そこの陰キャ系メガネ女子、強者。   作:メガネだいすき

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脳筋も意外と似合うんじゃないか説

 

一級魔法使い試験が開催される日が少しずつ近づいてくる。とはいえその試験に向けて私が出来る事は、ひたすら鍛錬を積む他にない。

 

さて、鍛錬していく内に「あれ、これも鍛えた方がいいのでは」と思う事柄があった。

 

一般的に魔法使いは近接戦が得意ではない。防御魔法は、物理に対する耐性が魔法に対する耐性よりも低いというのもあり、基本的に近接戦で挑むような立場を取ることはあまりないと言える。

 

魔法も発動させてから撃ち出すまでにタイムラグがある。その上、魔法を発動させるに至るまで魔力に関わる繊細な操作性を求められる。

 

死ぬか生きるか、その極限にあたる状況下でも冷静に魔法を発動させるだけの精神性も求められるのだ。

 

そう考えると、いざという時に備えて最低限の体術ぐらいは身につけた方がいいのではないかという考えに至る訳である。

 

……といっても、近接戦でも最強になる訳では無い。むしろ魔法使いを主として戦うと考えると"近接戦に持ち込まれないよう作戦を練る"方が有効だったりもする。

 

ただ……うん、魔法使いが、近接戦もイケるってゆーギャップを狙ってみようかという完全に私情な理由という訳なんだけど。

 

……魔族であるリーニエの<模倣する魔法(エアフェーゼン)>。彼女は魔力探知が上手く、戦士の動きに基づく"魔力の流れ"を察知しそれを元に"模倣"する。

 

実際、模倣は効率的な方法の一つと言えると思う。知識を蓄えるだけで強くなれるという訳ではなく、実施して初めて"強み"に繋がる。

 

だからこそ、基本的にどの動きであっても"模倣"出来るというのはめちゃくそ強いのだ。だが、私にその魔法を習得できるかというとまだまだ厳しいと言わざるを得ない。

 

今の私は、魔法オンリーでいきなり熟練の戦士のように動けるかというと出来ない。そもそも熟練の戦士が戦いにおいて最適な動きを取れるのは、戦いを通して"経験"や"身体の動き"を得ていると考えている。

 

また魔法使いと比べて、戦士の方が身体的強度が高いのは言うまでもない。それに伴う"筋肉"もあって戦士に合う動きが出来る。

 

まともに筋トレさえしない私が、ただでさえ筋肉がないというのに戦士の動きを"模倣"した所で筋肉痛に襲われて動けない未来しか見えない。

 

――人間と根本的に肉体構成が違う"魔族"であるリーニエだからこそ、<模倣する魔法(エアフェーゼン)>を有効に使えるというのだろう。

 

……筋肉、筋肉ね。

 

魔法を唱えるには自分の中で確たるイメージが必要だ。筋肉を増やしたいから筋肉を増やそう! ってなるだけで上手く行くほど魔法は甘くない。

 

私が思う筋肉は、まぁ骨格筋だろうか。単に筋肉を増やすのではなくそれに伴う神経細胞やホルモンなんかも関係してくる。

 

人体は、そう単純ではない。複雑なシステムの上で成り立っているからこそ人体に関わる魔法は難易度が高い。

 

うーん。でも、女性だと筋肉があった方が"しなやかさ"があって美しい身体になるとか耳にするしな。思いのほか馬鹿には出来ん。

 

ほんっっとうに、魔法って奥深いなぁ。同じ魔法といっても人が扱う"魔法"と、魔族の扱う"魔法"は違う。

 

元々魔族が当たり前のように行使していた飛行魔法も、人側にも使われ始めたのだが、あれは術式を転用したもので構造的には分析がまだ進んでいないと聞くし。

 

そう考察を深めながら今日も今日とて鍛錬を積んでいくのだった。

 

 

◇

 

 

――エルケと初めて会った時は、特にこれといった感想はなかった。強いて言えば、人見知りなのかしら? とそう思ったぐらいでしかなかった。

 

だけど、彼女と接していく内に薄々勘づいていた。

 

彼女は紛れもなく、私より強いと。仮にも私は魔法学園を首席で卒業している。それに、一級魔法使いである祖父という恵まれた環境下で育ってきたと自覚している。

 

過信はいけないが、かといって自信がないのもなにかと問題がある。だからこそ私は首席で卒業できたという事も自信として持ち続けてきた。それに伴い魔法に関する鍛錬も手を抜かずに取り組んできた。

 

「<石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)>」

「<身体の硬度を上げる魔法(オンデュルテ)>」

 

それなのに、このエルケという人は奇抜な魔法を唱えて私に対抗してくるのだ。その証拠に、私の撃ち出した石が彼女に当たっても物ともせず徐々にこちらとの距離を詰めてくると来る。

 

防御魔法を展開もせずに、よ……脳筋もいいところだわ、ほんっっっとうに……!!

