Fate/Red Knights 真性第四次聖杯戦争 作:ビンカーフランス
英霊二人が揃えば、どんな怪物だろうと敵ではない───そんな当たり前の事実を、榊は目の前の景色を以て思い知らされた。
「オラァァ!!」
『キギィィ!!』
鋼鉄のように固い蝙蝠モドキの外皮を、さも毟り取る様に易々と切り裂くセイバー。
「フッ」
「ガオッ!?」」
獅子の頭をした奇妙な合成獣の眉間を、目にも止まらぬ矢で穿つアーチャー。
蝙蝠モドキも合成獣も、榊であれば───いや、並の軍隊であっても容易に倒せない怪物だろう。だが、それを2人はまるで雑魚のように、出会ったその端から次々に薙ぎ倒している。
「……やっぱ、チゲェな」
今しがたセイバーに斬り飛ばされた蝙蝠モドキの頭部が、足元に転がって来る───榊は蹴ってそれを退かすと一歩前に進む。
正直な所、あの二人を見ていると、自分は必要ないのでは? と考えてしまう───自分だけ何処か安全な所に隠れていれば、二人が勝手に何とかしてくれるのでは、と。
「……馬鹿か、俺は」
自分の頭を強く殴りつける。我ながら力加減を間違えて鈍痛が奔るが、お陰で漸く思考がクリアになった。
「もう決めてんだろ。大事なモンはこの手で護るって」
───直葉を抱きしめたあの瞬間から、榊は覚悟している。
失いたくない大事な物は───妹だけは、自分の手で護ってみせると。それを他の誰にも、アーチャーやセイバーにだって任せるつもりはない。
「だったら、躊躇う暇なんてねぇ」
右手に持った血で錆びた剣を肩に乗せる。先程倒したスケルトンから奪い取った代物だ。
『カカカカッ!!』
───前方の通路から押し寄せる化け物相手に乱闘を繰り広げている二人の英霊を搔い潜り、一体のスケルトンが榊を目掛けて躍り出る。
『カラカラカカッ!!』
弱そうな獲物を見つけたと喜んでいるのだろう。奇怪に鳴らす骨の音に合わせ、血錆びに塗れた鉈を振り上げて、榊に向かって突進して来る。
「来いよ、骸骨野郎」
肩に乗せた剣を構える───これぐらいの敵で怯んでいては話にならない。例え相手が、化け物だろうと、それこそ英霊だろうと同じだ。
『カカカァァ!!』
「ツゥ!! 重ぇ……!!」
錆びついた剣で受け止めた一撃は、骨だけの細腕で振るわれたに関わらず、全身が嫌な軋みを上げる程に重い───だが、耐えられない程の威力ではない。
「グゥゥゥゥ……!! ウラァ!!」
『カガッ!?』
四肢全体を滾らせるように力を張り詰め、逆に鉈を弾き飛ばす。そして、重心が崩れたスケルトンのアバラに、前蹴りを叩き込んだ。
鉈を弾き飛ばされ、前蹴りを叩き込まれたスケルトンは、胴体に大きな隙を晒している。その強引に作り出した隙を、榊は突進するように滑り込んだ。
───手に持った本物の凶器が嫌に重い。喧嘩の武器のように軽くはないし、本当に誰かの命を奪える鋭さを持っている。だが、それでも振り上げる腕先に迷いはない。
大事な物を護る為ならば、後悔も迷いも全て置き去りにしてみせる───今は何も管変えず、剣を振るえ。
「俺の邪魔ぁすんじゃねぇぇぇ!!」
そして、渾身の振り下ろしが、骸骨の頭蓋を粉々に打ち砕いた。
「ゼェ……ゼェ……アーチャー、これで、全部、か?」
「えぇ、敵の気配はもうありません。お疲れ様です」
「そうか……」
支えにしていた血だらけの剣を崩し、榊はその場に膝を付く。すると、全身へ一気に疲労感が押し寄せて来た。
「なっさけねぇなぁマスター。まだ準備運動にもなりゃしねぇのによぉ」
「うる、せぇ……こちとら、人間なんだよ。テメェら英霊と、一緒にすんな」
これ見よがしに煽って来るセイバーを一瞥し、視線を端に傾ける。
そこには溢れ返る程に埋め尽くされた、多種多様な異形の屍山───セイバーとアーチャー、それと微力ながら榊とで作り出した、圧倒的な戦果がそこへ屯していた。
だが、こんな物を幾ら積み立てようと意味がない。
「何処に居んだよ……直葉」
幾ら蔓延る化け物共を倒そうとも、直葉はまだ見つかっていない。寧ろ足止めを喰らっている分、目的からは遠ざかっているようにも思える。
それにだ───こんなに人外の化け物が、此処には大量に居るとなれば、もしかすると直葉はもう───。
「弱気になってんじゃねぇぞ」
「イテェ!!」
僅かな心の隙間に差し込んだ邪推が、思い切り振り被ったセイバーの張り手で吹っ飛んだ。ヒりついた痛みで背筋が反射的にピンと伸びる。
