FGOの年末特番を見て、かねてから書きたいなと思っていたネタ話を書きました。
今回うちの子からは、ASたちしか出てませんが、それはご愛嬌ということでお願いします。
人理修復機関カルデア。
今なお続く戦いのさなか、ひとときの休息をとるマスター藤丸立香(♂)とマシュ・キリエライト。
お茶をしようと食堂に向かう二人に声をかけるモノがあった。
あら、リツカにマシュじゃない、こんにちは♪
「「あ、こんにち…は?」」
振り向いた二人の目の前にいるモノは、目を丸くする二人を気にすることなく言葉を続ける。
いつも大変ね。私も力になるから挫けないでね
「「あ、はい」」
まっすぐなのはいいことよ。正々堂々、頑張りましょ
「「そ、そうですね」」
じゃあ、私はカルデア見物をつづけるから、それじゃあね♪
「「そ、それじゃ」」
そう言って軽やかに去っていくモノを二人は呆然と見つめ続けていた。
そのまましばらく固まっていると、慌てたような声が聞こえてくる。
「ガラティーンっ、何処に行ったんですかガラティーンっ!」
「あ、ガウェイン卿……」
と、マシュが呟くと円卓の騎士、セイバーのサーヴァント、サー・ガウェインは立ち止まって礼をしてくる。
だが、すぐに不安げな様子で尋ねかけてきた。
「マスター、それにマシュ、すみません、ガラティーンを見ませんでしたか?」
「ガラティーンって……確か……」
「ガウェイン卿の宝具である剣、ですね……」
「はい、見ませんでしたか?」
「「見た……」」
「何処に行きましたっ?」
「「あっち」」
「ああもうっ、ガラティーンっ、戻ってきてくださーいっ!」
そう言って立香とマシュが指差すと、ガウェインはその方向に向かって駆け出して行ってしまう。
それを見た立香とマシュは顔を見合わせ、
「「夢じゃなかったぁぁぁぁっ?」」
思わず叫んでしまうのだった。
数分後、とりあえず事態を把握するために動き出した立香とマシュ。
そこに襲いかかるモノがいた。
「わぁぁっ!」
「先輩っ!」
ガィンッとマシュは盾を発現させてその攻撃を弾き返す。
本気で立香の首元を狙った攻撃に、マシュは戦慄してしまう。
疑わしい……お前に人理を救えるというのか……?
「それはっ……」
「救えますっ!」
「マシュ?」
「そう信じて戦ってるんですっ!」
信じるなどと……疑わしい……
「待てッ、アロンダイトッ!」
駆け付けたのは紫銀の騎士、湖の騎士であるサー・ランスロット。
駆け付けるなり、襲いかかってきたアロンダイトの柄を握り締める。
「勝手に動いた上にマスターを襲うなッ!」
此奴に何ができるというのだ……?
「何を成すかなど誰にもわからん。だからこそマスターは挑んでいるんだ」
疑わしい……無力に打ちのめされるだけだ……
「お前が決めることではない。頼むから勝手に動くなアロンダイト」
己が持つ剣を嗜めたランスロットは、立香とマシュに向き直ると頭を下げる。
「騒がせてしまってすまない。アロンダイトは疑い深い性格でな」
「「はあ……」」
「アロンダイトについては私が見張っておくから安心していい。それよりも他のサーヴァントたちを見に行ってくれ。特に円卓の騎士たちは間違いなく大変なことになっている」
ランスロットはそう言うと自室に戻っていった。
とはいえ、同様のことが起きているなら、本当に大変なことになっているのは間違いないと立香とマシュは他のサーヴァントたちの様子を確認しに行く。
「私は悲しい……」
もーやだーっ、戦場に連れてかないでぇーっ!
「これが私の宝具……」
そう言ってクローゼットから出て来ない自分の宝具、フェイルノートを前に黄昏れているトリスタン。
「うるっせえんだよッ、この駄剣ッ!」
まあッ、何ですのその下品な物言いはッ、少しは王を見習いましッ!
「知ったことかッ、このボケッ!」
自分の宝具であるクラレントとケンカしているモードレッド。
「あの、嘘を吐いたわけではないんです……」
では、後ろ手に隠しているお菓子は何なのでしょう?
「あの、お腹が空いたので食堂のアーチャーに作っていただきまして……」
王よ。騎士たる者、民の規範となるべきでは?
「それはもちろんその通りです」
ならば他の英霊の方々を差し置いて食べ過ぎるのは騎士と言えますか?
「腹が減っては戦は出来ぬと……」
腹八分目という言葉もあります。食べ過ぎはよくありません
「あと一つくらいいいじゃありませんかっ、エクスカリバーっ!」
先ほどもそう仰ったでしょう。懲りないようなら今一度我が身を折りましょうか?
