意しているのをよそに、パチュリーは口を開く。

 

「ありがとう、助かるわ。 

 早速やってもらいたいけど、とりあえず一緒に話すだけで……といってるうちに、

 観察対象のご登場のようね」

 

 話の途中で、パチュリーがこちらから視線を外すので、

つられてパチュリーが見ている方向、後ろへと体を振り向く。

 

 先ほどパチュリーが言っていた『観察対象』のレミリアが、

こちらに歩いてきているのが目に入る。

 

 咲夜は傍におらず、一人だけで来ているようだ。

 

 何故かはわからないが、顔を少し赤くし、胸の前で両手を小さくクロスしている。

 

 やがて話ができる程に近づき、レミリアが口を開く。

 

「あの……た、拓人? 少し、話が、あ、あるのだけど……」

 

 話している間のレミリアの顔が、本人は自覚はしてないようだが、

目に見えて赤く染まり始め、言い終わる頃には顔全体が完全に染まっていた。

 

 言い終わると、そっぽを向きながら前髪を片手で弄り始める。

 

 レミリアの視線が完全に外れると、

小悪魔からレミリアに聞こえないような声で話しかけてくる。

 

『ほらほら、拓人さんチャンスですよ! 見たところ、お嬢様は今ほろ酔い状態ですね。

 そのまま大人な展開まで一気に……きゃー!』

 

『ちょ、何考えてるんですか!?

 そんな展開にはなりませんしならせませんよ!?』

 

『ふふっ、冗談ですよ。 私たちは観察してるので、お嬢様と行ってきてください」

 

 小悪魔の冗談を真に受けてしまい慌てたが、あまりレミリアを待たせるとまずいと思い、

すぐに小悪魔の言うとおりに従う。

 

「えぇ、いいですよ。 折角ですし、一緒にワインでも飲みながら話しましょう」

 

「わ、わかったわ!」

 

 そういって、にやにや笑っているパチュリーと小悪魔に見送られ、

レミリアと一緒にワインボトルが置いてある場所まで移動しようとする。

 

 だが、遠目で分かったのだ。

 

 霊夢と魔理沙が、ものすごい勢いでワインをボトルごと煽って、

一気に胃袋の中へと流し込んでいるということが。

 

 二人の足元へ散らばっているのは、犠牲になったボトルの数々。

 

 合計で十三~十五本はあるだろう。

 

 そんな光景を極力無視し、ある人物を呼ぶために口を開く。

 

「……咲夜さん、いますか?」

 

「はい、お呼びでしょうか」

 

 いきなり、咲夜が右横へ現れる。

 

 一応慣れてきたのか、驚いたのはほんの少し心臓が跳ねる程度で、

無様に笑われるような反応はしなかった。

 

 もう既に完璧の域を超えているメイドを呼んだのは、注文をするためだ。

 

「すみませんが、ワインボトルを一本、グラスを二つ持ってきてもらえますか?」

 

「畏まりました」

 

 すぐさま咲夜の姿が掻き消え、約五秒後には同じ場所に、

拓人が注文したものを揃えて立っていた。

 

「どうぞ」

 

 咲夜は、グラスを拓人とレミリアに一つずつ渡すと、

ボトルの栓を抜いてグラスへと注ごうとする。

 

「あ、大丈夫ですよ。 自分で注ぎます」

 

「そうですか。 失礼しました」

 

 咲夜からボトルを受け取ると、一瞬で姿が掻き消え、

何故か霊夢達の方へと移動し、次々とボトルをテーブルの上へ置いていく。

 

 パシられてるのが容易に理解できたが、普段から勝てない二人に、

さらに酔った状態で勝てるはずもないので、やむを得ず助けに行かないことにする。

 

「咲夜さんも大変ですね……」

 

 苦笑しながらだが、レミリアのグラスにワインを、

父から習った作法にしたがって三分の二程注ぐ。

 

 本当はおしゃれな店にいるようなソムリエみたいにボトルの底を持って注ぎたかったのだが、

意外と技量を試されるので、仕方なくボトルの半分くらいの所を持つことになったことに、

なんとなくだが情けなく思ってしまう。

 

