東方壊命録   作:鼠返し

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 どうも、鼠返しです。

 第二話の後書きどおり、やわらかくしてみました。

 これからは、だいだい五千五百~七千文字くらいで書いていきたいと思います。

 それでは、急展開&誤字脱字が大丈夫な方はどうぞ。


第三話 能力発覚

 気付くと拓人は闇の中に立っていた。

 

 そこは、自分以外には誰も何もなく、冷たい場所だった。

 

「……ここ、は?」

 

 辺りを見渡してもそこに、広がるのは闇ばかり。

 

 呆然と立っていると正面から人が五人ほど現れる。

 

 現れた人たちは拓人の父、母、妹、叔父夫婦だった。

 

 今は亡き拓人が愛する家族たちは次々に拓人に呼び掛ける。

 

「拓人、来い」

 

「おいで、拓人」

 

「お兄ちゃん、早く早く!」

 

「拓人君、おいで」

 

「たっくん、おいで」

 

 皆が一様に手招きをしている。

 

 失ってしまった家族を目の前にして涙を流す。

 

「あぁ、あぁ……

 父さん、母さん、皆……」

 

 泣きながら手を伸ばす。

 

 失ったものをもう一度手にするために。

 

 手を伸ばしても届かず、愛する家族の元へ歩み寄る。

 

 あと十メートル、五メートル、一メートル……

 

 そして手が届き、届いた瞬間に皆を抱き締める。

 

 もう二度と失わないように、無くした幸せを取り戻すように。

 

 泣きながら抱き締め続ける。

 

 もう忘れかけていた、人の、家族の暖かみを感じながら泣き続けた。

 

 いつしか家族もお互いを包み込むようにしている。

 

 いつの間にか、辺りは光に満たされていた。

 

 拓人や家族が光に溶けていく。

 

 体だけでは無く、意識すらも溶けていくようだった。

 

 そして、暖かみを残して拓人も、家族も溶けた。

 

 最初とは違い、家族の暖かさを残した光に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん、むぅ」

 

 朝日がうっすらと出かかっている時間に、拓人は目を覚ます。

 

 ゆっくりと目を開けると瞼が濡れていることに気づいた。

 

「……なに考えてるんだよ」

 

 あのときから家族のことは忘れはしないが、

もう家族のようなものを求めないと決めたはずだった。

 

 しかし、あのような夢を見るということは、

心のどこかでは求めているのかもしれない。

 

  ……あんなこと話したからかな。

  こんなことで泣くなんてまだまだだな。

 

 いつまでもこんなことを考えても仕方ない、と思い、

靴を履いて、庭に出ると毎朝日課としている体操を始める。

 

「いっち、に、さん、し」

 

 足、腰、体、腕、首の順番に時間をかけてほぐしていく。

 

 そして、柔軟運動を終えると、

高校にいたころの日課の練習として弓を取ろうとする。

 

 しかし、そこまで思ったところであることに気付き、

無意識に声を漏らす。

 

「……あ、荷物置いてきた」

 

 家に、ではない。

 

 昨日、巨大蜘蛛と戦った時に持っていた荷物を、

攻撃をくらったときに落としたのに気付かず、

そのままおいてきてしまったのだ。

 

  取りに行きたいんだが……

  またあんな奴にあって霊夢に迷惑をかける訳にも……

 

 そんなことを考えながら部屋に戻ろうとしたが、

部屋のすみにごちゃごちゃしたものを見つける。

 

「あれは……俺の荷物?

 一体誰が……そうか、霊夢か」

 

 あのあとに取りにいってくれたであろう霊夢に感謝し、

荷物の中に埋まっていた自分の身長を遥かに超える長さの弓を取り出す。

 

 そして、矢を一本取りだして庭に出る。

 

 矢を弓にあて、まず三分の一程引く。

 

「はぁ~~~、すぅ~~~」

 

 一呼吸おき、目一杯に弓を引き絞る。

 

 そして、そのまま止める。

 

 拓人の持っている弓は、

矢の速度をあげるためかなりきつく弦を張っているため、

少し止めるだけでもかなり力がいる。

 

 そんな弓を引き絞ったまま、

十秒、三十秒、一分と時間が経過していく。

 

 そして、五分がたった頃、

近くにあった木にめがけて放つ。

 

 スコーン、と心地よい音をたて矢は木に突き刺さり、

矢を放った姿勢のまま一呼吸おく。

 

