魔淫戦姫ヴァルキュリアの二次創作作品です。
魔淫戦姫ヴァルキュリアがどんな作品かは分かりません。

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隷淫血姫ヴァンピリア

 転生して悪役令嬢、なんて、今日日ありふれたコンテンツではある。

 

 だが、ありふれているということは即ちそれだけ完成された形ということだ。

 

 悪役令嬢転生モノの、果たして何が面白いのか。

 変化球も多様に増えた昨今において一概に語れるものでもない。が、その魅力の一つに、『本来の役割とのギャップ』があるのは、多くの愛好者が同意するところだと思われる。

 

 悪役令嬢。 

 身勝手、我が儘、傍若無人。

 そういった立場に、全く異なるスタンスの人物が代入されることによる変化。それによって生まれるストーリーの流動性。

 

 本来定められた『悪役』という役割(うんめい)を脱却するカタルシス。

 

 WEB小説の今昔に詳しい人間からすればまた別の視点があるのだろうが、ただの一読者としては、まあその辺りが悪役令嬢転生の魅力なのかなあ、とぼんやりと愚行する次第なのだ。

 

 令嬢というカテゴリに限らず、『悪役に転生したけど善人として生きてみる』系の作品なんて、このコンテンツ飽和時代においても飽きられた覚えがない。

 

 故に、自分が今置かれている、『ファンタジー世界の魔王軍の女幹部にTS転生』というこの状況。

 具体例は浮かばないが、こういう状況で主人公が善人として生きてワイワイやる感じの作品も多分どっかにあるはずだ。フリーレンで断頭台のアウラ人気投票2位だったし。

 

 だが、いや、ならば、と妾(おれ)は問いたい。

 

 

 ――転生から二百年経って散々暴虐の限りを尽くした後に今更前世の記憶戻ったところでどうしろと?

 

 

 しかもこれ、あ(・)の(・)魔淫戦姫のボスじゃん。

 

 だがみなさん知っての通り、このR18同人ゲーム魔淫戦姫の世界において、女ボスってのはプレイヤーの仲間になるか、性奴隷になるかの二択である。

 

 魔淫戦姫の女ボス達は、設定上は各ダンジョンにおける最強の敵として配置されている。

 そんな彼女らが、なぜその二択しか末路がないと言い切れるのか。

 話せば短いが、順を追って説明しよう。

 

 まず、この世界最強の女吸血鬼、『隷淫血姫ヴァンピリア』の名で知られる妾(おれ)の能力がこれである。

 

 

『万血屠り奪う紅蓮殺界(レッドエンドブレイク)』

 攻撃時、対象を出血状態にする。

 また、出血状態の相手に攻撃した時、対象に超ダメージを与え、爆散させる。

 血姫の素早い動きから繰り出される絶え間ない攻撃の中、一度でも出血すれば、相手は次の瞬間に膨大な量の血を流し、絶命する。

 

 

 強そうでしょ。

 

 妾(おれ)も強そうだと思う。

 

 

 

 

 でも出血状態ってなんかその辺で普通に売られてる装備で完全に無効化できるんだよね。

 

 

 

 

 だけどこの世界の女ボスは、完全に自分の能力が対策されてる状況でも自信満々にプレイヤーの前に出ていく。

 そんで順当に「馬鹿なぁっ♡ あらゆる存在を滅ぼす妾の力がぁっ♡」、なる。

 

 そういうゲームなのである。

 

 

 身も蓋もないことを言ってしまえば、妾(おれ)たちはダンジョンクリアした後のご褒美(エロイベント)要員なのだ。

 

 

 だが、妾(おれ)がヴァンピリアに転生したように、他の女ボスに転生した上で、この状況を脱却しようとした他の転生者もいたらしい。

 

 で、徒党を組んで対抗しようとしたらしい彼女(彼かもしれないが)に対し、妾(おれ)が言い放ったセリフがこれである。

 

『怯懦に駆られたかヴァルキュリア。妾の力が人間どもに通じぬなど、戯言を。いくら貴様が淫魔の王とて、そのような下らぬ謀りでこの妾を騙せるとでも思ったか?』

 

 ちなみに前世の記憶が戻ったのはこの直後である。まいったね。

 

 その後『あーやっぱヴァンピリアは転生者じゃないか。まあいいや、私(おれ)たちの能力とコンボし辛いし』と言って、彼女は別の大陸へと渡っていった。通信技術が未熟なこの世界では、もはや連絡手段も無い。終わりだ。

 

「姫サマ! 姫サマ! 冒険者どもがやってきました! ゴブリリリリン! お助けを!」

「お助けをじゃねーよ妾(おれ)を守れよ姫だぞ一応。キミら何度殺されても復活すんだからもうちょっと気張れや」

「今こそ姫サマの絶大なるチカラを見せつける時かと! ネズミミミ!」「ネズミミミ!」「ネズミミミ!」「ネズミミミ!」

「こんなんに姫とか持て囃されてもなんも嬉しくないんだけど、なんで今までの妾(おれ)はこんなしょうもない狭い部屋で二百年もドヤ顔でふんぞり返っていたんだろう……」

 

