Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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閑話:サーヴァント:アサシン 召喚

『英霊』には能力や自身の逸話によって7つのクラスに割り振られる。

 

『セイバー』、『アーチャー』、『ランサー』、『ライダー』、『アサシン』、『キャスター』、『バーサーカー』。

 

 その中でも三騎士と称えられるのは『セイバー』、『アーチャー』、『ランサー』。基本的には、このクラスが英霊としては格が高い存在とされている。

 

 だが、必ずしも三騎士を使役する魔術師の中から、聖杯戦争における勝利者が選ばれるとは限らない。

 

 例えば騎馬や幻獣を使役する『ライダー』が、その高い機動力を生かして敵を撹乱させ、勝利を奪い取る場合もある。

 

 例えば失われた神代の魔術を持つ『キャスター』が、緻密な下準備の末に、ことごとく敵を殲滅した場合もある。

 

 そして、勿論『アサシン』が勝利する場合もある。

 

 それは──己が主人を除くマスター全てを暗殺した場合だ。

 

『アサシン』が選ばれる基準は、隠密活動を行なっていた人物や、他者の殺害を成功させた人物が選ばれる。

 

 だが、「暗殺」が逸話として残っているという事は、成功したという事にはならない。しかし、それでも『暗殺者』として確かに呼ばれる存在が居た。

 

 それは暗殺者の語源であり、歴史の裏舞台にて唯一その正体を明かすことなく暗躍し続けた存在。

 

 彼、彼女は個人ではなく、組織であり、同時に概念である。

 

 その名を冠した者は私を運ぶ天使として、数多もの異教者の命を奪い去り、遥か彼方からの侵略者達に対して畏怖と恐怖を植え付けてきた。

 

 故にその者達だけは『暗殺者』として呼ばれる。そのクラスの名を普遍的な概念にまで押し上げた者として、主人の敵を殺す為に呼ぶ声に応じる。

 

 そして彼、或いは彼女達は召喚される時には。誇りを持って自らを必ずこう名乗っていた。

 

 "サーヴァント・アサシン" と……

 ────────────────────────────────────────────

 世界には日平和教の他に、宗教と魔術が密接に絡みついた組織が存在する。

 

 名を『聖堂教会』。世界を二分する一大宗教、キリスト教に属する暗部組織だ。

 

 目的は魔術を、異端を許さず、人類という種の知識と神秘を独占する事。

 

 無論、聖杯の監視もまた、組織の仕事に含まれている。その為、世界中の聖杯戦争の裏には、必ず聖堂教会の人間が暗躍していた。

 

 その中でも時に、聖杯戦争の存在を隠蔽し、その行方を把握する管理者となる事は珍しくない。例え決して相入れない存在と手を組む事になっても、合法的に関われる機会は逃し難いからだ。

 

 そして今回の聖杯戦争においても、聖堂教会は管理者としての役割に徹するつもりであった。その為に、一人の神父を彼の地へ既に派遣し、例え何が起きようと隠蔽する準備も整えている。

 

 本来であれば、その立ち位置は揺れる筈が無かった。これまでの聖杯戦争ならいざ知らず、真の聖杯戦争となれば、今まで以上に取り仕切られる予定であった。

 

 全ては万全、微塵も揺らがず要素などある筈がなかった。

 

 しかし、それがたった一つの誤算で全てが打ち砕かれる。

 

 ──ある一人の男に令呪が宿る事によって。

 

「我が神よ、今日という日を迎えられた事に感謝致しましょう」

 

 痩せた男──アーノルド=シュルトは丘の上に立つ教会の中で祈っていた。壇上に飾られた十字架に対して両膝を下ろし、手のひらを結んで祈るその姿は敬遠な信徒に相違ない。

 

 それだけなら、そう見えただろう。

 

 その神父服が元の色を隠すほどに赤く染まっておらず、祈っている十字架はかつて人型だった者の骨肉を継ぎ合わせた物でなければ。

 

「神はきっと私を祝福してくれるでしょう。何故なら私は敬遠にして従順な信者なのですから」

 

 自身の行いを誇るようなアーノルドの言動に、十字架は苦痛に満ちた呻き声で応える。

 

 それは十字架の呻き声だった。しかし、今となっては何処から発しているのか、元の片鱗すら分からない有様だ。

 

「おぉそうですか。それはそれは喜ばしい」

 

 アーノルドは、天から祝福を受けたとばかりに両手を広げると、また両手を組み合わせて、歪んだ十字架に祈る。

 

 これは祝福である──神へと導かれる音色だ。

 

