Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
2000文字近く修正なんかするから遅れるんだ。
それもう投稿一回分ですやん。
「冷たいなぁ、お互い深い仲だろうによ」
恐らく非常用に何処かに設置されていたのだろう──若干錆びついた武骨なバールを肩の上でクルクルと弄びながら、ダンスホールで待ちわびていた榊はワザとらしく肩を大きく竦める。
「黙れ、テメェとそんな仲になった覚えがねぇ」
「相変わらず連れねぇ女だ。そんなんだから、
榊が何やら戯言を宣うが、セイバーは生憎と聞くつもりなど更々ない。この男が喋る言葉全てに耳を傾けていては、こちらの身が持たない。
なればこそ、この男と喋る時には、コチラから一的に質問を投げ捨てるに限る。
「どうやって出て来た、テメェ」
「俺が大好きっていう物好きな奴が居てな。そいつのお陰で、この通りほら絶好調だぜ。まぁ、本気には未だ程遠いけどよ」
跳ねるようなステップを交えつつ、榊はさも余計な枷が外れて軽快だと言わんばかりに、四肢をフルフルとバタつかせる。
「ケッ、物好きな奴もいやがるもんだ」
セイバーはその戯言を嘘だとは思わない──事実、眼前に立つ榊のガワを被った男の存在感は、昨日に公園で姿を現した時よりも数段増している。
認めたくは無い──認めたくは無いが、今セイバーの目の前に居るふざけた男は、此度の聖杯戦争で出会ったどの英霊よりも、遥かに底が知れない。まるで宇宙よりも未知と呼ばれる深海のように、その強さの最果てが何処までなのか、全く図る事が出来ない。
「つぅかよ、そんな事良いじゃねぇか? それよりもよぉ」
そんな底の知れない男──榊は、スッカリ待ちわびて固まった首筋を、コキコキと鳴らすと、やがてセイバーを試すように、顎を引き上げて挑発でもするかのように見下ろす。
何を問い掛けて来るのかは分かっている。分かっているからこそ、一部の隙も無くセイバーは、何があろうと動じない覚悟で腹を括る。
「セイバー。覚悟は出来たか?」
だが、その問いかけを聞いた瞬間、自分の表情が僅かに強張るのを自覚した。
「俺と同じ、獣の道を歩む覚悟がよ」
男の言う獣の道──それは騎士としての矜持を捨て去り、敵を殺すだけの獣となる畜生道。問われているのは、その道へ堕ちる覚悟。
そんな畜生にも劣る存在に成り果てるなど、この剣と王に誓って有り得る筈も無い。そのようなクソ野郎になるくらいなら、いっそセイバーは自らの首を跳ね飛ばしてみせる。
「……」
しかし──セイバーは応えられない。いや、応える事など出来る筈が無い。
雨降る焼け野原の中で、この男に存在全てを凌辱されたあの時、一度は獣に成り果てている。それだけじゃなく、あの時のセイバーは、騎士としての己を忘れ去っていた。
ただ、己を侮辱する目の前のクソ野郎と殺したい──その純然たる殺意のみが、あの時のセイバーを突き動かしていた。そして、それは紛れも無く、榊の言う獣の道に堕ちた己の姿をしていた筈だ。
だからこそ、セイバーは理解している。獣の道へと堕ちれば──騎士としての己を捨てれば、この男に手が届く可能性がある事に。それこそが、己が最も最強へと至れる近道だという事に──故に、応える事など出来ない。
王の意思を守る為に騎士となるか、王の敵を殺す為に獣となるか──セイバーは未だ決める事が出来ない。
「あぁ、そうかそうか、まぁだ決めてねぇんだな。いやはや──」
そんな何も言わずに口を紡いで押し黙るセイバーの様子から、榊は何やら腑に落ちたらしく、やたらと納得したように首を縦に振リ出した。
「本当に、甘ぇよ。お前」
──そして、気が付いた時には、セイバーの首筋には、バールの先端が突き刺さっていた。
「ッ!!」
この男を前に慢心も油断も無い。片時も視線を離さなかった筈だ──だが、それでもセイバーはその予兆を感じ取る事さえも出来なかった。
「何も分かってねぇようだな」
驚愕に目を眩ませる暇もなく、榊の元へと引き寄せるバールの動きに抗えず、セイバーはその顔を引き寄せられてしまう。
「俺の言った事忘れたかのか?」
互いの顔が鼻息が触れ合う寸前にまで近づく──そんな恋人のような距離感の中で、榊は鎧兜越しのセイバーの頬を舌で舐める。
「お前はオレと同じだ──獣にしかなれねぇ、哀れなクソガキだ。その事をミッチリ叩き込んでやるよ」