 ついでだが、本当はテーブルの上に置いて注ぐのがマナーではあるが、テーブルは

霊夢達に占領されているだろうし、見つかるといろいろ面倒くさい展開になりそうなので、

レミリアも同様に立ったままだ。

 

「あ、ありがとう……」

 

 お礼の返事として笑みをこぼし、自分のグラスにもほぼ同量注ぐ。

 

 咲夜みたいに完璧にとはいかないところに情けなく感じるが、

こういうのは慣れてないせいだ、と考えて克服する。

 

 再度の乾杯として、レミリアに向けてグラスを少しだけ上げ、

それから口をつけてまだ完全には慣れない酒を飲む。

 

 約三分の一程飲んで口をグラスから離し、少し間をおいてレミリアに質問する。

 

「……それで、お話とはなんでしょうか?」

 

「話というか……何というか……その、お礼、よ」

 

「お礼、ですか?」

 

 思わず聞き返すと、レミリアは頷き話を続ける。

 

「私は今回の異変で幻想郷を支配して、フランが受け入れられるような、

 そんな場所にして、もう不自由なく暮らせるようにしたくて起こしたの。

 だけど、それはこの世界の人々に何とかして欲しいという、

 唯の他力本願な行為だってわかってたの。

 自分では、何もできないから、他人の力にすがることしか思いつかなかった。

 そう思っている時に、あなたが来て、私の考えを変えてくれたの」

 

「……私が、ですか?」

 

 拓人の問いに、レミリアは無言で頷き、更に口を動かし続ける。

 

「あの日、私は決めたつもりだった。

 必ず、『自分が』フランを救うんだって、何十年も何百年も前に。

 それを忘れて、考えも変わって、おまけに助けようとした相手の、

 ほんの少しの気持ちすら分からなくなっていた。

 でも、今まで私がしてきてことは間違いだってことを、つい数日前、

 初めて会ったあなたが教えてくれた。 

 ……そして今、改めてあなたに言っておきたい事があるの」

 

 話を区切り、レミリアは体の向きを変え、こちらへと向く。

 

 それに合わせてこちらも向きを変え、レミリアと正対する。

 

 そしてレミリアは、まだ少し赤みの残る顔で口を開く。

 

「ありがとう。 こんな、駄目な私やフランを助けてくれて。

 心から感謝するわ」

 

「……礼には及びません。 ただ、自分が助けたいと思った、ただそれだけですよ。

 他に理由なんてありません」

 

 自分と同じようになって欲しくなかった、自分と同じ存在を作りたくなかった。

 

 ただそれだけの為にこの問題に首を突っ込んだのだ。

 

 礼を言われることは何一つないと拓人は思っている。

 

「……そう。 あと、これも言っておきたいの。

 お礼とかじゃなくて、私の心からの言葉……」

 

 そこまで言うと、レミリアは顔を俯かせ、何かをぶつぶつと呟き始める。

 

 だがそれも短い間だけで、よし!、と小さく言うと、

顔を上げてまっすぐこちらを見つめてくる。

 

 その顔は何故か今までで一番赤く、目には薄い水の幕が張っている。

 

 そして、レミリアは少しだけ荒くなっていた呼吸を整え、

小さく、だがはっきりと拓人に向かって声を出す。

 

 

 「私、拓人の事が……好きなの」

 

 

「…………へ?」

 

 一瞬、何かの聞き間違いか何かだろうと思った。

 

 だが現実はそうでないらしく、赤い顔のままレミリアは言葉を続ける。

 

「何で好きになったのかは私にも分からない。 

 けど、理屈なしにそう思ってたの……初めて会ったときはこんな気持ちじゃなかった。 

 いつの間にか、好きになってたの……あなたは人間で、種族とか寿命とか違うのは分かってる。

 だけど……私の傍に、一生いてほしいの……」

 

 突然の、愛の告白。

 

 いきなりこんなことを言われても、どう返せばよいのか分からず、

ただただ拓人の頭の中は混乱するばかりだ。

 

