東方壊命録   作:鼠返し

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 どうもみなさんお久しぶりです! 鼠返しです!

 いつの間にか五月も終わろうとしてて焦ったのですが、なんとか投稿できました!

 いろいろと書いておきたい事とかはまとめて後書きで一気に載せます。

 何ヶ月もお待たせしてしまった十九話です! どうぞ! 


第十九話 咲夜の迷い

 ……なんか寝た気がしない……

 

 そんな考えと共に拓人は目が覚めた。

 

 レミリアに押し倒されて、フランの事がバレた後吸血鬼サンド状態で寝たのだが、

拓人の主観では一瞬の出来事だった。

 

 何気なく体を起こそうとしたが、体が全く動かない。

 

  これは……金縛り……?

 

 噂程度に聞いていたのだが、まさかこうも体が動かないとは思っていないかった。

 

 金縛りとは、なんらかの霊の仕業とか言われてはいるものの、

実はちゃんとした理由があるのだ。

 

 人間というものは、寝ている間だけだが、一時的に体が全く動かない時間がある。

 

 たまたまその時に目が覚め、体が全然動かないというのが金縛りの正体である。

 

 拓人はまだ一度も金縛りにあったことがなく、

どの位時間が経てば体の硬直が解けるのかわからない。

 

 どうしたものか、と考え無意識に横になったまま真上を向いている顔を横に倒すが、

 

  ……あれ?

 

 実に、当たり前のように顔がベッドの上に倒れ、頬からはシーツの感触が伝わってくる。

 

 不審に思って、体の全部位を動くかどうか確認すると、

両腕全体に何かしらの圧力を受けているだけで、顔とか足やらは動くことを確認できた。

 

 腹筋や背筋もちゃんと動くし、息苦しさもない。

 

 ならばこれはどうしたものか、と左腕の方から確認していく。

 

 予想通り、フランの気持ちよさそうに寝息をたてている顔が目に入ってくる。

 

 だが、ここから先は全く予想していなかった。

 

 掛け布団は最早体には一切かかっておらず、両手両足を使って

がっちりと拓人の左腕をホールドしていたのだ。

 

「っ!?」

 

 思わず息を呑み、反射的に腕を引っ込めようとするが、

ホールドされているので指先しか動かなかった。

 

 そして、唯一動いた指先が、暖かく柔らかいものの間に埋まる。

 

 それと同時に、

 

「あ……はぁ、ふ……ぅん……」

 

 フランが、見た目からは想像もつかない艶かしい声を小さくだが上げ、

顔をほんの少し赤くする。

 

  ……俺、何した……?

 

 嫌な予感がしたが、動く首を限界まで曲げて、左手の先がどうなっているかを確認する。

 

 視界に入ってきたのは、フランの下半身――パンツは履いていたものの、

股の割れ目に指を突っ込んでいる自分の右手だった。

 

  ちょ、ちょっとこれは……!?

 

 またもや反射的に手を引っ込めようとして指先だけが動き、さらに割れ目へ指がくい込む。

 

「い……やぁ、あ……ぁん……」

 

 当然の如く、フランはさらに顔を赤くする。

 

 今度は動かないように手全体に異常なまでの力を込め、そこから、

これ以上くい込ますことのないようにゆっくりと指を引いていく。

 

 その途中、右手にも同じような感触と、

 

「ん……あ、いや……ぁ……」

 

 フランと同じように右腕にしがみついているレミリアの声がした。

 

 まさか、と思いつつも右手の先を見ると、フランと同様に割れ目へと指が埋もれていた。

 

  なんと言うかこれ……アウトだろ……

 

 考えたくないが色んな意味でアウトだと感じた拓人は、何故か吹っ切れて逆に冷静になり、

落ち着いて柔らかい肉の間から指を離していく。

 

 一秒もかからず、触れてはいけない場所から指をエスケープさせた拓人は、

冷静に現在の状況を確認していく。

 

 両腕をホールドされており、満足に動かせるのは首と両足。

 

 背中から霊力を噴射して抜け出すことも出来なくはないが、

それをしてしまうと二人を起こしてしまう可能性がある。

 

 なるべく穏便に事を済ませたい拓人としては、あまり良い策とはいえない。

 

  ……こういうときこそ……能力だ!

