「魔女さんよぉ、そっちに味方しちゃったら、そいつも魔女ってことになっちまうぜ?」
「SNSでこいつが生きてるだけで公害って言ってた話おもしろかったな!!」
「ギャハハ! 犯罪者野放しとかやめてくれよ〜アタシたちが怪我したら誰が責任取るの〜??」
「安心して。邪魔な小石が蹴っ飛ばされても、だーれも責任取らないよ☆」
「んだとゴラァ!!」
「邪魔☆」
発砲と同時に頭上が光る。天から鮮やかな光を纏った流星たちが、敵に落ちていく。青かったり、ピンクだったり………キレイな光がぶつかって、弾けていく。敵の1人が被っていたヘルメットは卵みたいに砕け散った。
「……………………」
声もなく、泡を吹いて倒れている。
「な……おい……おい!しっかりしろ!! クソ、覚えていろ、魔女!」
「必ず後悔させてやるからな!」
捨て台詞を残して、逃げていった。倒れた仲間を引きずって。
「ふう……大丈夫?」
見ているだけで、何も出来なくて、怒りに任せて暴れたくても………怖くて泣くしかなかった。でも、今は、あの星の光で頭が一杯になっていた。
「君をいじめてた子たちはやっつけたから……もう大丈夫だよ」
「……あ、」
「じゃ、私はもう行くね」
「あの………」
「なーに?」
「どうして………強いんですか?」
「………え?」
そんなこと、今聞くべきではない。言葉にして後悔した。
「うーん………キミは強くなりたいの?」
「………わかりません」
「そっか………」
「……」
「腕力と銃の上手さだけが強さじゃない。私から言えるのはそれだけかな。じゃあね」
彼女は笑った。流星の光と彼女の笑顔が、ずっと目に焼き付いて………消えることはなかった。
ーーー
気がつくと友達に手を引かれ、自分の家にいた。ようやく自分に何が起こったのか理解した。下校中に不良に捕まって、金を貸せと恐喝されていた。それを、助けてもらって…………あれ、助けてくれた人は………誰だったんだろ……?
「名前聞いてないの…?」
「聞いてなかった」
「何か特徴とか……」
「流星…………流星が降った……キレイだったな」
「ええ? もしもーし?」
「あとは、魔女って呼ばれてた………」
「魔女………魔女って、もしかして聖園ミカ?」
「そうなの?」
「そうなのって、あんた聖園ミカって言ったら、ほら、あのティーパーティーだよ……!!」
「あ………そういえば………前にみんなが話してたね」
「頭でも打った? ずっとふわふわしてるよ?」
「頭を打ったのは不良………」
「いやあんたの事だってば………とりあえず、怪我とか無いんだね?」
「うん……」
「じゃ、また明日。風呂入ってご飯食べて寝るんだよ?」
「うん……」
「今日アリーナ更新だから、ちゃんとログインするんだよ?」
「うん……」
「貸出枠ちゃんと変えとくんだよ?」
「うん……」
「駄目だこりゃ……」
友達が帰った後、まだしばらく放心していた。布団を被る頃に気がついたのは、あの人にお礼の言葉を伝えていなかった事だ。
ーーー
心地よいぬくもりの中で目が覚める。時計に目をやるともう午後だった。今日は………休みではなかったような。
「青かったような、ピンクだったような……とにかくキレイで……鮮やかで…………」
記憶は少しだけ薄れ、もうなんとなくしか思い出せない。それでも……心が動いた経験は褪せない。
スマホを見たら、友達が『わたしが不良に怯えて学校に来ていない』と嘘をついてくれたらしい。正義実現委員会が現在対応してくれているとメッセージが来ていた。
「………寝坊しただけなんだけどな」
冷静に考えれば、昨日のことで疲れて寝坊しがちとは思っていない。想像以上に負担だったのかもしれない。ある意味、友達の嘘は間違いではない……のかも。
「……………」
あぁ、そうだ。あの人に………ミカ様にお礼を言いに行こう。
ーーー
友達からミカ様が住んでいる学生寮を教えてもらって、そこまで来た。途中で不良に会わないか不安になったので、駆け足で来た。
寮の外階段を登る途中で気がつく。ミカ様が今いるかどうか、全く確認してない。チャイムを鳴らして誰も来なかったら………?
