Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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騎士VS英雄

「此処にしましょう」

 

 アーチャーがセイバーを伴いやって来たのは、神宿市の東地区の最端にある湾岸。太平洋側から運ばれて来る貨物などを輸送する為、大規模な港がそこには建てられていた。

 

「此処であれば、人を巻き込む心配は無いでしょう」

 

 元はフォークリストの駐車場だったらしき、辺り一帯が開け広がった港の路面に足を付けると、未だ手付かずのコンテナがのさばる周囲を見渡す。

 

 ──―従業員はおろか、人すら居ない事は既に千里眼で見通している。神宿市の再開発に伴い、内海に面する西地区に新しい港を建てられたと同時に、この港の役目は既に終えており、此処に寄り付く人間など早々に居ないだろう。

 

 だからこそ、此処であれば、例え何が起ころうとも誰にも見つからず、誰にも邪魔はされない。2人の決着が付くまで、止まる事はないとアーチャーは確信していた。

 

「弓を構えろ、アーチャー」

 

 対峙するセイバーが、顕現させた白銀の剣を構える。既に現代らしいチューブトップから、凡そ似つかわしくない重装鎧に姿形が変わっており、その内側から溢れ出る殺気から、本気である事が伺える。

 

「言われずとも、セイバー」

 

 アーチャーもまた、応答するように顕現させた長弓を手に取る。

 

 ──―アーチャーの長弓は一級品。純白の胴を縁取る金装飾は、中央で美しい螺旋を描き、青く染まった弦が矢を強かに番える。この世の物とは思えない武器としての美しさを兼ね備えたそれは、紛れも無い宝具──―それも最上位に属する類だろう。

 

 しかし、相対する白銀の剣もまた、アーチャーの弓と同様の格を持っている。恐らく、神話や伝承で語られる『魔剣』の類に違いない。そして、セイバーもまた、その所有者として恥じないよう、我流ながらも一切の隙を晒さない構えを見せている。

 

 ──―この英霊は間違いなく危険な存在となる。一級の魔剣(宝具)に、一級の実力を持ちながらも、己以外の全てを斬り捨てようとする狂暴性。そんな英霊を野放しにすれば、必ずやマスターに危害を及ぼす。

 

 故に、アーチャーは此処で仕留める。少女の幸福を害する災いの元(セイバー)根から断つ為に。

 

「──―」

「──―」

 

 互いが獲物を構えたまま、暫しの静寂が誰も居ない港を包む。どちらかが先に仕掛け、それをどう迎え撃つのかを待ち侘びるように、自然と差し迫った緊張感が、周囲の空気をヒリ付かせる。

 

 そして、先手を取ったのは、やはりセイバーからだった。

 

「初っ端から死にやがれ!!」

 

 雄叫びのような轟きを帯びて、コンクリートの地面を踏み壊し、一息に間合いを詰めて来る。そして、刹那に肉薄したアーチャーのドタマ目掛けて剣を振り下ろした。

 

「クッ!」

 

 しかし、それをアーチャーは弦で受けると、編み込まれた金細工上で閃光の火花を散らして滑らせ、そのままま真下へと逸らす。そして地面を目掛ける剣先はコンクリートの路面をいとも容易く粉砕した。

 

「中々の力量、ですが」

 

 炸裂弾のように弾け飛ぶコンクリートの残骸を、飛び上がるような跳躍で躱すと、アーチャーは番えていた矢を撃ち放つ。

 

 一度の動作に対して、弓から放たれる軌道は無数。音速の壁を突き破り、流星の如く宙を駆け抜ける青条が、剣を振り終えた残心で、無防備な態勢を晒すセイバーに殺到する。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 それに対して、セイバーは振り下ろした剣を無理矢理に跳ね上げて切り落とす。そして、残りは身に纏った重装鎧で弾き返した。

 

 だが、全くの無傷ではない。処理を仕切れずに突き刺さった矢は、その重装鎧を確実に砕いている。マトモに当たりさえすれば、身体ごと持って行っているに違いない。

 

 ──―長期戦になれば、不利になるのはアチラの方。それ故に、アーチャーは跳躍の勢いそのままに、廃棄されたコンテナ群の群れへと身を隠し、セイバーは赤雷交じりの疾走で、その入口へと突き抜けた。

 

「随分とみみっちい真似をするなぁ!! アーチャー!!」

「貴方の馬鹿力に付き合うつもりは有りませんのでね」

 

