南極方面にに派遣されていたバルーレ連邦海軍南極派遣艦隊。
その中に1隻、黒い船体色に塗装された戦艦ガングートの姿があった。
これはガングートの南極派遣とその最期を描いた物語である。

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これはTwitter上の架空国家国際連合で行ったロール文章をまとめたストーリーです。
前提として、架空国家国際連合wikiに掲載されている南極事変とバルーレ連邦のページの内容、Twitter上の#架空国家国際連合で行われている他のロールの内容等を最低限知る必要があります。


ストーリー"ガングート"

7月6日 AM9:00

インド洋 パース西方沖2000km 海上

 

西部軍管区所属 戦艦ガングート   

艦橋

 

グレイブス艦長「航海長、タスマニア沖への到着はいつ頃になりそうだ?」

航海長「この速度で航行すると14日頃に到着する予定です。」

グレイブス艦長「そうか…………。」

 

ガングートは出港してから3週間以上が経過している。

物資積込に4日、航行途中の機関不調でクレタ沖に2日、システム点検で紅海に1日……………

就役から50年以上が経っている老齢艦にとってこの長距離航海は、かなり無理のあるものなのかもしれない。

 

グレイブスは本部からの指令書を読み返す。

「サイラム連邦とのシーレーン防衛」が主な目的らしいのだが、途中にはこうも書かれている。

「タスマニアにて猛威を振るっている不明物体"大樹"の分裂物体へ、領有国では対処しきれないと判断された場合に介入せよ。」

この場合内政干渉甚だしい行為になる。

しかしサイラム連邦にまで大樹による被害が及ぶとなると、介入は正しいのか?

グレイブスにはそれが正しいのか未だにわからない。

予定ではタスマニアへの派遣が終了すれば南極大陸へ進路を変えて監視任務にあたることになっている。

しかし航路指令図には南極大陸へ真っ直ぐに突っ込む以外の航路が示されていない。

注記には"この指令は絶対である"と書かれている。

司令部は暗に示しているのだ。

"ガングートを本国に帰すな。タスマニアか南極に沈めてこい。"

前に司令部で上級将校の話を盗み聞きしていた時に、グレイブスは聴いていた。

「空母の予算確保の為にどこかでガングートを"処分"しなければならない。」

その"どこか"がタスマニアに決まったらしい。

 

グレイブスは艦橋を出て右舷甲板へ降りた。

黒い船体色の艦橋が威圧感と共にどこか悲しんでるようにも感じられた。

 

 

7月22日 AM11:00

タスマニア南西400km海上

西武軍管区所属 揚陸艦L-2

 

レーバー1「管制塔、こちらレーバー1。発艦許可を求める。」

管制塔「こちら管制塔。甲板確認OK。発艦を許可する。」

レーバー1「了解。」

 

今回の派遣でL-2に搭載されたF-35B、コールサイン"レーバー1"の機体が哨戒の為発艦した。

 

タスマニア近海に到着して1週間、無人機を使用し情報収集や"大樹"の分裂物体の観察を行ったが未だに不明な事が多く、いつ何処から何が来るかもわからない状況が続いている。

その為無人機やF-35Bによる哨戒を行い、"大樹"関連物体の襲来を警戒している。

 

PM3:00

 

レーバー1「管制塔、着艦許可を求める。」

管制塔「こちら管制塔。第二誘導路7番ポイントへの着艦を許可する。」

レーバー1「了解。」

 

レーバー1の機体がエンジンノズルを下方へ向けリフトファンを作動させ、ゆっくりと甲板へ降りた。

 

コールサイン レーバー1、エルンスト·クリンゲンベルクが機体を降りた。

エルンスト「今日もなにもなかったな…………」

 

エルンストは報告の後艦内着へ着替え、左舷キャットウォークに上がった。

艦の周りを見渡すと、L-2の左舷後方に戦艦ガングートの姿が見えた。

ガングートの甲板上ではなにやら乗組員が慌ただしく動き回っていた。

よく見ると右舷側から黒い煙が立ち上っている。

どうやら吸気関連設備でトラブルがあったようだ。

エルンスト「これで何回目なんだ……………」

エルンストには連邦軍が何故ガングートを派遣したのか理由がわからなかった。

 

 

タスマニア西方2000km海域

戦艦ガングート 

CIC

 

対空レーダー手「少佐、先程からレーダーに微弱ですが反応があります。」

マクラスキー少佐「どんな反応なんだ。」

レーダー手「方位1-8-0、距離は…………計測できません。少しずつですが反応が大きくなっています。」

マクラスキー少佐「距離がわからないだと…………。」

レーダー画面に映し出される反応は徐々に大きくなっていく。

マクラスキー少佐「通信員、L-2の無人機制御室へ直通連絡。方位1-8-0へ1機向かわせるよう要請しろ。」

通信員「了解。」

 

上空を飛んでいた無人機OPA-2の1機が要請された方向へ向きを変える。

 

10分後

通信員「少佐、映像が来ました。第一画面に映し出します。」

 

画面に映し出されたのは、これまでに見たことの無いような物だった。

空に何か蠢いているような揺らぎが上空へ続いている。

時折白色や黒色の"何か"が見える。

 

 

マクラスキー少佐「情報員、連邦軍共有データベースにこれと似たような物はあるか?」

情報員「画像を検索にかけていますが何もヒットしません。」

マクラスキー少佐「とりあえず本部に情報を送れ。付近にいる民間船舶へも注意情報を出せ。」

情報員 通信員「了解。」

 

マクラスキー少佐「一体、これは何なんだ……………」

 

マクラスキーには遥か上空へと続くその揺らぎが何かが起きる前触れのようにも思えた。

 

 

 

9月15日 連邦統一時刻午後2時

パース西方沖2000km海域

L-2 作戦会議室

 