「あれ…キミは…………?」
「あっ」
「どうかしたの? なんか用?」
姿を見て記憶が蘇る。ピンクの髪に白いケープ。丁寧に手入れされ、片方にアクセサリーが付いた翼。間違いなくこの人だ。偶然後ろから本人がやってきてしまった。どうしよう。想定外で言葉が無い。
「あっ………あの………えっと………」
「ウチくる? すぐ上だから」
「あ……………はい…………」
ーーー
彼女の後をついて行く。教えられた通り、彼女は学生寮の屋根裏に住んでいた。中は隅々まで掃除されているが、床の日焼け具合は『つい最近までここが物置だった』ことを示していた。
「紅茶でいい?」
「はい」
「そんなに固くならないで」
そう言われても困る。緊張してしまう。
「あれからどう? 仕返しとかされてない?」
「……おかげさまで、なにも」
「良かった。はい、どうぞ」
装飾がないシンプルなティーカップ。嗅いだことのある紅茶の匂い。
「…………?」
「あれ、飲んだことありそうな物を選んだつもりだったけど……間違っちゃったかな?」
「い、いえ………いつも飲んでいるものです……どうして……?」
「どうしてって…………知らないものを出したらびっくりしちゃうと思って」
「あ………ありがとうございます。いただきます」
一口、紅茶を飲む。知っている味だ。
「ふぅ……」
「落ち着いた?」
「はい」
「じゃあ、お話しよっか。今日は私に何か用があったんだよね?」
「昨日のお礼、言ってなかったなと思って。助けてくれて、ありがとうございます……」
「あー、いいよあれくらい。向かってくる敵は可愛い方だよ。私強いから負けないし」
「…………恨まれたりしたら、後が怖いです」
「それであいつ等がキミを無視して私を狙うなら、私はそれでいいよ」
「………」
「気にしちゃダメ。私がやりたいことをしただけだから」
「そ、そうですか………」
ミカ様は、とても強いお方だった。声に迷いや恐怖がまったく感じられない。怖さに負ける私なんかよりも、何倍も強かった。
「あの……貴方の流星は、どうやって出したんですか……?」
俯きながら、なんとなく聞いてみる。
「アレね。私もよく分かってない☆」
「ええ……?」
「ある日急に降ってきたんだ。小さい頃に射撃の訓練をしてたら偶然ドカーン☆って音がして、カカシが壊れちゃったの!」
ミカ様は笑いながら話す。
「それでね、最初はうまく制御できなくて自分に流星がゴチーンって降っちゃってさ。もう痛くて痛くて、たんこぶできたこともあったね。心を落ち着かせて、祈りを込めて銃を打つと、自然と降る方向は制御できるようになってた」
「祈るって……どうやるんですか?」
「えっ? いや、流石にやったことあるでしょ」
「形式的なものは、見様見真似でやったことはあります。でも……心構えがわからなくて」
「ふーん…………? 簡単だよ。神様に『お願いします』って気持ちを強く持つだけ。心をそれでいっぱいにすれば良い」
「もしも……その時、神を信じられなかったら?」
「別に聖書に載ってるような神様にお願いしなくてもいいよ。あなたが信じたいもの、大切にしたいものに気持ちを込めればいい」
「信じたいもの……?」
「例えば、キャラクターとか、山とか海とか……誰かが言った言葉とか、道具でも良いよ。あなたの中に『記憶に焼き付いて消えない物』とかあったりする? 『絶対にこれだけは!』ってモノ」
「それは………………あり、ます」
ゆっくりと………指をさす。
「……………えっ私?!」
「あなたの……流星…………」
「あ………へ、へー………そう、なんだ。な、なんだか………恥ずかしいな」
「青かったり、ピンクだったり………キレイに混ざって、弾けて……」
「そ、そうかー、あはは……」
「わたし一人ではどうしようもなかったものを、打ち砕いてくれた。天から降り注ぐ光が、泣くしかなかったわたしを救ってくれた……それが、ずっと頭から離れない」