 戦場が開けた海沿いから、複雑に入り乱れるコンテナ地帯へと移り行く。積み上げられた大小問わずの鉄箱が迷路の如く道を作り、一寸先すらも行方を晦ます中であっても、互いが神経伝達物質(シナプス)のように縦横無尽に駆け巡っていく。

 

 そんな中でも、アーチャーはセイバーを見失ってはいない。例え視界が塞がれようとも、全てを見通す千里眼の前では無きに等しい。今もこの視界には、コンテナ同士の隙間を、赤い残影を伴って疾走するセイバーの姿が映っている。

 

「捉えた」

 

 眼前に太刀憚る巨大コンテナを貫き、あるいは山なりに乗り越え、再度撃ち放った無数の矢が、その向こう側を奔るセイバーへと押し寄せる。

 

 だが死角から急襲であっても、まるで事前に予知していたかのように、振り回した刃で、見事なまでに全てを弾き返してみせた。

 

「コソコソ隠れてんじゃねぇ!!」

 

 そして一度、二度、三度、セイバーが風を唸らせ回転する。その軌道に伴って振り回した剣が、アーチャーとを分け隔っていた巨大コンテナを、スライサーに当てたように容易く輪切りにした。

 

「お見事ですね」

 

 だがその先にアーチャーの姿はない。既にその足は地面から離れており、軽やかに宙を舞う中で、空を見上げたセイバーと目が合う。

 

「逃すかぁぁ!!」

 

 直後、セイバーが両足を振り抜くと、切り刻んだばかりのコンテナの残骸が纏めて蹴り上げられる。砲弾の如く空を猛進するそれらは、宙を舞っているアーチャーへと一直線に襲い掛かった。

 

「成る程」

 

 だが、アーチャーは何も動じない。まるで世界全体がスロー再生にでも罹ったように遅くなる視界の中で、風切り音を上げて迫り来るコンテナに対し、冷静に弓を番える。

 

「だが、甘い」

 

 引き絞る矢に自らの魔力を上乗せし、両端から噴き出す蒼炎の円弧を斬撃して撃ち出す。そして己へと襲うコンテナの砲弾を、辿り着くよりも早く、圧倒的熱量で真っ二つに融解させる。

 

 ──―だが、鉄さえも瞬時に溶け落ちる蒼炎をしても、決して堕ちぬ鉄が残った。

 

 赤熱に溶け落ちるコンテナを食い貫き、燃え滾る蒼炎を突き抜け、白銀の一条(セイバーの剣)が、アーチャーを目掛けて飛び出して来ていた。

 

「これはッ……!!」

 

 魔剣を投げ飛ばす、そんな暴挙など予測できる筈が無い。空中で有っても身を捻り、纏う白い外套が切り裂かれながら、アーチャーはそれでも首の皮一枚で躱し切る。

 

 ──―だが、自らの武器を投げ飛ばすなど、捨て身の一撃に違いない。だと言うのに、アーチャーの背筋を、焼け付くような危機感と殺気は、未だに熱く焦がしている。

 

「よぉ、ガングロ弓野郎」

 

 ガングロ弓野郎。そう呼ばれた時、背筋を焦がすこの感覚は、間違いなどでは無かったと、アーチャーは確信する。

 

 ───どうやら、見誤っていたらしい。セイバーが狂暴な英霊であると言うのは間違いない。だが、その本質は野生の如き闘争本能や戦いを好む精神性などでは無い。

 

 その本質は勝利への渇望。勝つ為ならば平気でを投げ飛ばし、どんな手であろうと敵を殺す、いっそ清々しいまでの貪欲さ。凡そ魔剣を持つに相応しくない衝動だ。

 

 その貪欲さは、幾ら千里眼を持ってしても見通す事が出来なかった。

 

 投げ飛ばしたばかりの剣を掴み、自身よりも高く飛び上がるセイバーを見ると、アーチャーは改め自分の未熟さを思い知らされてしまう。

 

「堕ちろ」

 

 魔力を帯びた赤雷が、天から地へと振り下ろされる。港に海を巻き込み荒れ狂う嵐が巻き起こった。

 




流石セイバー、平気で宝具を投げ飛ばすとは普通じゃ考え付かないッス。

と言うか、良く考えたらセイバーって剣の扱いが雑なような気が……いや、それもふくめて魅力的という訳か、うん。

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

面白かったら、作品の高評価や感想を是非とも宜しくお願い致します!!




また、活動報告に投稿している裏話は、今週より隔週とさせていただきます。申し訳ございませんもうびっくりs!

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