Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
二週間、ようやく乗り切ったぜ……!!
詰まる所、セイバーが散々振りかざしていた騎士としての誇りや矜持も、全ては後付けで染みついた余計な汚れでしかなかった。
その本質はただ
それこそが、セイバーというガワを被った怪物の本性──それこそが、榊の中に居る獣ですらも、想像だにしなかった醜い在り方。
正しく、決して開けてはならないそのパンドラの箱を、榊は文字通りこじ開けてしまったようだった。
「良いじゃんスゲェじゃん最高じゃん!! やっぱりテメェは本物だセイバーァ!!」
──笑いが、高揚が、興奮が止まらない。
「なぁ教えてくれよぉセイバー! 今どんな気持ちだぁ!! どんな気分なんだよ!!」
だからこそ同じ獣として、榊は知りたい。同じ産まれるべきでは無かった者として、災厄となるべき生まれ堕ちてしまった獣同士として、その魂に刻まれた血の定めと本能が、何を示しているのかを骨の髄まで確かめたい。
その上で知りたい──かつて同じ道を辿り、同じ破滅を迎えた者として、どちらがより醜い存在であるのかを。
「その顔見せてみろよ!! 最早飾られねぇ!! 飾る必要もねぇ汚いテメェの顔って奴をよぉぉぉ!!」
「グルァァァァッァァァァァァァァァァ!!」
そして、もう一度バールと剣が交差した時──榊とセイバーの戦いは更に加速し始めた。
「まだだぁ!! まだまだ底があんだろうがァァァァァ!!」
「ガァ! グルァァァ!! グルァァァ!!」
より速く、より醜く、より凄惨に閃光のような火花を瞬きの如く次々と散らし、少しでも互いの胃に地に届くように鋭く、交差する刃が研ぎ澄まされていく。
──そもそもこれは戦いと呼べるのだろうか。互いに剣を持つ物の、それを振るう太刀筋や構えは何ら意味を持たず、本当にただ振り回しているだけ。それは切り裂く事に拘らず、ただ相手を殺す事に特化したぶつかり合いだ。
五感の潰しに加えて引っ掻き、噛みつき、金的、殴り合い、関節破壊──思いつく限りのあらゆる急所に対し、一切の容赦無く行われるそれは、凡そ知性持つ種としての戦いでは無い──文字通り、我を忘れ本能のままに牙を剥く獣の闘争だった。
「ガァァァァ!!」
無数に振るわれる剣戟を強引に弾き、セイバーが剣を高く榊の頭上へ振り翳す。それが袈裟斬りだと一瞬考えたが、同じ獣としての歓声が、それは違うと榊に囁いている──もっと、知性のクソも無い攻撃の筈だ。
そして、榊に襲うのは予想通り、袈裟斬りでも剣戟ですらも無い、剣の底による頭蓋のカチ割り。素早く両腕を交差して受け止めるが、その衝撃が筋肉を貫いて、諸に骨身へと伝わって砕いた。
「最高だぁ……!!」
しかし榊もまた、受けるだけでは終われない。壊れ欠けた両腕の筋肉を爆発させるように隆起させて弾き返す。それによって跳ね上がったセイバーの胴体へ、一直線に拳を叩き込んだ。
「」
硬い鎧を砕く確かな感触はあるも、身体の芯は捉えていない──それでも拳に伝わる確かな感触と共に、その口からは血反吐を漏らしている。だがそれは、榊の両眼に吹き付けるように撒き散らされ、忽ちにセイバーを捉えていた視界を赤く染め上げた。
「最高だよなぁ!」
その一瞬の視覚不良は致命的な隙をもたらす。被さった血を拭い取る合間もなく、榊の左脚に骨が外れるような鈍痛が走る──真っ赤に染まる視界のまま、自部の足元を見れてば、膝に突き刺さったセイバーの前蹴りが、関節方向とは逆に折り曲げていた。
「最高だぜぇ!!」
折れ曲がって片脚を失っても、榊の一度燃え上がった闘争本能は止めようとはしない。支えを失って崩れようとする態勢であっても、激しい衝突の中で砕けた足元のタイルを拾い上げ、ただ馬鹿力のままにセイバーの頭へ叩き付けた。
「ガッァァ!!」
叩き付けたタイルが粉微塵に砕け散る程の衝撃に、セイバーの頭が更に血を噴き出してグラリと揺れる。その機を逃す筈も無く、既に振るっていたバールの豪剣によって、セイバーの喉元をゴッソリ掻き切ろうと狙いを定める。
「おいマジかよぉ!!」
