Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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同じ穴の貉

 そもそもコスフィンは、子供が嫌いだ。どいつもこいつも、何も知らないような純粋な顔をしていてイラついてしまう。

 

 生まれながらに才能も何も無かったコスフィンには、初めから当主となる未来が無いというのに、世の中のガキは未来が明るいと信じてやまない。

 

 そんな輝く目を見ると、腹が立ってしょうがない──ーそして、その瞳を持つガキ2人が、バーサーカーのマスターである自分に歯向かったのだ。

 

 故にその生意気な瞳を二度と拝めぬように、原型が留めなくなるまで焼き付くすつもりであった。

 

 ──ーだというのに、どうしてだ。

 

「……エ?」

「生き……てる?」

 

 どうして、二人はまだ生きている。

 

「だい、じょぉ、ぶ?」

 

 どうして、放った炎が晴れた瞬間に見えたのは、ガキ2人の焼きただれた死体ではなく、バーサーカーの背中なのか。

 

「な、ぜだ……バーサーカー」

 

 ──ーバーサーカーは、コスフィンの使い魔(サーヴァント)だ。

 

 故に如何なる時でも、マスターであるコスフィンの意に反して、勝手に行動する事など有り得ない。それも今まで一度たりとも命令を破る事なく、従順であり続けたバーサーカーであれば、尚の事だ。

 

 それなのに、この現実はどう説明すれば良い。

 

「何故だ!! 何故だぁバァァァサァァァカァァァァ!! 何故庇うのだぁぁぁぁ!!」

 

 受け入れがたい現実を前にして認めようとせず、コスフィンはストレスで染まった白髪を、ボロボロと抜け落ちる程に激しく掻き毟る。

 

 これではまるで、バーサーカー自らが、コスフィンの放った燃え盛る炎から、身を挺してまで二人を庇ったにしか見えないでは無いか。

 

 そんな事が許されて良い筈が無い。使い魔(サーヴァント)とは、絶対的な主従関係の上で成り立っている。常にマスターで従順であり、忠実であり、そして味方である筈だ。

 

 だからこそ、使い魔(サーヴァント)は、マスターであるコスフィンの邪魔をするような真似をする筈はない──ーそれなのに、どうしてこうなった。

 

「ます、たぁ。ごめ、んなさい」

 

 背中を向けていたバーサーカーが此方を振り向く──ーその瞬間、コスフィンは絶望した。

 

「おれ、ますたぁの、さーゔぁんと」

 

 そうだ──ーその通りだ。お前は私の使い魔(サーヴァント)であり、私の味方だ。

 

 聖杯戦争の為に──ーいや、もっと前から。ザー家の当主となる為に、人生の全てを投げ打ってきたコスフィンに取って、バーサーカーこそ、最後に残った唯一の希望だった。

 

「そうだ──ーお前は私のサーヴァントだ!! 私のサーヴァントなんだぁ!!」

 

 いっそ縋るように、コスフィンはその事実を何度も大声で反芻する。

 

 ──ー召喚するに当たり、バーサーカーの逸話を調べたコスフィンが最初に覚えたのは、共感の念であった。

 

 生まれながらに定められた宿命故に、家族からは見捨てられ、絶望の底に叩き堕とされ、そして暗闇の中で藻掻き苦しむ哀れな存在──ー正しく、コスフィンと同類であった。

 

 この英霊なら──ーこの怪物ならきっと出来ると思っていた。

 

 同じ暗闇の中を生きていたバーサーカーであれば、きっとこの悶えるような苦しみも、グチャグチャに染まった感情も、理解してくれる筈だと信じていた。

 

「でも」

 

 だから。

 

「ふたりの、どもだち、だから」

 

 そんな希望に満ちた瞳を向けるな。

 

「ふざけるな」

 

 お前は怪物なのだろうが。お前が居るべき場所は、私と同じ汚泥のような闇の底だろうが。

 

「ふざけるなふざけるな!!」

 

 それなのにどうしてお前はそちらに居る。痛みも苦渋も絶望も知らない、そこらに転がっているガキ共ではなく、同類である私の元へとやって来ない。

 

「ふざけるなよバァァァァサァァァァァカァァァァァァァァァ!!」

 

 何故、同じ底の底に居るバーサーカーが、私には無い、輝かしい希望を持っている。

 

 その答えを考える事も無く、コスフィンは既に令呪を振りかざしていた。

 

「令呪を持って命ずるぅ!!」

「うヴっ!?」

 

 その右手甲に刻まれた令呪の一画が、赤く光り輝き出す。それに合わせて、バーサーカーの強靭な筈の巨体が、まるで何かに無理やり抑えつけられるように硬直する。

 

「バーサーカー! 大丈夫!?」

「ヘンジ、シテ!!!」

 

 異常な様子のバーサーカーに、慌てふためいてガキ2人が前に出るが、そんな行為に意味など無い。この場において、絶対的優位を持つのは、バーサーカーのマスターであるコスフィンだ。

 

 令呪を持っている限り、バーサーカーはコスフィンには逆らえない。如何なる英雄、怪物と言えども、現世への召喚と共に躱した契約からは逃れられないように出来ているからだ。

 

 本来であれば、ここぞという時にサーヴァントを強化させる時、もしくは自害させる時に使うべき切り札だが───そんな事はどうでも良い。

 

 陽の光が当たる場所へと這い出ようとするバーサーカーを許さない。それがまかり通ろうとするのであれば、コスフィンは躊躇いなく、自らの感情のままに使い捨て要る。

 

「バーサーカーよ!!」

 

 初めから、お前が居るべき場所は此処だったのだ──ー今一度、バーサーカーを私の元へ(絶望の底)へ呼び戻す。

 

 その為であれば、タダのガキ一人や二人など。

 

「そこのガキを───!!」

「なぁアンタ」

 

 ──―肩を掴まれる。そして、手荒な口調で名前を呼ばれる。

 

「誰だぁ!! 私の邪魔を」

「教えろよ」

 

 振り返ろうとしたその時、コスフィンの視界に入ったのは、自分を呼んだ男の顔ではなく、堅く握られた拳。

 

 直後、突き刺すような右拳が、コスフィンの醜悪な顔面をブチ抜いた。

 

「ゴボォォォォ!!」

 

 余りの拳の威力に、令呪を行使しようと詠唱をしていた口が、その頭ごと吹き飛んでしまう。そして、突然の事に反応も出来ず、無様に土の上を転がる。

 

「ぶぁあれだぁ!!」

 

 一体誰が私を殴った! このバーサーカーのマスターであるザー・コスフィンの顔に傷をつけたのは誰だ!! その面を覚えようと、土に塗れた顔だけを持ち上げる。

 

「───ゔぁ」

 

 そして男の顔を一目見ると──ーコスフィンは驚きの余りに、バーサーカーへの怒りを一瞬忘れてしまった。

 

 本来なら、此処で出会う理由も無い相手──ー最もコスフィンと言う存在を馬鹿にした、憎んでも憎み切れない男が、そこには居た。

 

「俺の妹に何してんだ? クソ野郎」

 

 今しがた殴ったばかりの拳を解き──ーそして。

 

 

 

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

 セイバーのマスター(榊 浩一)は、這いつくばるコスフィンを見下ろしていた。




殴ってからぶっ飛ばすぞという男ーーー榊 浩一

妹の危機に遂に参上です。コレにはシスコンと呼ばざるを得ないですね。

『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426

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