道連れ系人型兵器譚。
その終わりと始まりの隙間をどうぞ。
性癖開拓は例え忙しくともできるのだ。
魂の輝きにこそ萌えは宿る。私に死角はないぜ!(フラグ)
きして、私はここで死ぬのだと覚悟したのです。
現代社会においても、未だ残る神秘の虚影、大地の素枝。その顎に睨まれて、ほとほと困り果てた表情で対峙するのはいつだって貧乏籤を引かされる私なわけで。
大嵐の中、風雨と雷を纏って大暴れする大自然の化身をどう鎮めるのか、考えても考えてもただの人にはいつも通りの行動が関の山。体を縛り付ける恐怖も冷えも振り払って、祝詞を唱え酒を散らし世界を区切り道を繋げます。
地を三度踏みしめ、断絶された地脈を保全しつつ、この一帯に記録された情報から打開策を探すのです。
カケナガリ、カケナケナガラ。或いはカケリ様。
その名で祀られかつての神秘の本質は、山々に列なる災害とそれに基づく豊栄。この地域において残存していた大型神秘実体だったのですが。何らかの原因で暴走した彼らの対処方法なんてものは、ほぼほぼ伝承や継承された技術に則ったものしか現代には残って無いもので、そういうものは個人の実力や時期、環境によって効果が大きく変化します。
効くでしょうと思った土着呪術が効かなかったり、全く関係のない異教言式が有効だったりと(耐性の有無や世界様式、神話体系の差異による神秘度数の例外処理など)、本当に当たり外れの幅が大きいのです。
そういうわけで、私の性質も相まって最終的に微妙にしか効かないけど全体的に効く、当たり判定が大きいものを多重に使用する戦術を好んで採用していますが、これはつまり沢山の術を大量かつ並列に展開するという頭にも体にも悪いのでありまして.......
うううううう"....きもちわるいぃ.....
逆流するあれやこれや。
失敬失敬。お目汚し失礼しました。
ただ上位存在に視られるだけで発生する呪いによる精神汚染に加え、各種術の行使によるフィードバックも中々のものです。目も半分見えてませんし幻聴の心無い言葉も心を折りにきています。指の感覚も無くなってきましたしぶっちゃけ腰もがくがくです。
そうなると一瞬とはいえ意識が融け、防御術式や行動阻害術式が解ける隙が生まれてしまうわけでして、野性的な反応速度で振るわれた尾根のようなスケールの尾によって引き起こされた土砂崩を五行遁で受け流します。防ぐことはできませんごめんなさい周辺の村の方々....。土やら木やら石やら水やらを走って飛び越え飛び移り滑って態勢を立て直しつつ、拘束状態を再形成します。こうしている今もかの存在に有効そうな術や簡易儀式を取得できた土地の記憶を頼りに片っ端からシミュレートとアプローチを繰り返してますが、あの鱗と概念防御を突破するものはそうそう見つかりません。着実に削られていく体力も精神力にも底が見え始めています。
きして、私はここで死ぬのだと理解したのです。
仕方ないですよね....ぶっちゃけ人間一人で大地を相手取ってここまで保ってる方が奇跡的ですし。
咆哮。軽く吹き飛ばされかけ、形成した鎖で足を繋ぎ止めます。この時の反動を利用して軽くスイングバイ。
撥水術式の応用で坊主になりかけの水びだし山坂を周り下りながら薙ぐように振るわれる四肢....四肢?を回避します。
勿論同行者はいました。まあにかのものよってこの土砂の下に埋まりましたけど。サスペンスホラーの如き因習村の呪術的解体作業がこんなことになるなんて.....まさか村長さんが暴走して裏ボスを叩き起こすとは思わないじゃないですか。村は強制覚醒で消し飛びましたけどこのままでは他の善良な村まで被害が及ぶので対神部隊が来るまで生き残った私が耐久しないといけなかったのですが。まあこれは理想論でした。いつもの戦法に早々と切り替えるべきだったのに、私は今回も惜しんでしまったのです。
ごめんなさい。
いつの間にか吹き飛ばされていた体を風を噴射して立て直します。
意識が連続性を保てていないようです。これではヒット&アウェイも長らく維持できないでしょう。仕方がないので石亀戦法に切り替え、自動防御系統にシステムを統合させます、が。
