Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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花のように綺麗な笑顔

友達一人とお菓子さえあれば、例えそれが何処であろうと、ガールズトークに華は咲くのが決まりだ。

 

「えぇ!パディちゃんインド出身なの!?ねぇねぇナマステって言って!!ナマステって!!」

「な、ナマステー?」

「本場のナマステ来たぁー!!」

 

たかが挨拶だけでこうも喜ばれる理由が分からないが、その様を見てしまうと、緊張していた筈のパディの表情も自然と綻んでしまう。

 

「ンク、ンク……プハァ!!」

 

直葉が芝生の上に広げたポテチを一齧りし、先程近くの自販機で買って来たコーラを、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み込む。そして、一息吐き出した後に、その目線を庭の外へと向けた。

 

「そう言えば、王子様帰って来るの遅いねぇ」

「ウ、ウン」

 

そう言われてみれば、パディも気が付いた。

 

直葉を向かい入れたその直ぐ後、王子様は『お客人を迎えるのであれば、お茶菓子は必要でしょう。少々用意致しますので、お待ちください』と、そのまま買い出しに行ったのだがーーー体感でも、それからもうかなりの時間が経っている。

 

―――もしかして、王子様に何かあったのか。そう思ってしまうと、途端に忘れていた孤独への不安が押し寄せて、無意識に自分の手を握って、震えを隠そうとしてしまう。

 

「―――ねぇ、パディちゃん」

 

だが、そんな震えも直葉の明るい一声で、幾分か和らいでしまう。

 

「何処か行ってみたい所ってある?」

「エッ?」

 

そして思いついたように突然された直葉の提案に、パディの中で漂っていた不安ごと、纏めて一気に吹き飛ばされてしまった。

 

「だってパディちゃん、ずっと豪邸に一人で居るんでしょ?折角日本に来たんだし、勿体ないよ!!」

 

直葉が懸命に口を動かして、同意を求めるように何度も首を揺らす。だがパディはそこから目を背けて伏せてしまう。

 

「……ウウン、ダメ。オウジ、サマ。カナシム」

 

―――確かに、故郷とは違う世界を見て見たいという気持ちはある。だが、それをパディは許されていない。

 

優しい王子様はきっと許してくれるだろう。それでも、言いつけを破るような悪い子だと、失望されてしまうかも知れない。パディにとって、それが最も恐れている事だった。

 

それを伝えると、直葉はようやく懸命に動かしていた口を閉ざし、そして少し考えるように顎に手を乗せた後。

 

「うーん……決めた!!」

 

直葉がパディの手を掴むーーーそして王子様とは違い、連れ出すように力強く引っ張り上げた。

 

「ス、スグハ!?」

「やっぱり勿体ないよ!ずっと家に籠るなんて、そんなのパディちゃんが可哀そうだよ!!」

「ッ!!」

 

―――可哀そう。その言葉の意味は、日頃学んでいる学習本に書かれていたような気がする。確か意味は不幸な状況に同情されている、という事だっただろうか。

 

『えぇ、今までは貴方を守る為とは言え、縛り付けてしまい申し訳ございません。先ず優先されるべきは、貴方の幸せだと言うのに』

 

今になって、屋敷から連れ出そうと手を握る王子様の困り顔が、頭の中で鮮明に蘇るーーーあの時、王子様は、自分の幸せこそが、最も優先されると言ってくれた。

 

―――パディに取っての最大の不幸は、王子様に見捨てられる事。だが、パディに取って最高の幸福は、一体何なのか。

 

パディには分からない。王子さまは不幸の坩堝に居た自分を救ってくれた。そして幸福の定義も教えてくれた。だが、それは全て用意された物でしかなく、パディは何一つ自ら掴んでいない。

 

だが。

 

「大丈夫だよパディちゃん!もし王子様に怒られたら、アタシが一緒に謝ってあげる!そしたら許してくれるよ!!」

 

真夏の太陽にも負けないくらいに、眩しく輝く友達(直葉)の笑顔を見ると、幸せが何なのかが分かるような気がした。

 

「―――ハナ、ハナ、ミタイ」

「ハナ?お花の事?」

 

その笑顔を見ていると湧き上がる―――ふと、心の内から零れ落ちた願望。それは捨てられた絵本の中で描かれていた、夜空の星にも似た綺麗な物、故郷のゴミ山では見る事さえも出来なかった、咲き誇る自然の花だ。

 

この目に拝める筈も無いと、忘れ去っていた昔の願望。それを思い出せたのは、きっと直葉のお陰だろう。

 

