このパターンもあるとは思いますが、自作で書いたらどうなるかなと思って(笑)
お父さん'Sに頑張ってもらいました(笑)
山田太郎(仮名)は、暇を持て余していた。
取り立ててやりたいこともなく、ただ、ゲームをやったりアニメを見たり、二次創作をスコップしたりするという怠慢な日々を送っていた。
そんな彼の野望は。
「転生してハーレムを築くッ!」
という、ゲス極まりないものである。
だからといってそのために努力したくはない。
望んでいるのは、神様転生というものであった。
不精この上ないことである。
その日。
ゲームやアニメに飽きてしまい、新作でも探そうかと街へと向かっていた山田太郎(仮名)
住宅街近くの交差点で自動車が通過するのを待っていると、ボール遊びをしていた女の子のボールが道路に転がっていってしまうのが目に入った。
女の子が慌てて道路に飛び出す。
そこに運送会社のトラックが来ていることにも気づかず。
(チャンスだッ!)
普通は女の子を助けることに思考がいくものだが、まさにテンプレートといえるような状況は、神様転生のシチュエーションそのもの。
一瞬だけこの世界のヒーローに成り、別世界で美少女たちを侍らす英雄になる。
そんな邪な欲望全開で、女の子を助けようと彼もまた飛び出した。
子どもがボールを追いかけて飛び出してきた。
突如変化した眼前の状況に、運送会社社員のトラック運転手は驚いてしまう。
しかも、少女を助けようと青年も飛び出してきた。
なんて勇敢な青年だろう。
しかし、そんなことを考えている余裕はない。
このまま二人を轢いてしまったらどうなるか。
優秀な頭脳を持ち、学者として将来を嘱望されていたのに、自分のような不器用な男と結婚してくれた妻。
妻との間にはもうすぐ八歳になる娘がいる。
しかも、先日、第二子、待望の男の子が生まれたのだ。
運転手は将来、息子と一緒に酒を飲むことをささやかな夢にしていた。
なのに、ここで事故を起こしてしまったらどうなるか。
何よりもまず法外な賠償金を支払うことになる。
しかも、確実に解雇。
次の仕事を探したとしても、賠償金を返し続ける苦労の日々。
そんなことに妻や子どもたちを巻き込めない。
だが、離婚したとしても、幼い娘や生まれたばかりの息子を女手一つで育てるのは大変だ。
身体を壊してしまうかもしれない。
しかも子どもたちも苦労していくことになるだろう。
一家の長として自分が頑張らなければならないのに、ここで事故を起こせば一家離散になりかねない。
守るべき家族。
自分にはそれがあるのだ。
「負けるものかッ!」
そう叫んだ彼は、信じられないようなドライビングテクニックを披露した。
上手いこと女の子を抱え込み、庇う体勢になれた山田太郎(仮名)は信じられない光景を見た。
運送会社のトラックが、何と片輪走行をして、自分たちを器用にかわしてのけたのだ。
しばらくそのままの体勢で走ったかと思うと、自分たちをだいぶ通り過ぎたところで、ズズンッと轟音を立ててトラックは元通りになる。
そして、すぐに止まり、屈強な身体をした運転手が飛び降りてきた。
「大丈夫かッ?!」
「えっ、はっ、いや、えっ?」
呆然としている山田太郎(仮名)の返事にもならない返事を無視して、身体を触ってくる。
脈があるかどうか、呼吸しているかどうか、身体に傷があるかどうかを確認しているらしい。
しばらくそうしていた運転手だが、済んだのか、ほぉ~っ、と大きな安堵の息をついた。
「良かった……」とそういって笑顔を見せてくる。
「えっ、あっ、えっ?」
対して、いまだに起こった事実が信じられない山田太郎(仮名)
そこに、別のところから、だいぶ慌てた様子の声がかけられた。
「大丈夫ですかっ!」
ガチャガチャと白い自転車を止めて、駆け寄ってきたのはお巡りさんだった。
どうやらこの近くの駐在所勤務の巡査らしい。
「すいません、実は……」と、運転手が説明を始める。
お巡りさんはメモ帳を取り出すと、時折肯きながら、説明を書き記した。
「なるほど。女の子が飛び出して、彼がそれを助けようとしたんですね」
「はい」
「しかし、まさか片輪走行で避けるとは。いやあ、見てみたかったなあ」
「いやいや。こっちは本当に死ぬ思いだったんですよ」
「あっ、いや、どうもすいません」
武勇伝を聞いて面白かったのか、ニコニコと笑うお巡りさんに対し、運転手はジト目になっていた。
