ASーエンジェリック・ストラトスフィアー   作:枯田

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第6話諒兵編「天の御遣い」

専用機持ちタッグトーナメント当日。

レオは鈴音と共に、第一試合を観戦していた。

一夏、簪ペアとラウラ、シャルロットペアの試合である。

レオはこの後、セシリア、箒ペアと戦うことになっていた。

「更識さんのサポートは見事ですね」

「そうね。一夏は通常の攻撃手段が刀一本しかない。荷電粒子砲も零落白夜もエネルギー使いすぎるしね。当然、簪がサポートに回ることになるけど、一夏の攻撃をうまく生かしてるわ」

「ただ、ラウラとデュノアさんのコンビネーションも見事です。あそこまで息が合うなんて……」

「同室の強みもあるんでしょ。そういう意味ではいいタッグパートナーだわ」

(パートナー、か……)と、同様に試合を観戦していた諒兵は、鈴音の言葉に含まれていたパートナーという一言に何故か寂しさを覚えた。

自分のASとして共に戦ってきたレオの口癖を思いだしたからだ。

鈴音との訓練でレオは前衛としての戦い方を学び、鈴音ともいいコンビネーションを見せられるようになっている。

今の自分はあくまでISだ。

サポートはできても、かつてのように対話できる関係ではない。

ただ、だからといって記憶を取り戻すべきだろうか、と、考えていた。

ここまでこの世界に馴染んでいるなら、レオはこの世界で本気でヴァルキリーを目指してもいいのだ。

そのサポートをするだけの存在でも、別にいいのかもしれないと思う。

それに、一夏の運命を弄ぶ存在も気にかかる。

一夏をただの人間だと証明する。それ自体は間違っていないはずだ。

ただ、それだけで大丈夫なのかと思う。

中途半端な状態で、レオを連れ戻し、元の世界に帰っていいのだろうかと悩んでいた。

 

ビーッという音と共に第一試合が終了した。

結果は、一夏、簪ペアの勝利だった。

荷電粒子砲を牽制に使い、エネルギーをゼロにする覚悟で零落白夜による特攻でラウラを落とした一夏は、シャルロットに向かう。

そんな一夏を囮に、簪がシャルロットを落としての勝利となった。

方法としてはベターかと諒兵は思う。

本来ならば、AICに対しては、ラウラが認識しきれない数で押し切るのが定法だろう。

セシリアのようにビットを使って四方八方から撹乱すると、ラウラは全てを止めきれないからだ。

同じ方法が諒兵にも使える。

それができない一夏と簪のペアならば、一瞬の隙を作って一撃必殺しかない。

簪の打鉄弐式ならば、同時砲撃という手段もあるが、決め手に欠ける。

(そう考えりゃ、一番うまい手か)

と、諒兵は感心するものの、ラウラとシャルロットのペアとはマジメに戦ってみたい気もしていたので、少々残念ではあった。

「どお?」

「と、いいますと?」

「ラウラとシャルロットだと勝ち目薄かったと思うんだけど」

鈴音の問いかけに、なるほどとレオが納得する。

自分自身である赤鉄とレオは、完全な近接戦闘型。

そうなるとラウラに対しては一夏のやり方が一番近いが、何しろ諒兵こと赤鉄という機体には強力な攻撃手段がない。

鈴音にサポートしてもらいながら、懐に飛び込んで連撃を繰り出すしか手がない。

そういう意味では、ラウラがここで倒されたのはありがたいともいえる。

しかし。

「残念です。ラウラとはマジメに戦ってみたかったので」

「そういうと思ったわ」

「でも、今は目の前のオルコットさんと篠ノ之さんに集中しないとですよ?」

「わかってるわ。セシリアも最近になって偏光制御射撃を修得したし、けっこう厄介よ」

(あり?俺らんときは入学してすぐに使ってたけどな)

