Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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閑話:愚者を狙う暗殺刃

「クソォォォォォォ!!」

 

 暗く湿った廃墟の中で、ザー・コスフィンの狂ったような絶叫が響き渡る。

 

「何故だ!! 何故だ!! 何故だぁ!!」

 

 頭皮を削り取るかのように髪を掻き毟り、何度も同じ言葉を歯ぎしり交じりに唸るコスフィン。その苛立ちは一夜を経ても収まる事を知らず、寧ろ原来のヒステリックと己のバーサーカーの失望も合わさって、より激しく加速していた。

 

「何故仕留めきれなかったバーサーカー!! タダのクソガキ風情にあそこまで手間取る!! 貴様が初撃で殺しきれてさえいればこんな事にはならなかったのだぞ!!」

「ごめ、んなさ、い……」

 

 脈絡も無く振り返り、ギョロリと目を剥いだコスフィンの眼が、廃墟の隅に収まりきらないバーサーカーの巨体を、更に小さく縮め込ませる。それが気に食わないのか、口汚く罵しる怒号が益々大きくなっていく。

 

「今頃、成功していれば、早々にマスターを潰していたはずなのに……どうしてあのMrs.キョーコが出て来る!! それに何だあのクソガキは……あんなサーヴァントをつけおって!!」

 

 親水京子──魔術界隈ではその名を知らぬ、対西洋魔術集団『日平和教』の頂点に君臨する女帝。そんなビックネームが聖杯戦争に参加する事自体は、コスフィンでも当然読めていた。

 

 しかし誰が予測できるだろうか。その親水京子が名も知らぬ素人丸出しの青年と手を組み、剰え、そいつがセイバークラスのサーヴァントを召喚しているとは。

 

「親水 京子だけでも厄介だと言うのに、セイバーと手を組みおって……!!」

 

 聖杯戦争に召喚される7騎において、セイバーのクラスを冠するサーヴァントは漏れなく、その能力の高さや知名度から、英霊の中でも最優とまで謳われている。例え、下手な魔術師が使役しようと、脅威となる存在だ。

 

 日本で最も権威を誇る日平和教の巫女に加え、最優を冠するセイバーが手を組んだとなれば、最早この聖杯戦争に敵など居ない。

 

 そして、その同盟から一番最初に狙われるのは、間違いなくザー・コスフィンに違いないだろう。なにせ、その同盟相手であるセイバーのマスターに手を出しのは、紛れもなく自分なのだから。

 

「どうして私がこんな目に……!!」

 

 考えれば考えるほど、自分にとって行き詰った現状に、歯ぎしりはより強く唸りを増し、髪を掻き毟る掌からはボロボロと白髪が抜け落ちていく。

 

 ──どうにかせねば、真っ先に自分があの女帝が従える英霊に殺されてしまう。冗談じゃない。自分はザー家を継ぐ魔術師、栄光を掴むに相応しい己が、こんな所で終わってしまって良い筈がない。

 

 考えろ、考えろ、考えろ。

 

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!! 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

「それは貴方のせいでは有りません」

 

 聞き覚えのない男の声が、コスフィンの耳に届いた。

 

「誰だっ!!」

 

 弾かれるように振り返れば、そこには誰も居ない。打ち捨てられた廃墟の殺風景が、光が届かない薄暗さを纏いながら、ただ薄暗く佇んでいるだけだ。しかし、それこそがおかしい。

 

 この廃墟は見た目こそ何も無いが、低級の使い魔や、魔術で施した罠を至る所に張り巡らせている。だが、それらの一切が解除された訳でも無く、誰も侵入していないかのように反応していない。

 

 幾ら優れた魔術師が侵入をしていようとも、それは明らかな異常──いや、それが可能な者なら一人、一騎のみ存在する。

 

 |暗殺者<アサシン>であれば、これぐらいの障害など訳ない。

 

「アサシンか!! バーサーカー! 私を守れ!! 今すぐにだ!!」

「うぅぅぅ!!」

 