 

 冷静になりながらも変なテンションで策を思い付いた。

 

 対象は自分、内容は自分は部屋に立っている、といった瞬間移動する感じだ。

 

 早速、能力を使うために目を閉じて集中しようとする。

 

 だが、部屋の扉がガチャリ、と音をたてて開く。

 

「さ、咲夜さん!?」

 

 部屋に入ってきたのは、あろうことか一番この状況を見られたくなかった相手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、十六夜咲夜は宴会の後片付け中である。

 

 宴会の途中で例の二人に無理矢理ワインを飲まされ、意識を刈り取られた拓人を背負い、

フランと一緒に拓人を部屋に寝かせた後、この部屋まで戻ってきた。

 

「誰か寝ちゃった二人を部屋に連れていってちょうだい。

 中国! もっと働きなさい!」

 

「ふえぇぇ~、これ以上は無理ですよぉ~……」

 

 自分も片付けながら、妖精メイドに命令し、働きの鈍い美鈴にも声をかける。

 

 美鈴は少し酒が入っているようだが、そんなことはお構いなしだ。

 

 そうやって片付けていくと、妖精メイドがよく働いたのか量が少なかったのか、

案外早く片付き、もう少しのところまで来た。

 

 もうこの部屋と調理場を何十往復したか分からなくなって来た頃、

残りを部屋に戻っている途中、同じく一緒に残ったものを運んでいた美鈴に話しかけられる。

 

「そういえば、咲夜さんはいつもみたいに能力使わないんですか?」

 

「あれね、結構霊力消費するのよ。

 お嬢様に呼ばれた時ぐらいしか使ってないわ」

 

「へぇ~、意外と大変なんですね」

 

 等々話していると、突然美鈴が何かに気づいたような声を上げる。

 

「咲夜さん、お嬢様の姿が見えませんけど、どこに居るんでしょうか?」

 

 美鈴に言われ、レミリアのいる場所を思い出そうとするが、巫女と泥棒に使われていたためか、

拓人にワインボトルを渡した時に隣にいたのを見てからというもの、姿を見ていない。

 

「色々あったから分からないわね……悪いけど、探しにいってきても良いかしら?」

 

「えぇ、残りも少ないですし、私と妖精メイド達だけで大丈夫です」

 

「ありがとう、後よろしくね中国」

 

「ですから、中国じゃなくて美鈴ですよ……」

 

 そんな呆れたような美鈴の言葉を聞きながらも、片付けから少し抜けることにした。

 

 どこから見て回ろうか、と考えてながら少し廊下を歩いていると、

後ろから声が聞こえてくる。

 

「咲夜さーん!」

 

 振り返ると、美鈴が小走りでこちらに向かってきていた。

 

「どうしたの?」

 

「あの、妹様の姿も見えなかったので、一緒に探してきてもらえますか?」

 

「わかったわ、今度こそよろしくね」

 

 美鈴に改めて後を頼み、とりあえずフランの部屋から見て回ることにした。

 

 その道中、一人になった咲夜は、少しだけ落ち込んでいた。

 

 いつ生まれ、レミリアに従えるようになるまでをどう生きてきたかわからない咲夜にとって、

こうやって話し合える関係になった男性は、記憶にある中では拓人だけだ。

 

 パチュリーからは、『恋』とか『愛』だとかについて最近は研究に没頭しており、

小悪魔から色々とそれらのことについて聞かされた。

 

 初めて会った時に言われた、『素敵な女性』の一言。

 

 周りの人物は、自分の見た目などはどうでもいいのか、

働きに関してしか興味を示していない。

 

 初めての自分の姿に対しての意見は、男性経験のない咲夜にとって、

非常に心ときめく内容だった。

 

 これが『恋』というものなのか、と思っていると、レミリアとフランも、

自覚はしていなかっただろうが明らかに拓人に恋をしていた。

 

 その事実を知り、咲夜はたまらなく辛くなった。

 

 まさか、自分の主とその妹が恋敵であることなど、全く予想していなかったのだ。

 

 自分は主に付き従う者だと言い聞かせても、胸の苦しみは小さくなるどころか、

着実に大きくなっていく。

 

 拓人を運んでいる時にフランから話を聞く限り、恋をしているのは間違いないだろう。

 

 自分は、これからどうすればよいのか。 

 

 色々と考えていたが、いつの間にか地下室の扉の前まで来ていた。

 

 拓人にフランの人格を抑えてもらった後、フラン個人の部屋を用意しようと提案したのだが、

『拓人と初めて会った場所だから』と言われて、フランは昨日も地下室で寝ている。

 

