僕のジョブは『薬師』。
この世界では所謂ハズレ職と呼ばれる存在だ。
戦闘力は低く、スキルは他のジョブのスキルで代替可能…と、言われている。
「正直、誰も分かってない…いや、分かってる人間が敢えて誤情報を流してる、のかな?」
僕はこの職業を選んでから色々な方法でスキルを試してきた。
その結果、僕はこのジョブ…薬師が一つの行動に特化した職業だと確信している。
「ねえ!マヌル!何してるの?」
「ああ、勇者…なんでも無いよ。気にしないで」
アイテムの整理をしていた僕に幼馴染である勇者が声をかけてくる。
そう、彼女は僕の大事な幼馴染で、世界を救う勇者で…
僕の大切なモルモットだ。
「もう訓練の時間?一緒に行こうか」
僕は勇者に話しかけながら、こっそりと自分の背後に手を伸ばす。
そして、夜のうちに抜け出して採取していたキノコに薬師のスキルであるAS(アトムスフィア)を使い、そのまま勇者の背にそっと触れた。
「んっ…」
少しずつ勇者の目が蕩け、頰が薄らと紅潮していく。
「…その、まだ、時間じゃないけど…なんとなく…マヌルに会いたくなっちゃって…」
「そうなんだ。…嬉しいよ、勇者」
勇者に微笑みかけながら、僕はいつものようにその変化を観察する。
『薬師』のスキルであるASは、『アイテムの成分を抜き出し、スフィア化した効果範囲に存在する対象にその効果を及ぼす』スキルだ。
詰まるところ…
「えへへ…マヌルぅ…」
薬師とは『人にバレないように薬を盛る』事に特化したジョブなんだ。
味や匂い、人に薬を盛るときに障害となるあらゆる刺激はスキルで生み出されたスフィアには関係ない。
経口、塗布、皮下注射、舌下吸収、粘膜吸収、そんなものも関係ない。
成分の一部を抜き出し、手のひら大のスフィアに触れるだけでその効果をスキルとして与える…僕にとってASはとても『代替可能なスキル』ではなかった。
効果の強さを調整すれば、人は薬を盛られた事にすら気付けない。
「なんかね…僕、マヌルと一緒に居るだけで幸せな気持ちになるんだ…♥」
目の前の
勇者が旅に出るまであと数年…それまでにはきっと立派な
「僕も勇者と一緒にいると幸せだよ」
「えへへぇ…嬉しいなぁ…♥♥♥」
毒性のある植物の実験も少しずつ行なっているけれど、忌む目の祟りだなんて勝手に誤解してくれるのは少し笑いそうになった程だ。
毒による『暗殺』と薬漬けによる『洗脳』、それが薬師のジョブの本当の使い方。
「ずっと一緒にいられたらいいのにね、勇者…」
「っ…!だ、大丈夫!僕がなんとかするよ!絶対!」
可愛らしく、魅力的で、強く…とても愚かな女の子。
思わず自然に笑みが溢れる。
「ありがとう、勇者。君は僕の…大事な人だよ」
僕は、この