 実際ここ序盤のダンジョンなんだよね。ゴブリンかネズミぐらいしか出るモンスターもいない。ボス部屋も狭いししょぼい。こんなとこに最強の女吸血鬼がいるの、逆に滑稽だろ。

 メタ的に言ってしまえば、「耐性装備は大事だよ」「ボスは二重の意味で簡単にハメれるよ」ということをプレイヤーに教えるためのチュートリアルステージなのだ。そんなとこに人を置くんじゃねえ。

 

 今までは妾(おれ)のネームバリューっていうか、なんか隷淫血姫とかいう強いのがいるぞってことで誰も近寄ってこなかったんだが、どうも聞いた話、人間側にも転生者がいるらしい。

 どういう目的かは知らないが、耐性装備をバンバン広めまくって、ダンジョンのボスとか全然大したことないと喧伝しているらしい。クソがよ。

 

 そうこうしている内に、ボス部屋の扉がバァーンと蹴り開けられる。

 

「ひひ……話通り、いや、話以上のとんでもねえ上玉じゃねえか……!」

「無傷で売り払えば金貨何枚だぁ……? いや、いや、多少傷モノにしたって遊んでくらせるぜぇ……!」

 

 コテコテか? やって来たるは出血無効の冒険者っつーか荒くれ者。そこには強大な敵に挑む決意と覚悟とか一切なく、下卑た欲望が燃えるのみである。もう本当やだ。

 

 そのまま、ボス戦前の口上とかもスキップして、ピンク色の液体に濡れた棍棒で襲いかかってくる荒くれふたり。

 ちなみに妾(おれ)たちボスモンスターは媚薬を塗った武器で三回ほど殴られると発情してエロイベントに入り、ほぼ確定で負ける。

 

 妾(おれ)はげっそりとやつれながら、半ば義務的に呟いた。

 

「『万血屠り奪う紅蓮殺界(レッドエンドブレイク)』」

 

 そして、出血無効の相手には何の意味もなさない妾(おれ)の連続攻撃が叩き込まれる。

 

 

 ――妾(おれ)のそばにいたゴブリンに向かって。

 

 

「ゴブリばッ」

「なっ!?」「は――!?」

 

 膨大な量の血液を爆散させ、絶命するゴブリン。どうせ復活するのだ。構うことはない。

 

 爆ぜた血の衝撃に怯んだ二人に向け、妾(おれ)は爪で引っ掻き出血させたネズミを投げつける。

 

「『万血屠り奪う紅蓮殺界(レッドエンドブレイク)』」

 

 荒くれの顔面に叩きつけられたネズミがボン! と爆ぜた。

 

 明らかにネズミの体積には収まらない膨大な量の血。

 だけど『膨大な量の血を流し、絶命する』って能力説明に書いてあるのだから仕方ない。

 

「クソっ、しゃらくせえ!」

 

 まあ言っても血をぶち撒けただけだ。怯みこそすれど、大したダメージにはなるまい。

 

 だが。これほどの血を浴びせられた以上。

 

「媚薬は落ちたな」

「なっ、」

 

 こうなれば、多少のダメージを受けたところで構やしない。

 復活したネズミをむんずと掴み、荒くれの口に突っ込んだ。

 

「溺れろ」

 

 出来上がる真っ赤な溺死体。

 凄惨なその光景に、もう一人の荒くれが怯えたように後ろに下がる。しかしもはや遅い。

 

「いけ、自爆ゴブリン」

 

 妾(おれ)は復活したゴブリンの口にネズミを山盛り突っ込み、特攻させた。

 

 ゴブリンの頭に適当に石を投げつけ、出血状態の敵に攻撃する条件を満たし起爆。爆散した衝撃で体内のネズミにも攻撃することで、ネズミも連鎖起爆。

 

 莫大量の血に吹き飛ばされ、血溜まりを転がる荒くれ。

 あまりの血の量に、ボス部屋が足元ぐらいまで血に浸かる。仮にも姫の部屋かね、この狭い部屋が。

 

 相手のダメージは、まあ、それなりにはあるようだが、致命傷には程遠い。

 慌てて逃げようとする男。まあ別に逃してもいいのだが、そこで爆散したネズミ共が復活。

 侵入者を追いかけようとするものの、血の海に溺れて上手く動けないようだ。

 考えてみれば、このネズミ共を溺れさせているのは妾(おれ)なので、これはネズミ共に対する妾(おれ)の攻撃と言えるだろう。

 

「喰らえネズミ地雷原」

 

 爆ぜるネズミが、荒くれを足元から吹き飛ばす。

 

 逃走に失敗した彼がその後どうなったかは、もはや言うまでもない。

 

 

 しっかし荒くれ二人にこれだけ手間取るかぁ……。

 

 

「能力の使い方、もっと考えないとな……」

 

 こいつらを凌いだところで、あらゆる人間に完全にメタ張られたほぼ詰み状況なのは変わらない。

 今更前世の記憶が戻ったところでどうしようもない。できるのは時間稼ぎぐらいのものだ。

 

 だから、うん。

 

 謝るから、後はなんとかしてくれ、ヴァルキュリア。


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