ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
人造人間編が迷走中なので初投稿です。
精神と時の部屋に入ってから一ヶ月。
外界では2時間が経過したころだ。
天津飯はライバルと大きく差をつけられてしまったことを改めて痛感した。
ここにきてからすぐに、彼らは互いの実力を図る為に組み手を行った。
気温マイナス30。吐息すらも凍結する極寒。
普通なら存在するだけでも凍結してしまう死の空間。
その中で激しく呼吸を乱し垂れ流した矢先に凍結する膨大な汗で氷柱まみれになった天津飯と悠々と佇むピッコロの姿がそこにあった。
マントを纏ったままなのは、決してこの極寒故ではない。
今のお前にはこれで十分であるという挑発だ。
「いつかその油断を掬ってやるぜ。」
「やってみろ、貴様にできるものならな。」
字面だけなら売り言葉に買い言葉。
しかし二人の口角は実に楽しげに釣り上がっている。
ここから出れば世界の命運を分ける戦いが待ち受けているというのに…二人は今まさにこの瞬間を生きている。
大魔王の生まれ変わり故か、あるいは性悪女から叩きのめされた故か、狡猾さとタフさを併せ持つ戦士、それがピッコロだ。
これが、神と同化したことで、ピッコロはパワーをあげたことは勿論だが…戦いの質そのものが変化したと言える。
狡猾さは知性へと昇華し、肉体のタフネスは遂に精神をも頑強に仕上げた。
これが本来のカタッツの子の本当の力。
しかも、これがスタートラインだというのだからインチキである。
日を追うごとにピッコロは天津飯を突き放していった。
そうしてあっという間に経過してしまった一ヶ月。
天津飯が彼を出しぬくには…技でこれを超えるしかない。
しかし、彼に焦りの色はひとかけらも存在しなかった。
ーーーこれでいい、俺は俺の武を極めればいい。今超えずともこの部屋を出た時…いや、その先で奴を…奴らを超える。
ただただ真っ直ぐにこの過酷な空間の中で彼は地道に己を鍛え直していった。
その気の増強は非常に緩やかだ。…それも致し方ない。
元々地球人は戦いに向いている種族ではないのだ。
一年やそこらで戦闘力の桁を一つも二つもほいほいぶち抜いてしまうサイヤ人がおかしいのである。
しかし、これを穏やかな心境でいられなかったのはピッコロだ。
神の知識が答えを導き出すのだ。
強大な気は強靭な肉体に宿る。
天津飯の行為は確かに地道で効果のない行為だが…これが強くなるための1番の近道なのだ。
ーーーちっ…孫も天津飯の奴も、勝手に神と同じ結論に達しやがって。
以前ならばこの神の知識もバカめと吐き捨てていたが、今は違う。
インスタントに「強靭な肉体」を手にしてしまったのだ。
だからこそ解る。
戦闘力…気を大きく充実させるには肉体の強化は不可欠なのだ。
しかしいたずらに鍛えるだけではだめなのもまた真理。
己の中の神が諭すのだ。天津飯を導いてやれと
ーーーくそ忌々しい。これが俺の本心なのもな。
神はもういない。これは神の自我ではなく己の心からの言葉だ。
ネイルと同化してから薄々気づいていたが…他人の記憶を享受することで、多少影響を与えるのだということを彼は悟っていた。
……多少ではないレベルなのは言わないお約束である。
実に一ヶ月ぶりに、ピッコロは天津飯に向き合った。
「おい、いつまで型の稽古をしている。」
「……。」
「かかってこい、ウォーミングアップに使ってやる。」
「…いいのか、お前はお前の鍛錬があるだろう。」
「貴様の非効率な鍛錬を見ていては気が散るのでな、御託はいい、かかってこい。」
そう言いながらも、マントとターバンを脱ぐ気配を微塵も見せない。
「悪いが手加減をさせてもらうぞ?下手をすると殺してしまうかもしれんからな。」
「ふ、お前ほどの奴がそんなヘマをするものか。神様を取り込んだのだからな。」
己よりも遥かに高みに登ったライバル目掛けて腰を落とす。
せめて敵わぬまでも一発は見舞ってやる。
そう構え、気を高めようとした瞬間。
「…がは!?」
彼は既に地面へと転がり落ちていた。
既にその視界の端には、先ほどまで数歩程度離れていたはずのピッコロのつま先がそこにあった。
簡単なことである。
天津飯の知覚できない速度で懐に入り、一撃を見舞ったのだ。
「奴とは正反対だな。」
「な…に……!」
「貴様の弱点を教えてやる。」
「弱点…だと…!?」
「奴にあって貴様には無いものだ。」
手を伸ばすなんて甘い真似はしない。