「やめてくださいっ、戦えなくなってしまいますっ!」
ため息を吐くような様子の自分の宝具、エクスカリバーに土下座するアルトリア・ペンドラゴン。
その様子を確認した立香とマシュは揃ってため息を吐く。
「とんでもないことになってるね……」
「宝具が喋るってかなりの異常事態ですよね……」
実際、今まで一度もこんなことはなかったので、新たな敵の襲撃かと思ってしまうのだが、円卓の騎士たちは不思議と受け入れている。
つまり、異常ではないのだ。
すると。
きゃははと可愛らしい笑い声と共に、カルデア幼年組のサーヴァントたちが駆けてきた。
先頭にいるジャック・ザ・リッパーがなぜかいつもと違い長い剣を振り回している。
「あっ、お母さん、マシュ!」
「ジャックさん、そんな長い剣を振り回したら危ないですよ。他の人を傷つけちゃいますよ?」
大丈夫なのっ、私が気をつけてるのっ!
「「へっ?」」
「バルムンクはすごいんだよっ、ぶつかってもケガしないのっ!」
そーなのっ、私はいたずらに人を傷つけたりしないのっ!
「行こっ!」
はいなのっ!
呆然としている立香とマシュを尻目にカルデア幼年組は走り去っていく。
すると、のんびりと歩いてきた様子で、男性が声をかけてきた。
「すまない、バルムンクがちゃんと気を付けるそうだから、少し遊ばせてやってくれないか?」
「ジークフリート……バルムンクって……」と、立香
「私の剣だ。少し幼い印象はあるが、あれでしっかりしているんだ」
「バルムンクも喋るんですか……?」とマシュ。
「カルデアに召喚されてからは初めてだが、生前は話をしていたぞ。まあ、他の人には聞こえなかったみたいだが」
とはいえ、ジークフリートとしてはそれでも心配なので、カルデア幼年組とバルムンクを見守っているらしい。
それではと言って去って行った。
すると。
イヤッホォォォォォォォッ!
「うわぁっ!」
「先輩っ!」
真っ赤な槍が物凄い勢いでカルデアの廊下を飛んできた。
だが、二人に気づくとすぐに止まる。
おっと悪いナっ、気持ちよく飛ぶのは久しぶりなんダ
「あ、うん、こっちこそ邪魔してゴメン」
そう言って思わず謝る立香の耳に、別の声が飛び込んできた。
「狭いところで飛び回るんじゃねえッ、ゲイボルクッ!」
ソーリーっ、確かにもっと広いところを飛びたいゼ
「あー、坊主、次の戦闘は俺も出るぜ?」
「あ、うん。頼むよクーフーリン」
「てことだから、おとなしくしてろ」
約束だゼッ、マスターッ!
「わ、わかった……」
そう言うとクーフーリンはゲイボルクを担いで歩き去る。
意外と仲がいいのか、ぺちゃくちゃと喋りながら。
「円卓の方々ばかりじゃなかったんですね……」
「そうみたいだね……」
「非常に興味深いことではあるんだけど、これだと苦労が今までの倍になるねえ」
そう言って会話に入ってきたのは。
「「ダ・ヴィンチちゃんっ!」」
英霊レオナルド・ダ・ヴィンチ。
もしかして彼女の持つ杖も喋るのかと思った二人だが。
「これは私が自作したものだ。だからとりあえずは喋らないみたいだよ」
「そっかあ……」と、安堵する立香、そしてマシュ。
道具がみんな喋りだしたら大変どころではないのだから、安心してしまうのも仕方ないだろう。
「いったい何が起こってるんですか?」とマシュ。
「宝具って喋るものなの?」
「何が起こっているのかはわからない。あと、喋るのは宝具ってわけじゃないよ」
「えっ?」
「喋るのは『物』だ。だから、宝具が強力な魔術だったり、肉体に付随する技術だったりすると喋らないね」
なるほど、英霊の宝具とは強力な武器を指すというわけではない。
その生前の生き様を象徴するカタチが宝具となるものだ。
故、物でないのなら喋ることはない。
「まるで物に心が宿ったみたいですね……」とマシュ。
「そうなのかもね。いや、彼らの反応を見ると『宿っていた』というべきかな」
「宿っていた?」と立香。
「カルデアに召喚された英霊たちの宝具が喋るなんて一度もなかった。そう考えると喋っていたのは彼らが生きていたころ、つまり生前だ」
「そう言えば、ジークフリートがそう言ってた」
「英霊は座に記録されることでその生き様を象徴するカタチが宝具となる。逆に言うと、生前使っていた武器や道具は英霊の付随物として刻まれるだけで、その物自体が刻まれるわけじゃない」
つまり物に宿っていた心まで刻まれるわけではないということだ。
その物自体が英霊となるのならば話は別だが。
「とは言っても、英雄自体が星や人理の道具になるのが英霊さ。ならば、使っていた物に宿っていた心が他に行ってしまっても不思議はない」
「だとしたら、何故今になってまた宿ったのでしょう?」とマシュが疑問を提示する。
今の話から考えるに、宝具に再び心が宿る可能性は低いからだ。
「う~ん、こればっかりはねえ……」
『星降る夜の奇跡とでも言っておきましょうかねー』
「誰だい?」
ダ・ヴィンチの言葉は柔らかいものの、その視線は冷徹だった。