「それで、運送会社勤務とのことですが、荷物のほうは大丈夫ですか?」
「いや、さすがに荷物はダメでしょうね。ですが、人の命には変えられません」
「ご立派です。本官でよければ会社のほうに連絡しますよ」
「えっ?」
「人の命を守った人が責められるのは間違ってますからね。損害を出したことになると困るでしょう?」
できるだけ運転手に損がないように、自分のほうから口添えするとお巡りさんはニコニコと笑いながら答える。
「いいんですか?」
「困ったときはお互い様です。何かあったら本官を呼んでください。大して力があるわけじゃないですが、頑張りますので」
「ありがとうございます」
なんというか、相当なお人好しらしいお巡りさんに、不器用なトラック運転手は深々とお辞儀する。
すると、お巡りさんが今度は山田太郎(仮名)のほうへと向いてきた。
「君もお手柄だね。さすがに金一封は出るかどうかわからないけど、感謝状は出ると思うよ」
「あっ、えっ、いや……」
答えに詰まる山田太郎(仮名)を微笑みつつ、お巡りさんは女の子にも声をかける。
「お嬢ちゃん、ボール好きなのかい?」
「うん」
「それじゃあ、ボールくんが勝手に道路に出ないように、お嬢ちゃんが守ってあげないとね」
「あ」
「お嬢ちゃんも大事なものはちゃんと自分で守るんだ。このお兄さんやおじさんが今回は大事なものを守るために頑張ってくれたけど、次は自分で頑張らなきゃ」
「うんっ♪」
単に道路に出るなというだけの指導ではなく、女の子に責任感を持たせ、そこからやる気を出させる言葉に、運転手は感心する。
山田太郎(仮名)は相変わらず呆然としていた。
「変わってますね」と運転手が声をかける。
「そうでもないですよ。子どもだからといって責任感がないわけじゃない。相手は立派な一人の人間ですから」
「ほう」
「最近、奥さんが男の子を産んでくれまして、余計にそう思うようになりました」
自分にはもったいないような美人の奥さんですと、懐から赤子を抱いた本当に美女といっていい女性の写真を取りだす。
「ははっ、やはり男のお守りはそれですね」
と、運転手も懐から、赤子を抱き、可愛らしい娘と一緒に微笑んでいる優しそうな女性の写真を取りだした。
それを見たお巡りさんが尋ねる。
「同い年ですか。お住まいはこの町で?」
「はい。ああ、息子同士仲良くなってくれるといいですね」
「そうですねえ」と、男二人が笑い合う。
そうしてお巡りさんは女の子を立たせると病院にいくようにと話す。
女の子が走っていくのを手を振って見送り、山田太郎(仮名)にも同様に病院にいくように勧めた。
「連絡先等は私のほうにも控えがありますので、何かあったら連絡してください」
そういって連絡先を手渡してくる。
「はあ」
山田太郎(仮名)は生返事を返すだけだった。
「それでは失礼します」
「すまなかったな。本当にありがとう」
お巡りさんに続き、運転手がそういって別れを告げてきた。
そのまま背を向けて歩き去っていく。
残されたメモ用紙には。
○△運送会社、織斑陽平
□○警察署、○○駐在所勤務、日野諒一
という名前が書かれていた。
今回、この番外編は完全なアンチ作品として制作しました。
いわゆるテンプレ展開、神様転生のアンチ、ヘイトはけっこうありますし、一周回って無理やりその展開に巻き込まれるという作品もありますね。
ただ、今回私がどうしてもアンチしたかったのは、トラック、正確にいうと『事故死』です。
不意に、もしくは神様の不注意で自動車やトラックに轢かれて死んでしまった。
かわいそうだから転生させよう。
実はこれが正直、好きではありませんでした。
確かに、死んだ人はかわいそうなんですが、実際には事故を起こした側のほうが悲惨です。
賠償金や解雇、一家離散。
特にマトモな人間なら、その後の人生がメチャクチャになりますから、まさに生き地獄です。
そういったことに言及した作品って少ないんじゃないかなと思っての番外編です。
でも、まあ、誰も死んでないし、主人公(仮)は感謝されましたし「いんじゃね?」と、思ってます(苦笑)
最後のメモの名前からわかると思いますが、この世界はISがない普通の世界で、かつ、織斑一家や日野一家が幸せに生活してたりします。
これ、下手に続編を書くと、学園恋愛ものにしかならないので、恋愛書くのが苦手な自分には書けません。
どうもすみません(土下座)