──しかし、届かない。当たれば喉笛を掻っ攫い、その息の根を止める曲がった刃は、セイバーには届いてはいても、その肉には届いていない。
「ガウゥゥ!!」
それは鉄すら噛み千切る野獣の如きセイバーの牙が刃を阻んでいた。
「最高だぜセイバーァァァァァ!!」
直感も反射でも無い、ただ闘争本能のみで防がれた──その事実に最高潮に高まる気分を抑えるが出来ず、即座にバールを手放すと、その顔面に榊は拳を打ち込んだ。しかし、それさえも本能的に撃ち放たれた、同時撃ちのカウンターで同士打ちとなる。
「ガッ!?」
「ガぅ!!」
互いに撃ち出した拳は、互いを吹き飛ばし、広いダンスホールの両隅まで、無様に吹き飛ぶ────だが、榊は転がり回る中でも、平たいフローリングに指が減り込む程に爪を立て、どうにか壁に叩きつけられる寸でのところで食い縛った。
「グゥゥ……グルァァァ……!!」
そして顔を上げれば、そこには自分と同じく爪を立て、四足歩行の獣が如く地を這い、剥き出しの刃が如く鋭い眼光で牙を向くセイバーが、まるで獲物を捕らえるかのように睨み付けていた。
「トンデモネェ化け物になったじゃねぇか!! 嬉しいぜ俺はよぉぉ!!」
その姿を見てしまうと、榊は沸き上がる衝動のままに、極上の喜びを示す身体を身悶えさせてしまう。
聖杯に呼び出される英霊は、その全盛期の姿となる、故に肉体精神共に成長する余地が無い──だが、現にセイバーは成長している。その目と手と牙で、榊の放つ太刀筋、動き、そして施行までの全てを喰らい、自らの糧として喰らっている。
一皮剥けば、そこには有るのは空っぽの器──しかし空っぽ故に底が無い。
今やセイバーは、榊ですらも手を付けられない本物の怪物に成り果てていた。
「ハハッ」
─ーだから面白い、だから哂う。獣として誰も勝る事が無かった自分に、唯一届くかもしれない怪物を前に、人間としての在り方を忘れてしまいそうになるくらいだ。
「ハハハッ!」
背筋が凍り付けにされたように固まり、自然と全身の筋肉が強張るのを感じる。思考に余計な不純物が混ざり、死神の釜が首を捉えるような錯覚も見えて来る。
「ハハハハハハハハハハハハ!! アッハッハハハハハハハ!!」
だからこそ、榊はその哂いを強める。戦う本望すらも忘れて、いっそ狂ったようにイカれたようにトコトンまで哂い果てる。
──果たして、無敵と呼ばれた己に勝てる者が居るのか。彼の王でさえも終ぞ分からなかった答えを、目の前の騎士は導き出せるのか。
「教えてくれよぉ! セイバァァァァァァァァァァ!!」
それを知りたくて、怪物は自然と走り出す。歯形の付いたバールを握り直し、本来あるべき剣を構えるような姿に戻る。
「ガァァァァァッァァァァァァァァァァ!!」
それに合わせてセイバーも応えるように走り出す。最早人間という枷を捨て、地を這うような四足歩行のまま、音速を超えて駆け抜ける。
──交差すれば、撃ち合えば、どちらかの首に刃が届く確信が榊にはあった。
セイバーは、最低限戦えるだけの肉体を維持する為に、限界以上の魔力を消費しきっている。榊もまた、少々お遊びが過ぎたようで、そろそろ本来の肉体の方が持ちそうにない。
だからこそ、この一撃に賭ける。そこい互いの存在証明と過去を織り込み、獣と怪物、どちらが刃であるかを示す為、全霊を持って剣を振るう。
刃が、2人が、獣が、怪物が交わる。
「止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
事はなかった。
飛び出した直葉の影が、怪物達の刃を止める。
誇りある決闘よりも、汚ねぇ殺し合いの方が性癖に来る!!誉は浜で死にましたわ!!
元々勝てば良かろう精神のセイバーに対して、更に尊厳を捨てさせるような戦いをさせるとは……流石は獣、格がチゲェや!!
『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426
作品の高評価や感想は何時でも待っています!!
そして、本日から活動報告再開です!!特にネタとかは無いけどやります!!
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