Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
「やっぱり
頬をげんなりと痩せこける榊の横で、クルクルと身体を振り回して、新品の服の着心地をセイバーは確かめていた。
チューブトップに赤のレザージャケット、ジーンズのホットパンツという露出度が高いスタイルだが、それでも鎧を脱いだ時よりはマシな格好をしている。それに引き締まった身体のセイバーと、ラフなファッションスタイルは存外に悪くない。
「礼を言われるまでもねぇよ。アッチの格好の方が迷惑だわ」
少しテンションが高めなセイバーが、道行く誰かにぶつからないように諫めつつ、榊は特大級の溜息が吐き出しながら項垂れる。
まるで掃除機のような吸引力と獅子のような食いっぷりを見せるセイバーを、ご家庭料理のフルコースを持って矯正した後、次に伸し掛かった課題は、その連れ歩こうなら即刻通報案件の
これがまた、難解を極めたもので、買い出しついでに近くのドン・○ホーテでスウェット一式を買っても、『気に入らねぇ』と一蹴。クローゼットの奥からギリギリ女物っぽい服を着させても、『丈が合わねぇ、つか何かヤニ臭ぇ』と放り投げられる。
「大事にしろよ……その服マジで高いんだから……いや、本当に」
そこで榊の取った最終手段が、発展目覚ましい神宿市の中でも若者方面に栄えている西区、その中でもハイセンス漂うマネキンが並ぶブティックや一生縁が無いだろう高級品専門店が並ぶ、この大通りだった。此処であれば、例えゴスロリだろうとドレスだろうと、セイバーの我儘も叶える事が出来るだろうとタカを括っていた。
そうして最寄りのモノレールで西区に着いてから、土下座してでも着させたヤニ臭い服のセイバーを連れて歩く事十数分、榊の目論見通り、セイバーのお眼鏡に適う服を見つける事が出来たのだが……その間の周囲の目が凄く痛かった。『ド底辺は帰れザマス!!』とか言われているに違いない。
更に。そこまでして買った服は消費税合わせて、なんと7万5315円。それだけで汗水垂らして必死に稼いだなけなしの貯金が一瞬で弾け飛び、精神的にだけじゃ無く、お財布的にも榊はボロボロであった。
「わぁってる、大事にするって」
「本当か? 鎧に変身したら服がバーストするとかそんなんじゃないよな?」
「いやしねぇよ、何だよバーストって」
「そういや、洗濯の事考えてなかったな……コインランドリーにネット置いてあったっけ?」
「んなの、ザッーって洗ってバッーって乾かせばいいじゃねぇか」
「洗濯舐めんじゃねぇ! 色移りとかしたらもうその服着れねぇだろうが!!」
たった一日前に知り合ったばかりだろうと、
今後どれくらいの付き合いになるかは分からないが、自分がコイツのお世話係になるんだろうなぁと、ボンヤリ上の空で考えていると、不意に通り過ぎる誰かに、肩がドンッぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
「……」
咄嗟に軽く会釈して謝るも、肩がぶつかったであろうその青年は何も言わず、そのまま浮ついたような足取りで、人波に流されるようにフラフラと消えて行ってしまう。
「なんだ……変な奴も居るもんだな」
「なぁマスター」
その不気味な足取りに若干の不気味さを覚えるが、ぶつかった方とは逆の肩を、セイバーの余りある馬鹿力で揺らされると、そんな些細な引っかかりは頭の中でスポッと抜け落ちた。
「おぉ!? んだよセイバー! また服買えっていうのか! 今度は何だ! 『威風堂々』って書かれたTシャツか!?」
「要るかよそんなクソダセェ服! そうじゃなくて、何かテーマパークとか遊ぶ場所はねぇのかよ? さっきから何処見ても服ばっかでつまんねぇ!!」
まるで子供のようにギャアギャアと駄々をこねるセイバーを見ていると、世の中のお父さんは大変だなとシミジミ実感してしまう。とは言え、そんな歳ではない榊からして見れば、ただクソガキが我儘言っているだけだ。
「分かった分かった! 今度遊園地に連れてってやるよ!! それで良いか?」
「マジか! 今すぐ行くぞマスター!!」
そうだとしても、公衆の面前で駄々を捏ねられては溜まった物じゃない。確か、北区の方に最近出来たばかりの遊園地がある事を思い出して口にすると、途端にセイバーの目が興奮で輝き始めた。
「今度って言っただろうが! なんか飯奢ってやるから、それで我慢しろ!!」
「んだよ、つまんねぇーなー」
興奮で見開いた眼で文句ありげに睨み付け、不満そうに唇を尖らせるセイバーだが、それ以上は文句を言う事は無かった。やはり本能のままに生きている野生児相手には、食い物で釣るのは正解だったらしい。
──とは言え、一度奢ると言ったからには何を奢るべきか。つい先程まで、たらふく飯を食った後だから、やはり甘い物だろうか。だとしたら、この近くの公園にドーナツショップが移動販売に来ている筈だ。
榊は早速とばかりに、うろ覚えのドーナツショップの名前を頼りに、その公園に移動販売車が来ているのかを検索しようとするが、指を走らせようとしたスマホの画面が、唐突に電話の待ち受け画面へと変わる。
「ん? 誰からだ」
突然出てきた待ち受け画面には、家族からでも友人からでもない、見知らぬ携帯番号が表示されている。一瞬だけ迷惑電話かと思い、着信拒否の赤いボタンを押そうとしたが、その指がふと止まってしまう。
「どうした、マスター?」
スマホの待ち受けを前にして、中途半端に指を浮かせる様を不審に思ったらしく、セイバーが覗き込んでくる。すると、今まで無邪気な子供のようにはしゃいでいた表情が消え、代わりに現れたのは。
「出るな」
感情を表に見せない、険しく引き締めた表情。奇しくも、それは昨日ランサーに襲われる直前に見せていた、戦いの匂いを嗅ぎ付けた時と同じ顔だった。
──分かっている。出てはいけない、出てしまえば戻れない。きっと、この電話の先には、今までのような生活から一変する何かが待っている。
だとしても。
「悪い、セイバー」
たった11桁の番号に、決してもう戻れない沼の底を見ようとも、指は吸い込まれるように応答の緑ボタンを押してしまう。
──今、目を逸らしてしまえば、何時か取り返しの付かない事になってしまう。一度出てしまえば戻れないとは分かりつつも、そんな気がしてならない。
もし本当にそうなのであれば、榊は
「……もしもし」
「ご機嫌用でして」
常套の決まり文句で電話の相手を確かめる。すると返って来たのは、優雅に間延びした思春期少女特有の幼い声。それが聞こえた時、急に周りを行きかう雑踏の音や、すぐ横の車道を走るファミリーカーのエンジン音が、ヤケに遠く去っていくのを感じる。
『早速でしてか。今空いているでして? 貴方に頼みたい事があるのでしてよ』
その時に聞こえた
投稿が遅れてしまい申し訳ございません!!そして今回で日常パートは終了です!!
次回は閑話と一緒に、二話投稿となります。京子からの呼び出された理由とは何でしょうか……?
『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。
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作品の高評価や感想は何時でも待っています!!
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