Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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第三章:人か、怪物か
一夜から覚めて、現実を見る


 そこは何処かの山道。林を切り取って開拓された、自然の中にヒッソリと隠れる抜け道であった。

 

 そして、今は四方八方にぶち撒けられた血と、積み重なった騎士達の死体で溢れる、杜撰な殺人現場となっている。

 

「き、貴様!?」

 

 唯一の生き残りである、転んだ馬車籠に隠れていた老人が、焦ったように目を白黒させる。それに対して獣の騎士は、その大層豪華な身なりを見て、納得したように顎を擦った。

 

「オメェが大将か? 良かったぜ、引っ込んでいてくれてよ。お陰で、間違えて殺さなくて済んだわ」

 

 ──―やっぱり、あのクソ魔術師の言う通りだな。獣の騎士の頭に、厭味ったらしいニヒルな優面が浮かぶ。だが、それを掻き消して、情けなく腰を抜かしている老人の前に、膝を曲げる。

 

「さぁて、俺達に付いて来てもらおうか、裸んぼの王様よぉ」

 

 獣の騎士は、老人の首根っこを乱暴に掴んで引き摺る。ほんのちょっと力加減を間違えて、首を引きちぎらないように、柄じゃなく繊細に持ち運ぶ。

 

 ──―コイツには生きてもらわなければ困る。なにせ、それは獣の騎士が、彼の王の騎士として返り咲くには、これ以上の恰好が付く功績がない。

 

「は、離せ! この騎士の成り損ないが! 殺す事しか知らぬケダモノ風情が!!」

「獣? そいつは良いな」

 

 騎士達の血で出来た巨大な水溜まりの中で、構わず老人を地面に引き摺って行く中、しゃがれ声で浴びせられる罵倒に、獣の騎士は何やら思いついたように、ふと足を止めて笑い出した。

 

「──の騎士なんてよりよっぽど良い。気に入ったぜ」

 

 ──―予言だか何だかでスッカリ広まっちまった名前より、コッチの方が性に合っている。ピッタリな名前を閃いた獣の騎士は、また老人を引き摺りながら、歩きだして行く。

 

 そしてこれより先、『────』は獣の騎士と名乗る。その行く末は、地と鉄で塗れた獣道だと知って尚、その歩みを止める事は無かった。

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 その日の夜、榊は眠る事が出来なかった。

 

 かれこれ数年は顔をロクに合わせる事も無かった妹との話は、たった一夜では収まり切らない程に積み重なっていたからだ。

 

 一体、何を話したのだろうか───最近気になっているクラスメイトは居るのかとか、今やってるヒーロー物が熱いだとか、母親の小皺が最近増えたとか、兎に角そんな話ばかりだった記憶だ。

 

 だが、それこそが兄弟として正しい会話だと思う───そんなくだらない会話をする為に、榊と直葉は、随分と遠回りをしてしまっていたのだから。

 

 そして話し喋って、時に下らない事で言い争いをして、日を跨いで数時間経って、ようやく語り疲れて眠りに付く。

 

 そして榊が次に目を覚ました時には、午前五時を少し回ったくらいだった。

 

「んぁっ?」

 

 何時もより早い起床に、朧気な覚醒状態のまま榊は身体を起こす。どうやら床に倒れてそのまま寝ていたらしく、立ち上がり様に固まった背筋がポキポキと音が鳴る。

 

 首の運動がてら顔を左右に振ってみると、ベットの上には、スヤスヤと寝相悪く眠る直葉のあられもない姿があった。それを見て、クスリと笑うと同時に、榊はようやっと実感が湧いた。

 

 ───あぁ、ようやく守る事が出来たんだなと。自分が掴み取った今に、朝っぱらだと言うのに心がくすぐられる。

 

 そんな切ない心象などお構い無しにして、我が物顔で居座る同居人は榊の頭を叩いた。

 

「よぉマスター、随分と早いお目覚めだな」

「セイバーか、オメェも起きてたのかよ」

「まぁな」

 

 同居人───セイバーは朝っぱらだというのに、全く眠気を感じさせない動きで、背筋を猫のように柔らかく伸ばす。

 

「んぅ……そんでどうする、マスター? そこの妹みてぇにもう一回寝とくか?」

「そうするわ……って、言いてぇのは山々だけど、その前に」

 

 榊は徐に立ち上がると、半ば物置と化したクローゼットを開き、その奥をゴソゴソと弄り始める。そしてようやくお目当ての物を見つけ出すと、その内の一本をセイバーに向かって投げ渡した。

 

「何だこりゃ? 木刀か?」

「昔ヤンチャしてた時に修学旅行で買った奴だよ」

「へぇー」

 

 何の戸惑いも無く平然と受け取ると、セイバーが物珍しそうにそれ───何の変哲もない現代仕立ての木刀を眺め始める。

 

「そんな良いもんじゃねぇけどな」

「おっ、銘まで掘ってんのか。良いな、コレ」

 

 セイバーが何時も振り回している白銀の剣(本物)と比べれば出来損ないの粗悪品ではあるが、どうやら気に入ってもらったらしい。特に柄手に地彫りされた『蛇王狩刃』と言う文字をマジマジと見て頷いている。

 

「気に入ったぜ! なぁマスターこれくれよ!!」

「くれてやるよ。何せもう一本あるからな」

 

 何せその木刀は二本セットなのだから。榊はクローゼットから取り出したもう一本、『赤龍狩刃』と銘打たれた木刀を肩に担ぐと、二、三度だけ顎で玄関を指差す。

 

「それじゃあ、ちょっと俺に付き合えよ。セイバー」




遂に新章、開幕しました。
此処から、聖杯戦争を加速させていくと思いますので、是非お付き合いを……!!

『追伸』
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