その時に舌なめずり越しに囁かれた言葉が、戦闘の始まりと共に、セイバーの理性を完膚なきまでに打ち砕いた。
「離れろテメェ!!」
「おっとぉ!!」
未だ首筋から引き寄せられるバールに抗い、鼻骨諸共に粉砕する勢いで振りかぶった頭で、セイバーは榊の顔面に狙いを定める。堅牢な鎧兜に加えて、英霊としての膂力が合わさり、それは最早砲弾のような破壊力を秘めていた。
だがしかし。
「ガッ……!!」
「まだ騎士に未練なんかあんのかよ?」
弾け飛んだのは、セイバーの方だった。迎え打った榊の頭突きを前にして、その堅牢な鎧兜は呆気なく砕け散り、守られていた筈の生身の頭から、額が割れて血が噴水のように吹き出る。
「なぁ!!」
「ァガ!!」
間髪入れる事無く、頭蓋を軋ませる一撃に仰け反ったセイバーの土手っ腹に、榊の蹴り抜いた前足が突き刺さった。
それは、さも鉄杭をブチ込んだかのような貫く衝撃──鉄の塊のような重装鎧で身を包んだセイバーがゴム毬のように、いっそ面白いくらいに絨毯の上を跳ね回り、そして最後には、広いダンスホールの端まで吹っ飛ばされ、絵画が描かれた壁を塗り潰すようにクレーターを生み出す。
「ブハッ!! ゲェ!!」
壁に激突した瞬間、セイバーの口から血反吐が吐き零れる──身に纏った重装鎧のお陰で致命には至らずとも、その貫通した蹴りの衝撃は、確実に骨の数本は持っていかれている。マトモに喰らっていれば、臓器全てを踏み潰される威力だ。
「おっと、そうだ」
悲鳴を上げる臓器の痛みを噛み殺し、それでも立ちあがろうとするセイバーを他所に、榊は傷一つないフローリングに、パールを一撫でする。すると、その軌跡が根こそぎ削り取るような傷となって、ダンスホール全体が大きく二分に斬り別れた。
「そこのガキ、この線から一歩も出るなよ。死にたくなかったら」
「あ、あぁ……」
それは傍観者である直葉への警告。突如始まった修羅に頭が追い付かずに狼狽える妹に対し、榊の向けたその眼は兄としての優しさは無く、代わりに獲物を狩り殺す野獣の如きギラつきを見せている。
「兄ちゃ……ん……どう、して」
何が起きたのか分からず、ただ目の前に起きた事象に、腰が砕けてその場にへたり込む直葉。その様子に榊は何ら関心を示す素振りも無く、その興味は、ようやく自前の剣を支えに立ち上がったセイバーの方へと向いていた。
「さぁセイバー、今度は邪魔も魔力切れも無しだ」
さも自らの武器を見せつけるように、手に持ったバールを大げさに振り回し、いっそワザとらしい程に、二ヤついた微笑で、誘うように人差し指を曲げる。
「心行くまでテメェが何者なのか、俺が手取り足取り思い知らせてやる」
そもそも武器ですらない
一刻も早く、目の前の男を叩き斬らなければ、腹の底から沸き上がる憤怒に、自分が自分として保てなくなってしまう。そんな怒りが腹の内で今にもはち切れそうなばかりに渦巻く──奇しくも、それは自らが獣に堕ちたキッカケとなる殺意の衝動と、良く似通っていた。
「──殺す」
だが、そんな事はどうだって良い。
「お前は、絶対に殺す」
──―コイツは殺す。絶対にブッ殺す。セイバーは溢れんばかりに漲る怒りを赤雷に変え、全身を張り裂けんばかりに激しい熱で滾らせる。
「そうだ、それで良い!!」
それが榊を子供のように喜ばせる行為だとしても、セイバーには関係ない。そもそも、例えこの舐め腐った態度をとる目の前の男が、本当はマスターだったとしても、どうでも良い。
例えどう思われようが、誰が相手だろうが。
「オレを騎士として愚弄する奴は、誰であろうと
それだけの話──故に、今度はセイバーの方から榊目掛けて、弾かれるように飛び出した。
「だったらやって見せろよ! うっかり死んじまうんじゃねぇぞセイバーァァァァァ!!」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ獣野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
騎士か獣か、互いに肉を喰らい合う饗宴が、今始まる。
個人的にですが、セイバーは余裕綽々で戦うよりも、ブチ切れながら戦う方が一番輝いてますよね……そういうの、大好きです。
『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426
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