Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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騎士、武人、共闘開始

 神宿市随一の五つ星ホテルのエントランスは、それこそ豪華絢爛と呼ぶに相応しかった。

 

 まるで何処かの王城のロビーを参考にしたような優雅かつ余裕を持った設計に、それに合わせて空間全体を格式高くデザインする本場仕立ての高級インテリアやカーペット。セイバーのかつての居城と比べれば何段階も劣るも、現代においては正に一級品と名高き絢爛さだ。

 

 吹き抜け状になっている天井をセイバーが見上げれば、フロアの回廊が何重にも積み重なっており、外から見た摩天楼のような高さは見せかけだけじゃないと、視覚でも圧倒させられる。

 

 ──―此処の何処に、オレのマスターが居やがんだ? 

 

 ワックスが良く効いている床タイルの上を、セイバーは買ってもらったばかりのスニーカーで踏みつけ歩く。そして受付にまで辿り着くと、分厚い大理石で作られたカウンターに、ドサリと横柄にも腕を置いて顔を乗り出す。

 

「本日はどのような御用でしょうか?」

 

 どうやら、建物も一流であれば、スタッフもまた一流らしい。横柄な態度を見せる客を相手にしても、受付係の女性スタッフは一部たりともスマイルを崩さない。それを良い事に、セイバーはやたらと馴れ馴れしそうに尋ねる。

 

「よぉ、オレのマスターを知らねぇか?」

「マスターでしょうか? 少々お待ち下さい」

 

 その女性スタッフは、マスターというのを外国人か何かの名前と誤解したらしい。目線を大理石の縁に隠れた机へと落とすと、そこにある顧客名簿を確認しているのか、仕切りに手先がゴソゴソと探るように動き出す。

 

「あっ、マスター様ですね。そちらの方でしたら」

 

 ──そしてようやく何かを見つけたらしい。女性スタッフは、先程と変わらないニコヤカなスマイルで、視線と共に落ちていた顔を上げる。

 

「只今、天国にいらっしゃいます」

 

 その手には、無骨なまでに黒光る4.6mm×30mmサブマシンガン(MP7)

 

 直後、軽快に弾ける発砲音が広大なロビーに打ち広がる。

 ──────────────────────────────────────────────

「へぇー、コイツがmp7って奴か! スッゲェカッケェ!! コレがオレの時代にあればなー! オレの時代にあればなぁー!!」

「成る程! コレが現代の鉄砲(てつはう)という物か! 随分と形式が変わっているな!! しかも連続で撃てるとは素晴らしい!! もしあるのであれば、是非とも俺の軍に導入したかった所だ!!」

「二人とも、今の状況を分かっているのでして?」

 

 初めて買ってもらった玩具のように、物珍しさにmp7を弄り回すセイバーとランサーを見ると、京子は呆れて溜息を吐かずにはいられなかった。

 

 ──今はそんなときでは無いというのに、やはり英霊とは、何処か頭のネジが抜け落ちている。

 

 そんな状況も分かっていない馬鹿共を呆れて頭を悩ませる京子に気が付いたらしく、セイバーが不本意とバカ入りに口をへの字に曲げる。

 

「あ? 分かってるての。要は」

 

 背中に預ける大理石のカウンターから、セイバーが僅かに頭を出して覗き込む。そして、その向こう側にある光景を見て、お祭りでも始まっているような心底愉快げなニヤケ面を晒した。

 

「敵がお出迎えしてくれてるって事だろ?」

 

 その通りだ──その通りだからこそ、こんな状況で暢気に喋っている英霊達に、京子は頭が益々痛くなってしまう。

 

 最早、此処は格式高い高級感と手厚いサービスで出迎えるような、五つ星のホテルなどでは無い、既に此処は、硝煙の匂いと薬莢の残骸が入り混じる戦場へと早変わりしていた。

 

 豪華さを彩る高級インテリア達は、四方八方から絶え間なく撃ち込まれる弾幕で粗方吹っ飛び、スタッフや宿泊達は笑顔ではなく、今なお一点集中する銃撃によって出迎える。そんな地獄が、この分厚い大理石一枚挟んで、背中越しの向こう側に広がっている。

 

「何々ぃ!! 大丈夫なの!? スッゴイバンバンとかガリガリ言ってるよぉ!!」

「心配すんな。鉄砲玉如きで死にはしねぇよ」

「いや死ぬって!?」

 

 エンドレスで打ち続けられる銃撃の雨霰に、セイバー達のようにイカレていな直葉は、ブルブルと泣き喚きながら、鳴り止まない炸裂音に溜まらず耳を塞ぐ。しかし、それでも聞こえるようで、弾丸が硬い大理石を削り貫く度に、ビクリと大きく身体を震わせている。

 

「さて、どうしたものでしてね……」

 

 対して、京子は全く──と言っても、流石にセイバーやランサー程では無いが、至極真っ当に落ち着いていた。これぐらいの修羅場であれば、既に何回も経験している。今更動じるような事でもない。

 

 しかし、それでも状況が悪い事は事実──どうした物かと考えていたその時、バキリと割れる音が京子の耳に届く。どうやら翡翠仕立ての極厚代理石であっても、無数の弾丸にそう耐え切れないらしい。その証拠に、京子の丁度真横辺りには、さっきまでなかった不恰好な亀裂が走っている。

 

「親方様、出陣の許可を! 俺であれば物の数分で倒して見せましょう!!」

 

 このままだと数分もすれば、弾丸の雨に丸裸で晒されてしまう──そう悟っているのは京子だけではないらしく、隣で同じく伏せているランサーが、何時でもとばかりに十文字槍を意気揚々と構え始める。

 

