Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
まだ見ていない方は、『閑話:血塗れの会敵』から読むのをオススメします。
──ーつまりは、この惨状はあの男が仕出かした物だと言うのか。そう思えば、京子は何も疑う事無く、自然と腑に落ちた。
「愚かでしてね」
そして同時に、この女の愚かしさには呆れを禁じ得ない。京子は真っ赤に染まった高級絨毯の上から、粘ついた血溜まりの中へ足を踏み入れる。
「貴方は怪物の飼い慣らし方を間違えたのでして」
そして、どうしようもない程の
──―そもそも、手名付けるという考え事態を根本的に履き違えている。あの男は制御の効かない嵐のような存在。出来るとすれば、その矛先が自分ではなく、邪魔な敵に押し付けるくらいだろう。
そんな事も分からずに、手名付けようとした愚か者に対し、京子は片手に符を構える。既に符には魔力が籠っていて、後は手放せば全て終わる。
──ーだが、それが明らかにトドメを刺す前段階だと分かっている筈だというのに、マハの顔からはニチャついた笑いは消えない。
「ハッ、アンタが、それを、言うのか?」
赤に塗れた顔面の中で、心底人を不愉快にさせるせせら笑い。それが京子をゆるやかに見上げて、血だまりの中で溺れていた指を指す。
「操り人形ちゃんの、アンタがね」
「黙れ、下郎」
──ーその時、京子は信じられなかった。それ程までに自分が驚く程、地を張うような低い声だった。どうしてそれが出たのか、理解出来ない、いや、したくもない。
だが、今なお足元に転がり、血反吐を撒き散らすこの女は、明らかに死にかけているというのに、まだ眼が笑っている。まるで道化の芝居を見る子供のように、愉快に踊り狂う人形でも見るかのように、哂っている。
「図星かい? そう、だろうねぇ。だって、アンタって」
「戯言は聞きたくないのでして」
その言葉の続きを、京子は展開した符の結界で押し潰した。
「ガァッ!?」
「貴方如きに、私を語れると?」
残っていた符を次々と放出し、結界の壁が展開されていく度に、マハの上に幾重にも積み重ねていく。この女の哂いと息の根が止まるまで、その強度と重圧が増していき、床が割れんばかりの重い軋みを奏でる。
「ガッ、ハガハハハ!! やっぱりねぇ!! やっぱり、アンタは、そうだぁ!!」
──ーだが、それでもマハは哂う。床が抜け圧しそうな程の重圧に押し潰される中でも、俄然狂ったように京子を見て哂っていた。
「アンタは、やっぱり!!」
「黙れェ!!」
その不快な笑いを聞く度に、京子の殺意もまた増していく──ーそして、遂には全ての札を使い切り、代わりに魔力回路を励起して、12層にも及ぶ結界層の強度と押し潰す圧を極限にまで高めていく。
何故そこまでするのか。唯の長髪であれば軽く受け流せる筈なのに──ーこの女は危険だと、京子の頭が警鐘を鳴らしている。故に、此処で殺す他ないと、思考が固定されてしま手散る。
「貴方は日平和教の! 日ノ本の敵でして! ならばヒキガエルように醜く潰れて死ね!!」
それこそが京子にとって──ー違う、違う違う違う!! ──―日平和教に取って、最善の行為の筈だ。此処でこの女を殺せば、日の元に余計な混乱を産まず、聖杯戦争から1人の参加者とサーヴァントが消え、そして、より勝利に近づく筈だ。
だから、京子は日平和教の総意として、最大まで魔力を注ぎ込み、女を圧し潰そうと意識を振り絞る。
「あっ、お邪魔でちたか拙者?」
だが、突如現れた乱入者がその一手を盤外からぶち壊した。
────────────────────────────────────────────────ー
その不細工な髭面をした大男が現れたのは、閉じたカーテンで死角になっていたベランダからだ。そこから窓ガラスと開くと、ヒョイと軽快にも部屋の中に入って来た。
「女の子が床に挟まれるとは中々ニッチな性癖ですなぁ。拙者としてどんな性癖でもバッチ来い!! と言いたい所ですが、スプラッタかつリョナ属性まで付けられたら流石に拙者でもカバーし切れるか不安ですぞ……いや海賊としては慣れてるんですがね!!」
そこから訳の分からない事を宣い始める大男。それは地塗れた部屋の中に置いて、余りにも場違いすぎて、京子は頭の中に詰め込んだ思考が、ポッカリと抜け落ちてしまった。
「と言う訳ではいドーン!!」
