Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
ありふれた日常と、少しの違和感
榊は微睡むような意識の中、ある夢を見た。
それは何処だろうか。まるで格式と歴史に満ちた王城のような場所だ。
「文句ある奴ぁ、掛かってこい」
男が剣を一払いし、滴る鮮血を振り落とすと、挑発でもするかのように顎を上げる。その周囲には白銀の鎧で身を飾る屈強な騎士達、そして玉座に座す王の前で、余りにも堂々とした態度であった。
だが、それを咎める者は居ない。男がしでかした事、そして今しがた行った蛮行は、その首を叩き切っても尚、許されざる所業だ。
しかし、それは出来ない。いや、不可能だと言える。それほどまでに男は最強であった。
例え、幾多の戦場を駆けた歴戦の騎士達が、今この場で一斉に襲いかかろうと、男はその屍の山の上で暢気に欠伸でもするだろう。それは誰もが判っている当然の事実だった。
それは無論、男が仕える王も同じだ。
王に取って、男の存在は必要だった。未だ戦乱が止まず、無辜の民が傷つき続けるこの国を治めるには、高潔な精神では無く、無双の武力が必要だった。
しかし、そうだとしても、王は男を手放さざるを得ない。国を治める立場だからこそ、その蛮行は見過ごす訳にはいかなかった。
「────、すぐに此処から立ち去るがいい」
王は一言、男の名前を呼び、追放を命じる。そこに怒りや失望はなく、ただ無機質にそう命じた。
それに対し、男は異議を唱える訳も無く、自身を見据える王の冷めた眼光に、指を突き立てた。
「王よ、俺は必ず戻る」
そして、男の物語は此処から始まる。
そこには、誇りある英雄譚も幸せな結末も存在しない。あるのは、ただ汚泥と恥辱に塗れたロクでもない所業のみ。
最低最悪の騎士としての物語だ。
「これが俺の始まりだ。シッカリ覚えとけよクソガキ」
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目が覚めたのは、頭上から差し込む日が眩しくなった頃だった。
「……んっ」
微かな微睡みの底から、薄まっていた意識を呼び覚ます。そして最初に気がついたのは、背中を支える、やたらと反発力がある堅い感触だった。
その慣れた感触は、間違いなく自室のベッドに敷いている中古のマットレスだ。そう思い、閉じていた瞼を開くと、やはりと言うべきか、少し黄ばんだ白天井とドーナツ型の照明が目に入った。
「俺、何で、自分ちに……」
上体を起こそうにも、身体は無数の針金に簀巻きにでもされたようにピクりとも動かない。しかし首だけは動くようなので、横に倒して部屋の様子を見る。
そこにはデッキに置かれた小型テレビや背の低い一人用テーブル、脱ぎっぱなしの服に買ったは良いけど、全く読まない本棚の漫画全巻。いつも通りの小汚い自分の部屋が目に映った。
いつ自分の部屋に戻ったのだろうか。あの牛頭に襲われる直後で記憶が途切れていて、その後に何が起こったの全く覚えていない。
一体何が、あったのか──だが、何があったにしても、可笑しくも無い。既にそれだけの事を経験しているのだ。何があろうと驚きはしない。
「起きたか」
「おわっ!?」
いや、普通に驚いた。ベッドの地平線から美少女の顔が間近に飛び上がって、心臓がバグっと爆発するぐらいに鳴った。
そして、その美少女の顔がセイバーだと気がつくと、初めて家に上げた女がコイツだという事実に気がつき、途端に心臓の鼓動どころか、衝撃に固まっていた意識もスッと収まった。
「露骨にガッカリしてんじゃねぇぞバカマスター」
「ヘブシッ!!」
鼻面が陥没したんじゃ無いかというセイバーのデコピンに、榊は身悶えることも出来ず、悲鳴だけを喧しく上げる。
「おまっ、どうして俺の部屋に居んだよ!? 」
そして、悶絶物の痛みに漸く慣れると、何故自分の部屋にセイバーが居るのかという、当たり前の事実に気がついて、榊は途端に目を丸くする。