室内の長テーブルの椅子には今回派遣された6人の将校が座っていた。

艦隊総司令官のルイス·ベッゲナー中将。

副司令官のハインリッヒ·ワルター少将。

航空司令官のハワード·マイケル大佐。

大樹調査部隊派遣官のマイク·パッシェン中佐。

SBF(艦上対人戦闘軍)派遣部隊指揮官のターレン·マリオ少佐。

総統諜報軍派遣官のローラ·ミュットカリフ少佐。

 

 

 

ベッゲナー中将「あと6時間後に訓練艦隊の8隻が我々のいる海域から北方に400km離れた海域に到達する予定だそうだ。」

 

パッシェン中佐「最近就役したCP艦の艦隊ですか…………。」

 

ベッゲナー中将「まあなんとも不気味な艦隊だが、この距離なら見ることもないだろう。それよりも、ガングートの今後の進路についてだ。」

 

ベッゲナー中将は壁に掛けられた地図を指しながら話す。

ベッゲナー中将「現在ガングートはオールバニー南方海域、南極大陸沿岸部沖合12kmを沿岸部に沿って11ノットで東に航行している。」

 

マイケル大佐「えらく近いですね。この距離だと大陸にいる大樹関連物体から攻撃が加えられるのではないですか?」

 

ベッゲナー中将「これはナポリの総司令部からの命令だ。私は反対したのだが無視された。」

 

ベッゲナー中将は総司令部から送られてきた命令文が書かれた紙をマイケル大佐へ差し出した。

 

マイケル大佐「この命令文の内容、まるで総司令部がガングートを沈める気でいるようにも感じます。」

 

ベッゲナー中将「きっと、空母の建造予算捻出の為にガングートが邪魔になったんだろう。まったく、イオニア紛争の数少ない生き残りをこんな扱いするなんてどういう考えになったらできるんだか…………。」

 

ミュットカリフ少佐「もしガングートが攻撃されて撃沈された場合、乗組員の救助はどうなるのですか?」

 

ベッゲナー中将「一応随伴する潜水艦のアパラッティアが救助に出向くことになっている。」

 

ミュットカリフ少佐「そうですか……………。」

 

 

ベッゲナー中将「マイケル大佐、マリオ少佐。念のためUH-60 2機、SBF 2小隊をいつでも出撃できるように待機させておいてほしい。」

 

マイケル大佐「了解です。」

マリオ少佐「了解しました。」

 

 

 

同時刻 オールバニー南方海域

南極大陸沿岸部沖合

ガングート後方5km海中

潜水艦アパラッティア

 

ソナー用員「………………? 艦長。」

艦長「なんだ。何かあったか。」

ソナー用員「先程まで聴こえていたガングートのエンジン音が突然無くなりました。」

艦長「エンジンでも停止したのか?」

ソナー用員「エンジンが止まる際には必ず爆発音が聴こえる筈です。」

艦長「妙だな…………。念のためピンガーを射て。」

ソナー用員「了解。ピンガー発射。」

 

20秒後

ソナー用員「ガングートを確認できません。ロストしました。」

艦長「何っ!さっきまで5km先にいたんだぞ!」

副長「ソナーの不調か?」

ソナー用員「いえ、9時方向にいるアマナミはソナーで確認できています。」

 

その直後だった。

 

艦長「なんだこの音は………」

 

艦の外から船体の破断音の様な音が聴こえてきた。

 

副長「何か沈んだのか……………」

艦長「もう一度ピンガーを射て。」

ソナー用員「了解。ピンガー発射。」

 

20秒後

 

ソナー用員「ガングート確認できました。エンジン音も確認できます。」

 

艦長「今のは何だったんだ……………」

 

 

9月17日 連邦統一時刻午前9時

パース南南西1000km海域

L-2 作戦会議室

 

会議室にはSBFの指揮官であるマリオ少佐と航空司令官のマイケル大佐が呼び出されていた。

 

ベッゲナー中将「昨日の午後からガングートとの交信が途絶えている。アパラッティアが浮上接近しあらゆる方法で交信を試しているがまるで応答がない。それどころか艦上や艦橋に乗員の姿を確認できないらしい。」

 

マリオ少佐「それは既に大樹関連物体による襲撃があったという事でしょうか?」

 

ベッゲナー中将「現時点では不明だがその可能性もある。実際、タスマニアの方では人型実体も確認されている。詳細は不明だが駿河の巡洋艦が人型実体に襲撃されたらしい。」

 

マリオ少佐「ではガングートも…………」

 

ベッゲナー中将「そこでだ、マリオ少佐。SBF 2小隊に出動を命ずる。任務内容は以下の通り。SBF 2小隊はUH-60 2機に搭乗しガングートに接近。安全が確認でき次第着艦し艦内を調査。

行動パターンは2つだ。

まずガングートがただの交信不具合だった場合、CICに向かいマクラスキー少佐に接触。交信の復旧支援を行え。

次にガングートが何らかの異常事態が発生していた場合、CICにある航行·通信データの入ったディスクを収集しろ。既に人型実体が侵入している可能性も考慮し、対人ミサイルの携行及び兵士の装備自由選択を許可する。乗員が残っていた場合、最優先で救助しろ。」

 

マリオ少佐「了解。」

 

ベッゲナー中将「次にマイケル大佐、SBF 2小隊輸送の為UH-60 2機。臨時用のV-22 2機の出動を命ずる。兵装の選択は任せる。」

 

マイケル大佐「了解しました。」

 

ベッゲナー中将「出撃は明日のAM8:00。以上、解散。」

 

 

マリオ少佐とマイケル大佐は会議室を出た。

 

マイケル大佐「状況を見る限り既にガングートは人型実体に占領されているのではないか?」

 

マリオ少佐「その可能性が高いと思います。

ガングートの交信設備は他の艦艇と同様に4種類用意されてますし、その全てが同時に壊れるとは考え辛いです。電力異常が発生しても予備電源で賄えます。」

 

