Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
まだ見ていない方は、そちらを先に読まれることを推奨します。
赤雷の嵐が過ぎ去った港に降り立ったのは───セイバーのみだった。
さながら降り立ったそこは、大災害の跡地───コンテナの山脈、打ち捨てられた廃船、果ては一際高く聳え立っていた巨大クレーンまでも一切合切が、赤雷の嵐を前にして、原型すらも保てず無残に朽ちている。
「ハァ……ハァ……!!」
嵐が去った港は、まるで嘘のように静寂だ。聴こえてくる物音は、溜まらず膝を付いたセイバーの荒い呼吸音のみ───の筈だった。
「正直に言います。貴方には驚かされました」
嵐に攫われ、乱雑に積み上がるコンテナの山の上に、鉄を軽く踏む音が響く。
「貴方の実力、戦略、勝利への執念───そして」
続いて頭上から降って来るのは賞賛の言葉。そこから余計な嫌味は感じずに、健闘を称える拍手が一定間隔で鳴り続ける。
セイバーが面を上げる───それはまるで願うように、微かな希望に縋るかのように、ゆっくりと視線をコンテナの頂上へと伸ばす。
そして、セイバーが思い知らされる。自らが相手にしている敵が、同じ英霊とは一線を画す規格外である事に。
「まさかコレ程までの威力の斬撃を放つ事が出来るとは」
その火傷跡一つも無いアーチャーの黒い肌が、セイバーの無力さを証明していた。
「どの口が言ってやがる……このバケモンが!!」
口の中に溜まっていた血反吐を吐き捨て、セイバーは膝を立てる。過剰な魔力消費で全身から力が抜け落ちているが、それでアスファルトの地面に剣先を突き立て、それを支えにする。
正直に言えば、セイバーはこの展開を分かっていた───不意打ちの剣筋が、空を舞うアーチャーの首筋を捉えたと確信した時、何が起こったのかを見ていたからだ。
それは青よりも色濃く、そして爆発よりも激しく吹き荒れる蒼炎───アーチャーの背中から湧き上がったその炎が、最大限にまで高めた魔力の赤雷をセイバー諸共に掻き消した。
タイミング、威力、そして剣筋に隙は無かった。だが、アーチャーはそれすらも対応し、そしてセイバーの確信を更に上回ってみせた。
──―つまり、セイバーの全アーチャーは無傷のまま、真っ向から看破した。それが示す事実は一つ。
英霊としても、戦士としても、アーチャーとセイバーの間には、どうしようもない格差が存在している。
「……ックソ!!」
力が無くとも、相変わらずセイバーの口からは汚い言葉が出る。だがそれは何時もの癖などではない。
───認めたくは無い、認めたくはないが、無意識下では理解しているからだ。
アーチャーの英霊としての格、戦士としての技量は間違いなく最上位クラス。そして放出される魔力の質も量も、明らかに桁外れだ。
一方、自分はどうなのか。この身体に巡る魔力は、
ならば必然的に気が付かざるを得ない。
この大英霊に勝てる要素が、セイバーには何一つないという事を。
「……だから、どうした」
されど、セイバーの戦う意思は潰えない。今まで身体を支えていた鋭い刃の切っ先を、ムカつく仏頂面をしているアーチャーに、それでも迷わずに突き付ける。
「まだ戦うのですか?」
「当たり前に、決まってんだろ!!」
不利な状況だろうが格上が相手だろうが、セイバーのやる事はいつだって変わらない。この仮初の身体が消えるまで、己のままに剣を振るうのみ。
何故ならこの剣は己の身が振るう物ではない。王の敵を打ち滅ぼす騎士であるセイバーには、刃としての使命がある。
敵を前にして刃が折れてしまえば、誰が王を護るのか───そこには何も無いに決まっている。故に、セイバーは折れる事は許されない。
例えこの身が朽ち果てようとも、セイバーの戦いには勝利しか許されない。それ以外の結末など、この剣を握った時から既に切り捨てている。
誇りとまでに昇華したその決意有る限り、セイバーの剣は折れる事は無い。
「此処までとしましょう」
───だがその誇りは、アーチャーの提案一つで、アッサリと踏み躙られた。
「どうやら私のマスターが危険のようです。ですから、貴方と戦っている暇はありません」
アーチャーは、海とは真反対にある都市部の方へと顔を向ける。既にその瞳はセイバーを捉えていない。
「──―ハァ?」
思わず、戦いを忘れて間抜けな声が出てしまう───この男が、何を言っているのか理解できない。
今更、この戦いを止める事は有り得ない。寄りにもよって、セイバーが圧倒的不利である、この状況であってもだ。
此処で提案を吞んでしまえば、まるで命惜しさに逃げたも同然。そうでなくとも、一度己の誇りを掛けた戦いを、決着が付かないままに終わらすなど、侮辱以外の何物でもない。
そんなのを、
「テメェを逃す訳が!!」
「───」
怒りに叫ぶ声が空を割く轟音に掻き消す。その直ぐ後に、セイバーの頬に痛みすら感じさせない灼熱が、認知の外から通り過ぎていく。
そして、セイバーの頬から血の一滴が流れた瞬間───核弾頭が落とされたような水飛沫と爆発が、湾岸を漂う大海を纏めて干上がらせた。
「三度は言いません、
弓を構えたまま、アーチャーは二度同じ事を口にする。能面のように変わらない表情と瞳が、眼下のセイバーを遂に捉える。
だがその瞳は、自身を脅かす敵の姿を捉えてはいない。
捉えているのは、何時でも殺せる
「──―」
セイバーが何かを言おうとしたその時、爆発の衝撃で巻き起こる巨大な津波が、頭上に容赦なく降り注いで言葉を掻き消す。
そして、ようやく降りかかる津波が収まった頃には、セイバーの塩水で霞んだ視界に、
最近、オデの、メンタル、ボロボロ。
ヤスミガチ、ナルカモ、デス。
『追伸』
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https://x.com/8f8qdLIQID34426
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