目が熱い……
「わ、わたしは………強く、なりたかった」
声が震える。
「いつも………気が付くと、運良く誰かに助けられてばかりだった。怖くて動けない、な…なにも出来ない【傍観者】だった………頑張っても、頑張っても、強くならないし、怖がりも克服できなかった」
「………」
「昨日、全てが理不尽に終わると思った。そうしたら、あなたが………あの光が、わたしを………」
上手く喋れなくなってきた。
「あぁ……わたしは、何を……伝えたいんだろう。なにも………分からない…………」
雫がポタリと静かな音を立てて、泣いていることにやっと気がついた。
「─────伝わるよ。あなたは、私の星に希望を見出した。それが、忘れられないんでしょう?」
泣きながら頷いた。
「じゃあ、こうしようよ。辛い時、怖くてどうしようもない時、大きすぎる理不尽に潰されそうな時……私の流星を思い出して。星の光があなたの道を照らしてくれる」
「あ………あっ……く………うっうぅぅ……」
「無理に喋らなくていいからね……きっと強くなれる………」
優しく抱きしめられた。
「もし、本当にどうしようもなくなってしまったら、その時は私があなたを助けに行くから。ゼッタイにね」
落ち着くまで、ずっとそばに居てくれた。
ーーー
もう日が暮れそうになった頃、わたしは聖園ミカにあらためて感謝を伝え、学生寮を後にした。随分と迷惑を掛けてしまった気がする。いや、掛けた。
少し歩くと、見覚えのある影があった。あの二人組は………昨日の不良たちだ。とっさに物陰に隠れて様子をうかがう。
「なんで………こんなところに……?」
「………! 〜〜!!!」
「遠くて何を言ってるのか分からない……」
手に何か………ペットボトルか瓶……何だろう…………手元がチカチカ光ってる……あっ
(……あれ、多分火炎瓶だ!!)
もしかしてあの位置は、ミカ様の部屋に直接投げ込もうとして……?!
(どうしよう………!!)
火を付けるのが見えた。もう考える時間がない。でも、恐怖で立っているのが精一杯だった。
【私の流星を思い出して】
頭の中にあの光が満ちていく。
(お星さま……どうか力を貸してください! わたしは強くなりたい、あなたの向こう側にいるミカ様を………守りたい!!!)
体を縛る恐怖が、溶けていく。拳を握り締めた。体が勝手に前へ走り出した。
「こっちを見ろーーー!!!!!!!!!!」
「!!?」
人生最大の声量で叫ぶ。
「うわぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
「あのヤローは……! これでも食らいやがれ!」
自分に向かって火炎瓶が飛んできた………駄目だ絶対食らってしまう。撃ち落とせば……いや、もう間に合わない………!
火炎瓶は自分の身体に当たって砕け、炎が全身に広がっていく。
「っ………!!!!!」
【腕力や銃の上手さだけが強さじゃない】
足は止まらなかった。むしろ、強く地面を蹴って、駆け抜けていく。
「マジかこいつ!!!?」
私は火炎瓶を投げてきた不良に飛び掛かった。
「うわっあっ!! ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛!!!!!」
私は、1人では彼女たちを倒せない。弱いから。だから…………こうやって…………
「馬鹿野郎離せおい!!! 熱っつ………!!! ……クソッてめえ!!!」
「た゛す゛け゛て゛!!! た゛す゛け゛て゛エ゛エ゛ェ゛エ゛ェ゛エ゛エ゛エ゛!!!!」
「………………………」
─────こいつだけは焼き尽くす。
「クソっ!! どけっ!! どけよ!!!」
ダダダダダダッ!!
銃で撃たれた感覚があったが、特に痛みを感じなかった。
「どいてくれよ!!!!」
ガチャ、ダダダダダダッ!!
