Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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友情と言う名の強さ

 優しさ溢れる花の楽園に似つかわしくない、憤怒に狂った叫びが木霊する───だが、それ耳にした時、バーサーカーは怯える訳でも無く、寧ろ晴れたような笑顔で応じた。

 

「まず、だー!!」

 

 何故なら、その声は今一番会いたかった人間───そして花束を渡したかった相手(マスター)だったからだ。

 

「何故勝手に私の元から離れたぁ!! お前は私の道具(サーヴァント)だと言うのにぃ!!」

 

 色鮮やかに整地された花畑を、こみ上げる怒りで塗り潰すように踏み荒らし、最短距離でバーサーカーの元へと接近する。それは明らかに迎えに来たという言動ではなく、憎悪すら滲ませるような禍々しさすら感じる。

 

 しかし、バーサーカーにはそれが目に入らない。マスターが迎えに来てくれたという事実だけがその目に映り、わざわざ自分から迎えに行こうとするぐらいだった。

 

「ちょ!!」

「ダメッ!!」

 

 しかし、直葉とパディは何故か止めようとしがみ付く。それに身体が勝手に反応して、バーサーカーは立ち上がろうとした動きを、一瞬だけ止めてしまった。

 

 ──―直葉も、パディも大事な友達だ。だけど怪物である自分を必要としてくれたマスターもまた、同じぐらいに大事な人だ。

 

 そんな大事な人を迎えに行かない事なんて、今の純粋なバーサーカーには思いつきもしなかった。

 

「ご、めん」

 

 だからこそ、後ろ髪を引かれようとも、しがみ付いている2人を傷つけないよう引き剥がす。そして、今度こそ漸くマスターの元へと歩き始めた。

 

「ます、たー。ますたー!」

 

 ──―花を踏まずに歩くのは時間が掛かる。人より倍以上に大きい足で、生え揃った花達を折らないように慎重に掻き分けるのは大変だ。しかし、そんな苦労も、マスターの事を思えば訳ない。

 

 そうして並みいる花畑をどうにか乗り越え、バーサーカーはようやく辿り着く。

 

 未だに手で抱える花束が邪魔で、その向こう側は何も見えないが、気配だけで感じ取れる。間違いなく、この視界一杯に広がる色鮮やかな花の彩の向こうには、バーサーカーの大事な人(マスター)が居る。

 

 ──―どうかな、喜んでくれるかな。そう期待に胸を弾ませると。戦う時より鼓動がドクドク早くなる。なので、らしくもない深呼吸を一度挟んでから、意を決してバーサーカー、は両腕一杯の花束を目の前に突き出した。

 

「まず、たー! これ!!」

 

 

 

 ──―どんな反応をしてくれるのかな。期待と不安に頭が揺れるが、きっと喜んでくれるに違いないと、バーサーカーは確信していた。

 

 だって、2人はそれで喜んでくれたのだから。それだったら、マスターもまた、この花を受け取ってくれるに違いない。

 

 

 

 そう切に願うバーサーカーの視界から、花束の色彩が薙ぎ払われて、無残に散って行った。

 

 

 

「何故こんな所に居ると思えば……」

 

 

 代わりに現れたのは、自分が思い描く希望とは全く違った、憤怒と憎悪に歪んだマスターの表情。

 

 

 

 何が起こったのか、理解が全く出来ていない。と言うよりは、それだけ俄かには信じ難かった。

 

「こんなくだらん事の為に!!」

 

 

 

 マスターが差し出した花束を、ゴミのように払い飛ばしたなんて、バーサーカーは簡単に受け入れる事が出来ない。

 

「私は主人で貴様はサーヴァントなのだぞ!! こんなくだらん物の為に私から離れるな!!」

 

 地面に散らばる花弁が、いっそ執拗なまでに堅い靴裏が踏み躙られる。それを呆然と見る度に、バーサーカーが取り戻した心の形が、否定するようにグシャグシャに潰されていく。

 

 ──―どうして喜んでくれなかったのだろう。どうして、こんなにまで怒り狂っているのだろう。どうして、僕の心を否定するのだろう。折角、大事な友達二人がくれた温もりが、身体の中から風が吹いたように消えて行くのを感じる。

 

 なんで、なんで、なんでなのマスター? 何が悪かったのかと、必死に上手く行かなかった理由を考えるも、バーサーカーの鈍感な頭では全く答えが導き出せない。

 

 だがそうして、頭の中でグルグルとめぐる自問自答の先に残っているのは、いつも一つだけのシンプルな答えだ。

 

「貴様はただ私の為に戦い敵を殺すだけでいい!! それしか脳の無いバーサーカーの癖に私に歯向かうな!!」

 

 

 それは自分が怪物だから。

 

 怪物だから人から嫌われ、怪物だから人の温もりを否定され───怪物だから人の心に寄り添う事を許されない。

 

 故に、バーサーカーに求められるのは暴力。それ以外の全ては、己の存在意義を鈍らせる余計な不純物でしかない。

 

 それを思い出した途端、バーサーカーの目の前が真っ暗になった。左右上下を何処を見ても、広がっているのは闇だ。

 

 陽の当たる外から暗く閉ざされた底へ、抱きつく人の温かさは返り血の冷たさに。纏わりついた拭い切れない闇の中へと、無垢に晒された心が引き摺り込む。

 

 ──―そして闇が、怪物が囁く。

 

「お前はバーサーカーだ!! 狂っているのであれば黙って貴様は私の言う事だけを聞いていればいいのだ!!」

 

 お前は狂った怪物なのだと。ただ定められたままに人を殺す悪なのだと。

 