マイケル大佐「まさかとは思うが、ヨナトリアの巡洋艦の様に同化されてるなんて事はないよな…………」

 

マリオ少佐「それもあり得るかと。我々でも大樹の全てを把握しているわけではありません。随伴の潜水艦に気付かれない様に吸収·同化している可能性もあります。」

 

マイケル大佐「一応UH-60にドアガンとCVTM-2、V-22にはHTM-3とVSOVO-1を載せておくよ。」

 

マリオ少佐「助かります。現場では何が起こるかわかりませんから。」

 

 

9月18日AM8:00

L-2 甲板

 

マリオ少佐「各小隊、割り当て機に搭乗!」

 

SBF 2小隊の隊員12名がUH-60 2機に搭乗し、V-22に先立ってL-2を飛び立った。

ガングートまでは直線距離で500km。

約2時間の飛行だ。

 

A小隊搭乗 フェーダー1

ランス「おいローレン、対戦車ライフルなんて持ってきたのかよ。」

ローレン「人型実体がいた時に困るからな。何が効くかわからんし。」

ランス「まあそうか。俺はPOA-1とグレネードを多めに持ってきた。」

ローレン「殺る気満々だな。」

ライアン「装備の自由選択なんて中々無いからな。楽しまないと。」

ホムス「だからって対人ミサイルの腕装備は邪魔だろ………」

ライアン「まあ発射は楽だからいいや。」

ファイス「緊張感無いだろお前ら………」

 

 

B小隊搭乗 フェーダー2

アンネッタ「訓練はこの時の為にある。訓練はこの時の為にある。訓練は…………」

ルシャ「呪文言ってるみたいだよ、アンネッタ…………」

アンネッタ「頼れるのは己の手と銃。頼れるのは己の手と銃。頼れるのは…………」

ルシャ「…………大丈夫?」

ロイド「いつもだろ。この間のバーリ派遣でもこんなんだったぞ。」

ハリス「アテネの大司教庁封鎖の時もな。まあ戦闘の時は別人だけど………」

ルシャ「さてガングートは無事なのか何かいるのか、楽しみだね。」

サリー「久々に体を動かしたいな。マフィアはもう飽きた。」

マフィラン隊長「忘れるなよ、これは遊びじゃねぇんだ。」

 

発艦から1時間半後、遅れて発艦したV-22、サイス1·2の2機が合流した。

これで編隊は4機になった。

通信によれば片方の機に事前報告には無かった総統諜報軍の派遣員が乗ってるそうだ。

 

40分後、

4機はガングートの後方10kmの距離まで接近していた。

ガングートの後方には潜水艦アパラッティアと原潜アマナミが浮上し、ガングートを追うように航行している。

4機はガングートの周りを時計回りで周回し、艦上を確認した。

 

フェーダー1「フェーダー1より全機へ、艦上に乗員を確認できず。確認できた機はあるか?」

フェーダー2「こちらフェーダー2、乗員は確認できていない。」

サイス1「サイス1、コピー。」

サイス2「サイス2、コピー。」

フェーダー1「乗員は確認できていないが、ブリーフィング通り後部ヘリ甲板へ着艦する。」

 

その後4機は後部ヘリ甲板に着艦した。

着艦と同時に各小隊が甲板へ降り立つ。

隊員が降りると、UH-60 2機は艦上監視の為に発艦し、V-22 2機は搭乗していた陸軍隊員により甲板上に陣地の構築を開始した。

 

A小隊ダイス隊長「今回の作戦はガングートの内部調査だ。二名を班とし計6班を編成する。但し、B3アンネッタとB4ルシャの班には総統諜報軍のハル中尉を随伴させる。各班ブリーフィング通りに通路及び主要な場所をチェックしろ。既に人型実体が侵入している可能性もある。人型実体に関しては現時点で情報が不足している。どんな能力を持ってるか、どんな行動を行うのかも不明だ。言っておくまでもないが、迷ったら撃て。そして何かあればすぐ連絡しろ。L-2との直接通信も解放する。以上、解散。」

 

各班はA小隊ダイス隊長とファイスの1班、ランスとローレンの2班、ライアンとホムスの3班、B小隊マフィラン隊長とサリーの4班、アンネッタとルシャ5班、ロイドとハリス6班、の組み合わせだ。

 

解散後、各班は艦内へ入った。

 

第七甲板第4構2F通路

ダイス隊長「この先の左側通路の先にCICがある。」

ファイス「にしても長い廊下ですね。照明も所々付いて無いですし、どこまでも続いてる気がします。」

ダイス隊長「たまに行方不明者が出るぐらいだ。今も3人見つかってないらしい。」

ファイス「もう死んでるでしょうね。」

 

第六甲板第6構2C通路

ランス「薄気味悪りい通路だぜ。」

ローレン「壁のペンキも剥がれてる。予算不足だな。」

ランス「海軍は予算掛ける場所間違えてるよ。」

ローレン「よく艦上勤務の奴に精神異常者が出るのもわかる。」

 

第三甲板第1構5N通路 ソナー室付近

ホムス「なあ、やっぱり対人ミサイルの腕装備は邪魔じゃないか?」

ライアン「発射が楽だからいいだろ。」

ホムス「その理論で片付けるのはどうなんだ………….。」

ライアン「さてそろそろソナー室だ。にしてもここまで乗員が一人も見当たらねぇなぁ。」

ホムス「もうみんな殺られたかどっかの部屋に逃げ込んでるかだな。もしくは………」

ライアン「なんだ、他になんかあるのか。」

ホムス「もしかしたらこのガングート自体、本物じゃないのかもな。」

ライアン「はぁ?」

ホムス「可能性の話だ。前にヨナトリアの巡洋艦が吸収されてコピーが出てきただろ。それと同じ事が起きているとも考えられる。」

ライアン「潜水艦が2隻張り付いてたのにそんなことできんのかよ。普通ソナーでわかるだろ。」

ホムス「大樹に地球の物理法則が通じれば………な。」

 