 地味に長い石造りの階段を下りて、フランが暴走したときの対策として、

異常なまでの分厚さを誇っている鉄の扉を開く。

 

 ちなみに、扉には吸血鬼が苦手とする『銀』も少し混ぜてあるとレミリアから聞いた。

 

 ぎぃ~、と鉄が軋む音と共に部屋の内側へと開き、視界が赤で覆いつくされる。

 

 ベッドに寝ている様子もなく、部屋中を探しても姿が見当たらなく、

まだどこかをうろついているのだろうか、と考えて部屋を後にする。

 

 次は、レミリアの寝室へと向かう。

 

 だが、結論から言うと、レミリアの姿はなかった。

 

 ならばどこにいるのだろうか、と考えて思いつくのが、普段使っていない部屋だ。

 

 自身の能力――『時を操る程度の能力』は、いつも少し応用した使い方をしている。

 

 時間と空間は深い関係にあり、そのおかげで空間を広くしたり狭くしたりでき、

紅魔館は外見と中の広さは全く比例していない。

 

 何故か無駄に広くしてしまった館内を、時間を止めなければ掃除がやってられず、

ここに住み始めて数年のうちは挫折しそうになったこともあった。

 

 こんなこともあり、館内はとてつもなく広く、故に使っていない部屋も多々ある。

 

 使っている部屋と言えば、物置や調理場、

後はレミリアとフランの部屋とパチュリーの図書館と研究室ぐらいだろう。

 

 ちなみに、美鈴はどうやって寝ているのか、知らないし知る必要もないと考えている。

 

  ……とりあえず、探さないと。

 

 慌てる必要はないので、時間を止めずに使っていない部屋を片っ端から見ていく。

 

 一階の半分、約二百にせまろうかという数の部屋を見ていくと、

行動自体が半自動化してきて、次の部屋がどこかなど考えずにドアノブに手をかける。

 

 ふと、この部屋は見た覚えがあると思い出し、薄れかけていた意識が戻ってくる。

 

 そう、この部屋は自分が拓人を運んだ部屋だ。

 

 ドアノブへと手を掛けて回した時点でもう後戻りはできず、

失礼なことをしたな、と自分を戒めつつ部屋の内側へと開く。

 

 部屋にただ一つある大きなベッドへと視線が吸い寄せられ、

そこに横たわっているであろう人物の姿が見える。

 

「さ、咲夜さん!?」

 

 どうやら、ノックもせずに入ってきて驚いてしまったようだ。

 

「ノックもせずに申し訳ありません。 次からは気を付けます」

 

「あ、いや、別にいいんですが……」

 

 頭を下げて謝罪していると、拓人から歯切れの悪い台詞が聞こえてくる。

 

 ほぼ無意識にどうしたのだろう、と考えて拓人の方を向くと、

とある人物の姿が目に入ってきて、絶句した。

 

 拓人は横たわっている、そこは問題ないのだ。

 

 しかし、両腕にしがみつくようにして、レミリアとフランが寝ていた。

 

 それを意識した瞬間、咲夜の口は言葉を完全に失い、

そして何故か、両目からこみあげてくる火傷しそうなほどの温度の液体を感じる。

 

「――――っ!?」

 

 それを拓人に見られたくなくて、何より自分がどうしてこうなっているのかわからなくて。

 

 入ってきた扉を乱暴に開け、自分が外に出ると同時にまた乱暴に閉め、

自分の能力の事も忘れてがむしゃらに、両目からあふれ出る涙をこぼしながら廊下を走る。

 

  なんで、なんで……なんで私、泣いて……!?

 

 そう考えつつも、走る。

 

 目指すは、自分も妖精メイドも普段から近づかない人気(ひとけ)のない場所。

 

 後ろから扉が開くような音がした気がするが、とにかく走ることのみに意識を集中し、

一つの場所を目指して、完璧で瀟洒なはずの紅魔館のメイドは走った。

 

 

 

 

「――――っ!?」

 

 咲夜が、言葉に表せない声を漏らし、部屋から乱暴に扉を開けて部屋を出ていく。

 

 漠然とその様子を見ていた拓人だったが、あるものを見つけた。

 

 出ていく咲夜の顔からこぼれた、一粒の涙。

 

 その涙の意味は分からなかったが、泣いている人を放ってはおけない。

 

 先ほどやりかけて止めていた能力の使用を再開する。

 