腕組みし、無様に転がる自分を見下ろしながらピッコロは続けた。
「奴は気の解放なんて無駄なことはしない。常在戦場、それが奴の考えだからな。だが貴様はどうだ?有事の時になりようやく構えを取る。…相手が孫の様な甘い奴なら、気功法も待ってくれるだろう。」
「………。」
「敵は待ってなどくれん、むしろ貴様がフルパワーになる前にあっさりと殺すだろうな。今がいい例だ。」
「……く!!」
返す言葉などあるはずもない。
ピッコロの言葉は完全なる正論だ。
実直な彼にとってこれ以上ないほど深く深く刺さる言葉。
「俺にシャオと同じ境地に立てと言うのか。」
「無理だな、アイツの頭のおかしいスタンスを取れる奴などおらん。」
「…そ、そんなことはないと思うぞ…?」
「そう言うことは俺の目を見て言ってみろ。」
「す…すまん。」
ごほん、と咳払いを一つ。
妹弟子のやり方は天津飯には不向きだ。
武天老師、仙猫カリン、神、彼らの教えをまっすぐ受け止めた天津飯と、そのやり方をクソ喰らえ、老師桃白白ならこうすると吐き捨てた小籠包とでは下地が異なる。
漸くダメージが落ち着いて立ち上がる天津飯にピッコロは酷薄な笑みを浮かべた。
かつて性悪女がそうしたように。
「簡単なことだ、一呼吸で気功法を完成させるんだな。」
「簡単にいいやがる」
「出来ないのなら貴様はそれだけの奴だ。ここから先、貴様の出番などありはしない。」
響いた歯軋りの音は誰のものか。
己の武を極めれば良い。
それはただただ現状に甘んじるだけの逃げの言葉だ。
今まで通りのやり方では、ライバルたちに差をつけられるばかり。
「その技は奴の作った物だ。貴様のモノにしない限り、奴を超えることは絶対にない。」
小籠包という戦士の真に恐ろしいところは、気の大きさ、戦闘力の高さではない。
自身より遥かに巨大な気を持つ存在を一撃で粉砕する。
術で敵の意表をついて踏み躙るのだ。
そこに正道邪道の概念は存在せず、
そのあり方はフリーザに近い、彼女はあくまで武道家である相手に気を遣っているに過ぎないのだ。
それを天津飯は分かっているつもりだった。
事実を突きつけられて初めて理解する。
自分は「小籠包」には戦いの体を成せるかもしれない。
だが「鬼姫」を前にしては戦いにすらならず殺されるだろう。
天津飯が気功法を猿真似してる時点で、その技は小籠包の作った技、それ用の対策を用意して天津飯を踏み躙るだけだ。
「漸く自分の立場を理解したようだな。」
「ああ、悪いが付き合ってくれるか。」
天津飯は懐から仙豆を投げつけた。
受け取ったピッコロがその意図を理解する。
「一ヶ月だ。貴様を徹底的に扱いてやる。」
地面に放り投げられるマントとターバン。
落下共にあり得ない音が響き渡った。
「全く恐ろしい奴だぜ、あんな重い物を背負ってあそこまで速いとはな。」
それからの1ヶ月間、彼はピッコロから文字通り地獄の特訓を与えられていた。
覚悟を決めていた天津飯だったが、その覚悟など生ぬるかったと痛感する、想像を絶する過酷さだった。
容赦の2文字を考えられていない理不尽な課題。
それでいて、不可能な課題を決して彼は出さないのだ。
想像をしてみてほしい。
全力でフルマラソンをした後の肉体を欲した極限状態。
クールダウンに
それが終わったらもう1セットだ。
これを陽が昇り、そして沈むまで繰り返す。
…もっともこの異次元空間に太陽なんてものは存在しないのだが…。
休息ですら鍛錬に回される、まさに地獄の特訓である。
これを僅か5歳にも満たない少年がこなしていたという事実に天津飯は震えた。
孫悟飯がいくら高い潜在能力を秘めていたとはいえ、たった一年足らずで自分たちに比肩するほどの戦士に育てられたのも納得である。
そしてこれを監視しながらピッコロ自身もこれと同レベル…いやそれ以上の鍛錬をするのだから彼の天才振りが伺える。
彼は天才戦士であるながら、類稀な師としての才能も有しているのだ。
「少しはマシになったようだな。」
ピッコロからようやく下された「及第点」。
天津飯が気功法を完全にモノにするのにかかった時間は僅か二週間…ここにきてから僅か一ヶ月半で、猿真似でしかなかった奥義はようやく彼の形に成ったといっていい。
気の解放の更なる境地、気の充実をさせることで成立する気功法。
それを澱みのない一呼吸で成立することに成功した。
それも、小籠包の真・気功法に並ぶレベルの精度。
気の大きさ・質は戦闘力の大きさや直結する。