第四甲板第6構3Z通路 格納庫付近

アンネッタ「さあ、もうすぐ格納庫ですよ。」

ルシャ「そうだね。にしても乗組員に出会わないよね。」

ハル「……きっとまだどこかにいますよ。格納庫の捜索が終わったら探しましょう。」

 

 

主機エンジンルーム

ロイド「ここがエンジンルームか。タービンがデケェ。」

ハリス「おい、あそこに倒れてるの担当官じゃないか?」

 

ハリスは制御盤付近に倒れてる人影を確認した。

2人はすぐさま制御盤へ向かう。

制御盤にたどり着くと、そこには担当官であろう女性が倒れていた。

ハリス「B5からB1へ、エンジンルームの制御盤付近で担当官らしき女性を確認。指示を乞う。」

 

第二甲板第5構6B通路

マフィラン隊長「B5へ、その女性を安全な場所へ移動させ意識確認を行え。以上。」

サリー「乗組員、見つかったんですね。」

マフィラン隊長「ひとまず乗員の確認ができた。皆きっとどこかに隠れてるんだろう。」

サリー「でも隠れてるってことは何かいるんですよね。何かが………。」

 

 

同時刻

L-2 作戦会議室

 

ベッゲナー中将「CP艦隊がこっちに進路を変えてきたか…………。」

ワルター少将「しかも艦隊から連絡は無く、司令部が連絡したのも1時間前。妙ですね。」

ベッゲナー中将「普通は直ぐ連絡が来るが、何故かここ数週間連絡が遅い。CP艦隊に情報請求しても無視ときた。」

ミュットカリフ少佐「我が軍の情報開示請求にも応じていません。司法諜報軍·議会諜報治安軍が行った時も同様のようです。」

ワルター少将「政府三軍にも秘匿するとは、海軍司令部は一体何を考えているのでしょうか?」

ベッゲナー中将「何か、我々に知られたくない事情があるようだな…………」

 

 

CP艦隊

旗艦 ヒギンズ

副長「全艦、航行に支障無しです。」

ロイヤー艦長「よし、そのまま発射ポイントまで前進。発射時刻に間に合わせろ。」

副長「承知しました。」

 

ロイヤー艦長「さあ、我が艦隊の戦闘を見るがいい。ベッゲナー。」

 

 

9月18日AM11:00

ガングート後部甲板

 

甲板上でCVTM(対戦車ミサイル)とHTM(対人ミサイル)を展開していた陸軍兵士は、何の変化もない甲板を眺めながら話していた。

 

兵士A「動きが無いな。」

兵士B「まあ調査は内部だからな。」

兵士C「構えてろよ、お前ら。いつどこから何が来るかもわからんぞ。」

兵士A「にしてもCVTMはオーバースペックじゃねえのか?」

兵士B「もし人型実体がいたとしてもHTMで足りるだろ。」

兵士C「お前らなぁ…………」

 

その時だ。

フェーダー2「フェーダー2より全部隊へ!艦橋左舷側に多数の人型実体を確認!」

 

多数の人型実体が艦橋左舷側のVLS付近に出現した。

その姿は多種多様であり、銃火器のような腕を持ったものやブレードのような腕を持ったものなど…………

体長もまばらであるが総じて青い単眼を持っている。

現場に緊張が走る。

 

フェーダー2「機銃攻撃を開始する!ドアガン射撃用意………射撃開始!」

 

フェーダー2は人型実体に機体の右側面を向け、ドアガンナーが射撃を開始した。

着弾地点では数体の人型実体が被弾し、砕け散っていく。

しかしそれも長くは続かず、銃火器のような腕を持つ個体がフェーダー2へ向け物体を発射する。

発射された物体は射撃を行っていたガンナーや機体側面に命中した。

 

フェーダー2「ガンナーが被弾した!」

 

ガンナーは仰向けに倒れて、ピクリとも動かない。

即死したようだ。

 

フェーダー1「フェーダー1からフェーダー2。援護に向かう。」

 

右舷側にいたフェーダー1が左舷側に移動し、ドアガンナーが射撃を開始した。

 

 

 

その頃、格納庫に到達したアンネッタ ルシャ ハルのB4班は格納庫内を捜索していた。

 

アンネッタ「甲板に人型実体出現…………」

ルシャ「じゃあとっとと捜索終わらせて上がろうよ。」

ハル「そうですね。次は第4扉です。じゃあ………」

 

ハルが第4扉の方を見た時、扉の前に何かが立っていた。

それは人では無く、青い単眼で腕にブレードのようなものを持った1体の人型実体だった。

その個体はゆっくりとハル達の方へ近付いてくる。

 

ハル「2人は下がってて下さい。僕が対処します。」

 

ハルはその個体へ銃口を向け、1発発砲した。

銃弾は個体の腕へ命中し、腕が落ちた。

 

もう一度射撃を行おうとした時、個体の腕の切れ目から何かが出てきた。

それはどんどん伸び、ブレードのような腕が再生した。

 

ハル「バケモノめ!」

 

ハルは射撃を再開した。

放たれた銃弾は個体の頭·腕·胴体に命中し、個体がバラバラに砕け散った。

 

アンネッタ「これが人型実体………」

 

アンネッタの身体が震えだした。

 

ルシャ「アンネッタ、こんなのでビビってたら戦えないよ。覚悟決めな。」

ハル「…………もう戻りましょう。これ以上は危険です。」

 

3人は元来た通路へ戻る。

 

 

ソナー室

ホムス「誰もいない………」

ライアン「退避室にもだ。一体どこに行っちまったんだ。」

ホムス「さぁな。可能性があるとすればこの階段の上の部屋か。」

ライアン「行こうか。」

 

2人は階段を上がった。

部屋の扉を開けると、15m程はある奥に細長く薄暗い部屋の片隅でうずくまっているような人影があった。

 

