Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
──人は弾丸よりも遥かに遅く脆い、そんな物理方式と常識は誰もが知っている。しかし、それを打ち破るからこそ、英霊となりえる。
その身が敵の前に晒されるよりも速く駆け走り、弾丸に当たるよりも先に刃で切り裂く──吹き荒ぶ豪雨のような銃撃の中であろうと、2人の英霊は一分たりとも止まらない。
「ハッ! そんな鈍ぃのが当たるかよ!!」
仰々しい重装にも拘らず、セイバーは目にも止まらぬ速さを見せていた。何重にも折り重なった凶弾の群れよりも素早く、ダダ広いエントランスを縦横無尽に駆け滑り、大外から抉るような急角度で迫る様は、無数の残像すらも生み出す程だ。
「意思なき弾など恐るるに足らず!!」
対照的にランサーは真っ向からの迎撃。防弾ガラスだろうと粉微塵になりそうな弾幕の荒しにも恐れず、鉄をも跳ね返す赤鎧と鍛えられた剛身を盾にして、ただ愚直に前へ前へと進む。それはまるで鋼鉄の戦車が突進しているような威圧感を見せていた。
「ハァァァ!!」
先に相手の元へと辿り着いたのは直線を奔るランサーの方だった──一列に並んで一斉掃射を続ける襲撃者を目前にして、ワンステップの跳躍で天高く飛び上がる。そして、床がひび割れる程に踏みしめた着地に合わせて、その槍底を力強く突き落とした。
「セイハァァァァァァ!!」
それは正に規格外の一撃と呼ぶに相応しい──次の瞬間、巻き起こったのは、地面処かこのホテル全体が縦揺れに軋みを上げる程の激しい振動。それが奔ると同時に、エントランスに嵌め込まれていた床タイル達は耐え切れず、ランサーを中心にまるで衝撃が波及する様に次々と豪快に弾け飛んで行った。
「ギャァ!!」
「ウォアアア!!」
さも天変地異すらも思わせる馬鹿力の衝撃に耐え切れず、銃口を向けていた襲撃者達もまた、弾ける床タイルの残骸に紛れて、跳ねるように宙へと投げ飛ばされていく。そして、勢いそのままに壁や柱、床に受け身を取らぬまま激突すると、その後に立ち上がる者は居なかった。
「峰打ち御免!!」
だが、幸運にも柱の陰などに隠れて逃れた襲撃者や、吹き受けのフロアから打ち下ろしている襲撃者は未だ残っている。ランサーは油断する事なく、その前者の方に対して、衝撃から立ち直るよりも早く、次々と十文字槍の柄を振るい上げ、一人一人を丁寧に刈り取って行く。
「セイバー! 地上は任せろ!! 空中を頼む!!」
「オレに指図すんじゃねぇ!!」
その最中において、ランサーは空を見上げて叫んだ。それに対して、セイバーは大層キレ散らかした怒鳴り声を返す──そもそも、最初からその気だというのに、指図されては頭に来る。
ランサーが着地する直後には既に、一度走り出した速度をそのままに、重力という枷を無視して、セイバーは天井にまで伸びる支柱を駆け上っていた。
「──死ぬんじゃねぇぞ」
──目指す先は吹き抜けの回廊から、未だに四方八方に撃ち下ろす襲撃者達。セイバーは垂直になった踵を回すと、今度は回廊の縁を足場にして、赤雷がバチバチと唸りを鳴らす剣を振るい上げた・
「ラァァァァァァァァァァァ!!」
一息の雄叫びの合間に、赤い光芒が歪な螺旋階段を描いて、天へと昇る──雷を纏って駆け抜けるセイバーの姿は、さも音をすらも置き去りにして嘶く稲妻の如く速さを見せ、振り上げた白銀の刃は、大気を強引に割く。
「アァァァ!?」
「オァァァアァァ!?」
その残影に巻き込まれた銃口は一つも余す事無く叩き切られ、斬撃が空を切る余波で巻き起こった一文字の旋風は、何重の回廊に立ち並んでいた襲撃者達に、反応する間を与える事も無く、纏めて壁際へと圧し潰すように叩きつけた。
「よし一丁上がりぃ!!」
──赤い光芒の螺旋が最頂点にまで届く、それと同時にセイバーは、天井に触れる足をトンッと軽快な音を鳴らして離す。そのまま身を任せるような自由落下の後に、着地の衝撃で瓦礫だらけの地面を更に踏み壊しながらも、ようやくエントランスに地を付ける。
その時には既に、上方からの弾丸の雨は一発限りも降り注ぐ事は無くなっていた──一瞬の内に起こった裂空の旋風は、四方八方から無数に降り注がれていた銃撃を纏めて黙らせたようだ。
「セイィ!!」
「グエッ!?」
そして、地上の方も片付いたらしい。ランサーが最後に残った襲撃者であるドアマンの頭に槍柄を食い込ませると、さも忠犬のように目を輝かせて、崩壊寸前の大理石の方へと目を向けた。
「親方様! 敵は全て排除致しました!!」
「えぇ、そのようでしてね。ほら、幼子。もう大丈夫でしてよ」
「う、うん」
ランサーに意気揚々と呼ばれた京子は、未だ震えが残る直葉の手を握りながらも、破砕寸前で頼りない大理石の影から、ようやく二人の英霊が待っているエントランスへと身を晒した。
「……相変わらず、英霊は化け物でして」
そんな事をしみじみと呟きながら、京子は荒れ地となった周囲を見渡す──紛争地帯の激戦地もかくやの弾幕が飛び交っていたエントランスは、今やいっそ寂しいくらいに静まり返っている。標的が顔を出したというのに、ただ自分達が礫を踏む足音だけしか聞こえてこない。