この短期間で天津飯の戦闘力は見違える程に成長したのだ。
更に、この境地に至ったことで彼は新たな境地に目覚めつつあった。
それは必要に応じた出力の制御。
必要に応じて、必要なタイミングで最適なパワーを極点化させる。
力を発する瞬間に絞り、気功法の出力を一点集中させることで、天津飯の力は限界の壁をあっさりと破壊した。
瞬間的なパワーでいうのなら…かつて界王のもとで見ていたフリーザ…あるいはその兄すら簡単に仕留め得るであろう強力な武器を彼は手にしたのだ。
小籠包が抜き身の刃であるなら、天津飯は納刀された刀…瞬きの間に両断される居合いの様相をする一撃必殺。
「これが俺の答えだ、ピッコロ。」
天津飯の顔にもう迷いは存在していなかった。
彼のいうとおり、妹弟子の技を取り込み、これを自分の奥義として昇華させたのだ。
まだ実践運用には遠く及ばない。
しかしまだ10ヶ月以上時間がある。
この異次元空間の中の10ヶ月は外界のそれとは比較にならない効果をもたらすだろう。
天津飯の新たな「気功法」が完成するには十分な猶予といえる。
高い戦闘力への昇華は更なる戦闘力を誘発する。
この技を極めれば極めるほど、天津飯の戦闘力も自然と向上していくことだろう。
想像以上の成果にピッコロは満足気に笑みを浮かべた。
それでこそ、界王星でしのぎを削りあったライバルであると。
「…何を笑ってやがる。」
「いや、良い顔をしていると思ってな。お前は、良い師になれるぞ。」
「お守りをするのは、慣れているんでな。」
「…お守りにしては随分過激だな、これもシャオの教えか?」
「奴から学んだことなど何一つない!」
即答である。
なんなら、天津飯が言い終わる前に、その鋭い瞳をぐわ!!と見開いてただでさえ鋭い眼光が刃のように変わったほど。
これには流石の天津飯もドン引きである。
「あ、…あぁそうか、すまん。」
「毎日半殺しにすることが修行だというのなら、奴も立派な師匠を名乗れるな?」
「わかった!確かにシャオはまともな教えを受けたことなどないからな…あ、あいつなりに師匠を真似たんだろう。」
はっきり言えば、小籠包の才能が開花したのは奇跡のようなものである。
本人は偉大なる老師桃白白による素晴らしい指導の賜物と信じて疑わないが、天津飯からすれば眉唾物だ。
鶴仙流の奥義を見ただけでそれっぽい物を出してしまった少女。
それに全乗っかりしただけの男桃白白。
第三者の理解はこれである。
桃白白は基本的に格下を痛めつけて、「修行がたらんわ!」と言いたいだけの達人である。
師としての才能は申し訳ないが鶴山人の方が遥かにマシ…のはずなのだが、いくらそれを説明しても小籠包には通じない。
…可哀想に、老師の本当の力を感じ取れないとは…と寧ろ憐れみを向けてくるのである。
興味本位で聞いたピッコロもこれにはこめかみを震わせた。
なんだったら脳内小籠包で再生余裕まである。
結果的には真っ直ぐに*1成長したのだから桃白白には感謝するべきだろう。
遺児を拾っておきながら大した面倒をみてやれなかったのだから、小籠包も鶴山人同様の外道になる可能性は存分にあったのだ。
なぜ、あのような桃白白の在り方と正反対の戦士に育ったのかは全くの謎であるが…
「…貴様も苦労しているな。」
「お前ほどじゃないさ…。」
この微妙な空気では続きをするのも野暮であると、互いに言葉も無く同意し、揃って早めの切り上げを行ったのは、言うまでもない。
戦闘力更新
天津飯
基本最大:8000万
気功法:8億
新たなる境地:40億
フリーザ最終形態の50%程度と互角程度に超進化!
気功法の倍率は変わらずではあるが、その技の真価は瞬間的な戦闘力の増幅にある。
気の充実、一点集中による戦闘力の極点化。
その威力は超化にも並ぶ彼の強力な切り札になり得るだろう。
かつて神に「抜き身の刃」と揶揄された妹分とは対照的な力を彼は会得できた。
ピッコロ
基本最大:45億
安心と信頼の覚醒メダルピッコロさん。
やっぱりピッコロさんは老師桃白白に並ぶ素晴らしい指導者だぜ!
なお、天津飯を鍛える傍らで自らも地獄の特訓を並列させている。
精神と時の部屋で更なるパワーアップ。
30億から1.5倍の45億。
これでもまだまだライバルを超えるビジョンが毛ほども見えない。
ライバルの話から、そりゃ小籠包がああいう悪党になるのも納得してしまった。
次からはちょっとだけ優しくしてやるべきか?
って思ったけど、やっぱりムカつくのでこれまで通りでええか。