ホムス「おいそこの乗組員、俺らはSBFの隊員だ。安心し…………」

 

ホムスが言いかけた時、その人影が立ち上がり振り返る。

それは人ではなく、青い単眼で銃火器のような腕を持った人型実体の個体であった。

ホムスが小銃を構えようとしたが、その個体は素早く腕を構え、ホムスへ向けて何かを発射した。

その何かはホムスの横腹へ命中し、ホムスの身体は裂かれ壁に打ち付けられた。

ライアンは咄嗟に近くのソファーの影に隠れ、腕に装着していた対人ミサイルの安全ピンを抜いた。

 

ライアン「(確実に仕留める。)」

 

個体がどんどん近付いてくる足音が聞こえる。

 

ライアンはソファーの影から飛び出し、個体へ誘導レーザーを照射した。

 

ライアン「食らえぇー!」

 

ライアンは発射トリガーを引いた。

ミサイルは白煙を吐きながら照射されたレーザーへ向けて腕を飛び立つ。

個体は防御姿勢へ移行しようとしたが、それも虚しくミサイルは命中し、個体の身体はバラバラに砕け散った。

爆風はライアンにまで届き、壁に打ち付けられ床に倒れ込んだ。

身体に痛みを感じたが、ライアンは立ち上がり部屋を見渡す。

奥では黒く焦げた壁とバラバラになった個体の破片、ライアンの隣には身体が上下に裂かれ紅く染まったホムスの死体が転がっていた。

 

ライアン「なんだよ。一人になっちまったじゃねぇか…………」

 

ライアンはホムスの方を向いてそう言い、

自分の胸の無線機に話しかける。

 

ライアン「こちらA6。ソナー室上階の部屋にて人型実体と接敵。戦闘でA5は死亡。これより撤退する。繰り返す………」

 

 

 

9月18日AM11:30

 

ライアンの無線でガングート艦内を捜索していた各隊員は、任務を中断して撤退を始めていた。

しかしディスク回収の為CICにいた1班のダイス隊長とファイスは、CIC内システムルームの捜索を継続していた。

両側に壁のようにデバイスが並べられ、冷却風で肌寒く感じた。

 

ダイス隊長「ここにもないのか………。おいファイス!そっちの通路はどうだ?」

ファイス「こっちの通路はクリアです。何もありません。」

ダイス隊長「よし、次の通路だ。時間が無いから行くぞ。」

 

もう30分以上捜索しているだろうか。

どこのデバイスにもディスクが無い………それどころか変形しているものや位置がおかしいデバイスも散見される。

ダイスが次の通路に入った時、すぐ隣の通路で ザシュッ という音が聞こえた。

隣の通路にはファイスがいる筈だ。

ダイスが隣の通路へ行くと、ファイスが倒れていた。

慌てて駆け寄り、声をかけるが反応は無い。

ファイスは胸部を何かに貫かれ、即死していた。

 

ダイス隊長「こちらA1。A2が死亡した。これより退避する。」

 

ダイスはファイスの亡骸をそっと寝かせ、入ってきた扉へ向かう。

その途中、L-2との通信を始めた。

 

ダイス隊長「A1からL-2作戦室へ。現時点でA2·A5が死亡。CICのディスクは発見できていないがこれ以上の捜索は危険である為撤退する。オーバー。」

 

ダイスが通信を切り扉の方に向いた時、あることに気付いた。

扉が曲がっている。

いや拗れていると言った方がいいだろうか。

 

急いで駆け寄り開けようとするが開かない。

ノブも次第に変形していく。

 

ダイス隊長「なんだこれは………」

 

なんとかして開けようとするが開かず、扉は波打ったように変形した状態で止まった。

その時だ。

何やら後ろで物音がする。

振り返ると、無数の人型実体が次々と壁や床から現れた。

現れた個体はダイスへと近付く。

ダイスは小銃を構え、トリガーを引いた。

しかし発射された弾は命中こそすれど貫通するのは数発。

個体は被弾しながらも徐々に近付いてくる。

 

ダイス隊長「(なんだこいつら。なんでこんなに硬いんだ。)」

 

ダイスは無線機のスイッチを押し、叫んだ。

 

ダイス隊長「こちらA1!CICにて人型実体確認!現在交せ……」

 

ダイスの横腹に人型実体が発射した弾丸のようなものが命中し、身体が上下に裂かれた。

上半身が床に落ちる間際、ダイスが最後に見たのは自分へ近付く人型実体の群れだった…………。

 

 

AM11:35

ガングート西方200km

 

哨戒飛行中のレーバー隊2機にL-2からの通信が入る。

 

L-2「作戦指令室よりレーバー隊へ。ガングートにて多数の人型実体が確認された。既に艦上にて戦闘が発生している。至急ガングートへ急行しろ。」

 

レーバー1 

エルンスト「了解。至急ガングートへ向かう。レーバー2、行くぞ。」

レーバー2「ラジャー。」

 

レーバー隊のF-35B 2機は進路を変え、ガングートへ向かう。

 

 

同時刻

ガングート艦上

 

フェーダー2

機長「うぉーーーー!」

 

人型実体からの攻撃を受けエンジンを損傷していたUH-60 フェーダー2が人型実体の群れにめがけて突入した。

突入時、フェーダー2の搭乗員で生存していたのは機長だけである。

 

突入した直後、メインローターブレードが後部甲板まで飛来した。

ブレードは陸軍兵士のそばをかすめた。

 

兵士A「うぉ、あっぶねぇ。もうちょっとで当たるところだった。」

兵士B「おい、集中しろ。」

兵士A「んなこと言ったってよぉ」

 

その後ろでは数人の兵士が作業をしている。

 

隊長「SSR-1の設置急げ!」

 

SSR-1はサーモバリック爆薬を搭載した誘導ロケットである。

ものの数分で発射機の設置が完了し、発射を開始した。

 

