Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争   作:ビンカーフランス

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少女と迷宮と骸骨

 榊達が動き始めた頃───直葉もまた、何処とも知れぬ迷宮の中で目を覚ましていた。

 

「ん……んぅ……」

 

 頬に伝わる床の冷たさに、直葉は浅い微睡から重い瞼を開く。

 

「此処……どこ?」

 

 そして開いた眼に映ったのは、自分が先程まで歩いていた地下ストリートに違いない───だというのに、そこは明らかに何処か見知らぬ別の場所でもあった。

 

 あれ程に賑わっていた人混みも、活気良く繁盛していた軒並み通りも、今や見る影もない。ただ伽藍洞とした地下の通りがそこにあるだけだった。

 

「何処なの、此処……」

 

 それは明らかな異質───まるでよく似た異世界にでも放り込まれたかのような、物音一つしない不気味な異空間を前にして、いっそ現実なのかと目を疑いたくなってしまう。

 

「スグ、ハ?」

「パディ、ちゃん?」

 

 だが、自分の名前を呼ぶ友達の声に現実を認識すると、直葉は体の向きを後ろへと転がらせる。

 

「スグハ……?」

 

 そこには先程までの直葉と動揺に、寝転がっていた床の上から目を覚ましたパディが居た。

 

「パディちゃんも一緒だったんだ……良かったぁ」

「ウン……デモ、ココ、ドコ……?」

 

 自分一人じゃない事に安息を吐く間もなく、パディがキョロキョロと周囲を見探り始める。そして、直葉と同じ事に気が付いたのか、直ぐに身体を震わせ始めた。

 

「コワイ……ココ、スゴク、キケン……」

「うん……私もそう思う。何か、こう……知らない場所みたいで」

 

 気が付けば、パディの震えが直葉の身体にも伝播していた───まるで、都市伝説の当事者にでもなったような気分で、この場所の異質さに気が付けば気が付く程に、不安の塊が根を太く張っていく。

 

 此処は何処で、出口は何処にあるのだろうか。そもそも出口は有るのだろうか。もしかしたら、自分達は()()()()()()()()()()()()()()()()()()? ───囁きのように聞こえてくる不安の影(妄想)に、直葉の額から汗が垂れる。

 

 もし……もしもだ。此処に出口が無くて、もう二度と帰れないとしたら───もう二度と、兄ちゃんに会えないんじゃ。

 

「デモ……ダイ、ジョブ」

 

 ───妄想とは違う、静かながらも力強い囁きが聞こえる。そして、床に付いていた手の甲に、小さい掌が重ねられた。

 

「スグハ、ト、イッショ。ナラ、ダイ、ジョブ」

 

 ───自分だって王子様と二度と会えないって思ったら怖い癖に、それでも掌から伝わる熱のように、優しい暖かさを見せえてくれる───そんな友達の姿を見てしまうと、情けなく動揺をしている自分が恥ずかしくなってしまう。

 

「……えぇい!! むん!!」

 

 自分の頬をパンッ! と痛いくらいに叩く───力加減を間違えて、頬が腫れたんじゃないかという痛みと一緒に、胸に入り込んでいた不安の根も何処かへ飛んで行ってしまった。

 

「そうだね! 私とパディちゃんなら大丈夫だよ!!」

 

 嘘だ───こんな事をしても一度芽生えた不安は収まらないし、作り笑顔を忘れてしまえば、途端に泣き顔に戻ってしまう自信がある。

 

 でも、そんな弱気は見せられない。誰よりも優しい友達に、これ以上の心配は掛けさせたくない。パディのように優しくは出来なくても、持ち前の明るさを発揮して、前を向く事ぐらいは出来る。

 

「何処なのか分からないけど、兄ちゃん達が絶対に来るって!! それまでアタシがパディちゃんを守ってあげる!!」

 

 思えば、兄の榊もこんな気持ちだったのだろうか───どんなに挫けそうになっても、不安よりも先に立ち上がらなければという勇気が、沸々と心の内から感情が溢れ出ていくようだ。

 

 もしそうなのであればと、直葉はこんな状況にも関わらず、思わず笑顔がこぼれてしまう。大好きな兄に少しでも近づけたのなら、それは自分が誰かを護れる程に強くなった証拠だと思えた。

 

 だからこそ、直葉は兄のように、今だけは紛い物の空元気だとしても、直葉は重なった手を握り返して、迷わずに立ち上がる事が出来る。

 

「さぁ行こう! 直葉ちゃん!!」

 

 何処に行けば良いのか出口なんて分からない、それでもパディと2人なら、どうにかなる───いや、どうにかしてみせる。

 

「私が、パディちゃんを守ってあげる!!」

 

 今なら、直葉はなんだって出来る───そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして芽生えた希望を刈り取る様に、そこに異形は現れた。

 

 

「───えっ」

 

 気が付いたのは、偶然に違いない。カツリ、カツリと靴音とは違う───堅い何かが歩いて来るかのような足音が、遠くの方から微かに聞こえた。

 

「なに──「スグハッ!!」うわっ!?」

 

 音の正体を探る暇も無く、パディの断末魔染みた叫びと共に、握ったままの掌に全身が引っ張られる。

 

 盛大にバランスを崩して、背中から床へと寝転がった。そして、天井を向いた視界に、風を切る棒状の何かが一瞬通り過ぎて行った。

 

「エッ……?」

 

 通り過ぎた棒状の何かは、直葉達の直ぐ後ろに勢い良く突き刺さる。それは直葉でも知っていて、なおかつ時代遅れな凶器───錆びた鉄の鏃を付いた矢だ。

 

 どうして矢が飛んできた? ───頭上を通り過ぎていった軌跡を追い駆けるように、自然に直葉の視線が真正面を向く。

 

 

 

『カッ、カッ、カッ』

 

 そこには、嘲るように顎の骨を鳴らす骸骨が、今しがた打ったばかりの木弓を構えていた。

 

「がい、こつ……生き、てるの?」

 

 そんな筈は無いのに、口から事実が零れてしまう───骨だけになった死体が生きているなんて、決して有り得る筈も無い。

 

 だったらどうして、肉体も臓器も無い体で、支えも無く一人でに動いている? 

 

 どうして、目玉が無くなった黒い窪みで、自分達を獲物だと言うように真っ直ぐ捉えている? 

 

 どうして、次の矢を放とうと、弓を弾き絞っている? 

 

「スグハ! ニゲル!!」

「う、うん!!」

 

 溢れ出す疑問を考えるまでもなく、一度寝転がった身体が、今度はあの骸骨から逃げるように、後ろへと引きずられていく。

 

「一体、此処どうなってるの!?」

 

 戸惑うばかりで

 

 突然迷い込んだ地下空間、そこに現れた生きた骸骨────それはまるでダンジョンゲームの導入のような展開。説明書も何も無い中で戸惑うばかりの直葉は、それでも一つだけ、とある核心をしていた。

 

 

 幾らゲームのような場所で、雑魚敵のような骸骨が出て来ても───此処は紛れもなく現実だ。

 

 

 怪我が治る便利アイテムも無いし、直葉とパディの命は復活もしない。そして例えこれがチュートリアルだろうが───そんなのは魔物には関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 死して尚、獲物を求めて彷徨う骸骨の魔物は、ただ己のテリトリーに迷い込んだ獲物達を狩るだけ。

 

 そして、剥き出しになった骨の足音もまた、逃げ惑う獲物を追い掛け始めた。




序盤の敵と言ったら、スライムかスケルトンが鉄板ですよね。

尚、個人的にはスケルトン派です。だって狂骨落とすじゃない……

『追伸』
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