「止めておくのでして。貴方のような英雄が無辜の民を殺すのは忍びないのでしてね」

 

 だが、京子はそのランサーの提案をキッパリと断った。そして、その理由を確かめるべく、足元に寝転がっている女性スタッフに目を向ける。

 

 このスタッフは、出会い頭にセイバーへ銃口を突き付けた襲撃者だ。そして、引き金を引くよりも早く、腐っても英霊であるセイバーの手刀で気絶させられた被害者でもある──その微かに開いた口元に鼻を寄せ、僅かに香る匂いを嗅いで確かめる。

 

「この匂い……恐らく催眠の香の一種でしてか。呪術師らしく、反吐が出る方法でしてね」

 

 その女性スタッフの口元からは、甘ったるくて脳中枢が痺れるような独特の匂いが香る。京子は巫女という筋柄故に、この特徴的な香りには、僅かばかりに心当たりがあった。

 

「魔術──いや、この場合は呪術でしてか?」

 

 ──魔術とは何も、ファンタジーのような分かりやすい現象だけとは限らない。魔力を込めた刻印や香などを用いて、相手の心理を意のままに操る事もまた、魔術の一つの使い道だ。

 

 そしてこの香りは、そういう類に良く使われるケシの葉の匂い。この女性スタッフは恐らく、『敵が来たら撃ち殺せ』催眠の魔術を掛けられたのだろう。

 

 だとすれば、今もなお銃を乱射し続けているスタッフや宿泊客も同様だろう──意識など無く、ただ命令されたまま動く操り人形のような物だ。

 

「彼らに意識は無いのでしてよ。今頃、自分が銃を乱射している夢でも見ているでして」

「クソ胸糞悪りぃな。やっぱり魔術師って奴はロクな奴がいねぇ」

「それだと私も入るのでして。それは非常に遺憾でしてよ」

「そう言ってんだよ」

 

 セイバーが手を前に伸ばすと、その掌に顕現させた白銀の剣が握られる──そして、胡坐を掻いていた膝を徐に立て始めた。

 

「おいセイバー! 民を殺す事は俺が許さんぞ!!」

「そんなヘマするかよ。要は殺さなきゃ良いんだろ? なら簡単だ」

 

 その動きに気が付いたランサーの静止も聞かず、チューブトップを着込んだ現代ラフなスタイルが、瞬く間に重装鎧を身に纏う古風な要塞に早変わりする。そして、兜の前面が駆動音と共に閉じた瞬間に、セイバーは剣を地面に軽く付き立てた。

 

「死なねぇ程度にぶっ飛ばせば良いんだからよ」

「成る程、それは簡単かつ分かりやすいでして」

 

 セイバーと同じ意見とは認めたくは無いが、京子は渋々と言った面持ちで頷く──無用な殺戮を行うよりも、そちらの方が後々の考えると、一番理に適っている。

 

 それにだ。日本を導くべき日平和教の巫女として、無辜の民を不必要に殺すのは、大層気分が悪い。

 

「ランサー」

「ハッ」

 

 京子は敢えて尋ねる──既にランサーは己の獲物である十文字槍を固く握り締め、セイバーとまた同じく、いつでも動き出せるように片膝を立てているのにだ。

 

「活人にて、敵を討ち取る器量はお持ちでして?」

「無論! 我が槍と忠義に賭けてお約束を!!」

 

 ドンッと、鎧越しの胸を叩き、戦国の勇士さながらも覇気でランサーが応えてみせる。その姿は正に歴史に言い伝えられてきた、忠義の士としての真田幸村その物に違いなかった。

 

「であれば、このふざけた襲撃を疾く終わらせるのでして。そして民の命一つは、貴方の命でもある事を、努々忘れるのではないのでしてよ」

 

 ──ならば、問題は無い。それに今回はランサーだけでなく、セイバーも共に居る。であれば、たかが銃を乱射し続ける集団如きに遅れは取らないだろう。

 

「鎧のお兄ちゃん危ないって!? その鎧ってコスプレか何かでしょ! セイバーも止めて……って何それ!? アームドON!? ターンアップ!?」

 

 だが、直葉は大理石から飛び出そうとする2人を、突然服装や様子が変わった事に、頭をグルグルと回転させて混乱しながらも、慌てて止めようと間に入って来た。

 

 それもそうだろう、今日び現代では、()()()鎧姿の武人と騎士など拝む機会は無いのだから──しかし、それが実現してしまうのが聖杯戦争の恐ろしさだ。

 

「安心するのでして、この者達は唯の人ではないのでしてよ」

 

 混乱に頭をフラフラさせる直葉の頭を撫でつつ、京子は二人の英霊が飛び出す邪魔にならぬように、ソッと自分の元へと幼い体を引き寄せる。

 

 ──京子は直葉のように慌てない。何故なら、知っているから。本物の武人や騎士が、どれ程恐ろしい存在であるのかを。それに比べれば、表に居る襲撃者達など、二人からすれば、お遊び程度の感覚だろう。

 

「それじゃあ……何なのさ」

「言ったのでしてよ」

 

 すると、巫女装束の長い袖に包まれる中で、直葉が不思議そうに尋ねて来る──それに対して京子は、本物の武人や騎士、聖杯戦争に呼ばれた者達全てを形容する言葉として、また同じ答えを返す。

 

「歴史に刻む程の、大馬鹿者達でしてよ」

 

 その瞬間、崩れ欠けた大理石を乗り越え、2人の英雄が華々しい戦場へと躍り出た。




銃を乱射する一般市民達 VS セイバー&ランサー……レディファイッ!!

というか、普通にやれば開始10秒でやられそうですね……

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

作品の高評価や感想は何時でも待っています!!

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