 そして、弓をおろし矢を取りに行こうとすると、

後ろから突然声が掛かってきた。

 

「へぇ、なかなかやるじゃない」

 

「なんだ、霊夢か。

 いつからそこにいたんだ?」

 

「あんたがそれを構えた時からよ」

 

「結構待たせたな、ごめん。

 それと、おはよう」

 

「えぇ、おはよう」

 

 一応朝の挨拶を交わしたところで、

霊夢にお礼を言わなければいけないことを思い出し、

部屋の中に入っていく霊夢に声をかける。

 

「あぁ、そうだ霊夢」

 

「ん、何?」

 

「俺の荷物持ってきてくれただろう。

 ありがとな、霊夢」

 

「別にお礼なんていいわよ。

 それより、そろそろ朝御飯にしましょ」

 

 ふと空を見上げると、朝日は大分のぼっており、

庭を明るく照らしている。

 

「あぁ、わかった」

 

 そういって、木に刺さった矢を取りに行き

朝御飯を食べに部屋の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝御飯を食べ終わり、

これからどうしようか、と考えていると霊夢から声がかかる。

 

「そういえば、あんたさ。

 体、痛くないの?」

 

「体……?」

 

 いきなりの質問に戸惑う拓人だったが、

昨日自分に何があったかを思い出した。

 

 取り敢えず右手で胸の辺りをさわってみるが、

痛みは無く、もとから骨なんか折れてなかったみたいだった。

 

「なんか……治ってる」

 

「え? 治ってるですって?」

 

「元からなかったみたいに、綺麗さっぱり」

 

  おいおいどうなってんだよ俺の体……

 

 と考えても何も始まらないので、

取り敢えず話を切り替えてこの世界の情報を集めてみる。

 

「まぁ、治ったからいっか。

 取り敢えずさ霊夢、ここはどこなんだ?」

 

「ここは、忘れ去られた者が集まる場所、幻想郷よ。

 人間、妖怪、幽霊、神なんかが住んでるわ」

 

 ここまでなら原作知識のある拓人は知っている。

 

 だが、原作のゲームしかあまりしておらず、

二次創作など含めて、詳しいことはあまり知らないのである。

 

「なるほど、幻想郷ね。

 ところで、昨日霊夢が言ってた『がいらいじん』ってなんだ?」

 

「『外来人』というのは、

 外の世界からやって来た者のことよ。

 ……そういえば、どうやってここまで来たの?」

 

「家を出て、山にはいったら霧に覆われて、

 適当に歩いていたらここについたってわけ」

 

「あのときちょっと結界が緩んでたからね。

 たぶんそのせいだわ」

 

「結界……?」

 

 どっかで聞いたような……と考えていると、

霊夢が詳しく説明してくれる。

 

「まだ話してなかったわね。

 さっきの結界ってのは、私が張ってる博麗大結界のことよ。

 この結界は幻想郷を取り囲むようにして張ってるわ」

 

 こうして、この他にもいろいろなことを聞き出せた。

 

 その一、この世界では外の世界の常識は通用しないこと。

 

 その二、幻想郷の有力者は能力を持っていること。

 

 その三、この世界では人間は霊力、という力を持っており、

それに対応するように、魔法使いなら魔力、妖怪なら妖力、

神なら神力、といった四つの力があること。

 

 そして、質問をしていて重要なことがわかった。

 

 すなわち今は、『紅魔郷』より前の時代である。

 

 これらのことを必死に頭にいれようと

うんうん唸っていると霊夢が質問をしてくる。

 

「ねぇ、ここまで話しておいてなんだけど、

 外の世界に戻りたいとは思わないの?」

 

 霊夢が今更な質問をしてくるが、帰りたいとは思っておらず、

帰ったところで何もできないことはよくわかっていた。

 

 ならばこの世界で生きたほうがよいと思ったのだ。

 

「いや、帰る気はないよ。

 帰ったところで何にもないし」

 

「そう、なら決まりね。 ようこそ、幻想郷へ。

 これであなたもここの住民よ」

 

  そんな簡単にいいのか……?

 

 とそんなことを言う暇もなく更なる質問をしてくる。

 

「あなたの荷物に入っていた奴なんだけど、

 あの太い棒なんなの?」

 

 すっ、と右手が持ち上げられ指差したのは、

中学の間二年半使い続けた竹刀だった。

 

「ん、あれか?

