発想は「そういえば次の更新は13日の金曜日だったなあ」というところからです(苦笑)
私は最近の映画も好きですけど、あえて古い映画をこの子達が見たらどう思うかなと思って書いてみました。
けっこう古いのも楽しいですよね。
「「「きゃああぁあああぁあぁああぁぁッ」」」
唐突に少女たちの悲鳴が響き渡る。
その目はある一点に釘付けだ。
恐怖に怯えつつも、目が離せないといったところだろうか。
互いの体を抱きしめ、必死に守ろうとしていた。
視線の先には、ホッケーマスクを被った怪人の姿。
「お前らな。ビビり過ぎだろ?」
「怖いもんは怖いのよっ!」
「む、昔の映画も侮れないな」
「私はこういったものになれてないんですわ~」
諒兵が呆れたような顔で突っ込むと、鈴音、箒、セシリアの三人は抱き合いながら訴える。
友人同士で集まって映画鑑賞をしていたのであった。
今、上映しているのは『13日の金曜日』、ホッケーマスクの怪人が暴れまわるスプラッタ・ホラーである。
「確かにけっこう怖いわね」と、上映会を開くことを提案した刀奈が苦笑する。
簪とともに遊びにいきたいが、なかなかIS学園から出ることができないので、だったら逆に学園の中でできることはないかと考えたのだ。
そこで思いついたのが映画の上映会である。
今の時代、映画はネットで借りることができるので、学園をあける必要がないからだ。
さらに、最先端のCGなどは今の時代の映画のほうが楽しめるということで、あえて二~三十年前の映画を見てみようということになった。
「昔の映画って、CGとかはイマイチだけど、逆にそれがいいな」と、一夏。
「俳優さんが演じてるせいか、リアルに感じるね」
と、わりと平然としているシャルロットが続く。
曰く、現実の人間より怖いものはないとのことである。
さりげなくブラックなシャルロットであった。
「リアルつーか、生々しいな。わりとビビる」
一緒に映画鑑賞していた弾もそういって笑う。
「こういうのは~、やめてほしかったよ~」
その腕に本音がしがみついているのは、こういった映画には慣れていないせいだろう。
ほわほわした印象から考えると、当然ともいえる。
「……ズルい」
隣でジト目の簪の姿が妙に哀愁を誘うのだが。
とりあえず最後まで見た一同は、幾つか上映された作品の感想を語り合う。
「プラトゥーンには見入ってしまった。軍人の使命は正しいと思うが、戦争の是非は簡単には語れないな」
ラウラが真剣にそう語る。
有名な反戦映画だが、戦争の是非を軍人が簡単には語れないといったところに、逆にラウラが真剣にこの作品を見たことが感じられた。
「お前なら、間違わずにやっていけると思うぜ」
「そういってくれると嬉しい。ありがとう、だんなさま」
そういってラウラの頭を撫でる諒兵と、されるがままのラウラが、そろそろマジメに夫婦に見えてきた一同である。
「バック・トゥ・ザ・フューチャーって、相当ウケたって聞いたけど、実際面白いわねー」
ティナはなかなかにご機嫌だ。
如何せん、大作映画というとアメリカはハリウッドが最も有名になる。
つまりティナの国の映画が多いからだ。
無論のこと、それぞれの国で優れた映画が生まれているのだが。
「ターミネーターは最初のが一番いいかな。SFとホラーがうまく組み合わさった感じね」
そういったのは刀奈だ。
有名なマッチョの映画俳優の出世作として知られている作品だが、初代は悪役。
それもホラー染みた展開を見せるので、意外と怖い映画でもある。
二作目以降の続編については賛否両論あると思われるので割愛する。
いずれにしても名作として語られる映画ばかりだったので、一同はご満悦である。
「でも、刀奈さん、視聴覚室をこんなことに使ってよかったの?」
「どうせ今はほとんど授業してないもの。映画はやっぱり大きい画面で見たいし、かまわないわよ」
と、鈴音の問いかけにあっさり答える刀奈。
本来なら、寮の部屋でやるべきことだろうが、刀奈が視聴覚室を借りて勝手に開催してしまったのだ。
もっとも、けっこう多くの生徒たちが楽しんでいたので、決して悪かったとはいえない。
でも、視聴覚室の後ろのほうでは虚がこめかみを押さえてため息をついている。
「まあ、たまの息抜きくらいはかまいませんか……」
普段は死地に赴く者たちだ。
だからこそ、こういった平穏な日常を謳歌するチャンスには目いっぱい楽しむ必要があるのだろう。
そう思うと、止めることが出来なかった虚である。
閑話「鬼の霍乱」
生徒たちが視聴覚室で楽しんでいるころ、真耶も息抜きということで、指令室のモニターを一つ借りて映画を見ていた。
わりと、一人映画が好きな真耶である。
「やっぱり面白いですね。次はこれにしようかな」
そういって、コンソールを操作して次の映画を上映する。
「うん、やっぱり古い映画のほうが迫力ありますね。最近のはきれい過ぎて」
やけにババ臭いことをいう。
まだ二十三歳。妙齢の美女といってもいいはずの真耶だが、微妙に残念だった。
そこに。
「山田先生、モニターを私用で使うのはあまり認められないぞ」
毅然とした表情で、千冬が指令室に入ってくる。
生徒たちが映画鑑賞会をしているのは、あくまでストレス緩和のためであって、一応は任務といえる。
だが、真耶が私用で使うのは単に趣味である。
さすがにそれは認められないのも当然だった。
だが。
「あっ!」
「えっ、あ……」
ドサッと人が倒れる音が聞こえた。
「織斑先生っ、先輩っ、しっかりしてくださいっ!」
白目を剥いて倒れる千冬。
相当なショックを受けたのか、カチンと固まって微動だにしない。
「先輩にこれはまずかったですね……」
そういってモニターを見る真耶の目に映るのは、特徴的な帽子を被り、右手におぞましい鉄の爪を持つ怪人。
エルム街の悪夢というホラー映画に出てくる殺人鬼である。
山田真耶、実はかなりのホラー映画好きだった。
対して、織斑千冬は実はホラー映画が大の苦手だった。
恐怖で失神してしまうほどに。
「こういうところが知られれば、男性人気も上がりそうなんですけどね」
強い女として知られており女性人気の高い千冬だが、むしろ可愛い面も多いと、昔からの付き合いである真耶は思っていた。