一夏と諒兵が目を覚ますと、そこは真っ暗な空間だった。
「戻ってきたのか」
「何だかすげえ久しぶりだな」
何年もいたわけではないのに、妙にこの場所が懐かしく感じる二人。
それほどに、異世界での出来事は衝撃的だったのだろう。
「そっちはどうだった?」
「問題ねえよ。そっちはどうだ?」
「問題ないさ」
そういって、お互いに笑う一夏と諒兵。
そしてもう二名。
『楽しかった、かな』
『新鮮な体験ではありましたね』
何故か、姿は向こうの世界のままの白虎とレオ。
そこに、何故か人並みの大きさになっているもう一人が姿を現す。
『無事で何よりです』
『テンロウが心配するなんてびっくりだね』
『のんびり見物でもしてると思っていましたが』
『扱いが酷いですよ、ビャッコ、レオ。確かに見物してましたけど』
自分でオチをつけるあたり、いつもの天狼だとみんなが安堵した。
「でも、目は覚めてないんだな」
「てっきり元の世界に戻ったかと思ったけどよ
『身体のほうのエネルギーが足りないんですよー』
とはいうものの、白虎とレオが戻ってきたことで、これからは普通に太陽光で回復できるという。
『向こうでも気づいているでしょう。目覚めはもうすぐです』
そういわれ、一夏と白虎、諒兵とレオは真剣な表情になる。
『とりあえず、現況を伝えておきましょう。ここでのことは夢を見た程度にしか覚えてられませんが』
「「意味ねーだろ」」
二人の突っ込みを華麗に無視して、天狼は本来の世界での現況を説明してくる。
さすがに全員が真剣にならざるを得なかった。
「アンスラックスはともかく、タテナシとサフィルスは問題だな」
「他の新型まで出てきてんのか。早えとこ起きてやらねえと」
『チフユたちにしてみれば、アンスラックスが一番厄介でしょうけどねー』
そのあたりの感覚のズレはやはり男性は考え方が女性とは異なるということなのだろう。
『でも、何だろ?』
『……何か、感じますね』
『どうかしましたか、ビャッコ、レオ?』
と、どこかとぼけているような様子で天狼が尋ねかけると、白虎とレオは真剣な表情で答えてくる。
『何か、危ないのがいる気がするの』
『……ただ、敵、とも言い切れない気がするのですが』
しかし、それがなんなのかわからない。
感じるだけだからだ。
おそらく、目覚めない限り、それを見つけることもできないのだろう。
『とりあえず、気を引き締めておくことですねー』
のんびりとした口調とは裏腹に、その声音は酷く厳しいものに聞こえる。
ゆえに、一夏と白虎、諒兵とレオは天狼のいうとおりに気を引き締めるのだった。