 すると、今までより遥かに短く使用できたのだがその反面、

床と水平にベッドの外へ出てしまったようで、思いっきり下に落ちてしまう。

 

「ゴフッ! い、痛てて……」

 

 とっさの受け身に成功して痛みを最小限に抑え、

痛くなった背中をさすりながら部屋の扉まで歩いて少し乱暴に開ける。

 

 廊下の左右を見渡すと、右側に咲夜が床へ靴を鳴らしながら走り去っていく姿が見え、

背中の痛みを無視して追いかける。

 

 能力を使われなかったのが幸いしたのか、姿を見失わずに廊下を走り階段を上り、

どことも知れない扉の前まで追いかけていた。

 

 この扉の向こう――咲夜が開けた時に夜空が見えたので、屋上にいるのだろう。

 

 その前に、走って乱れた呼吸を壁に手をついて整える。

 

  く、くそ……速すぎだろ……

 

 体力に自信はあった拓人だったが、全力疾走してなお追いつけない咲夜に悔しさを感じつつも、

これからの事を考えながら深呼吸を繰り返す。

 

 なぜ泣いていたのか、全く分からない。

 

 あの時の状況からして、こちらのせいであることは明らかだろう。

 

 だが、泣かせるようなことをした覚えはなく、

女心の欠片も分からない拓人には全然推測できない。

 

 等々考えていると、肩で息をしなくなるまでには落ち着いた。

 

 すぐさまドアノブへと手を掛けて回し、外側へ向けて開く。

 

 その瞬間、そこまで強くはないが夜風が吹いて当たり、

先ほど搔いた汗が冷え、心を落ち着かせる。

 

 予想通り屋上で、見渡すまでもなく、うずくまって肩を震わせている咲夜の姿が目に入る。

 

「…………」

 

 無言で、だが、自分がいることがわかるように少し音をたてながら、

咲夜の傍まで近づいていく。

 

 残り五メートルにさしかかったところで気付いたようで、

立ち上がって両手で目元をぬぐってからこちらに振り向く。

 

「拓人様……先ほどは失礼しました」

 

「いえ、別に気にしてませんよ」

 

 いつもの表情と声色で話す咲夜だったが、目元は泣いていた証に少しだけ赤くなっていた。

 

 ついさっきまで肩を震わせていたのに、こんなにも速く自分を切り替えられるとは、

さすがと心の中で賞賛せざるを得ない。

 

 だが、今はそんなことはどうでもよいのだ。

 

 話の本題を切り出すべく、咲夜に話しかける。

 

「失礼ですが、先ほどは何を?」

 

「……それは、その……」

 

 顔を赤くし、少し顔を逸らす。

 

 そして、何かを決断したような表情を見せ、口を開く。

 

「…………わからない、んです」

 

 しっかいと耳を傾けてなければ、自分の息をする音で消えてしまいそうな声。

 

 何が、と考えるまもなく、咲夜は続ける。

 

「単刀直入に言いましょう。 私は……あなたが好きです」

 

「…………」

 

 何か言わなければ、と口を開くものの、どう返せばいいのかわからない。

 

 結局開いた口をパクパクとさせていると、向こうから話を切り出される。

 

「あなたと初めて会って、素敵だと言われた時からです。

 いわゆる、一目惚れというものです。

 ですが……お嬢様と妹様は、拓人様のことを好かれている……違いませんか?」

 

「え、えぇ……そう、みたいです……」

 

「私は、レミリア・スカーレットの元に付き従う従者。

 いかなる時も、全て主の望まれるままに行動してきました。

 ……お嬢様が望むなら、拓人様との恋路も、今までどおり最大限に支援する。

 そう……決心していました……ですが……!」

 

 顔に両手を当て、手の間から涙をこぼしながら更に口を動かす。

 

「思ってしまうんです……お嬢様や妹様があなたと話していると、妬ましいって、

 駄目だってわかってても、心のどこかで嫉妬してしまうんです……!

 だって、自分の好きな人を……自分から切り捨てるみたいで……

 私、もうどうしたらいいのか……わからなくて…………!」

 

 これ以上言葉を繋げられないらしく、その場に座り込んでしまう。

 

 肩を震わせ、堪えられない小さな嗚咽が雲一つない星空へと消えていく。

 

 その姿は、物凄い苦痛に耐えているようでもあった。

 

 そんな咲夜の傍まで歩き、屈んで話しかける。

 

「顔……上げてください」

 

 そう話しかけるも、両手で顔を覆って嗚咽を漏らし続け、

首を横に振って否定し続けている。

 

「一つ聞きます……咲夜さんはどうしたいですか?」

 

「私、私は……あなたと、こ、恋を……したい……!