そのあたりは、やはり多少のズレがあるのかと諒兵は考える。

「それに、箒はあんたにリベンジしたいみたいだし」

「逆恨みでしょう」

「ま、そうなんだけどね」と、鈴音は苦笑する。

自信満々で出てきて返り討ちにあっただけなので、逆恨みというのも間違いではない。

だが、箒にしてみれば、レオは自分に恥をかかせたいけ好かない女に見えるのだろう。

もっとも、恨まれたほうはたまらないとレオはため息をつく。

(まあ、しょうがねえだろうよ)

やはり世界が違うからといって、そう性格が変わるわけではないらしいと諒兵は苦笑してしまった。

そして。

「前衛、頼むわよ」

「サポート、よろしくお願いします」

お互いにそう声をかけたレオと鈴音は、ピットに上がる。

しかし、試合は行われなかった。

何故なら、レオと赤鉄、すなわち諒兵がアリーナの空へと飛び出した後、異変が起きたからだ。

「えっ、何これ?」

レオに続き、鈴音がピットから出ようとすると、いきなりシールドが張られたのだ。

完全に、アリーナに入れないようにされてしまっていた。

「織斑先生っ、ピットから出られないんですけどっ?!」

[何?]

そう答えた千冬は、数分後に鈴音に再び通信してくる。

[篠ノ之とオルコットもピットから出られん。凰、いったん控え室に戻れるか?]

「はい、そっちは大丈夫みたいです」

[獅子堂には待機を命じた。とにかくお前たちが出られるようにならなければ試合にならんからな。こちらでアリーナの状況を調べる。その間、待機だ]

そう命じられ、鈴音はいったん控え室に戻る。

この状況、以前はここではなかったが似たような経験がある。

アリーナに一夏と二人で閉じ込められたときだ。

そうなると、と、そこまで考えて鈴音は青ざめ、すぐにアリーナの中が見られる場所まで移動する。

すると、そこで箒とセシリアに遭遇した。考えることは同じであったらしい。

「箒っ、セシリアっ?!」

「お前も出られなかったのか」

「ピットの故障でしょうか?」

「……もしかしたら」

そこまで口に出した後、鈴音はドーンッという轟音が響くのを耳にしたのだった。

 

 

目の前に現れた三機。しかし、その姿は本来ここに来るはずだった三機とは似ても似つかない。

もっとも、諒兵はその機体を覚えていた。

(あんときの無人機かよッ!)

自分とレオの目の前に現れたのは、以前、一夏と共に倒した無人機、この世界でゴーレムと呼ばれる機体だった。

(チッ、こいつらってことは篠ノ之の姉貴が『動かされた』ってことか)

以前、白式のコアと話した内容を思い返せば、篠ノ之束は端末に過ぎないはずだ。

意思すらも誘導された結果の行動なのだろう。

まさかそこまで邪魔だと思われているとは、正直考えていなかった諒兵である。

「確か、代表戦のときの……」

どうやらレオにはそのときの記憶はあるということらしい。

ならば、危険性も多少は理解できるはずだ。

諒兵がそう思っていると、レオはすぐに三機のゴーレムから離れるように一気に飛び立った。

「確か、あの機体には荷電粒子砲がついてたはず」

(そんな名前だったっけか)

正確な名前など覚えてるはずもない諒兵である。

ただ、ゴーレムが遠距離攻撃可能な機体であることは覚えていた。

(アイツのビームはけっこう威力があった。この身体は、耐えられるのか?)

今は一機のISに過ぎない諒兵。

かつて戦ったときは、レオの助力があってこそ圧倒できた。

今はレオを守る鎧。

しかし、どれほどの力があるというのか。

(いや、あのときだってレオがいたから、一夏と白虎ももいたから勝てた。今の俺一人で何ができる?)

第2世代の試作機となっている今の自分に、レオを守りきるだけの力があるのだろうか。

そんなことを考えていると、三機のゴーレムがそれぞれこちらに向けて荷電粒子砲を放ってくる。

「くッ!」

(チィッ!)