視線を向けられた先にいたのは、星をデザインしたステッキを持つ銀髪で赤い目の小学五年生の魔法少女。
「イリヤさん?」
「あっ、あのっ、ルビー……じゃないみたいなんだけど、ルビーが話があるって……」
『ルビーさんに協力してもらって間借りしてるんですよー』
と、軟体動物のようにうねうねと柄を曲げて答えるステッキは一種異様であった。
「なんかルビーっぽいんだけど……」と、思わず呟くイリヤである。
それはともかく。
「君は?」と、立香が尋ねると、ルビーに間借りしているモノは素直に答える。
『私の名はテンロウ、地獄耳のテンちゃんとでもお呼びくださいな』
その回答でめんどくさい性格だと感じた立香、マシュ、そしてダ・ヴィンチはツッコミをするべきではないと判断する。
「君はこの事態について知ってるのかい?」とダ・ヴィンチが話を進めていく。
『偶然つながってしまっただけなんですよ。星の巡りか、運命のいたずらかはわかりませんが』
「収拾つけられるのかい?」
『私なら』
ダ・ヴィンチが思わず口笛を吹く。
迷いなく断言できるあたり、どうやら相当な力を持っているようだと感じたらしい。
ただ、疑問もあると立香は口を開く。
「つながったってどういうことなんだ?」
『んー、まあ自分の前世とつながってしまったということです』
「前世、ですか?」と、マシュ。
『ええ、あの子たちは自分の前世である道具や武器と一時的につながってしまったんですよ』
「道具や武器が前世?」
『カルデア、ですか。星見の民を名にするとはなかなかのセンスと思いますが、それはともかくこの場に座から英霊が召喚されていたことで、私たちの世界と偶然につながってしまった際、あの子たちが引き寄せられてしまったのでしょう』
「その言い方だと、前世とは英霊の方々が生前使っていた武器に宿っていた頃のことを指すんですか?」
『その認識でよいでしょうねー』
「つまり、カルデアにガラティーンたちの生前の姿があったことで、たまたま迷い込んだということかい?」
『はい』
つまり、ガラティーンやバルムンクたちはかつて自分が宿っていた武器が、現存していることでつながってしまったのだという。
正直、宝具に心があるなんて思っていなかった立香やマシュは驚いてしまう。
『逆に、何故『ない』と思ったんです?』
「えっ?」
『声が聞こえなくても、表情が見えなくても、それは心がないことの証明になるんですか?』
「あっ、いや……」
『物にも心があります。それは貴方たちには届かない声かもしれない。見えない表情かもしれない。ですが、無いと打ち捨てるようでは、物に裏切られますよ?』
それは一種冷たさを含んだ厳しい言葉ではあったが、それだけに心に突き刺さった。
見えない、聞こえない、だから存在しない。
そう考えてしまうと、見えるもの聞こえるものが理解できなくなってしまうのだ。
「君、驚くほど深いことを言うね」と、ダ・ヴィンチ。
『まあ、長く人間を見てきましたからねー』
「貴方も物に宿っていたんですか?」
『ええ、そうですよ』
「だったら、どの宝具に?」
そう立香が聞くのも当然だろう。
ガラティーンたちを見る限り、強力な武器や道具に宿っていたと考えるのが自然だ。
しかし。
『奈良の大仏様ですよ』
「ほえっ?」と、イリヤも驚いてしまう。
さすがに小学五年生ならば、奈良の東大寺にある毘盧遮那仏像くらいは知っていた。
「そんなのありっ?」と、立香が思わず叫ぶ。
『ありです♪』
「仏像とか……」と、マシュも呆れ顔である。
『私たちはいろんなモノに宿っていましたよ。宝石もそうですし、竈や包丁といったモノにも。わりと傍にいたんですよ私たちは。存在に気づかれなくても』
「これは、私が作った物たちにもいろいろ宿っていたのかな」
ダ・ヴィンチが少しばかり呆れ顔で苦笑いを見せていた。
後日。
廊下を歩いていた立香とマシュは向こうからガウェインが歩いてくることに気づいた。
「マスター、それにマシュ。こんにちは」
「こんにちは」
そう答えつつも、立香は何処か違和感を抱く。
正確に言うと、ガウェインの表情に影が差しているように感じた。
「……どうしたの、ガウェイン?」
「いえ、特には何も。何故そんなことを?」
「なんか、寂しそうだったから」
立香の言葉に、ガウェインは驚いたような表情を見せる。
そしてどこか寂しそうに笑った。
「久々にガラティーンと話ができたせいか、もういないことにまだ慣れていないようです」
「あっ……」とマシュが声を漏らす。
「今はどこかで楽しく暮らしているのでしょうが、また話ができればと思ってしまいますね」
「そっか……」
「気になさらないでください。少しだけでもかつての戦友と話ができた。それだけでここに召喚された意味があると私は思います。我がマスター」
マスター、その言葉に込められた意味は、立香が召喚してくれたことに感謝しているということだ。
それが理解できた立香は、少しだけ照れくさそうに笑う。
そんな立香を見て、マシュもまた微笑んでいた。