 だけど、お嬢様や、妹様もあなたが好きで……

 諦めるしかない、けど……諦めたくなくて……!」

 

 足元へいくつもの涙を落としながら、咲夜は言葉を無理矢理につなげてくる。

 

 自分は恋をしたこともなく、また恋をされることもない。

 

 なんとかしてあげたいと思う一方、無責任に言ってしまってはいけないとも

心の奥で理解している。

 

 深呼吸一回分の時間を使い、これから述べるべき台詞を考え、

その場に立ち上がって夜空に輝く月を見ながら咲夜に話しかける。

 

「迷っているなら、少しアドバイスをしましょう」

 

「…………」

 

 咲夜は無言だったが、こちらの話に耳を傾けてくれている、

という雰囲気を作ってくれたので、話を進める。

 

「知性あるものは、必ず迷うときがあります。

 そんな時の最善の行動は、周りに問いかけることです。

 自分は合っているのか、それとも間違っているのかを。

 一時の感情に流されるまま、というのもないというわけではありませんが……

 私のように後悔するかもしれない、ということを忘れないでください。

 ……よく考えて、その上で行動してください」

 

 今、自分が言えるであろう最大限のアドバイスだが、

後半は実体験による警告でもある。

 

 一時の殺意に負け、十四歳にして人を殺めてしまった自分。

 

 幻想入りして霊夢達に受け入れて貰うまでは、後悔だらけだ。

 

 叔父と叔母の時も同じような過ちを犯しかけ、結局は自責の念に駆られた。

 

 そんな過ちを繰り返して後悔するのは、自分一人だけで十分だ。

 

「…………貴重な助言……ありがとうございます……」

 

 嗚咽を堪え、咲夜は真っ赤な顔を上げる。

 

「少し……私のわがままを、聞いてもらってよろしい、でしょう、か……?」

 

「私に、出来ることなら」

 

 そう言った後、咲夜は深呼吸をして荒くなっていた息を整え始める。

 

 そして、ほんの少し落ち着いたところで、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。

 

「私を……抱き締めて、くれ、ませんか……?

 そうしたら……頑張れる気がするんです……」

 

 聞いた瞬間に何とか断ろうかと思ったが、言葉の後半で拒否が出来なくなってしまった。

 

  ……はぁ、これじゃあいつらの言う通りの女たらしじゃねぇか……

 

 考えはするものの後には引けず、既に咲夜は立ち上がって準備は出来ているようだ。

 

 腹をくくり、両手で抱き締められる距離まで近づく。

 

「そ、それでは……失礼します……」

 

 一応断りを入れてから両脇から両腕を通し、

左手を左肩、右手を右腰へと持っていき、弱めに抱き締める。

 

 その瞬間、今まで嗅いだことのないほどの柔らかい匂いを鼻で感じ、

少し理性が飛びそうになる。

 

 そんな状況であることを知らない咲夜は、拓人の背中に両手を回してきた。

 

「もっと強く……お願いします」

 

 咲夜の要望に行動で答えるべく、体を強く抱き締める。

 

 匂いが強くなり、少し頭がくらくらしてきた。

 

「大きいですね……暖かいです……」

 

 こちらの事情も知らず、昨夜は胸板へと頬を押し付けてくる。

 

「……私でこんなにしてくれましたか?」

 

 右手をほどき、左胸――心臓の真上を指先でつつかれる。

 

 いつの間にか身勝手な心臓は、心情を素直に反映して高速でポンプ運動を繰り返していた。 

 

「……まだ、こういった経験は浅いものでして……」

 

 苦し紛れの弁護を反射的にして、何とか暴れている心臓をなだめようと試みるが、

今のこの状況では無理だった。

 

 諦めて時間の流れに身を任せる。

 

 そうすること何分か過ぎた頃、咲夜が口を開く。

 

「…………ありがとうございました。 もう、大丈夫です」

 

 やっと許しが出たので、不自然に思われない程度の速さで腕をほどく。

 

 抱き合っていた数分間で、咲夜の顔はすっかり元通りになっていた。

 

「……さぁ、拓人様。 夜は遅いですし、そろそろ寝ては如何でしょうか」

 