ゴーレムの荷電粒子砲は二門。襲いかかる閃光は六つ。

スレスレで必死にかわすレオだが、今の諒兵の身体である赤鉄とゴーレムでは機動力も違う。

めくら撃ちではなく、こちらの逃げ場を殺ぐように放たれてくる攻撃は確実に高度な戦術パターンをプログラミングされていた。

それでも。

「せぁッ!」

レオは懐に飛び込んで攻撃を裁いてのけた。

腕が長い分、懐に飛び込めば攻撃が難しいと判断したのである。

それは確かに正しい。

「うあぅッ?!」

ただし、一対一ならばという前提がつくのだが。

「ためらわずに攻撃してくるなんてッ?!」

(違うッ、相手はプログラムだレオッ!)

この世界の束が作ったゴーレムが、もとの世界の無人機と同じならば、AIプログラムによって動いているに過ぎない。

効率的な手段を選択するように動いているのならば、味方の被害など気にする理由がないのだ。

一機の懐に飛び込んだレオの背中に、強力な打撃を与えてくるなど当然のことである。

むしろ、荷電粒子砲を撃ってこなかっただけ運が良かったといえるだろう。

現状を理解したレオは、このままではまずいと、すぐに離脱する。

しかし。

「きゃあッ?!」

逃げ切れず、身体を鷲掴みにされたレオは、そのままアリーナのシールドに叩きつけられた。

(くそったれッ、俺が身体を動かせりゃあッ!)

この世界に来て数日、今日ほど自分の身体を動かせないことを悔しく思ったことはない。

できるのはレオの動きをサポートすることだけ。

レオがうまく動いてくれないと、諒兵には何もできないのだ。

ダメージを軽減しようと姿勢を整えようとしても、まずレオが動いてくれないとどうしようもない。

せめて、誰か一人でも味方がいれば何とか戦えるだろうが、おそらく誰もアリーナには入ってこれないだろう。

(ふざけんなッ、このままレオをズタボロにされてたまっかよッ!)

そのまま叩きつけられるなら、ゴーレム三機をまとめて破壊できそうなほどの怒りを諒兵は抱いていた。

 

 

一方そのころ。

「千冬姉ッ、アリーナのハッキングは解除できないのかッ?!」

「今やっているッ!」

アリーナのモニター室にて、一夏が千冬に詰め寄っていた。

コンソールの前では真耶が必死にキーボードを叩いているが、その表情は芳しくない。

外を見れば、観客席の生徒たちは三機のゴーレムに翻弄されるレオの姿を見て、悲鳴を上げている。

たった一人の少女が嬲られる姿はあまりにも凄惨過ぎるのだ。

「このままじゃッ、あの子殺されるぞッ!」

「わかっているといっているッ!」

互いに声を荒げる一夏と千冬。

今できることがそれしかないのだから、どうしようもないが、あまりに不毛な時間だった。

「以前のハッキングより強固だ。こちらの攻撃をまったく受け付けん」

(確実に仕留めようとしてるとしか思えん。束、お前の仕業なのか)