 あれは竹刀って言うんだ」

 

「しない、ね」

 

「そう。

 外の世界ではこの竹刀を使った戦いみたいなのがあるんだ。

 こんな風に使ってさ」

 

 そういって、荷物の中に刺さるようにして立っていた竹刀を抜き、

霊夢の前に横に立って中段に構える。

 

 あのときの記憶を思い出さないようにしながら、

ゆっくりと息を吐く。

 

 そして、一気に前に踏み込み、

竹刀を大上段に振りかぶり、一気に降り下ろす。

 

「セエェェイ!」

 

 ぶんっ!と空気を裂く音が部屋中に響き渡る。

 

 どうだ、とばかりに霊夢を見るが、

その顔は口をポカンと開けて固まっている。

 

 声が大きすぎたかな、と思い取り敢えず謝ってみる。

 

「ご、ごめん。

 声大きかったかな」

 

「いやいや、そうじゃなくて」

 

 声じゃなかったらなんだろうと考えると、

 霊夢の口からとんでもない言葉が出てくる。

 

 

 

「……なんであんた、霊力使えるのよ?」

 

 

 

 一瞬何のことかさっぱり理解できなかった。

 

  霊力って人間が持ってる、あれだよな……

 

 等と頭のなかで考えながら話を切り返す。

 

「俺が、霊力が使える?

 でも、さっき霊夢が言ったように

 使える人ってあんまりいないんだろ?」

 

「だから傷が……。

 いや、でもいくらなんでも……っ! もしかしたら……!」

 

「あの~、霊夢さん? もしも~し」

 

 霊夢は自分の世界に入り込み、何かぶつくさ言っていたようだが、

いきなり目をいきなり見開くと、顔を上げまっすぐこちらを見つめてくる。

 

 それに驚き拓人は身をのけぞらせながら口を開く。

 

「ど、どうした霊夢?」

 

「あなた、蜘蛛倒したわよね。

 どうやって倒したの?」

 

「そりゃあ今持ってるこの竹刀で……」

 

 ここまでいって言っていることが違うことに気付く。

 

 あのとき蜘蛛の頭を真っ二つに切り裂いたのは、

今持っている竹刀ではなく、いつの間にか握っていた刀である。

 

「……いや、今ここには無いけど、

 いつの間にか持ってた刀でやったんだが」

 

「う~ん……

 勘なんだけど、あなた、あいつを切るときに、

 『刀を持ってる』って思ってなかった?」

 

「なぁ、お前の勘は必ず当たるのか?」

 

「今のところ、良い予感も悪い予感も

 すべて当たってるわ」

 

 拓人は頭の中に『霊夢の勘は百発百中』

と追加情報として覚えておき、それかかっていた話を戻す。

 

「それで、思ってたことがなんだって?」

 

「ねぇ、一つ試してみてほしいことがあるんだけど」

 

「あぁ、いいぞ」

 

「自分の手の中に、そうねぇ……

 茶碗があるって強く思ってみて」

 

「茶碗、か? まぁ、いいけど」

 

 霊夢に言われ、右手を少し前に出し、

茶碗があるように思ってみるが、何も起こらない。

 

「なぁ、何も起こらないぞ」

 

「ダメね。 もっと集中して。

 本当にここにあるんだって感じでやってみて」

 

「お、おう」

 

 一体霊夢は何がしたいんだか、と思いつつも

先程よりも集中してみる。

 

 いつも使っていた自分の茶碗を思い浮かべ、

それを握るような形を作る。

 

 持ったときの重さ、握ったときの感触。

 

 そして、茶碗を持っている自分。

 

 そこまで思ったところで目を開けてみる。

 

 すると、今までの人生のなかで、

体験したことがないような衝撃に拓人は襲われた。

 

 なぜなら、拓人は今、しっかりと茶碗を『握っている』からだ。

 

 その茶碗は家においてきたはずの、

自分の茶碗そのもののように思えた。

 

「な、なんで茶碗が、ここに……!?」

 

 そこまでを口にしたとたん、茶碗は

細かな光の粒になり手の中からこぼれ落ちる。

 

 その現象は、あのとき持っていた『刀』の時と、全く同じだった。

 

 しばらく呆然と立ち尽くし、

握った手を開いたり閉じたりしている拓人だったが、

霊夢の独り言で止まりかけていた頭の回転を再開する。

 

「なるほど、なるほどね」

 

「なぁ、一人で納得しないでくれるか?