「一度オレに舐めた口きいたんだ、だったらゼッテェやり遂げろ……じゃねぇと、お前を許さねぇ」
励ましだとしても偉くドスの効いた、セイバーらしいやり方だ。いや、励ましをする時点でらしくも無いと言うべきか。
「……だよな。こんなんじゃあ、俺も俺が許せなくなる」
セイバーの言う通り、一度踏み入れたからには、もう後戻りは許されないし、するつもりも無い。一度は失った物を護ると決めた以上、また失う事に耐えられる筈が無い。
ならば、立ち上がる他ない。それが自分の血反吐に塗れた地面の上からだろうが、この二本の脚が動く限り、歩みを止める事は許されない。
「んっ……?」
しかし───立ち上がろうとしたその時、榊は足元に何かが絡まるような違和感を覚えた。
「糸、か……?」
思わず自分の足を見ると、短パンジャージ越しの素足に、赤い毛糸のような物が絡まっていた。
「何処で付いたんだ、コレ?」
何処で引っ掛けたのか分からないが、歩くのに邪魔だ───絡まったそれを解こうと糸に触れた瞬間。
『どうして……どうして……!!』
まるでその糸が伝えているかのように、榊の耳を超えて意識に直接、直葉の声が響いた。
「スグ……ハ……?」
何処から、一体何処から声がする!! ───分かっている筈なのに、その声が何処からするのかを追い求めって必死に視界を巡らせる。
そして見つけたのは、やはり赤い毛糸───しかし、普通の毛糸ではない。まるで榊を導くかのように、それは通路の先へと真っ直ぐに続いている。
この糸は何だ?どうして直葉の声がする?多くの疑問が頭の中を駆け巡り、何も答えが出ずに歯噛みする。
「何だよ……何だよ、コレはぁ」
何も分からない───何も分からないが、一つだけ分かる事がある。それは不確かで、直感のようなものだが、榊は自分の中でハッキリと確信が持てる。
この糸が続く方には、直葉が居る。
「おいマスター! 何処に」
「黙って付いて来い!!」
突然走り出し始めた榊に、セイバーが狼狽えているが、そんなのに構う余裕はない。
「あぁクソ!! 後で説明しろよな!!」
後ろから投げやりな悪態が聞こえたかと思えば、直ぐにセイバーが榊と並び走る。
「何処へ行くつもりですか!?」
「知るかそんなの! でもなぁ、でもなぁ!!」
それと同時に遅れて追いついて来たアーチャーもまた問いかけて来た。だが、それに応える余裕など、榊にはない。
何せ、当の榊自身ですら説明が出来ないぐらいだ。ただ、導かれるような直感に従って走っているだけだと言って良い。
だがそれでも。
「この糸の先に……直葉が居るんだよ!!」
「何言ってんだマスター! トチ狂ったか!!」
どうやらセイバーにも、隣で困惑した顔を見せるアーチャーにも見えていないらしい。それに構う暇もなく榊は真っ直ぐに赤い糸の先を追いかけ続ける。
───分かって貰わなくても良い、理解できなければそれで構わない。今一番恐れているのは、曖昧な手がかりだとしても、それを切り捨てた結果、手遅れになってしまう事だ。
そうして走り抜け、駆け回り、時に転げるように曲がり───そして、赤い糸の終端がようやく見えた。
その赤い糸は、分厚い壁を目前にして途切れている。だが、そこに直葉達の姿は見えない。あの時感じた直葉の声は幻想かと一瞬疑ってしまうが、直ぐに思い違いだと気が付いた。
『ダメェェェェェェェェ!!』
足裏で踏んだ糸から、直葉の絶叫が響き渡る。いっそ耳元で叫ばれているかのような鮮明さで。
だとすれば、この糸は未だ終わっていない。続いているとすれば、それはきっと────
「───マスター」
言葉よりも早く、赤い稲妻が駆ける。
───どうやら、もう言葉にしなくとも、分かっているらしい。
「任せろ」
フッと頼り気な言葉が耳を掠めた直後、赤い稲妻の膝蹴りが、分厚い壁の先を強引に切り開いた。
派手に崩れる瓦礫の山、そしてぽっかりと空いたその向こう側。舞い散る粉塵が晴れるよりも前に飛び込む。
「直葉ァ! 居るかぁぁ!!」
その先に、直葉が居ると信じて。
この赤い糸が何なのか……
バーサーカーの正体が分かれば、もしかすれば何となく分かるかもしれません。
『追伸』
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