 バーサーカーもそれを感知していたらしい。コスフィンが指示するより早く、隅に縮こまっていた巨体を筋肉の脈動で膨れ上がらせ、威嚇の咆哮で周囲を震わせる。その両手には錆びれた斧槍を携えており、既に臨戦態勢だった。

 

 ──バーサーカーのサーヴァントとしての実力は折り紙付き。例え英霊(アサシン)相手でも問題ない。だと言うのに、コスフィンは心臓を鉄条網で締め付けられるような感覚が収まらない。

 

「何処だ……何処に居る!!」

 

 一見すると自分とバーサーカーだけの静かな空間。だからこそ、コスフィンはアサシンの存在を迷う事なく、確信する。

 

 アサシンの名を冠する英霊は共通して、気配を遮断する事に特化している。その気になれば、バーサーカーの目を掻い潜り、背後からコスフィンの首を掻き切る事など容易いだろう。

 

 だからこそ、コスフィンは一瞬も逃さずに、五感に神経を張り詰める。だが、いつ命を奪われるのか分からない恐怖に、呼吸が切羽詰まってしまい、心臓の喧しい鼓動が邪魔をして上手く集中できない。

 

 ──どこだ、どこだ、どこに居る!! いっそその姿を見せてくれと切に願うも、コスフィンの前にアサシンは姿を現さない。

 

 代わりに現れたのは、柱の陰から堂々と顔を出す神父服姿の男だった。

 

「これは驚かせてしまい失礼しました。私には敵意はありません」

 

 その男は敵意は無いと言いたげに、いっそワザとらしいまでに口角を柔らかく釣り上げる。そして、首に掛けていた金十字の首飾りの端を持ち、自分が何者なのかを見せつける。

 

「聖堂教会の者か!! 何故貴様が此処に……いや! そもそも何故聖杯戦争に参加している!?」

 

 その十字架の意味は、魔術師界隈に生きる者に取っては、最も忌み嫌う組織の証。即ち聖堂教会の人間である印。だからこそ、コスフィンはアサシンに狙われる恐怖も忘れて、驚きに目を見開いてしまう。

 

 聖堂教会はその教義に、魔術などの神秘的な存在の保護と管理を掲げている。故に聖杯戦争に介入する事は在ろうとも、聖杯を欲す理由は存在しない。

 

 だが無論、それは飽くまで組織としての教義。個人として聖杯を欲す理由が有れば、また話が別だろうが。

 

「そう恐怖しないで頂きたい。私は聖堂教会の敬遠なる信徒。故に聖杯を求める理由は在りません」

 

 しかし、その前提を神父自らがあっさりと否定する。だがそれをコスフィンは信じようともしない、そもそも信じられる筈が無い。

 

 そうなれば、聖堂教会の人間が自分の元へ訪れる理由が無い。既に監督役はアクレス=フォルネウスと言う、若い神父が担っている。そして、コスフィンには聖堂教会に目を付けられる覚えはない、故にあるとすれば聖杯戦争(現状)以外に思いつかなかった。

 

「ならば、何しに来た! 事と次第によっては生かしておけんぞ……!!」

「うぅぅぅぅ!!」

 

 コスフィンの膨れ上がる懐疑心に呼応して、端に控えるバーサーカーの怒気が荒ぶり騒めく。神父が一歩でも踏み出せば、忽ちに携えた斧槍で斬り殺そうと、鉄仮面越しの赤い双眸を敵意にギラついている。

 

 しかし、常人ならば恐怖に呆然とする殺意を当てられようとも、それが己に向かって一心に浴びせられようとも、神父の男は何も変わらないし、その柔和な笑みも崩れもしない。

 

 異常なまでに正常なその神父は、ただ怯える事なく、コスフィンへと掌を差し出す。

 

「私が此処に来たのは一つ、貴方に助力をする為です」

 

 そうして告げられた有り得ざる提案は、コスフィンの頭を唖然で埋め尽くすには充分過ぎる程だった。




今回はバーサーカーのマスターであるコスフィン側の話です。次回も閑話が続きます。

それと、またもや投稿が遅れてしまい申し訳ございません……急遽会社の飲み会に参加していまして、投稿が何時もより遅れてしまいました……。

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

作品の高評価や感想は何時でも待っています!!

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