 ──―そうだ。そうなんだ。僕は怪物なんだ。どれだけ忘れようと、バーサーカーは過去から、運命からは逃げられない。だから、この陽の当たる眩しい世界は、許されるべき光ではない。

 

 帰ろう。僕が居るべき場所へ───戻ろう、人の心を知らない怪物に。

 

 そうすれば、きっとマスターは自分を求めてくれる。

 

 

 

 

 だけど、一人の少女が、闇に沈むバーサーカーの手を掴んだ。

 

「ヤメテ……!!」

 

 それはパディ───此処で出会った友達だ。地を立つ細い両脚は、ブルブルと頼りなく震え、人一倍小さな身体は、マスターと比べるまでもなく頼りない。だがそれでも、バーサーカーを守る為に立ち憚っている。

 

「こ、んのガキ!!」

 

 邪魔された事が癪に障ったらしく、狂気じみた怒りの矛先が、バーサーカーからパディへと向かう。

 

 小さく幼い少女からすれば、自分よりも遥かに大きい大人からの容赦ない怒号など、怯えて言葉が出なくてもしょうがない。事実、咄嗟にパディの目は、ビクリと一瞬で閉じてしまう。

 

 ───だが、直ぐにまた大きく見開く。そして一息を大きく吸い込むと、半ば絶叫染みた大声でハッキリと言葉にした。

 

「ワタシノ、トモダチ!! ダメ!!」

 

 バーサーカーは眼を見開いた。今度は別の意味で信じられなかったからだ。

 

 友達。それだけを頼りに弱く、そして脆いパディは、バーサーカーを護ろうと声を上げてくれる───怪物であるバーサーカーを庇おうとしている現実が信じられない。

 

「ガキが私に指図するなぁ!!」

 

 だが、友達の心の底からの叫びも、マスターからすれば只の煩わしい喚き。子供相手だろうと、容赦無く握られた拳が、パディの顔面を払い飛ばそうと振るわれる。

 

「ゔあぁ!!」

 

 ──―動けない。咄嗟にパディを護ろうする身が動くが、大切なマスターを裏切りたくない思いに縛り付けられる。

 

 そうしている間にも、拳がパディの顔を目掛けて吸い込まれていく。遂には間に合わない瞬間まで来てしまい、衝動的に目が閉じてしまいかけたその時。

 

「なっ!! ブァ!!」

 

 振るわれた拳の軌道は、膝ドガッと音をたててぶつかった衝撃で、パディの横頬を掠める形で逸れる。剰えマスター自身を、花畑の横に敷かれた土塗れの畦道へと、無様に転ばした。

 

「パディちゃんを、私の友達を……」

 

 ──―それは偶然だった。動けなかったバーサーカーとは違い、咄嗟に横から背後から直葉が、我武者羅にマスターへ体当たりした結果、偶々そうなっただけだ。

 

 だが───それは。

 

「アタシの友達2()()をいじめるなぁぁ!!」

 

 直葉が二人を───友達を護りたいと、強く願わなかければ、決して有り得る事の無かった奇跡であった。

 

「すぐは、ぱでぃ……」

 

 ──―バーサーカーは無意識に2人の名を呼んでしまう。

 

 どうして、自分(怪物)の為に立ち上がってくれる? そんなに足も震えていて、今にも泣き出しそうな顔をしている癖に、それでも恐怖に歯を食いしばる理由は何だ? 

 

 それが飲み込めずに固まったままのバーサーカーに、少女2人は笑いかける。

 

「任せて!! アタシがあんな悪者倒しちゃうから!!」

「バーサーカー、トモダチ、ダカラ、マモル!!」

 

 その不器用な笑顔を見ると──―そうか、そうなんだと、ようやくバーサーカーは理解した。

 

 理屈なんかではない。友達だから、二人は護ろうとしてくれている。独りじゃないからこそ、まるで自分の事のように怒り、そして一緒に立ち向かおうとしている。

 

 それが友達という繋がりなのか。闇の底に沈みかけたバーサーカーを救い上げ、幼い少女達を勇敢な英雄にする強い何か。暗い奥底では、決して感じる事の無かった揺るぎない本物の優しさ。

 

 その優しさに、バーサーカーはまたしても、救われてしまった。

 

 だとしたら、バーサーカーはすべき事は───

 

 

 

 

 

 

 

「そうか……そう言うことか……ガキまでもが、私を馬鹿に……」

 

 その時、畦道に転がっていたマスターが、まるで幽鬼のように身体を揺らして立ち上がる。そして二、三度呟いたかと思えば、その両手からは燃え爛れるような炎が灯った。

 

「どいつもこいつも私を馬鹿にしやがってぇぇぇぇ!! 私はバーサーカーのマスターだぞぉぉぉぉ!!」

 

 魔術で作り出した炎は、たかが少女2人など、容易く骨の髄まで燃やし尽くしてしまう。

 

 そして、怨嗟混じりの怒号と共に、それは一切の躊躇いもなく、弾ける轟音を鳴らして、撃ち放たれた。

 

「キャァ!!」

「ッ! スグハッ!!」

 

 迫り来る炎の弾に、直葉もパディも本能的に悲鳴を上げる。避ける事すらままならず、その目の前は紅蓮色に燃え盛り、全身に熱の幕が覆い尽くす。




またしても遅れてしまいました……はい、すみません。
友達と一緒に脱出ゲームに行っていて、頭が働いておりませんでした。

それでも、どうにか本日中に投稿が出来た私を、誰か褒めてください……

『追伸』
X(旧Twitter)で投稿報告や、活動報告で裏話を投稿していますので、是非ともお暇な方は見に来てください。

https://x.com/8f8qdLIQID34426

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