するとセイバーは、呆れたように口をへの字に曲げると、鎧姿の胸元をまさぐり、一枚のメモ用紙を取り出した。
「ぶっ倒れたから俺が部屋まで運んでやったんだろうが。ご丁寧にも、あの糞女狐が部屋の場所のメモを残して消えやがったしよ」
そう言って顔面間近に突きつけられたメモ用紙には、自宅マンションまでの簡単な道筋と部屋番号、それと隅の方に『また会いに来るのでして。それまでに自分のサーヴァントくらい手なづけておくのでしてよ』とやたら達筆な文が書かれていた。
「誰が書いたか丸出しだな……」
あの特徴的な口癖は文字であっても健在らしい。頭に上から目線で見下す巫女の嘲笑顔を思い浮かべる最中、自分では無い盛大な腹の音が部屋に響いた。
「つかよぉ、なんか美味いもの作ってくれよマスター」
自分で無ければ、セイバーしか居ない。しかも女性らしく恥じらうどころか、我が物顔で飯をねだってくる始末だ。
「図々しいな、お前…………ってか、無理。今俺の身体動かねぇから」
呆れながらも榊は今一度身体を動かそうとするが、やはり微塵も身体が動かない。出来るのはベットの上で芋虫が如くウジウジ蠢くぐらいだった。
その様子に最初、セイバーも何やってんだという怪訝な視線を送っていたが、榊の顔をマジマジと観察すると、ようやく合点が要ったように頷いた。
「あぁ、そりゃ動かねぇわな。テメェ、魔力がスッカラカンじゃねぇか」
「魔力? 何言ってんだ、いつ俺がウィザードに転職したんだ」
「惚けてんじゃねぇぞ。オレに魔力がほぼ来てねぇじゃねぇか」
「ちょっと何言ってるか分からないですね……って、止めて! ウザかったなら謝るからアイアンクローは止めて!!」
メキメキと頭蓋骨から響いちゃいけない音が響き出し、突然訪れた生命の危機に、榊の記憶が、昨日覚えたばかりの知識を導き出す。
「あれだよな! そう! 生命力! 生命力を魔力に変える的な!! MPパサー的なアレですよね!!」
「ったく、判ってんじゃねぇか。つぅ訳で、魔力を回復しねぇ限り動けなさそうだな」
漸くセイバーのアイアンクローから解放されるが、まだ頭蓋骨が締め付けられているような痛みは残っている。しかし、手当てをしようにも身体が動かない。
そう自分の身体ながらに、もどかしさで歯がみをしていると、セイバーが声をかけてきた。
「おい」
男らしく突き出されたのは、小手を脱いで晒された白い親指。その中心には、噛み後から滴る一筋の血。
「舐めろ」
……何を舐めろと?
いや、分かってはいるが、聞いたら倫理とか健全法に違反する気がする。そもそも分かってしまっている時点で人生レベルで道を踏み外しているかも知れないが。
「お、俺に血液プレイをさせようってのか! そうはいかねぇぞ! 俺にR-18G系の趣味はねぇからな!!」
「何言ってんだテメェ!! 魔力供給だよ魔力供給!! ゲスな妄想してんじゃねぇぞ!!」
どうやらプレイの一種ではなく歴とした理由があるらしい。それならそれで良い。残念に思っていない、別に美少女との変態プレイを想像して、ちょっとだけ興奮など榊はしていない。
「そ、そうだよな……で、供給っていう事は魔力を俺にくれるって事だろ? わざわざ血舐めるんじゃなくて他の方法はないのか?」
「そんなのサーヴァントであるオレが知るか。理屈は知らねぇけど魔力が体液に溶けてるから手っ取り早いんだとよ……ったく、本当ならマスターがサーヴァントにやるもんだぜ」
体液という妄想ワードに、一瞬だけ下半身が反応しそうになるが、バレたら今度は頭じゃ無く、股間を握りつぶされそうなので、自力で黙らせる。
とにもかくにも、おそらく自分よりも詳しいであろうセイバーが言うのなら、きっとその通りなのだろう。だとしても、ちょっとアブノーマルなプレイに、榊としてはかなり抵抗感はあるが。
「ま、まぁ、そ、そういう事なら? 舐めてやらんこともないけど?」
「何で上から目線だよ、早くしろ」
「お、おうぅ……や、やってやる。やってやる」
恐る恐るに舌の先端を伸ばし、流れ落ちるセイバーの血へと近づける。