「…………」

 

 返事に迷っている間、レミリアはずっと黙ったまま、こちらの返事を待っている。

 

「……こういった経験が無いのでどうすればいいのか分かりませんが……

 あ~、え~っと……」

 

 なかなか続く言葉で出ず、グラスを持っていない左手で頭をかく。

 

 考え込むこと約五秒、とりあえず浮かんだ言葉を口に出す。

 

「……レミリアさんにそう思われてうれしいです。

 私も、いやじゃないですからね……」

 

 ここまで何とか言い終わると、レミリアの顔がみるみるうちに笑顔へと変わっていく。

 

 だが、まだ続く返事を待っているような感じもする。

 

「私は……」

 

 続く言葉を述べようと更に口を開く。

 

 だが、その時。

 

「おい拓人~! こっち来いよ~!」

 

 誰かから首根っこを掴まれ、強引に後ろへと引っ張られてしまう。

 

「ぐうぅぅ~~~!!?? し、締まる締まる~~~!!」

 

 何とかワインをこぼさないように左手だけを使って後ろを向くと、

なんとボトルを片手に持っている魔理沙がいた。

 

「こっちきて一緒に飲もうぜ~!」

 

「ちょ、ちょっとまて! これじゃムードが台無しだ!」

 

 こちらの言葉は一切届かないらしく、魔理沙にどんどん引っ張られ、

霊夢の所まで連れていかれる。

 

 ちらっと足元を見てみたが、先ほど見た数よりも五~六本ほど、

犠牲となったボトルが増えていた。

 

「さぁ~拓人~、あんたも飲むわよ~!」

 

 よく見れば、霊夢も魔理沙も相当酔っているようで、

顔にはレミリアとはまた違う赤さが見える。

 

 そして、霊夢はボトルを片手にどんどん近づいてきている。

 

 まだ栓を開けたばかりのボトルだ。

 

「ちょ、ちょっと待て霊夢、俺酒は今日が初めてで……」

 

 逃げようとするが、魔理沙がしっかりとホールドしているので、

逃げようにも逃げれない。

 

「そんなこと気にしない気にしない!

 さぁ~、ぐいっと一気にいくわよ~!」

 

 そのままボトルの口を拓人の口の中へと押し込み、

無理矢理中に入っている液体を流し込んでくる。

 

 いつの間にか流れていた涙によって歪んだ視界の中に、

悠然と立っている咲夜の姿が目に入る。

 

 なんとか助けてほしい一心で視線を送る。

 

 しかし、咲夜は首を横へ振る。

 

  おいおい嘘だろ……!

 

「ごぼごぼごば、ばば、あばばばばごぼごぼばぼぼ!!!」

 

 無理矢理流し込まれているせいで、呼吸すらできない。

 

 一本目のボトルが空になり、なんとか息継ぎしようと空気を吸おうとするが、

口の中へと飛び込んできたのは、霊夢がもう片方の手に持っていた二本目のボトルだった。

 

「ごばぼっ、ばば、ばぼぼごぼばぼぼぼ!!!」

 

「さぁ二本目いくわよ~! 拓人は何本目までいけるかしら~?」

 

 酔っている割には意外と滑舌よく話す霊夢だったが、

拓人はそれどころではなく、息継ぎに必死だ。

 

 次第に視界が黒に覆われていく。

 

  誰か……助けて……

 

 最後の虚しい願いは届くことはなく、拓人はそのまま闇の中へ落ちていった。




 奇妙な形で終わった十七話でした。

 途中で出てきたワイン知識(?)ですが、作者は一切分からなかったので、
wiki先生から教えていただきました!

 ワインの味?

 そんなもの、学生の作者には一切分からないので適当です……

 サンタサンコナイカナー(チラチラ ……なんて思ってたりする作者です。

 なんか変なタグを追加したので、よければご確認を。

 なんだかんだで話が長くなりました。

 次回の投稿日もやはり未定でございます。

 それでは、少し早いですが、皆さんよいお年をお過ごしください!
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