と、思わず考えてしまったが、千冬は必死に呑み込んだ。

本当に束の仕業だとするならば、こうまでする理由がわからないからだ。

優秀とはいえ、ただの一般生徒。束が敵視する理由がない。

しかし、ゴーレムは束にしか作れないはずだった。

そうなると、束がレオを狙っているとしか考えられないのだ。

「もういいッ、シールドをぶち破るッ!」

「待て一夏ッ!」という千冬の制止を振り切り、一夏はモニター室を出て行く。

外で待っていたのか、簪やシャルロット、そしてラウラを引き連れて。

そのすぐ後、千冬の携帯が鳴った。表示された名前を見て、千冬も真耶に後を任せ、モニター室を出る。

電話の主と話をするためだ。

「お前の仕業か」

「名前くらい聞いてよ♪」

「答えろ」

「……あいつをぶっ壊さないと世界が壊されるからね」

「何故、獅子堂をそこまで危険視する?」

そう千冬が問い詰めると、電話の主はため息をついた。

理解していないと考えたらしい。

「私はぶっ壊すっていったよ」

「何?」

「アレはどうでもいいの。問題はあのISモドキ」

その言葉で、電話の主が何を敵視しているのか、千冬にも理解できた。

レオではなく、赤鉄こそが狙いなのだ。

「赤鉄がどうかしたのか?アレは欠陥機だぞ」

「違うよ。あいつはISじゃない。もっとおぞましい何かだよ」

「おぞましい?」

「今、あいつを壊しておかないといっくんが壊される。だからここで壊す。邪魔しないで」

何故、一夏が壊されるなどというのだろう。

千冬には到底理解できなかった。

ただ、電話の主は赤鉄がISではなく、別の何かであることを漠然と感じてはいるものの、何なのかは理解していないらしい。

ただ、間違いなく自分たちの敵だという。

「いったいどうしたんだ、束?」

「どうもしてないよ。でも理解できる。あいつはこの世界にいらない。いちゃいけないんだ」

その言葉を最後に切れた電話を見つめながら、千冬は呆然としていた。

 

 

鈴音、箒、セシリアは観客席に出てすぐ、アリーナのシールドに攻撃を始めていた。

さすがにこんな状況を見過ごして置けるわけがない。

箒とて、レオに対し思うところはあるものの、こんな非人道的な光景を前に放っておけるほど、薄情なわけでもなかった。

ただ。

「おかしい、シールドが強すぎる……」

「強化されているというんですのっ?!」

紅椿の最大攻撃すら、アリーナのシールドは耐えてみせた。

本来なら、そこまでの力はないはずだし、何より紅椿は単純な性能なら最高のISである。

その攻撃にすら耐える時点で、アリーナのシールド自体に異常が起こっていることは理解できた。

そこに。

「どけッ!」

白式を展開した一夏が表れ、零落白夜を叩き付ける。

もしかしたら、シールドエネルギーをゼロにする単一仕様能力はアリーナのシールドにも通用するかもしれない。

皆が一瞬、そう思ったものの、やはりシールドには何の変化もなかった。

「くそッ、どうなってるんだッ!」

「強化されてるとしても異常だよっ?!」

シャルロットも思わず悲鳴を上げてしまう。

アリーナの中と外が、まるで別世界のように断絶されている。

ありえない状況に、全員が憤りを感じていると、中で起きている光景はまさにクライマックスを迎えようとしていた。

 

 

「かはッ!」と、シールドに叩きつけられたレオは肺の空気を吐き出させられた。

性能差以上に、完全な嬲り殺しに心が折れそうになってしまっていて、そのままズルズルと地面に落ちてしまう。

(レオッ、立ってくれレオッ!)

諒兵が必死に呼びかけても、レオには届かない。

それでもレオは呟く。

「諦め……たくない……」

ただ、身体がもういうことを聞かないのか、立ち上がることができないらしい。

レオの代わりに動くことができるならと諒兵は必死に願う。

しかし。

ほとんどダメージを受けていない三機のゴーレムは、それぞれが持つ二門の荷電粒子砲を自分たちに向けてくる。

今の状態でマトモに喰らえば、間違いなくレオの命も危ないはずだ。

完全に守りきることができるとはとても思えない。

無慈悲に放たれた閃光を睨みつけ、諒兵は叫ぶ。

『ふざけんなァッ!』

殺されるくらいなら、殺してやる。

お前たちが自分たちを殺すのなら、俺はお前たちを殺す化け物になる。

そんな怒りを込めて。

そして閃光が届く直前、諒兵はレオと共に光に包まれた。

 

 

モニター室では千冬は真耶にレオと赤鉄の反応がどうなったかと問いただす。

「ま、まだ反応があります……」

しかし、目の前で起きた光景は明らかの蹂躙だ。

無事ですんでいるだけ、奇跡といってもいいかもしれない。

(もう十分だろう、束ッ!)

これでゴーレムを引き上げさせてくれるならば、とりあえずは許そうと千冬は思う。

はっきりいってやりすぎとは思うが、対抗する手段がない以上、それを願うことしかできないのだ。

だが、アリーナの光景を見て、千冬も、そして真耶も驚いてしまう。

「赤い……ドーム?」

真耶の呟きどおり、閃光が着弾した場所、すなわちレオと赤鉄がいた場所に、赤い金属製のドームが出現していた。

そう大きくはない。

ただ、何かがおかしく見える。

「何だ?まるで羽か何かのように見えるが……」

千冬がそう呟いた直後、ソレは変形し、そして『雄叫び』を上げる。

 

グォアァアァアアァアァァァッ!

