Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
ギリシャ神話には数多くの英雄が存在する。
神々からの十二の試練を乗り越えし大英雄『ヘラクレス』、歴史に名高いトロイア戦争において最たる戦士『アキレウス』。挙げていけばキリが無いほどだ。
そして同時に怪物などの類、反英霊も数多く存在する。
オルトロス、ゴルゴーンなど多くの魔獣を産み落とした怪物の母『エキドナ』、数々の英雄を乗せたアルゴノート号の一員であり、破滅を呼び寄せる裏切りの魔女『メディア』。
誰もが英霊、反英霊として段違いの実力を持ち、誰もが強力な使い魔(サーヴァント)となる。必然的にギリシャの英霊は聖杯戦争では、真っ先に警戒すべき英霊であると認識されている。
それが例え、マスターが平凡な魔術師であろうともだ。
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未だ古代の神秘が残るギリシャという国では、こうした手付かずの自然は数多く存在している。そうした手つかずの自然は、名のある魔術師の家系が管理している事が多く、一般人では入る事すら出来ない場所も多々ある。
ギリシャの何処かにある、名も無いような広大な森林も、その一つだった。
「おぉ……おぉ、おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
大自然溢れる新緑の中であっても、大凡生き物の気配すら感じない深い僻地から、突如として森林全体を揺らすような暴風が波及する。
その少し後に遅れて、男のしゃがれた歓声が林の間で矮小にこだました。
「ついに……ついに英霊を!!」
自然というのは、一種の魔力タンクとなっている。地脈から漏れた魔力が大気に溶け合い、濃厚に漂っている。
そのような環境であればこそ、例え魔力の足りない凡才の魔術師でも、英霊の召喚という大儀式をこなす事が出来たのだろう。
そんな前準備をした事すらも忘れて、男は大儀式をたった一人で成し得た事実に、自らの才能が凡夫では無いと証明したと錯覚すら覚えてしまう。
そして、凡夫では無い自分が、わざわざ選りすぐって召喚した英霊もまた、かの怪物である事を疑わない。
森林の僻地で、自然の木々が干渉しないように生まれた開けた隙間、そこに土を削って描かれた複雑怪奇な魔法陣の上に、その怪物は静かに佇んでいる。
──正しく神話より再現された怪物だった。
その頭は数々の人間を喰らってきた鉄の牛仮面、その身体は英雄たちの刃によって刻まれた傷だらけの巨体、その手に持つのは浴びきれぬほどの血に浸されて錆びた双斧。
そして、そこに居るだけでも、有象無象の人間を恐怖に陥れてしまう、いっそ暴力的なまでの存在感。それこそ本物の怪物が現れたのだと、しかと男を心の奥底から認識させる。
「これが……かの有名な「──────」か! なんと勇ましく、なんと強大か!!」
僅かに木々の合間から差し込む月明かりだけでは、その全貌を充分に感じられない。より目に焼き付けようと、男は被っていた黒いローブのフードを慌てて脱ぎ捨てる。
フードから現れ出たの四十代後半といった所だろうか、それ相応に歳を経ているような顔付きだ。だが、それは眉間に多く刻まれた皺や、黒毛に混じった白髪、窪んで黒くなった目で実年齢より老けて見えさせているせいだった。
属性魔術の名門『ザー家』の長男、ザー・コスフィンは未だ三十代前半。だというのに、その姿はまるで年老いた人間のように、矮小ながらに歪んでいた。
「これで奴らを……父上を、見返す事が出来る!!」
コスフィンは召喚した怪物の姿を目に焼き付けながら、頭には自分に家督を譲らない父親と、次期当主となる弟の顔を思い浮かべ、言いようもない憎悪を胸の内で募らせる。
──憎悪の理由は、つまり家督争いだ。
長男であるザー・コスフィンは、ザー家の次期当主には相応しくない。それよりも才能豊かな次男に継がせるべきだ。それが父親であるザー・ダイディの判断だった。事実、それは魔術師としては正しい判断でもあるだろう。
なにせ、コスフィンは魔術師としては平凡だった。魔術を扱う腕は少しばかりあっても、その身に蓄える魔力の総量はお世辞にも中の下と言った所だろう。
一方で次男は魔術の扱いや魔力の総量は、天才と呼べる領域に居る。勿論、それは長男であるコスフィンを上回っていた。