兵士C「発射開始!」

 

発射されたSSR-1は人型実体の群れの中心へ向かい、到達直後に起爆した。

起爆後辺りは煙に包まれ、煙が引いた頃には起爆地点を中心に人型実体の残骸が散乱していた。

しかしその向こうからさらに人型実体が迫ってくる。

 

隊長「対物ライフル、射撃開始!」

 

SSR-1の残弾はあと3発。

いつでも撃てるわけではない。

 

 

 

9月18日AM11:40

ガングート艦内 主機エンジンルーム

 

ロイドとハリスは、発見した担当官の女性船員の意識確認を行っていた。

その女性船員は目を覚ました後、艦内で起こったことを話した。

 

女性船員「…………突然、激しい揺れに襲われて何か白いものが下から………………そこからは覚えていません。。」

 

ロイド「その白いものはどんなものだった?」

 

女性船員「…………槍のような氷柱のような………、何かはわかりませんが、尖った柱のようなものです。」

 

ハリス「………まさか大樹からの攻撃か?」

 

ロイド「まさか。潜水艦が後ろからソナーで様子見てたのにか。」

 

ハリス「……… とりあえずベッケナー中将に報告だ。ここからも撤退しよう。」

 

ロイド「そうだな………君立てるか?」

 

ロイドは女性船員を立たせ、ハリスと共にエンジンルームを出た。

 

 

 

同時刻

第六甲板第5構F2通路

 

ランスとローレンの2班は、撤退途中でアンネッタ ルシャ ハルの4班と合流していた。

 

ランス「この先の曲がり角に甲板へ上がる階段がある。」

 

ローレン「気を抜くなよ。特にアンネッタ。」

 

アンネッタ「わ、わかってるよ………」

 

ルシャ「ビビりすぎよアンネッタ。」

 

ハル「………何か音がしませんか?」

 

全員が立ち止まり、耳を澄ます。

今まで歩いてきた方向より何かの音がする。

コツッ、ギチギチ、パキパキ………まるで何かが蠢いているかのように。

 

数秒後、薄暗い通路の奥に何かが見えた。

それは様々な大きさ・種類の人型実体だった。

青い単眼がギラギラと光り、徐々に迫ってくる。

 

ローレン「来たか単眼野郎!」

 

ランス「全員、構えろ。」

 

全員が小銃を構える。

 

すると後ろからも音がする。

 

ランスが振り返ると、壁や床から人型実体が出現していた。

 

ランス「こっちもか!」

 

5人は前後を挟まれた形になった。

 

ランス ローレン アンネッタは後方へ、ルシャ ハルは撤退方向へ射撃を開始した。

しかし弾は当たれど貫通はせず、グレネードを投げてやっと撃破できるほど硬い。

 

ローレン「ランス、肩を貸せ!」

 

ローレンは携行していた対戦車ライフルをランスの肩に乗せ、射撃を開始した。

しかし撃てども撃てども人型実体は次々と現れる。

やがて人型実体からの攻撃が開始された。

 

ローレン「気をつけろ!何が飛んでくるかわから………」

 

バシュッ

 

ローレンの頭に人型実体から発射された弾丸のようなものが命中し、下顎から上が吹き飛んだ。

少し逸れた後方より援護射撃を行っていたアンネッタは、ローレンの頭が吹き飛ぶ瞬間を見た。

アンネッタはその場で固まり、倒れたローレンの身体をじっと見ていた。

 

 

そしてアンネッタの中で何かがプツッと切れた。

 

ランス「おいアンネッタ、どこ行くんだよ。」

 

撤退する方向に射撃をしていたルシャとハルは、後方からの射撃音が無くなったのに気付き振り返る。

するとそこには人型実体へ向けて歩き出すアンネッタの姿があった。

 

ルシャ「アンネッタ!戻りなさい!」

 

ルシャの言葉にも反応せず、アンネッタは進む。

そしてグレネードを装填し、構える。

ブレードのような腕を持つ人型実体が近付きアンネッタへ攻撃しようとした瞬間、アンネッタはトリガーを引いた。

グレネードが発射され、人型実体の腕の根本に命中し、腕が落ちる。

人型実体が少しよろけた隙にアンネッタは落ちた腕を拾い、その腕で人型実体のもう片方の腕を切り落とした。

その腕も拾い上げ、両手に人型実体の腕を構えた後に腕を切り落とした人型実体の首をはねて胴体を裂いた。

 

そして倒れた人型実体を踏み越え、後ろの人型実体へ向かい歩く。

 

ルシャ「ああ、アンネッタが覚醒しちゃった………」

 

ランス「もう止められねえや。」

 

アンネッタは両手に持った人型実体の腕で、他の人型実体を次々と切り裂いていく。

 

 

 

AM11:50

L-2

作戦会議室

 

ベッゲナー中将「ガングートの艦上に人型実体多数出現。フェーダー2が墜落。艦内で人型実体との接敵……………。」

 

ワルター少将「各員既に撤退を開始しているようですが、まだサイス1・2からの報告がありません。」

 

ベッゲナー中将「…………そろそろレーバー隊が到達する頃か。」

 

 

同時刻

ガングート後方2km

 

レーバー1「おいおい、これはひでぇぞ。」

 

ガングートの艦上は銃弾が飛び交い、所々で爆発が起こっている。

人型実体は艦橋左舷側より甲板から無数に現れている。

 

レーバー2「隊長、どうしますか?」

 

レーバー1「ガンポッドの射撃用意。照準は人型実体。バラ撒くように射撃しろ。」

 

レーバー2「了解。」

 

両機は後方から艦首側へ抜けると、左旋回し左舷の斜め前方から甲板へ向けて射撃を開始した。

 

AM11:55

ガングート艦上

 

レーバー隊の2機のF-35Bが幾度も機銃掃射しようとも、人型実体は次々と現れる。

 