 

私が思うに、彼女はいわゆる"万能型"なのだろうと勝手に思っている。この前、精神に関する魔法を開発したとか思っていたら今度はこんな脳筋じみた魔法を出してくるのだから。

 

だから――エルケという人物は、乗(・)り(・)越(・)え(・)た(・)い(・)目標となっていた。

 

学園にいた頃は、魔法で競える相手はいようとも"かなわない"と思える相手はほとんどいなかった。だからこそなのかこうも明確に"かなわない"と思わせる彼女だから。

 

だから――私はエルケに挑(・)戦(・)す(・)る(・)。

 

 

「<鋭い石を弾き飛ばす魔法(シュドラーテ)>!」

 

 

私が現在、考えうる最大ともいえる威力を持つ魔法。ただ石を撃ち出すのではなく魔法によって浮き出す石を鋭(・)く(・)さ(・)せ(・)撃ち出す。

 

鋭さがある分、威力は<石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)>より高くなっている。

 

「――!」

 

……だけど、エルケは、魔法がかかった身体で受けるのではなく防御魔法を展開し防いだ。鋭くさせた石は粉砕される終いとなる。

 

薄々感じてはいたのだが、やはり防御魔法を破ることは出来なかった。

 

――分かっていたことだった。エルケという人物は、凄まじい程に魔法の才があると。一見奇抜な魔法だが、それでも私の魔法を受けてなお物ともしないという時点で、明白だった。

 

でも、まぁ防御魔法を展開させたことは……喜んでいいのかしらね。

 

――見てなさい、エルケ。いつか、絶対に貴(・)方(・)を(・)超(・)え(・)て(・)や(・)る(・)ん(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

エルケという壁はとてつもなく高い。だが、高いからといって諦める理由などどこにも無いのだから。

 

「エーレさん」

「……何よ」

 

ひとまず休憩という形で、戦闘姿勢を解いた所にエルケから呼びかけられる。

 

「さっきの魔法、凄かったです!!」

「―――え?」

 

そう口にしたエルケは、こちらに近づいてきて――相変わらず目はメガネで見えないが、純粋に凄いと思っているってことは伝わってくる。

 

その為、意を突かれたように口をぱくぱくとするしかない。

 

「っ――――ちょ、ちょっと離れなさいっ」

 

ようやく冷静になった時、距離がちょっと近すぎなんじゃないか。そう思った私は何とも言えない感情を持て余しながらもエルケを押しのけようとする。

 

「<鋭い石を弾き飛ばす魔法(シュドラーテ)>、とっっても良いです!! あやうく魔法が破れるところでした! 特に石を鋭くさせる行程がグッと来ます!!! 一体どういう方法で石を鋭くさせているんですか? あ、もしかして風圧で削ったりとか? でも風圧は難しい気がする……エーレさんだからこそ出来た魔法と言っても過言ではないですね! これは私も負けていられません――――」

「ッ、エルケ? 聞いてるの?」

 

妙に早口で何かを話しかけてくるエルケを押しのけようとしても、思いの外力が強くて押しのけられない。

 

距離感おかしいんじゃないの……! こんな近くまで顔を追われると気まずいったらありゃしないッ。

 

「もっと耐えられるよう身体の硬度を上げてみるしか――でも、<身体の硬度を上げる魔法(オンデュルテ)>はそのまま体の硬度を上げるんですし、これ以上となると身体が動きにくくなるんですよね。今ぐらいの硬度が最大限身体の動きに支障がないぐらいですし、もっと研究しなきゃですね! ええと、それならば最大限身体の動きに支障が生じないレベルを引き上げるとかはどうでしょうか。それであれば、やみくもに鍛えるかよりは効率的に出来そう――――」

「ああ、もう! 離れなさいってば!!」

 

相変わらずなエルケを押しのけようとするエーレであった。

 

 

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