Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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騎士の証明

 濃霧が燻る白色の世界で、剣と刃が火花を散らして交差する。

 

 剣は大振りで単調ではあるが、人外離れした膂力と速度で繰り出される無数の斬撃は、幾重の残像が折り重なって間合いを丸ごと飲み込む。それはさながら吹き荒れる嵐の如き荒々しさであり、寸先でも掠めれば容易く微塵に切り刻まれるだろう。

 

「チィッ!!」

 

 しかし、剣は──セイバーは溜まらずに舌を打つ。威力と速度なら此方の方が優れている。事実、純粋な力比べと手数の多さであれば、やはり大きく上回っている。

 

 だが、その切っ先は一度たりとも奴に届いてはいない。対峙する刃は神出鬼没かつ変幻自在。周囲に渦巻く濃霧に紛れて、セイバーの死角から刃を伸ばしては、また姿を眩まして機を伺う。それだけじゃなく、姿を捉えたと思えば忽ちに霧散し、防いだかと思えば無軌道に斬り込まれる。

 

 強敵──と言う訳ではない、寧ろ英霊としてであれば、己よりも格下に違いないだろう。だからこそ、一方的に押し切る事の出来ない今の現状に、セイバーは苛立ちを隠せなかった。

 

「ふむ、これが最優と呼ばれるセイバーですか」

 

 刃──周囲に漂う濃霧に紛れて、仮面の髑髏顔が浮遊する。セイバーはその面を瞬時の内に切り刻むと、また別の場所から現れ、まるで嘲り笑っているようにユラユラと揺れる。

 

「どうやら、暗殺者(アサシン)である私でも、対処できるようですね」

「あぁ!?」

 

 髑髏顔が零した見え透いた嘲笑交じりの戯言に、途端に湧き上がる怒りが邪魔をして、絶え間なく振るい続けた剣劇の嵐の勢いを、僅かであるが削いでしまう。

 

 確かに髑髏顔──―アサシンは常人よりも遥かに上回る強さを見せている。事実、濃霧の中での奇襲は、セイバーでも完全に捉える事が出来ず、そこに妙技とも呼べる刃の技巧と合わさるのであれば、並み以下の英霊であれば、気が付く間もなく喉を切り裂かれている事だろう。

 

 だが、それだけだ。後世に名を遺す無双の武人でも、伝承によって紡がれた英雄でもなく、ただ人を殺しただけに過ぎない暗殺者に、一太刀も当てられずにいる。その事実が益々セイバーの荒い斬撃を乱していく。

 

「テメェ……本気でブッ殺されてぇようだな!!」

「そんなことが出来るのですか? 私に傷を付けることさえ出来ない貴方如きに?」

「うるせぇ!!」

 

 その返答は言葉ではなく、セイバーは剣を持って応えた。ようやっと捉えた影に向かい、音すら置き去りにする飛び込みで、距離感すらつかめない間合いを一息で超越する。

 

 振り上げた白銀の剣は、その身に渦巻く怒りを表すが如く、纏う赤雷を唸らせる。そして、壮絶なまでの暴風を巻き上げながらも、捉えたアサシンの影へ、一切の容赦なく堕とした。

 

「やはり、貴方の攻撃は軽い」

 

 ──―しかし、届かない。振り下ろした剣の先には何も無く、ただ無形の白霧を裂く。背後から鎧越しの肩を愛おし気に撫でる手が、それを完全証明していた。

 

「貴方──―もしや魔力が残り少ないのでは?」

「……」

 

 舐めるかのような耳障りな問いかけに、セイバーは何も言わずに押し黙る──見抜かれた、とは思うまい。常人には分からずとも、同じ位相に居るサーヴァントであれば、直ぐに気が付く事だ。

 

 サーヴァントを構成する魔力は、言わば肉体、血、骨、人体を構成する全て。魔力が薄まれば、どんなで英霊で有っても、英霊たらしめるその根幹は弱まる。現に英霊として上位に位置するセイバーでも、たかがアサシン如きに手間取っている程だ。

 

 また。そもそもの原因として、マスターである榊とセイバーの自体相性が悪い。

 

 セイバーが今も纏う赤雷は、魔力の塊を具現化した物。剣に纏えばあらゆる物を焼き切る熱を持ち、その身から放出すれば、リニアですらも追い越す加速を生み出す。

 