 話がぜんぜんわからないんだが」

 

「よし、拓人。 次はあの木よ」

 

「おい、さっき一つって言わなかったか?」

 

「いちいち細かいことは気にしない。

 あの木の……あそこのでっかい枝あるでしょ。

 あれをさっきみたいに思って落としてみて」

 

「さっき一つって言ったじゃん……」

 

 文句を言いながらも先ほどと同じように、

枝が落ちるように目を閉じ、想像する。

 

 枝が断ち切られ、地面に落ちる姿を思い浮かべる。

 

 そして、よりいっそう強く想像する。

 

 元々、いじめられっ子だった拓人はいじめから耐えるために、

『痛くない、こんな傷、痛くない』

 等と、自己暗示をかけるのが得意だった。

 

 そして、様々な武道を通して培った集中力も全力で使う。

 

 思う 想像する おもう そうぞう おもう そうぞう……

 

 すると、何かが地面に落ちる音がした。

 

 恐る恐る目を開けてみると、

先ほどまで当たり前に付いていた枝が、きれいに落ちていた。

 

「すげぇ……

 これ、俺がやったのか……」

 

「ふ~ん……これで分かったわ」

 

「わかったって、何が?」

 

「それは、あなたが……」

 

 そして一呼吸置き、言い放つ。

 

「『能力』を持っているということよ!」

 

  え?

 

「えええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 そして拓人は、再び驚愕に見舞われる。

 

 いきなりの事に驚いたが、この世界の説明について

能力の事も聞いたのだが、矛盾している点が見つかり

霊夢に指摘してみる。

 

「お、俺に能力!?

 いやいや、ありえねぇだろ。

 第一、幻想郷の有力者しか能力持ってないんだろ?」

 

「えぇ、そのとおりよ。

 と言うより、持っている霊力とか魔力とかが多ければ

 自然に能力なんて付くんだけどね」

 

  あれ? 能力ってこんなに簡単に手に入るものだっけ?

  原作の設定ってどうだったっけなぁ……

 

 そう思いつつ、拓人は霊夢にたずねる。

 

「で、俺の能力はどんなやつなんだ?」

 

「うーん、そうねぇ……

 『想像を具現化する程度の能力』ってところかしら?」

 

「……うわ、名前からしてチート過ぎる」

 

「チー、トってなに?」

 

「反則じみてるってことだよ」

 

  いろいろとおかしいぞ俺。

  どうした、人間卒業したか?

 

 本気で人間卒業したのかと落ち込んでいる拓人に向かって、

 霊夢が付け足しをする。

 

「たぶん、骨折がすぐに直ったのは能力のおかげよ。

 骨折れてる、なんて自覚なかったでしょ?」

 

「まぁ、確かに……」

 

 ますます自分が本当に人間なのか信じられなくなった拓人だった。

 

 そんな拓人に霊夢が一つため息をついて話しかける。

 

「はっきり言ってうらやましいわ」

 

「へ? なんでだ」

 

「だって、思っただけで物が出せたりするんでしょ?

 だったら、食べ物だとか、お金……と、か……」

 

 霊夢の言葉が急速に速度を失っていき、

真剣に何かを考えているような表情を作る。

 

  い、いやな予感が……

 

 そんな考えが当たったのか、

霊夢がキラキラと光らせた期待するような目を向けてくる。

 

「ねぇ、拓人。

 お願いがあるんだけど」

 

 言い出される前にこちらから仕掛けてみる。

 

「金は出さないぞ」

 

「え? 何で分かったの!?

 私まだ何も言って……」

 

「お前の目と表情が全てを物語っている」

 

「私、そ、そんな顔してるかしら?」

 

「あぁ、してる。 十分してる」

 

 まったく呆れたやつだ、と思いながらその場に横になる。

 

「あれ、どうしたの?」

 

「なんかいろいろと疲れた。 少し休む」

 

「あ、そう。

 それじゃあ私はそこらへん見てくるわね。

 昼ごろには戻るわ」

 

「あぁ、分かった。

 いってらっしゃい」

 

「えぇ、行ってくるわ」

 

 そういうと、庭においていた草履を履くと、

神社から飛び出していった。

 

「……さて、休む前に能力の検証でもしますかね」

 

 そういうと拓人は、自分の能力の検証を始めた。

 




 第三話、どうだったでしょうか。

 作者的にはまぁまぁですね。

 もうちょっと文章力が欲しいところです……

 それではまた次回、お楽しみに!
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