だからこそ、その大男の手にフリックフロック式の銃が握られており、それが自分に向けて撃たれた事を、発砲音を聞くまでは気が付けなかった。
「ッ!?」
──ー長年の魔術経験から無意識に、結界の層をマハから離し、京子はその身を護るべく並び立てる。だがそれは全くの無意味。
京子が持てる最大限の魔力を込めた12層の結界は、例え拳銃やサブマシンガン、果ては
そして、鉛球が京子の左胸に──ー。
「親方様!!」
槍先が直前で鉛玉を弾く。鉄がぶつかる火花が京子の胸元に一度散ると、シミ一つない白い天井に、崩れんばかりの大きな黒い弾痕が開いた。
「此処はお下がりを! この男は俺と同じ、サーヴァントです!!」
まだ呆然から覚め切らない京子に、ランサーが吠えるような檄で意識を取り戻させる。そして、あの大男から自分を護るように、その頼もしい背中へと押し込められた。
「あらヤダ! 凄いイケメン!? コレには拙者氏も思わず胸キュンしちゃう!! いやイカン!! 拙者は紳士にして幼き子を見守る愛の守護者!! こんな暑苦しいだけのイケメンには負けませんぞぉ!!」
「巫山戯た事をぉ!!」
それ程までの脅威と認識したのか、ランサーは大男の戯言に付き合いもせず、弾けるように穂先を突き出して、轟音と烈風と共に突貫する。
「カッ! 見えたッ!!」
だが、大男には通じない。それが千刃の嵐が如く怒涛の槍撃であったとしても、身に付けた鉤爪でいなし、強靭な身体で受け止め、時折に不思議な動作を織り交ぜ、ランサーの槍を紙一重で躱し続けるていた。
「当たりませんぞぉ! なんせ今の拙者の速度は通常の3倍ですからなぁ!!」
「何を言っている貴様ぁ!!」
未だ世迷言を吐く大男に、ランサーの槍を振るう速度も更に早まっていく。──ーしかし当たらない。屈強な肉体の至る所から掠り傷の血飛沫が上がっても、明確に命に届くその芯までは捉える事は敵わない。
「何者なのでして、あのサーヴァントは……」
──―2人の英霊同士の戦いを前に、何も出来ずに京子は密かに息を呑む。
戦国時代の勇士として、日本で最高位の知名度と実力を持つ武将の英霊、真田幸村。その英雄を推してでも、致命を与えるどころか、逆に大男は渡り合えている。しかもそれは魔術は小細工などではなく、純粋な肉弾のみでは。
あの英霊の正体は一体何だ──ー今まで頭に詰め込んだ情報を片っ端から掬い上げていく。
そして海賊となれば、どの英霊になる。
かつて
「────さね」
そんな努力を嘲笑うかのように、マハはアッサリとそのタネをバラした。
そして既に、マハは京子の足元には居ない。
「っ!!」
──―何故考えなかったのか。押さえつけていた結界は、既にライダーに割られている。そして、一流の魔術師であれば、例え身体が引き裂けていようと、動く事ぐらいは出来る。
そう気が付いた時には、マハは京子の横を擦り抜けて、既にベランダへ片足を引っ掛けていた。
「それじゃあね! 操り人形の嬢ちゃん!!」
「ッ! 待つのでして!!」
京子がライダーに破られた結界の符を拾い上げるよりも先に、マハの身体はグラリと傾く。
「また会った時、今度はもっと面白いモン見せてあげるよ!!」
最後までマハは笑みを崩さない。高層の空に未だ噴き出す血を撒き散らし、その向こう側へと堕ちていく。
その時、京子は自分の足元に丸い何かが転がって来るのを感じた。
「あっ、拙者そろそろ用事がありまして。これにてドロン!!」
──―下を見る。そして間に合わない事を悟る。転がっていた爆弾の短い導火線は、既に着火寸前だった。
「親方様ぁぁぁ!!」
ランサーが覆い被さる向こう側で、ライダーがベランダから、マハと同じく飛び出すのが見える。
その直ぐ後に、部屋中を覆い付くす爆発が、京子の視界を掻き消した。
実際、ライダーってどれぐらい強いんでしょうか……?
多分、タフネスだけで言えば、今回の7サーヴァント中、随一ですかね。流石は海賊史に残る最強のHENTAIです。
『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。
https://x.com/8f8qdLIQID34426
面白かったら、作品の高評価や感想を是非とも宜しくお願い致します!!
Fate/Red Knights について、聞きたい裏話はありますか?
-
各キャラの制作秘話・設定
-
話の裏設定・心情
-
ストーリー展開の創作事情
-
その他