──敢えて言わせてもらうが、榊には女性の血を飲んで興奮するほど業は深くないし、プラトニックな関係から始まる純愛イチャイチャ系が好みだ。より細かく言えば、幼稚園からの付き合いの幼馴染(ボクっ子系)が、ある日別の男性に告白されているのを見て……。
「良いからサッサと舐めろ」
「うむっ!!」
と言うか、榊の羞恥心とか躊躇いとか、そういうの全部すっ飛ばして、セイバーから指を押しつけられた。
潤っていく──乾いた大地に雨が降り注ぐように自然と交わるかのように、そして血肉となって溶けていくように、喉を通る極少量の血液が全身に染み渡っていく。
数分の後、セイバーの指が唇から離れる。その時には、既に金縛りのような倦怠感は抜けきっていた──代わりに大切な何かを失ったような気がするが。
「俺……汚れちゃった」
「気持ち悪りぃこと言ってんじゃねぇよ。兎に角、これで動けんだろ」
「おっ、本当だ……っ!!」
言われて、試しに上半身を立たせようとすると、いつも通りスムーズに動いた。しかし、その時に視界に入った、自身の身体の惨状に、今更ながら気がついた。
それは最早、ボロボロだと言う他なかった。お気に入りの短袖ジャージやチノパンは擦れに擦り切れて、衣服としては見る影もない。なのに、その下から覗く肌には傷一つ付いていない、奇妙な状態が出来上がっていた。
「何だコレ!? 俺に何があったんだセイバー!!」
「……知らね」
突然で飲み込めない現状に、思わずセイバーに尋ねるも、途端にそっぽを向いて応えようともしない。
だったら自分で思い出そうと、記憶の隅を探ると、思い浮かんだのは昨日の最後の記憶──鉄仮面の巨大な怪物が、自分の前に立ちはばかる光景。
「っ!!」
思い返すだけでも、榊の全身に新鮮な死の恐怖が蘇る。まるで今この瞬間が、走馬灯の中なんじゃ無いかと、錯覚してしまうほどに、生きていること自体が奇跡にも等しかった。
榊は自分の胸に手を置き、その鼓動を確かめる。フラッシュバックのせいで、息切れしたように早いが、心臓がシッカリと動き続けている。
「そうか、あのバケモンに襲われたんだったな……俺」
そして、自分が生きている事を実感すると、ようやく自分に何が起きたのかを、榊は理解したような気がした。きっと、怪物に襲われる瞬間に、気絶でもして、その時にセイバーが自分を助けたのだろう。
だとしたら、榊は三度もセイバーに救われている。突然現れた変な鎧女ではあるが、命の恩人である事は認めざるを得ない。
だとすれば、少しぐらいは報いてやらねば、バチが当たる。
「……飯、作るか。さっき美味いもん食いたいって言ってたろ?」
「おっ! 飯か!!」
目覚めてから漸くベッドから立ち上がり、背伸び混じりに榊がそう言うと、途端にセイバーが尻尾でも振っていそうな勢いで、目が爛々と輝きを見せた。
「モノスゲェ喰いつくなお前。そんなに腹減ってたのか?」
「別にサーヴァントは食事を摂らなくてもいいが、オレの場合は趣味だな」
「趣味ねぇー、便利な身体してんのな」
寝過ごし気味で若干ぎこちない身体を動かすと、榊は早速とばかりに廊下兼台所の冷蔵庫を開いて、残っている食材を探してみる。
調味料一式に余ったニンニクの欠片と青ネギパック……生憎とバイトの給料日前なので、何とも言えない物寂しさが目立つ。だが奥の方に、半額で叩き売りされていたエビのパックが見つかった。
コレさえあれば、アレが作れるな。早速とばかりに頭にレシピを思い浮かべるながら、榊は台所にフライパンに各種食材、調味料と用意し終えると、手始めにエビの背わたを取り始めた。
殻を向いては綿を取り、また殻を抜いては綿を取る。そうして暫くは黙々と作業していた榊だが、不意にセイバーが気になり、開きっぱなしの扉越しに横目を見やる。
セイバーはジッとしていられないのか、右往左往と狭い部屋の中を見渡し、やっと修まったと思ったら、DVD棚に立てかけられたゲームソフトに興味があるらしく、その中の一つを引き抜くと、そのパッケージの背表紙に目を輝かせて凝視していた。