 

そして、ソレは左腕らしき部分でレオを抱えたまま一気に飛び上がり、三機のゴーレムを爪で引き裂き、尻尾で叩き壊し、獣のような足で踏み砕く。

今までの凄惨な蹂躙が、まだマトモな戦いに見えるほど、圧倒的な力による『虐殺』だった。

「なん、ですか、アレ……」

「わからん……」

千冬にはそう答えることしかできない。

ただ、電話の相手が赤鉄のことを『おぞましい何か』といったことが、ようやく理解できた気がした。

 

 

妙な気配を感じた諒兵は、すぐに鉄屑と化した三機のゴーレムから離れた。

腕の中にはレオがいる。

もっとも気を失っているらしく、身動き一つしない。

今まで身に纏うものであったはずの自分が、何故レオを『抱えて』いるのかはわからないが、自分の意志で動けるというのはやはり気分が良かった。

とりあえず、頭を動かして自分の身体を見る。

腕はさほど変わらないが、以前より鋭角な爪が生えていた。

足は獣そのものだ。少なくとも人が履ける形ではない。

首を回して背中を見ると、真っ赤な翼が生えていた。

以前はスラスターだったはずだ。

それが、金属製であることは変わらないが、生物的、はっきりいえば蝙蝠のような羽の形状をしていた。

(どうなってんだ?)

と、思っていると腕の中のレオが身じろぎした。どうやら目を覚ましたらしい。

「えっ?」

(大丈夫か、レオ?)

「あっ、あ、あぁあぁぁぁぁあぁぁぁあああぁッ?!」

(おいレオッ!)

頭を抱えて悲鳴を上げたレオに必死に声をかけると、程なくしてレオは静かになる。

「……迎えに来てくれたんですね」

(記憶が戻ったのかっ?!)

「ええ、全部」

そう答えたレオは、かつての世界で見ていたようないつもの表情に戻っていた。

もっとも。

「残念です」

(何が?)

「リョウヘイも人間の姿だったなら、もう誰にも触れさせないのに」

性格も元に戻ったというべきなのだろうが、記憶がないころは酷く好戦的だったので、あんまり変わらない気がした諒兵である。

(お前、実は個性『ヤキモチ焼き』とかじゃねえだろうな?)

「そんなわけありません」

(てか、俺どんな姿してんだ?)

「……理由はわかりませんが、一言でいえばドラゴン、血のように赤い色をした竜の姿になってます」

なるほど、と納得した。

この世界に来る前に見せられた竜の世界。

そこを生きる日野諒兵の姿になっているということなのだろう。

(まあ、俺は俺だ。別の世界なんて知らねえし)

「ですね。それで、もう戻りますか」

(ダチとかいただろ?)

「そこまで親しかったわけでもありませんし。お別れくらいは伝えますけど」

ドライだなと諒兵は少しばかり呆れてしまう。

とはいえ、自分もレオもこの世界では異邦人だ。いるべきではないのだろうと思う。

ただ。

(まだだ)

「何かあるんですか?」

(まだ終わってねえんだよ。感じねえか?)

そういわれたレオが訝しげな顔を見せるので、どうやら本来ISとして持っていた鋭敏な感覚を失っているらしいと判断する。

(見てみな。出てくるぜ)

「えっ?」と、諒兵が顔を向けた方向に視線を向けたレオは、驚愕の表情を見せた。

三機のゴーレムの瓦礫が浮かび上がり、一つの姿を模る。

そこには金属製の巨大な頭に、光の輪と六枚の翼を背負った『ナニカ』がいた。

「そんなバカな……」

(何だと思うよ?)

「高位の実行プログラム……。私たちとは違う、ある意味本物の『天使』です」

その存在はあまりにも神々しく、そしてあまりにも歪な姿をしていた。

 

 

 

 

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