レーバー1「クソ、次から次へと………。これじゃ弾が持たん。」

レーバー2「こちらの弾薬は残り僅かです。」

レーバー1「仕方ない、OBS-1(汎用誘導爆弾システム)のFCCB(燃料気化弾頭)を使うぞ。ウェポンベイに各2発しか無いから交互にだ。」

レーバー2「了解。」

 

レーバー1「レーバー1より艦上の陸軍部隊へ。これより人型実体出現箇所に対しOBS-1FCCBによる爆撃を実施する。衝撃に備えろ。」

 

陸軍部隊隊長「了解した!なるべく早く頼む!」

 

レーバー1「レーバー2へ、左舷90度から侵入し投下する。付いて来い。」

 

2機はガングートと少し距離を取り、左舷艦橋へ垂直方向に侵入する。

 

レーバー1「レーザー照射。ベイオープン。投下。」

 

投下された爆弾は人型実体の出現箇所に向けて一直線に向かい、着弾寸前で起爆した。

起爆地点では人型実体が吹き飛ぶ姿が見えたが、

煙が晴れるとそこには攻撃しても尚出現する人型実体の姿があった。

 

同時刻

第六甲板第5構F2通路

 

アンネッタ「はぁ………はぁ……」

 

アンネッタは通路に出現した人型実体の大半を倒し、通路の真ん中で立ち止まっていた。

通路に残っていた人型実体は壁の中へ消えていった。

そして緊張が解けたのだろうか、その場に倒れ込んだ。

 

ルシャ「アンネッタ!」

 

ルシャが駆け寄る。

アンネッタは気絶している様子だった。

 

ランス「ルシャ、アンネッタは俺が運ぶ。お前は退路を確認してこい。」

 

ルシャ「わかった………。ハル中尉!退路の確認するよ。」

 

ハル「了解!」

 

 

ガングート後部甲板

 

兵士A「隊長!予備弾薬をください!」

隊長「ほら受け取れ!これで最後だ!」

 

後部甲板の陸軍部隊はSBF隊員の撤退を待つ為、構築している陣地で抗戦を続けていた。

しかし長時間に及ぶ戦闘で兵士2名が死亡。

輸送に使われていたV-22 サイス1も攻撃によりエンジンを損傷し、飛行不能になっていた。

 

 

L-2 作戦指令室

 

ベッゲナー中将「各部隊、もう限界に近いか。」

パッシェン中佐「データは十分に取れました。即時撤退させましょう。」

ワルター少将「またデータデータなどと…………。ん?何だこれは。」

 

ワルターは戦術通信端末に送られてきていた通信文を見た。

送り主はCP艦隊旗艦ヒギンズのロイヤー艦長だった。

内容を確認すると、ワルターは急いでベッゲナーに報告する。

 

ワルター少将「中将!ロイヤー艦長からの通信です!CP艦隊がガングートへ向けてGSCM-3 12発を発射した模様です!」

ベッゲナー中将「何だと………。」

 

ベッゲナーはCP艦隊のロイヤー艦長へ直通連絡を行う。

 

ベッゲナー中将「こちらL-2作戦指令室。至急ロイヤー艦長と話がしたい。」

 

数秒開けて、スピーカーから声が聴こえた。

 

ロイヤー艦長「[やあベッゲナー中将。何の御用かな?]」

ベッゲナー中将「何故事前予告無しにGSCMを発射したんだ。これは明確な指揮違反だぞ!」

ロイヤー艦長「[特別条項を使用したまでだ。指揮違反ではない。]」

ベッゲナー中将「貴様とは話にならん。艦隊司令長官を出せ。」

ロイヤー艦長「[長官は現在体調不良で寝込んでいてね、現在は私が代理司令長官だ。]」

ベッゲナー中将「とにかく今すぐ自爆させろ。まだガングートにはSBF隊員や陸軍部隊がいるんだぞ!」

ロイヤー艦長「[貴方は世界への猛威より数名の隊員の命を優先するのかい?やはり貴方は指揮官には向いていないな。]」

ベッゲナー中将「何だと。」

ロイヤー艦長「[それに今回のGSCMの発射は海軍総司令部の指示だ。私は止めることができない。さて、通信は切らせてもらう。]」

 

ブツッ

 

ベッゲナー中将「………マイケル大佐!マリオ少佐!至急全部隊を撤退させろ!」

マイケル大佐「了解。」

マリオ少佐「承知しました。」

 

ベッゲナーは画面に映し出されたミサイルの軌道予測を見た。

GSCMは約9分後に着弾する。

指示を受けたマイケルとマリオは、各々の通信機器で各部隊との通信を開始した。

 

 

9月18日 AM11:58

ガングート 第六甲板第5構F2通路

 

人型実体との戦闘が終わり、気絶したアンネッタをランスが背負い、ハルとルシャが先導して撤退を始めようとしていた。

その時、全員の戦術端末へ通信が入った。

 

ハル「CP艦隊からGSCM発射………。到達は5分後です!」

 

ランス「とっとと甲板へ上がるぞ。ハル中尉、甲板の確認を頼む。」

 

ハル「了解。」

 

ハルは階段を登り、甲板へ上がるハッチを開けた。

ハッチは第三砲塔の後部甲板側、ちょうど砲身先端の真下にある。

ハッチを開けると、甲板はまさに惨状と言うべき光景だった。

頭上では銃弾が飛び交い、艦橋左舷側の所々で爆発が起こっている。

後部甲板ではエンジンが損傷したV-22 サイス1と、ローターを回転させ飛行準備を行うサイス2、そしてその全面に展開し防御戦闘を行う陸軍部隊が見えた。

ハルはランスとルシャに状況を報告する。

 

ハル「頭上を銃弾が飛び交ってます。今甲板へ出るのは危険です。」

 

ランス「今出なくていつ出るんだよ。ルシャ、陸軍部隊に連絡。タイミングを合わせて出るぞ。」

 