結界を展開して気づきました。現実の接合性と境界性が揺らいでいます。ジャミングのように
口ではどうと言いつつも、ウジウジと覚悟を決められていなかった自分を捨てます。
『一日一本!』と薬術科から再三注意されている秘薬を再び注入しつつ、契約術式で懇意にしている神さまからリソースを受け取ります。代償は次の私に取り立ててください。
ボロボロと崩れ始めている指を組み上げ、薄れ行く地脈を撚り合わせ、消え行く星を詠み、言霊を発します。
ぼやけた現実だからこそ、命が燃え尽きるこの一瞬だからこそ、私、天倪の性能は飛躍的に上昇するのです。
石亀だったもの.....大自然の暴力により目茶苦茶に変形した霊力の籠を脱ぎ捨て、術式出力の準備を整えます。
必要だったのはかのものを認識すること、その骨肉の一部を入手し、私が飲み込むこと、私が貴方に相応しいカタチに形成されるまでの時間稼ぎ、そして最後、私が亡ぶための手段。
全ての条件は今まさに揃えられました。
薪を焚べます。融ける自分なるは術式の根幹。
霊力の糸は寄り合い、術理の歯車は再加速を開始します。
意識の奥底で世界が変わる音を聞いて、最後の扉が開かれます。
夢は夢なるままに、現へ回りゆくそれは_____一つの人智超抜の神技にして禁忌の一手。
願い奉る 乞い奉る
其は地を繋ぐ山々の化身にして 人が紡ぐ豊穣の雨
されど外で身体は薄れ 内なるは柱 開きし眼では定かならずとも
形代は此処に 縁は遠に
願い奉る 乞い奉る
先立ちここに一つの裡 捧げ奉る!
開くは自分の
もう一つの世界。もう一つの宙。
時に境は無く、全てが合一で重なる地平。
そこは真に、原始領域と呼ばれる幻想なれば。
ふらりと、かのものの身体が虚に吸い込まれていく。
ギシギシと、ミチミチと、虚を中心にひび割れ欠けていく自分自身を無視して、踏ん張る。立ち続ける。
嵐がドリルのように掻き回してくるような、
四方から無理矢理引っ張られて弾けそうな、
酷い苦痛だ。懐かしい苦痛だ。知っていたからこそ耐えられる、知っていても耐えられない赤色が散らばる。
死にたくない。けれどやらなくてはならない。
存在意味にして、それを果たせば終わる命。
けれど、それでも、
それは、必要な工程と消費物なぞ、たった数節の言の葉と、量産可能な人形のみ。
それほどまで簡略化、最適化された人類が誇る
意思ある人形に、反転した上位者を半強制的に降ろさせ、専用の呪具で自らを殺すことで、因果、連関を辿り返還させるためのシステム名にしてその人形そのものの名前。
荒ぶるものと繋がる、成り代わる。その神的全能と狂気を宿した天倪の肉体は崩壊を迎え、かのものと人形のリンクが途切れるが、その前に。
―――ああ、これで、終わり です。
彼女だったものが残した最後の武器、
虚は閉じられる。かのものは封じられる。
鍵が回る。枯れきった血が飛び散る。
呪具、
例え不死者すらも呪い帰す因果、概念特効故に、運命のヴェールに守られたもの、それを降ろした人形にも有効である。
嵐は過ぎ去り、神域は薄れ行き、現実は再び根を張った。
到着した対神部隊が見たものは、しっかりと呪具を心臓に突き刺したままこときれた彼女だった。
膝から崩れ落ちてなお―――その背は地に伏すこと無く。
それが全容でした。
よくわからないことが多いと思います。知識は共有されますが、飲み込むまでの時間には個人差がありますから。
これは貴方のことでもあり、貴方に待ち受ける運命に近い姿でもあるのです。
一つ、昔話をしてもいいですか。
私は、記憶を継承する人形でした。
使われ、滅べば、またその記憶を継いで別の人形へと成る。これを繰り返し稼働する兵器だったんです。
人形に宿る人格は毎度異なりますが、記憶が受け継がれれば似たようなものに摩耗してしまい、自我の隔たりは弱まりました。膨大な記憶に自我が飲まれる故の弊害でした。
自分じゃない自分が時代を生き、最後に死んでいく....その生々しくも他人事のような現実に嘆いた私は数えきれないほどいました。
