※トリックも何も思いつかなかったので続きはないです
わたし、女子高生・
能力の由来不明、原理不明、詳細不明!
なんか知らんけどいつの間にか未来が見えるようになっていた!
なんとなく言い出すタイミングを逃したため、クラスのみんなには内緒である!
ただ、自由自在になんでも予知できるというわけではない!
見えるのは未来の「状態」のみである!
例えば今、わたしが見ている自室の時計。
朝の7時を針で指している時計の1時間後を予知すれば、わたしの目には、朝の8時を指している時計が映る。
そういうことである。
さらに例えば、定期券の確認ついでに覗いたわたしのお財布。
現状すっからかんで、お父さんに「今度テストで赤点取ったら小遣いナシだからな」と言われているこいつ。
こいつの1週間後を予知すれば、わたしの目には、きっちりお小遣いの入ってきているお財布が映る。
そういうことである。
さらにさらに例えば、目の前の鏡に映っているクールでキュートな黒髪美少女女子高生。
こいつの10日後を予知すれば、わたしの目には、順当に手にしたお小遣いで、楽しくお出かけに行くわたしが映る!
そういうことである!
そして本日はテスト当日!
勉強は全くしていないが、この能力があれば赤点回避も容易い!
少なくとも、選択問題は正解確実である!
仮にA、Bの選択肢を持つ2択の問題が出題されたとして、適当にAを選んだ状態で答案の3日後の状態を予知する!
赤ペンでバッテンがつけられた状態の解答用紙が見えれば、Aは不正解!
正解はBだとわかる!
これは3択や4択、100択問題であろうと同じである!
わたしの予知能力に、リスクやコスト、そして回数制限は無い!
総当たりでド級のリトライをし続ければ、どんな選択問題も絶対確実に正解できるのだ!
選択問題以外では回答の候補を絞ったり凡ミスを防いだり程度の効果しか見込めないが、それはまあ、うん。
どうあれ、わたしは赤点を回避した未来の財布と自分を既に見ている。
みんなが憂鬱な気持ちで挑むこのテストも、わたしにとっては既に確定事項!
赤点回避が決定した、予定調和に過ぎないのだ!
「じゃ、はじめー」
先生の開始の合図。
幸いなことに、今回は選択問題の数が多い。
皆が慌てて問題を読み解く中、わたしはただ一人、解答用紙に向けてドヤ顔で予知を発動させる!
瞬間!
わたしの目に映ったのは!
真っ赤な血染めの解答用紙であった!
…………。
「……?」
「どうした相良ー」
「あっいえなんでもないですー」
可愛らしく首を傾げるわたし。訝しむ先生に生返事を返しつつ、再度、3日後の答案を観察する。
うわ紙ぜんぶ真っ赤……血が「かかった」んじゃなくて「浸かった」感じだよね……そもそもこれやっぱ血……血かな? たぶん血だと思う……。少なくともケチャップではない……。
さて、ここで追加情報。
わたしの予知は視覚だけではなく五感全てで「状態」を予知することができる。
つまりこう。わたしは答案をくんくんと鼻で嗅いだ。
味で確かめようかとも思ったが、流石に試験始まっておもむろに解答用紙を舐め始めたら変態過ぎる。初登場時のブチャラティかよ。
それはそれとして、うん、鉄臭い。
完全に血だわ。
どうすんのよこれ。
わたしは「いやはや参っちまったぜ」という笑みを浮かべながらペンを捨てて腕を組む。
傍から見れば、テスト開始早々問題に詰まって投げ出したように見えるであろう。
いやしかしどうしたもんだろう。
まあ……答案が血染めなせいで何も読めないから解答も分からないってのは置いとこう。
というかそもそもマジで赤点回避したいなら、選択問題がどうのド級のリトライがどうだのと下らんことをする必要は無い。
一週間後の未来、テストが終わって模範解答が発表された後に、今座ってる机にその模範解答をそっくりそのままラクガキしときゃあいいのだ。
そうすれば、現在のわたしは、「模範解答がラクガキされた数日後の机」の「状態」を予知できる。
これなら満点も余裕である。
ただ、私の予知は、『誰かに私が予知能力を持っていることがバレている』と無効になる。
わたしそんな頭良くないし、いきなり満点とか取ったら疑われちゃうんだよね。
リスクもコストも回数制限もないが、発動条件は存在するのだ。
ひとまず、わたしは3日後――72時間後を対象にした予知能力を、1時間ずつ前に戻していく。
71時間後の答案の状態、血染め。
70時間後の答案の状態、血染め。
69時間後の答案の状態、血染め……。
…………。
……60時間と38分後か。
60時間と37分後の時点では、まだ血に染まっていない状態の答案を見て、わたしは答案が血に染まった時刻を確定させる。
現在、火曜日の午前10時ジャスト。
すなわち、答案が血に染まった時刻は、えーと……木曜日の夜、午後10時38分ということになる。
そんな時間に答案がある場所って言ったら、きっと職員室だろうし……そこで誰か……先生か用務員さんが襲われ、この解答用紙が血染めになる、ということだろうか? いやわかんないねこれだけじゃ。
でも、ここまで割り出せたなら、その時間に警察に匿名で通報しておけばいいんじゃないだろうか? そうすれば事件も未然に防げるんじゃない?
その辺どう、3日後のわたし?
事件、防げた?
机に書いて?
『ダメだわ』
ダメなのか……。
3日後のわたしがダメならもうダメじゃね? というかそもそも普通に考えてわたしが事件防げないってどういうこと? わたし、テレビ画面とか見れば犯人とか全部予知できるんだよ?
『いやもう完全に迷宮入りで何も分かんにゃい。警察が学校来てる最中になんか悲鳴上がって見に行ったら血溜まりだけあったって。犯人はまったくわからん。死体とか残ってないから被害者も不明』
マジかよ。
とんだ完全犯罪だなおい。
……えー、じゃあつまり、どうすればいいの?
試験時間:60時間と38分。
配点:人の命。
さて問題です。
この血染めの答案を、白紙に変える方法は?