Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
濁流のように絶えず流れ動く人波、無数の雑音が混ざり合う耳障りな喧噪、全面張りの窓ガラスとアスファルトに乱反射する茹で上がるような熱気。
そのどれもが鈍っていた五感を通じて、膨大な情報量を絶えず脳に流れ続ける。その培養槽の内側では得ることの無かった外の世界の有様を前に、フィロは人混みの中でただ呆然と立ち尽くす他なかった。
『どうだい、外の世界と言うものは刺激で満ちているだろう?』
聴覚をけたたましく刺激する雑音を押しのけ、透き通るようなキャスターの声が鮮明に聞こえる。それに対して、さしも新鮮味を感じること無い。世界の景色から意識を切り離すと、思考を内側へと傾ける。
『……いや、全て学習装置によって得た知識にある通りだ』
『またまたぁ、百聞は一見にしかずっていう言葉を知らないの?』
『人から聞くよりも自身で見る方が経験となるという意味か。しかし僕は聞いたわけではなくインプットされている』
『頭が固いんだからぁ〜』
揶揄うようにキャスターの声が跳ねるが、フィロは嘘を付いていない。事実、培養槽の中で成長プロセスの一環として、魔術の知識の他に一般教養も電気信号を通じて学習している。
だからこそ、初めて外界に触れようとも、フィロは何も感じる事は無い筈だった。しかし、実際はどうだろうか。
電極を通じた情報では無く、五感を通じて体験する世界に、フィロは指一つも動かす事が出来ない。その理由を詰め込んだ知識を探そうと、該当する物は何も見当たらなかった。
『それはホムンクルス君が初めて知識を得たからだよ』
だが、囁く声が答えをいとも簡単に導く。
『知識とは聞いただけ、見ただけではなし得ない。それを実践し、更に求める事に真価を発揮するんだよ』
それはキャスターが人生の果てに辿り着いた哲学故だろうか。理論的な根拠は何も無いと言うのに、フィロは自然と腑に落ちてしまう。
何も無双の武人のみが英霊となる訳ではない。無窮の探求と知性によって、人類の文明を進化させた賢者もまた、英霊となる資格を持ち合わせている。その最たる例となるキャスターの言葉は、常に真理を孕んでいた。
『そう言うわけで、この広い世界を余す事なく堪能しよう!! 先ずはあの『ヘルヘイムの木』という店に行こう!! 『極フルーツバスケットパフェ』は是非知るべきだ!』
だからこれもまた、真理である筈……個人的にキャスターが食べてみたいからでは無いと、フィロは疑うこと無く信じられる。
『──分かった。そうしよう』
あれだけ圧倒されていた世界に、今ならフィロは迷い無く足が動く。きっとそれは、キャスターという英霊に感化されたからだろう。
激しく移り変わる景色に追いつけなくとも、フィロはシッカリと世界を見据えて歩き出す。堅い歩道を踏みしめる感触すら慣れない中では、どうも覚束ない足取りになるが、それでも進めている事に変わりは無い。
「あっ、すんません」
だが、そんな足取りで人混みを歩けば、当然見知らぬ誰かと肩がぶつかってしまう。だが気にする余裕も無い。
激しい雑踏の人波に揉まれながら、蒸し暑い気温に肌にへばりつく嫌な汗を張り付かせ、迷い子のようにフィロは進み歩く。常に生命を維持するのに最適な環境を用意された今までとは、全く異なる環境に目眩すらも覚えてしまう。
『ほら、ホムンクルス君。早く行こうじゃないか』
だが、その好奇心に弾む声が聞こえるだけで、その見えない姿を見るだけで、この身体で感じる感じる全てが学びだと教えてくれる。導かれるようにその足は自然と雑踏の中を割り進んでいく。
まるで触れられない筈のキャスターが、自分の手を引いているかのようだ。フィロの目には捉えられないが、きっとそこに居るのだろう。
『まだ君も、私さえも知らない知識を堪能しよう』
そして、その賢者の姿は子供のような好奇心に、今にも走り出しそうなぐらい疼いているに違いない。
閑話で登場してから、いきなり主役回を貰えるとは……このホムンクルス、やりますね。今後に期待しかありません。
『追伸』
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