 生きることさえ許されない『異形』は聖なる十字架の一部となり、神へと許しを乞うている証拠だ。

 

 そして、その命が消えて真に十字架と一体になった時、ようやく異形に生まれた罪は許され、神の元へと召される。アーノルドは本気でそう信じていた。

 

 だからこそ、こうして己が刈り取った異形の存在を、生きたまま十字架に模す事で、アーノルドは贖罪の機会を与えている。

 

 そしていつものように、アーノルドは自ら刈り取った異形に対して、その贖罪が終えるまで祈り続けていた。

 

「マスター殿」

 

 アーノルドの影が声を発する。いや、影ではなく影に紛れた誰かが発していた。

 

 だが姿はおろか、生物の気配さえ感じない。まるで影という存在が、自ら意志を持っているのかさえ思える。

 

 影は何処から声を出しているのか、アーノルドの耳に言葉が直接潜り込む。

 

「マスター殿の御命令通り、あの男の動向を報告に参りました」

「えぇ、えぇ、で、どうだったか?」

 

 アーノルドは瞑っていた目を開き、相手の姿が見えずとも、さも眼前にいるかのように問いかけた。

 

「残念ながら、特に動きはありません。しかし何やら一人の女性と親密に接触しておりました」

「ほう、それは興味深い。あの男にそのような人が居るとは、益々怪しい。いや怪しすぎる。やはり私も動かねばならないようだ」

 

 アーノルドは祈りを止める。異形の贖罪が未だ終わってはいないが、それ以上に優先されるのは、自らの神への贖罪だ。

 

「我が神よ、どうまた私の無礼をお赦しください」

 

 異形よりも罪深き存在。それがアーノルドという神父だった。

 

 異形を刈り取る者でありながら、アーノルドの身体と精神は、どうしようもないくらい異形に歪んでいる。

 

 そして、当の本人も己が神の罪を体現した存在だと、そう自覚している。故に、アーノルドは神を敬愛していた。

 

「我が身体は神の手足、我が血は神の供物、どうか私の所業は、全て貴方の為に」

 

 己が一つ、神の為に尽くせば、自身が無垢へと近づく。己が一人、神の為に殺せば、自身の罪が消える。

 

 自らが最も罪深き存在であることを理解している為に、アーノルドは誰よりも神を信じ、そして神の為に尽くす事が出来た。

 

 そうやっていつか、自らの罪が全て濯ぎ終えた時、ようやく神の元へと召される権利が与えられる。

 

 その為に、アーノルドはまた一つ、贖罪を行う必要があった。

 

「さぁ、贖罪を始めましょう」

 

 アーノルドは高らかに宣言すると、懐を弄ってマッチ箱を取り出す。そして、中から棒を取り出し、一息に側面を擦って火を付けた。

 

 ──異形の血肉はさぞ燃えやすかったのだろう。アーノルドが火のついたマッチを投げ捨てると、忽ちに炎が十字架を包み込んだ。

 

「このような形で贖罪を終わらせてしまい、申し訳ございません。ですが、貴方はきっと神の元へ召されるでしょう」

 

 轟々と燃え上がる異形の火柱と焼け爛れた喉で叫ぶ断末魔を前に、アーノルドは胸の前で十字架を切ると、まるで興味を失ったかのように背を向ける。

 

「それではアサシン、行こうか。神に誅する者を狩りに」

「承知」

 

 舞い上がる十字架の日の手から教会内の至る所に燃え広がる。その熱と紅を一心に浴びながら、アーノルドは扉から外へと出て行く。

 

 そして最後に、内側全てに炎が燃え広がった教会から昇っていく、天まで届くであろう灰煙をアーノルドは見上げた。

 

「安心して下さい。いずれ、私も神の元へと向かいます」

 

 そう言い残すと、アーノルドは自身が燃やした教会を背に、緩やかな丘道をゆっくりと下って行く。

 

「その為に、贖罪をまた一つ行いましょう」

 

 神に代わって異端を殺す『代行者』の中でも、最も異端とされる神父、アーノルド=シュルト。

 

 異形が次に何を為すのか、それは神さえも知らない。

 




ようやくマスターの紹介が残り二人を切りました……

そういう事で第四弾は、これまた頭がぶっ飛んだ聖職者『アーノルド=シュルト』とアサシンです。

アサシンについては、お察しの通りのサーヴァントではありますが、一応公式様(FGO)からは出ていない英霊となっています。

明かされていない残りのサーヴァントは二騎……というより、実質一騎のみとなりました。そちらの紹介は明日に投稿予定ですので、是非お待ちください。

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

作品の高評価や感想は何時でも待っています!!

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