──どうやら、本当に全員を片付けたらしい。あの一個中隊は居たであろう襲撃者達を、たった2人の英霊のみで、しかも無傷で撃破したようだ。
「全く、英霊というのは恐ろしい物でしてね」
そこら中に散らばった戦闘の爪痕を確かめるように眺めながらも、京子は僅かに身震いを起こす身体を摩って宥める。京襲撃者の銃弾の乱射による影響もあるだろう──だが、それ以上に英霊達が暴れ回ったこの空間は、さながら崩壊寸前の廃墟のようだ。
それをたった二人の英霊が、しかも物の数十秒で作り上げたと言うのだから、如何に英霊と言う存在が恐ろしいのかが分かる。本当に同じ世界に生きていた人類なのかと疑いたくなるぐらいだ。
「でしてか、甘いでしてよ」
だが、慢心と言うのは英霊であっても共通らしい──戦闘終わりで得意げに鼻を鳴らすセイバーに、京子は水を差すようにピシリと言い放つ。
「あぁ? ……チッ、そういう事かよ」
それにセイバーが条件反射的に反抗しようとするも、その足元の手前で何が起きているのかを分かると、途端に舌打ちをして不貞腐れ始めた。
「べぇつにー、こんな玉ころ一発で傷付かねぇしぃ!」
セイバーが見たのは、自分の踵に届くよりも前に、浮遊する符が織りなす不可視の壁に阻まれる一発の弾丸。それは慢心し切ったセイバーが見逃がした、明らかな不意打ちだった。
「そうでしてね。英霊ともあろうお方が、たった一発の弾丸を見逃すとは、思えないでしてね」
「馬鹿にしてんのかテメェ!!」
「あら、そう聞こえるのでして? それは申し訳ないのでしてね」
英霊であれば、たかが弾丸一発で傷つく筈も無い事ぐらい知っている。なので今のは単純に、京子が気に食わない
「ムッ! そこかぁぁ!!」
「ボゲェ!?」
二つの意味で引き金となった柱の裏に隠れる生き残りの襲撃者を、次の弾丸が放たれるよりも前に、一息に飛び出したランサーが槍底で鳩夫を突いてドドメを刺す。
「ハッ!? 親方様ぁ!!」
「おわっ!?」
そして、襲撃者の意識が飛んだのを見届けた後、京子にガンを飛ばしていたセイバーをそっちのけで押し退け、そのまま流れるように額を瓦礫だらけの床にゴンッ! と叩き付けた。
「申し訳ございません親方様! 敵を取り逃しておりましたぁ!!」
その姿は正に、日本伝統芸のジャパニーズDOGEZA。その綺麗なフォルムと形式美には、そんな物は見慣れた京子であっても舌を巻く程に芸術的であった。
「何だランサー! 邪魔すんじゃねぇ!!」
だが、明らかに日本生まれで無いだろうセイバーにはその意味が分からず、今度は自分を突き飛ばしたランサーへ、その怒りの矛先を変えた。
「邪魔だと!? 危うく親方様に傷が付くかも知れぬ所だったのだぞ!!」
「この腹黒女がそう易々と傷付く玉に見えんのか? そりゃ節穴所じゃねぇな!!」
「俺の何処が節穴だ! 確かに親方様は図太くて冷徹で血も涙もないが一応人間ではあるぞ!! 親方様を愚弄するなぁぁ!!」
「ランサー、貴方は私を何だと思っているのでして?」
元から相性の悪いセイバーとランサーが、田舎ヤンキーの喧嘩のようにオンオンとメンチを切り合っている。それを見ていると、本当に英霊なのかと京子は疑いたくなってしまう。これが人類史に名を刻む英雄達の姿なのだろうか。
放って置きたいのはやまやまだが、その内にヒートアップして互いが武器を取りそうなので、ブチ切れ寸前の所で止めようかと考えていると、それよりも先に直葉の方が、京子の手から離れて、勇敢にも二人の間に割って入った。
「ストォォォップ! 何くだらない事で争ってんの! 兄ちゃんを助けに来たんだから仲良くしてよ!!
──直葉は精一杯に睨み付けているつもりだろうが、数多の猛者を相手にして来た英霊達相手には、チワワ処かハムスターが吠えているのと変わりない。しかし、互いが張り上げた片意地を抜くには丁度良い具合のようで、フンっと因縁を断ち切るようにぶつかり合っていたメンチが逸れる。
「チッ……先にオレのマスターを攫ったフザケタ野郎を叩く。テメェの相手はその後だ。ランサー」
「相分かった。今は貴殿より先に外道を倒すべきだ」
「良かったぁ……」
2人が怒りの矛を収めたのを見て、直葉は安堵の息を盛大に吐き出す。そんな勇敢な幼子を親心ながらに褒め称えようと、京子は裾から伸ばした掌で、その小さい頭を優しく一撫でした。
「良く頑張ったのでしてね。幼子ながら大した度胸でして」
「アタシだって頑張れば出来るもん! セイバーとか赤鎧の兄ちゃんみたいに謎パワーなんか無くたって、兄ちゃんみたいに強いんだから!!」
「ほぅ……貴方のお兄様はそんなに強いのでして?」
京子から見た直葉の兄──榊 浩一は、その内に一物あれど、何処にでも居るような有象無象だ。なので、どうせ身内の贔屓目だろうとは思いながらも、話の流れに乗って敢えて尋ねてみる。
すると、直葉は嘘も付けないような真っ直ぐな言葉で答えた。
「うん!! だって兄ちゃんは、アタシのヒーローなんだから!!」
セイバーもランサーも、コレで本気じゃないってんだから、ヤバすぎます。英霊相手に普通の人間は、先ず勝てませんわな。
『追伸』
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