ごめんなさい、産まれたばかりの貴方。押し付けられる運命に納得されないことは分かっています。それでも、なにも実感しないまま、夢うつつのままに継がれるよりは良いと思ったのです。なにか出来ないかとも思ったのです。
過去を
改めて、よろしくお願いします、次を継ぐ貴方。どうか最期を憂うだけの生き方はしないで下さい。同じ在り方の中でも、生き方だけは変えていける筈です。終わりが決まっていたとしても、それで諦められるほど世界は_________悪くは無かったと、言えるようにならんことを。
どうか、どうか_________天倪なるあなたへ願います。
溺れるような夢だった。
『こんにちは、私は天倪 よろしくね』
重なって繰り返される生き様。
『大丈夫、私がいる』
丁寧に刻み込まれる死に様。
『どうか笑って、それだけで充分なんだ』
幸せは両手から溢れる程に。
『あなたが好きでした』
苦しみは注ぎ込まれるように。
『それでも、私はここに立つのだろう』
時代の針は進み、世界は確かに変わっていく中で、
彼女/私は何も変わらず生きて/死んでいく。
『最後に携帯が通じたみたい、すごいね_____ありがとう一緒に泣いてくれて』
まるで何十本に束ねられた短編映画のようだ。
同じ結末、同じ運命。飽き飽きするほど命は吐き捨てられ、私は私へと継がれていく。
『もう死にたくない! 君と生きていたい!』
呟かれた弱気も、膝上の嘆きも、胸を掴む怒りも、全てを冒す呪いも、あったのに。
『_______私には夢があるのです』
それでも私は、私に微笑んでいる。
『私の人生、悪くなかったでしょう?』
理解できる/できない
知っている/知ったのに
『託される貴方へ_____ごめんなさい、それと
なんで、こんなにも___________私は
ありがとう』
目を覚ます。
起き上がって、それでもぼやけたままの視界で涙を知った。
夢は途絶えた。この先は私の夢の噺だ。
さて________
「新刊、買いに行きますか」
未練を消費尽くすことに慣れて、果ては得意となった私でも、それでも残る人間の願望気。その最後の一つ。
「"天倪"に必要な機能だからって、人間性ぐらいもうちょっと削れなかったのでしょうか?」
何百年前に死を選んだ天倪の設計者に苛つきながら、新刊が読みたいなんて、そんな未練しか最後に思いつけなかったことを
諦めたことはない。ただ事実を淡々と受け止め実行しただけだと反論しつつ、あんなメッセージを残している事自体、区切りをつけたと表明しているようなものだと自分に反論します。
それを否定するつもりはありません。ただ、やるせなさを抱いて、ベットが起き上がります。
ただ、それだけのことなのです。
それだけのことだったのです。
天倪ちゃんは男でもあり女でもあります。年齢も10代後半から20代前半を正規分布的に設定されます。可能性は無限大です。
人間性を捧げているし人間大好きで惚れやすいので比較的パートナーになりやすいです。前のパートナーとの空気が地獄みたいになることには注意。矢印が凄まじいことになってます。
天倪ちゃんの上位者帰しの機能は別に死ななくても発動できますがこれが一番手っ取り早いです。出力も最高レベルですし。世界そのものも帰すこともできます。星とかの惑星級とかそのレベルになると天倪ちゃんに入り切るか心配ですが天倪ちゃんは頑張れるこですし中はスカスカなので気合でなんとかなるでしょう。
継承機能はまた別の独立した機能です。継がれる人格も継がれる前の人格と連続しているため少々バグめいた挙動をするかもしれませんが仕様です。別人と認識していた以前の天倪ちゃんたちを唐突に自分のことのように話し出すことはよくあることなのでスルー推奨。天倪ちゃんはたった一人のことなのです。
人格の変化はその裡にしまった存在やその機体の残り香の影響と管理者は推測しています。人格のブレは段階的に収束していくので、数週間経てば今まで通りの天倪ちゃんとなるでしょう。付き合い方は変えずにいれられるので便利ですね。
天倪ちゃんの機体は正式な手順で譲渡された新鮮な素材から錬成されます。時々上位者から採取された素材を使った実験もなされますが、大体はろくなことにはならないようです。
性癖を吐き出せてすっきり!