「なぁマスター! 何だコレ? スゲぇ面白そうだけど、どうやってやるんだ?」
「ちょっと待ってろ……ほら、こうやんだよ」
榊は一度タオルで手を拭くと、そのゲームソフトを取り上げ、中のディスクをゲーム機に挿入する。そして軽く操作をすると、タイトル画面まで進め、コントローラーをセイバーに返した。
「操作は……やってりゃ分かるよな。それで飯が出来るまで遊んでろ」
「よっしゃ!! ありがとなマスター!!」
本当に子供みたいな奴だな。爛々とはしゃぐセイバーに少しの苦笑いを零しつつ、榊は再び台所に戻り、再びエビの殻剥きを始めるが、その手は直ぐに止まってしまう。
「そういや、あの夢は何だったんだ……というか、アレは本当に夢だったのか?」
セイバーの顔を見た直後、何故か榊の脳裏に浮かんだ、夢の中の記憶。その異質さを思い返し、つい背筋に震えが走る。
夢──と言うには、余りにも現実離れしていて、それと同時に余りにもリアルだった。まるで、本当に自分があの粗暴な騎士にでもなったような気分だ。
それに、最後に忠告するようにも聞こえたあの声。多少のノイズは混ざっていたが、間違いない。
あれは自分の声だ。
「俺の知らない記憶……って、ないか」
あんな中世ヨーロッパの記憶が、純日本人で現代っ子の榊にある筈が無い。きっと最近読んだ異世界系ラノベの影響を受けたのだろう。
そうこうしている考えている内に、何時の間にか両手が宙を掴んでいた。見ればまな板の上には、綺麗に剥かれたエビが行儀良く並んでいた。長らくの料理経験から無意識に終えてしまったらしい。
榊は予め片栗粉を入れたボウルにエビを移すと、充分に行き渡るように揉み込む。それが終わると、ガスコンロに火を付け、ゴマ油を引いたフライパンに潰したニンニクと刻みネギを雑に投入する。
「そう言えば、女の子にニンニクってどうなんだ? まぁ良いか、セイバーだし」
最初に会った時に女扱いするなって言ってたし、何よりガサツなセイバーを女だと認めたくない。
そう思いながらフライパンを揺らしていると、鼻孔と食欲を刺激するような匂いが香り立つ。それを合図に今度は海老を投入し、両面に焦げ目が付くまでシッカリと焼いたら、一度別の皿に移す。
そして空いたフライパンにトマトジュース、中華の元、豆板醤、ケチャップを入れて、一様に馴染んでから海老をまた投入し、一気に強火で絡ませる。
そして、最後に火を止めて皿に盛りつければ……。
「完成! デカエビチリ!!」
並の中華料理では出ないようなエビと、それに溶けあうように絡み合う赤いチリソースのコントラスト──見事なエビチリが、白い皿の中に出来上がっていた。
「飯が出来たぞ、セイバー。一旦ゲームは置いとけ」
「もう出来たのか! やるなマスター!!」
熱々に火照った皿を居間まで運んでいると、ようやく操作を掴み始めたらしいゲームを投げ出し、一目散に出来上がった料理をセイバーが覗き込む。しかし、その期待した顔は直ぐに歪んだ。
「な、何だコレはよぉ……!? 」
「エビチリでしてよセイバー様。それ以下でもそれ以上でもござりませぬでして」
どこぞの巫女に著作権侵害を訴えられそうな口調で料理名を応えるも、セイバーは全くピンと来ていないらしい。だが、鼻に香る刺激的な匂いに抗えず、緩んだ頬から涎が零れ落ちていた。
「スゲェ美味そうな匂い! なぁ、喰って良いか!!」
「待て待て、今スプーン取ってやるから」
テーブルに料理皿を一度置くと、榊は再びキッチンに戻り、戸棚の奥に手を突っ込んでスプーンを探る。しかし、片付ける時に適当な場所に戻したのか、中々見つからない。
「奥の方にあんのか……面倒いな」
仕方が無いので、更に戸棚の奥深くまで突っ込むと、ようやく先端の丸い感触が見つかり、それを掴んで他の食器に当たらないように、慎重に引き抜く。
「ほらよ、コレ使って……」
「この鎧、食うのに邪魔だな」