「…………そうですね。 一人で寝たいので、適当な部屋へ案内して貰えますか?」

 

「お嬢様方と一緒に寝られては……

 起きた時にいないと、何かと心配なさると思いますので」

 

 先程まで自分のことに悩んでいたというのに、もう他人に気を使えるほどに落ち着いたらしい。

 

 確かに咲夜の言い分ももっともではあるが、今日ばかりは逆らうことにする。

 

「二人だけにさせてあげたいんです。

 何百年ぶりに打ち解けあえた姉妹、ですから」

 

「そう、ですか……一緒に、お嬢様方の様子を見に行きませんか?」

 

「えぇ、分かりました」

 

 拓人の返事と共に、屋上から一緒に館の中へと戻り、

駆け上がってきた階段を降り、寝ていた部屋の前へとたどり着く。

 

 音を立てないようにゆっくりと扉を開く。

 

 部屋の真ん中にある唯一の寝具へと目を向ける。

 

「お嬢様……妹様……」

 

 そこにはお互いに手を取り合い、仲睦まじく寝ている姉妹の姿があった。

 

 やはり、血の繋がりは時間では断ち切れない、と心の底から思えてくる。

 

  俺も……妹が生きてたら……

 

 もし今も生きていたなら、目の前の二人と同様に仲良くしていけたのだろうか。

 

 しかし、そんなことは過去の話だ。

 

 今は今、と考え直し、ただひたすらに前を向いて進み続けるしかない。

 

 そんなことを二人を見ながら考えていること数十秒。

 

「咲夜さん、そろそろ出ましょう」

 

「分かりました」

 

 部屋を出て、また音もなく扉を閉める。

 

「それでは、拓人様は隣の部屋をご利用下さい。

 あと、何かありましたら遠慮なく呼んでください」

 

「えぇ、分かりました」

 

 咲夜に、示された隣の部屋の扉を咲夜に開けてもらい、中へと入る。

 

 レミリア達が寝ている部屋と内装は全く一緒だ。

 

「お休みなさいませ、拓人様」

 

「咲夜さんも、お休みなさい」

 

 そう言うと咲夜が扉を閉め、部屋に一人だけとなる。

 

  なんか疲れたな……

 

 そう感じ、特別何もせずにベッドへ横になる。

 

 その瞬間に猛烈な睡魔が拓人を襲い、瞼が重みを増す。

 

 対して抵抗もせずに瞼が閉じきると、そのまま拓人は深い眠りに落ちていった。




 うわ~なんだこのひどい出来は~

 はい、というわけで第十九話でした。

 これから先は本編とは全く関係なくだらだらと長文が続くので、飛ばしたい方は飛ばして
もらっても結構です。暇がある方は読んでいってください。

 ちなみにこの話ができたのは約1ヶ月前ですが……え、遅い? そこは勘弁してくださいお願いします……。今見返してみると……『第一話から書き直したい!』と切実に思っております。 
駄文、駄文、駄文の連続でしたよもう……

 原因はほとんど深夜に書いていたからだと思います。深夜テンションって怖いですね。あんな
駄文を平気で投稿できたりするんですから。もしかしてこれから出す話も後々黒歴史並にひどい
出来だと思うようなことがあるではとビクビクしております。

 まぁですが、一応投稿はしたので書き直しはしません。多少なりとも第一話の頃よりは文章力が上がったと自負していますので、『あ、地味に上手くなってるな』と思っていただくために残そうと思います。上手くなってないとか、むしろ下がったなと思った方は、メッセージでも感想でも
ビシバシ言って頂ければ、作者はありがたくお言葉を頂戴いたします。

 私が最近書いているもう一つの作品を読んでいる方はわかるかと思いますが、上手い下手は
ともかく作風がもうほんとガラリと変わっております。今回はなんとか今までのを真似てみましたが、書き溜めている分を過ぎたら一気に変えます。私は良くも悪くも変わってしまったのだと
思ってください。そして新しい方の作風が気に入ってもらえれば幸いです。

 そうでした。今回は挿絵がなかったのですが、『依頼? すまんな、忘れていたよ。ははっ』と滝村氏に目をそらされながら言われましたので無理やり伸ばしたのがこの十九話です。二十話
には載せますのでご安心ください。

 ふぅ……長文に目が疲れた方がいらっしゃるとは思いますが今回はもう終わりです。

 次回は多分六月上旬ですかね。楽しみに待っていただけたら幸いです!
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