 その魔力のゴリ押しで敵を圧倒する戦いをするセイバーに取って、ただでさえ並みの魔術師でも足りないというのに、頼りない()の魔力供給だけでは到底賄える筈も無い。言わば、弾薬とガソリンが足りない状態で、戦闘機のエンジンをブン回しているような状態だ。

 

 つまり、今のセイバーは本来の実力を発揮できていない。そうでなければ、こんな雑魚英霊など一分で片が付いている筈だ。

 

「可哀そうなお人。マスターが弱いせいで、貴方は私に殺される」

 

 それを分かっていて、アサシンはワザとセイバーを焚き付けているのだろう。たかが一暗殺者如きを殺せないのは、お前のせいじゃない、マスターのせいだと、嫌らしい悪意が、露骨に耳をくすぐる。

 

 ──明らかな嘲り、明らかな悪意、そして明らかな挑発。今、アサシンは明らかにセイバーを舐めている。たかが霧に紛れて闇討ちしかできない小物が、王の騎士である己の誇りを貶そうとしている。

 

 

 それが、セイバーのただでさえ短い導火線を、一気に焼き尽くした。

 

 

「──―テメェ、死んだぞ?」

 

 ──最早、怒りを表すのに言葉の応酬は不要。そして、出し惜しみもまた、これっきりだ。瀬戸際で留まっていたブレーキラインは、もう全て振り切れた。

 

 此処から始まるのは、本気の蹂躙劇。出し惜しみなどしない、セイバー本来のフルスロットル(全力)

 

「おや」

 

 アサシンの声色が変わる。それは今までの嘲笑が見え透いていた耳ざわりにくすぐる物ではなく、身の危険を感じたように切羽詰まる調子だった。それ程までに、セイバーの様相はガラリと変わっていた。

 

 鎧の上から纏う赤雷は、先程までとは比べ物にならない程に、荒れ狂う獣の咆哮のように轟く。まるでオーバーヒートでもしたかのように、いっそ過剰なまでの閃きが弾け飛び、それは天井知らずに出力を増幅していっている。

 

 それはさながら、放出ではなく、爆発。赤い稲妻の閃きが、その発生源であるセイバー本体を中心源として、手当たり次第に重苦しい濃霧に包まれた世界を忽ちに蹂躙していっていた。

 

「拙いですね……!!」

 

 その赤雷の閃きを一目見た直後、アサシンは焦ったように飛び退き、再び姿を濃霧の中へと晦ませようとする。しかし一度放出された赤雷の爆発は、その隠れ潜もうとするテリトリーを、触れる傍から瞬く間に焼き尽くし、瞬く間に逃げ場を無くしていく。

 

 そして、遂にその身を隠す濃霧が完全に剝がされた時、セイバーはゆっくりと剣を構える。その刀身は既に過剰なまでの赤雷で満たされており、さながら天を貫く光の柱となって、本来の全長よりも何倍にも膨れ上がっていた。

 

「──よし、決めた」

 

 自身に奥底に残されていた僅かながらの魔力でさえも、惜しむ事も無く溢れ出る赤雷へと変換する中、魂が消え行くような痛みを覚えながらも、セイバーは腹の底から湧き上がる怒りで、更に出力速度を上昇させていく。

 

 ──許してはならない。王の敵を打ち滅ぼし、王の矜持を守護する騎士として、セイバーは常に蹂躙する側であらねばならない。それこそがこの身の存在意義であり、たった一つの王に誓った騎士道だ。

 

 その騎士道が、たかが魔力不足などで曇る筈が無い。例え如何なる逆境や困難が立ち憚ろうと、圧倒的なまでの暴虐を以てして、蹂躙せねばならない。

 

「お前は、今ここで」

 

 だからこそ、セイバーは今ここで全霊を持って証明する。騎士である己を汚す卑しき者を、我が王を侮辱するクソ野郎を。

 

 

 

 

 この世に塵も残さすぶっ殺す為に、セイバーは剣を振るう。

 

「絶対にぶっ殺す」

 

 

 

 

 その直後であった。

 

 天災にも等しい赤い破壊の嵐が、濃霧に閉ざされた世界を完膚なきまでに焼き尽くした。




因みにですが、本来の実力を出せなくても、現状のままアサシンに競り勝っていたと思います。ブチ切れ状態じゃなければ、傷一つなく勝利していたでしょうね。

『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426

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