ならば、先に生まれただけの長男より、才能豊かな次男に家督を継がせるのは、血脈よりも才覚を重んじる魔術師一門に取って当たり前だろう。
だが、コスフィンはそれが許せない。魔術を学んでから、当主になるべく努力を重ねて来たというのに、その全てが否定されたようだった。
──そんな絶望の折だった。弟の家督の襲名が決まったあの日、安酒場でヤケ酒を煽っていたコスフィンの手の甲に、真っ赤に刻まれた令呪が宿っていたのに、気が付いたのは。
その時、酩酊するコスフィンの頭に浮かんだのは、聖杯という膨大な魔力器と、家宝として祀られている、この世の何処かに存在したという、神話時代の建物の破片。
聖杯とは、それ自体が魔術師として功績。それさえあれば、家督を継ぐに相応しい実力を示せる。そして家宝さえあれば、あの怪物を召喚する事が出来る。
そう思い付いてから、コスフィンに躊躇いはなかった。そして躊躇いがなかったからこそ、こうして今に至っている。
──長い長い一人語りを頭の中でようやく終えると、コスフィンは怪物へ誰が主人かを知らせようと踏み出す。
しかし、その無自覚な威圧感に、これ以上近付けないとコスフィンの足が動かなくなる。故に情けなくも、自らが呼び出した英霊に対し、遠巻きから叫ぶ他なかった。
「私がお前のマスターだ!! これからは私の為には働け! バーサーカー!!」
バーサーカー、怪物はそう呼ばれる存在が自分の事だと気が付かずに、徐に首を傾げた後、ようやく理解したらしく、牛の頭をした鉄仮面を訝しげに指す。
「お、れ。バーサーカー? よろ、しく」」
赤ちゃんのように辿々しい言葉遣いに、体格に似合わない精神年齢の低さが垣間見える。それをコスフィンは不自然だと思わなかった。
狂気的な在り方や行動をした者が選ばれる『バーサーカー』クラスのサーヴァントは、漏れなく『狂化』を有している事は既に知っている。
この『狂化』と言うのは、身体能力にバフを掛ける代わりに、サーヴァントから言語や思考能力を奪う、言わば諸刃の剣のような能力だ。何処かの記録によれば、マトモに言葉すらも喋れない者も居たらしい。それを思えば、辿々しくも喋れるバーサーカーに、コスフィンは意思疎通が出来る幸運に安堵すらも覚える。
その安堵に気が緩んだのだろう。威圧感に硬直していた身体がふと軽くなり、コスフィンは自らが上だと示すかのように、尊大に鼻七を膨らませながら、自分より遥かに高い場所にあるバーサーカーの顔を見下ろす。
「お前には期待しているぞバーサーカー。なんせ、あの「──────」と呼ばれた怪物だ」
「うぅ……」
鉄仮面の内側から不服そうな唸りをあげる。どうやらその呼び名は気に入っていないらしい。だが、そんな事はつゆ知らず、単にバーサーカーが唸っただけだとコスフィンは切り捨てる。
知っていたとしても、コスフィンには関係のない事だ。幾ら英霊と言えど、所詮は魔術師と契約した使い魔。令呪がある限りは逆らう事が出来ない道具。
人は道具に同情するか? 道具とは、己の為に使う物であり、そして魔術師に取っては、のし上がる為に使い潰す物だ。
そしてコスフィンは生まれつき魔術師であり、その世界においては、常識的な魔術師ともいえる。
──常識的な魔術師とは何か。哲学のような話ではあるが、その実態は単純だ。
目的には従順に、理想には忠実に、そして手段は問わない。
「さぁ、今に見ていろ! 私こそが真の魔術師だ!!」
果たして、力を手に入れた魔術師が何をするのか。それは魔術師のみぞ知る。
という訳で、各マスターのプロローグ第二弾は、名家の長男『ザー・コスフィン』と
バーサーカーとなります。
FGOをされている方なら、今回のバーサーカーの正体はお気づきかと思われますが、他のサーヴァントは一部、公式様から選出させていただいています。
オリジナルサーヴァントも当然参加しますので、一体どのサーヴァントが参加するのか、その正体が誰なのかなど、推測していただける嬉しいです。
『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426
作品の高評価や感想は何時でも待っています!!
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