すると、直葉は考えるように首を捻ると、パチンと気持ちいい音で指を鳴らす。

 

「任せて!良い場所知ってるから!!」

 

それを聞いて、パディは無意識に幸せで顔を緩ませた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

直葉に引き寄せられるまま、目指した道中は、パディにとっては本当の冒険の様だった。

 

都会のコンクリートジャングルを抜けて、自然に出来た山道を歩いて、木の枝の簾を潜り、ちょっと古ぼけたトンネルを通る。そこまでの道中を思い出すだけでも、未知のワクワクがパディの中で、止まらない。

 

だが、最も心踊らされたのは、その先に待っている、今まで願っていた景色ーーーそれを目にした時、パディは思わず、心の底から感動が溢れ返ってしまった。

 

「ウワァ……」

 

そこは開けた丘一面を千変万化の色彩で染め上げる花畑ーーー鮮やかな真紅や、澄み渡る群青、輝かんばかりの黄金に、柔らかな白桃と闇夜のような紫、まるで虹が地上に降り立ったかのような光景が広がっていた。

 

―――パディはずっと願っていた。落書きで描いた絵空事じゃなく、その眼が届く限りに広がる本物の花を。瞬きさえも名残惜しくなる程に綺麗なこの場所を。

 

その景色に近づこうと、パディは無意識に足を踏み出そうとする。だが、触れてしまえば、幸せな夢から醒めてしまうような気がして、動く事が出来ない。

 

「昔、遠足で此処に来たのを思い出したんだ!!アルタイル……ベガ?花園だっけ?兎に角、たくさん花があるでしょ?」

 

だが花畑の合間を縫うように整地された小道へ、一歩先に踏み出した直葉がパディの手を引き寄せると、それらの色彩に負けないくらいに鮮やかな笑顔を輝かせる。

 

「ウン……キレイ」

 

飛び込んだ花畑の中で感じるのは、見渡す限りの鮮やかな彩りだけじゃない。少し甘い花の香りが鼻をくすぐり、吹き抜ける風に揺れる草の音が耳を震わせる。全身を包み込む自然の情景が、夢見心地な意識を離して止まない。

 

―――いっそ、このまま此処に居たい。そんな事を考えていると、ふと直葉がその手に持っていた一本の赤い花を差し出して来た。

 

「はいコレ、折角だし記念に一本か二本持って帰ろうよ!」

「エッ、イイノ?」

 

パディは思わず尋ね返してしまった。こんな綺麗な光景に、自分如きが触れて良いかと、差し出された花を受け取る事に、どうしても躊躇いを持ってしまう。

 

「大丈夫!ほら!!」

 

しかし、直葉が花畑の向こうに立つ木の看板を指差す。目を凝らして見ると、平仮名で『はなはじゆうにつんでいってね!!』と、花モチーフのキャラと一緒にポップ調で描かれている。

 

「なんかね、子供の笑顔は最高の花じゃー!って、ココの爺ちゃんが言っててさ。それで取り放題なんだって!!」

 

その看板に描かれた文字の意味は、パディにはまだ難しいが、直葉は安心してと言わんばかりに、ケタケタと和やかに笑う。

 

「だから」

 

直葉が手に持っていた赤い花を、パディの指に一本ずつ絡ませるように、ゆっくりと握らせてくれる。初めて触る花の茎は、とても柔らかくて、力を籠めれば簡単に折れてしまいそうだ。

 

だが、パディは赤い花を落とさないように、自分の胸元で優しく握りしめる。―――この花はきっと、この綺麗な場所で最も美しい花だからこそ、大切な記憶を決して忘れないように、思い出を身体に刻み付ける。

 

「一緒に楽しもう?」

 

そして、誰よりも一番綺麗な少女は、パディの手を引いて、美しい景色のその先へと連れて行ってくれる。




セイバーVSアーチャーの行方はまた後日……それよりも美しい二人の少女の友情をご覧ください。

やはり、この少女2人を書いている時が一番心が癒されます。汚い現代社会の中でもひと際綺麗なオアシスですわ……

丁度、クリスマス前の投稿ですし、この話で心を癒されて、真っ新な気持ちで迎えましょう。

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

面白かったら、作品の高評価や感想を是非とも宜しくお願い致します!!



それと、来週の更新はお休みします。なので、実質今年最後の投稿です。

お休みの理由は、コミケです。戦場へと出陣してきます。

ーーー生きてたら、また会いましょう

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