どんなに撃たれても、どうでもよかった。
「あ………ああ…………そんな」
「ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」
マウントを取ったまま、岩のように動かなかった。燃える岩に焼かれた不良はもがき泣き叫び、それを聞いた学生寮の生徒が消化器を持ってくるまでは、そこまでかからなかった。
ーーー
「あのさ………」
「うん………」
正座させられている。
「あんた………その、話の流れは理解したんだけどさ……」
友達が腕を組んで仁王立ちしている。
「うん………」
「『聖園ミカがいる学生寮教えたら、昨日絡まれた不良を捕まえて自分ごと焼き尽くした』なんて想像できないじゃん」
「うん………」
「何故かあんたは軽傷で助かったからいいけど…………もっと他になかったの? 力負けしたらどうするつもりだったの?」
「あぁ……」
確かに。
「あぁ………じゃないよ。銃で撃てば良かったじゃん」
「外すと思った」
「……………じゃあせめて火炎瓶を避けようよ。服が黒焦げじゃん」
「えっと……避けられなかった」
「はぁ…………」
「ごめん……」
「謝んなってば………あんたそんな、そんなに聖園ミカが大事なの? 見捨てるって選択肢は思いつかなかったの? 友達じゃないでしょ」
「………………(ふるふる)」
首を横に降った。
「助けて………くれたから………」
「………それだけ?」
「…………………強く、なりたかった」
「そんなに【昨日見た流星】がキレイだったの?」
「…………うん」
「そっか………うん。全部わかったよ。ありがとう。ちょっとあの人と話すから、大人しくしててよ」
「わかった」
友達はため息を吐いて、ミカ様の方へ歩いていった。一方で、私が焼いた不良は救急車で運ばれていった。苦しみ怯えるような声が聞こえていた。元気そうだ。
ーーー
「聖園ミカ」
「あ、うん。」
「私はあのバカの友達です。先日はありがとうございました」
「いや、私は別に……」
「私は政治とか関心がないですから、あなたの罪とこれからに興味がありません。自分とあのバカさえ良ければなんでもいいと思ってます」
「………………」
「だから、時々でいいので、あのバカにかまってあげてください。私にはよく分かりませんでしたが、あなたのお星さまに駆られて、変わってしまったそうです。責任、とってください」
「……分かった。あの子は、私が守るね」
「ありがとう。聖園……ミカさん」
ーーー
その日の晩、先生とミカのモモトーク
ミカ「力が足りないと思ったことはない。自分が思い通りになる程度にあればいい………そう思ってた」
ミカ「でも、どうしようね、あれから守りたいものが沢山増えちゃった☆」
先生「……? なにかあったの?」
ミカ「どんどん増えていくんだ………」
ミカ「私に手を差し伸べてくれたり、人知れず私のために戦ってくれたりする人たちが」
ミカ「今日なんか、私に『助けてくれてありがとう』って感謝を伝えに来た人まで現れたの」
ミカ「おかしいよね、私って悪い子なんだよ? 優しくされたり、守られたりなんて………感謝なんてありえないのに」
先生「そんなことない。お礼を言うのは普通のことだよ」
ミカ「その人は次に何をしたと思う?」
先生「え…………何って?」
ミカ「私に復讐しにきた人を、勇気を振り絞って倒したんだ。自分ごと、相手を焼き尽くしたの」
ミカ「私の部屋に、火炎瓶を投げ込もうとした所を見つけて、自分が身代わりに火炎瓶を受けたんだって。そのまま相手を捕まえて……ね」
先生「?!」
ミカ「その人は軽傷で済んで、復讐に来た人は病院送りになった。軽傷だったのは体質だったのかな。よくわかんない」
ミカ「その人が傷ついたのは、その人の責任と言うこともできる…………かもしれない。けどそれは嫌、私の為に誰かが傷ついていくの見て見ぬ振りしたくない」
ミカ「約束したの……守るって。だからもっと力が欲しい。あの人達をみんな守れるように」
ミカ「…………私、強くなりたい」
先生「ミカ……」
先生「見ているしかできない経験は、先生も沢山あったよ」
先生「その時にできることは、何をすべきかを教えるか、あえて何もせずにその人を信じて見守ること」
先生「ミカを信じる人たちを、ミカが信じてあげれば良い。見守ることもまた強さの一つだ」
先生「だけど、ミカ自身が強くなりたいのなら、私は協力を惜しまないよ」
ミカ「………後悔しない?」
先生「するもんか」
先生「あなたは私のお姫様なんだからね!」
ミカ「……!!!」
ミカ「……………わーお」
ミカ「スクショしちゃった☆」
ミカ「じゃ、もっと強くしてね、先生!」
ミカ誕生日おめでとう小説です。(ハイパー大遅刻)(内容は誕生日関係ない)
ミカ、誕生日おめでとう。君はわたしの導きの星です。