そうして取り出したスプーン片手に、榊が居間に顔を出した同時に、何かをキャストオフでもしたようなガシャコン音が鳴り響いた。
──その時、図らずもと榊が目にしたのは、居間まで仰々しい重装の下に隠されていた、少女特有の身体つきだった。
傷どころかシミひとつない女特有の白い柔肌、赤いバンドで申し訳程度に隠された控えめな胸。腰巻きをしているとは言え、開け広げに晒される引き締まった太もも。
「おっ! 持ってきたか!!」
そこに無駄に整った美少女顔と目が合い、まるで熟れたての果実のような禁断の魅力を無自覚に放つ身体が、榊に向かって出し惜しむこと無く晒される。
正にラブコメ漫画宜しくのハプニング──予想外の方向からお色気イベントを喰らった榊は、何も言うこと無く、股間にそっと手を当て──。
「ふんっ!!」
躊躇わず、己が息子を拳で黙らせた。
「ホォォォォォ……」
「……何やってんだ、マスター」
「き、聞くな……俺の罪を、数えてるだけだ……」
セイバー相手に我が息子が反応しました、なんてバレたら絶対にぶっ殺される。そうじゃなくても、あんな女を全力で投げ捨てているような奴相手に、発情したなど死んでも認めたくない。
「ほ、ほら、スプーン……サッサと喰え……」
「お、おぅ……」
男にしか分からない痛みで地べたにへたり込もうと、震える手でセイバーにスプーンを託す。するとセイバーは、足下に転がる榊を置き去りに、サッサと熱々のエビチリが待つテーブルの元へ戻りやがった。
「そんじゃ、いただきまーす!」
もう待てないとばかりに、セイバーがスプーンで豪快に掬い上げ、大きなエビと赤いチリソースを食らいつく。
そして口の中でエビを噛みしめた瞬間──セイバーの口の中で旨みの爆弾が弾けた。
「ウッ……」
歯ごたえある新鮮なエビの食感、濃厚ながら鼻の奥底を突き刺すチリソースの辛さ、ニンニク・焼きネギが引き立つパワフルな香り。
食感、刺激、香り、その三位一体全て揃った未知の料理(エビチリ)が、味覚の原住民であるセイバーの口内で暴れ回っていた。
「ウメェェェェェ!!」
もはや兵器、セイバーの味覚を蹂躙する為だけに生まれた、エビチリという名の兵器だ。頭ではそうだと理解しているはずなのに、セイバーはエビチリを頬張る手が止まらない。
「そ、そんなにか? 言っちゃなんだが、三ツ星シェフのフレンチじゃなくて誰でもできるご家庭料理だからな」
まるで餓死寸前のように喰らいまくるその喰いぶりには、思わずも榊は瞼を引き攣らせてしまう。すると、セイバーは顔に突っ込むように持っていた皿を下げ、チリソース塗れの口をあんぐりと開いた。
「嘘だろ!? 家庭料理って言えば、蒸かした芋を山盛りマッシュした奴だろ!!」
「誰だそんな頭悪い料理開発したの!!」
一料理好き男子として、そのような常識を認める訳にはいかない……コレはセイバーの意識改革をする必要があるようだ!!
「許せねぇ……お前に本物の料理というものを教えてやろう!」
「オォォォォォォ!!」
セイバーの目が爛々と輝く。マッシュした芋が家庭料理という奴だ。恐らくマトモな料理を食べたことがないのだろう……ならば、そんなクソみたいな常識を、榊はぶっ壊す。
「さぁ、ランチタイムだ!! 先ずはスーパーに買い出しだぁぁ!!」
今回は少し長めの日常回です。私の趣味で料理をしているので、今後はチョクチョク料理についての描写は挟んでいくと思います。
因みにですが、榊さんの料理の腕前は『エ〇ヤ以下、並みの料理人以上』です。要するに、何処かの日常グルメ漫画に出てくる、一料理好き高校生と同じ腕前をしています。
『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。
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作品の高評価や感想は何時でも待っています!!
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