真耶がいかにして誠吾に恋してしまったか。
わりとチョロインになってますがご容赦ください(土下座)
スマラカタの襲撃後、鈴音を慰めにいった真耶。
だが、その後、慰労会に出る気にはなれず、一人でラウンジでボーっとしていた。
「はあ……」
確かに、出会ってから気になっていたので、スマラカタが進化のために誠吾を利用したことは理解できる。
正確には誠吾を利用して、自分の心をさらけ出させられたのだ。
恥ずかしいが、それ以上に情けない。
気になった男性に他の女(?)が言い寄ったくらいで慌てるなどいくらなんでも対応が子どもすぎる。
結果としてまんまとスマラカタが進化してしまったことを考えると、本当に情けなかった。
そこに。
「山田先生」
「ひゃいっ!」
誠吾が声をかけてきたので、思わず変な声我でしまった真耶だった。
「あにょっ、どうちまちたっ?!」
「あの、落ち着いてください。戻ってこないのでどうしたのかと思ったんですよ」
「ああ。すみません、ちょっと一人になりたくて……」
そう答えると、誠吾はバツの悪そうな表情を見せる。
何か悪いことをいったかと思った真耶が問いかけると、彼は苦笑いを見せた。
「いえ、声をかけたのは余計なことだったかなと思って」
『だーりんはエア・リーディング機能が貧弱ネー』
「いわないでくれ。けっこう気にしてるんだから」
空気が読めないといいたいらしい。
理解しているのか、誠吾はあっさりと認める。
そんな姿が少しおかしくて、真耶は思わず微笑んでしまう。
「気にしないでください。一人で悩むのは良くないことだと思いますし」
「ああ」と、誠吾は納得したような表情を見せる。
まあ、自分の姿を奪われたのだ。
しかも、その姿で何をしでかすのかわからない敵である。
悩んでしまうのも仕方ないだろう。
そう、誠吾は考えたらしい。
「姿かたちがそっくりでも、スマラカタは山田先生とは違いますよ」
「井波さん?」
「生徒思いで一生懸命な、山田先生の優しさまで真似できるはずがありませんから」
「そ、そういわれると恥ずかしいです……」
「山田先生が一番素敵なところは、優しい心だと僕は思います」
きっと、みんなも同じです、そう続ける誠吾の言葉は真耶の心にゆっくりと染み渡っていく。
その結果。
にこやかに笑っている誠吾の顔を見ていた真耶の顔がぼんっと真っ赤になった。
「山田先生っ?!」
「いっ、いえっ、大丈夫ですっ!」
如何せん、真耶は見た目を考えると衆目を集めやすい。
結果として上がり症になってしまったのだが、逆に心が素敵だと言われたことなどなかった。
なかったために。
(この人、私のことちゃんと見てくれてる……?)
そう思ってしまったが最後、心に火が点いてしまった。
つまり、恋愛感情に。
「あっ、あのっ、わたしっ、部屋で休みましゅうっ!」
そう叫んだ真耶はとんでもない勢いで自室にすっ飛んでいく。呆然とする誠吾を残したままで。
ただ。
(あぁああぁっ、顔がまともに見られないぃぃっ!)
内心では混乱の極地に達していた真耶だった。
初恋は唐突にやってくる。
せめて、心の準備をしてからにして欲しいと、真耶は廊下を全力疾走しながら思っていた。