ルシャ「わかった。」 

 

ルシャは陸軍部隊への通信を行う。

 

ルシャ「B4 から陸軍部隊へ、第三砲塔付近のハッチより甲板へ上がりそちらへ向かいます。

その瞬間だけ射撃を止めて下さい。」

 

陸軍部隊隊長「B4へ、了解した。60秒後に付近への射撃を20秒止める。その間にこちらまで走ってくれ。」

 

ルシャ「了解。」

 

ルシャ「60秒後に20秒間射撃が止まる。その間に走って行く。」

 

ランス「わかった。」

 

4人はハッチ付近で待機する。

 

 

50秒後

 

ランス「そろそろだな。ハル中尉、ハッチオープン用意……………、ハッチオープン!」

 

ハル「ハッチオープン!」

 

ハルがハッチを開け射撃が止んでいる事を確認し、4人は甲板へ上がった。

 

ルシャ「走るよ!」

 

ハル ルシャ アンネッタを背負ったランスは陸軍部隊の元へ走った。

しかし射撃が止んだ事で人型実体側からの攻撃が激しくなり、何発もの銃弾のようなものが掠める。

そしてその中の1発がハルの左脚に命中し、ハルはその場に倒れ込んだ。

 

ルシャ「ハル中尉!」

 

ルシャが気付き引き返そうとするが、ハルは叫んだ。

 

ハル「早く行って下さい!早く!」

 

ルシャ「でも………」

 

ハル「早く!早く陣地へ!」

 

ランス「何してるルシャ!来い!」

 

ルシャ「くっ………」

 

ルシャは走り出し、なんとか陣地に辿り着いた。

陣地には先に撤退していたロイド ハリス ライアン サリー B小隊マフィラン隊長が陸軍部隊

と共に陣地の防衛を行っていた。

ハルの方へ振り返ると、ハルは上半身を上げて小銃を握り人型実体へ向けて発砲していた。

ハルは無線で呼び掛ける。

 

ハル「「[自分が注意を引きます!早く乗り込んで発艦して下さい!]」

 

 

陸軍部隊隊長「…………よし全員撤退だ!サイス2へ乗り込め!ミサイル発射機等の重量装備は放棄だ!」

 

SBF隊員や陸軍部隊がサイス2へ次々と乗り込む。

しかしルシャは中々乗ろうとはしなかった。

ハルの事が気がかりだったのだ。

ハルは今も尚小銃で発砲している。

 

マフィラン隊長「おいルシャ!早く乗れ!」

 

ルシャ「でもハル中尉が!」

 

マフィラン隊長「早く!」

 

サイス2機長「もうこれ以上は待てないぞ!」

 

マフィラン隊長「ルシャ!早く来い!」

 

ルシャはサイス2へ振り返って走り、乗り込んだ。

 

サイス2機長「よし発艦する!掴まってろ!」

 

サイス2は発艦し、ガングート後方へ飛んだ。

 

 

サイス2が発艦して少し経った頃ハルは最後の弾倉を打ち切り、力尽きたかのように仰向けに倒れた。

 

ハル「………僕もこれまでか。」

 

人型実体はぞろぞろとハルの方へ近付いてくる。

ハルは胸ポケットから手榴弾を取り出し、ピンに指をかける。

 

ハル「やっと君のところへ逝けるよ、サリーム。」

 

ハルは、1年前のマルタ紛争中に自分の腕の中で死んだサリームを想いながら手榴弾のピンを引き抜いた。

その時空には12個の光る星のような物が見えた。

 

 

サイス2機内

 

マフィラン隊長「GSCM着弾まで5・4・3・2・1………」

 

 

GSCM 12発は、ガングートの前甲板から後部ヘリ甲板へかけて着弾し、直後大爆発が起きた。

船体は破断し、白い何かが四方へ飛び散る。

爆発の光景は、サイス2に乗っていたSBF隊員・陸軍部隊全員の目に焼き付いた。

 

 

上空3000m

レーバー隊

 

レーバー1 エルンスト「巨艦に相応しく、美しい散り様だな。」

レーバー2「隊長、燃料の残量的にビンゴです。」

レーバー1「そうだな、これより帰投する。」

レーバー2「了解。」

 

 

9月18日 14:20

L-2飛行甲板

 

SBF隊員・陸軍部隊を乗せたサイス2がL-2に帰還した。

帰還時、SBFの派遣部隊は人数を半分近く失い、陸軍部隊に至っては隊長含め5名しか居ない。

総統諜報軍の派遣官であったハル・イグチ中尉は未帰還。

機体もUH-60 V-22をそれぞれ1機ずつ喪失した。

ガングートにて救助できたのも女性乗組員1人のみで残りの乗組員は発見できず。

作戦としては失敗としか言えない結果となった。

 

 

作戦指令室

 

今までL-2からの通信を無視していたナポリの海軍司令部から通信が届いていた。

 

通信内容は、

 

-本日を以て派遣任務を終了とする。全艦マルタ島へ11月1日までに着かれたし。-

 

たったのこれだけ。

 

ベッゲナー中将「今後の事は予想がつく。マルタに着けば海軍のMPが来て私はナポリへ連れて行かれ、何かのタイミングで自殺に見せかけられて殺されるだろう。」

 

ワルター少将「………司令部は、中将のような優秀な軍人を時に捨て駒にして、それをなんとも思わないなんて…………」

 

ベッゲナー中将「入隊して40年、長かったが軍人としては満足な人生だった。諸君、今回の任務を共にやれたこと、感謝しているよ。」

 

 

翌日、艦隊は帰還の途についた。

 

 

 

ー完ー

 




これは複数回に分けて書いたロール文書をまとめ、加筆修正を加えたものです。
自分自身まだまだ文章力が未熟で、わかりにくい設定や文章等があったと思いますが、最後まで見ていただきありがとうございました。
Twitter上での活動は頻繁に行っていて、たまに長めのストーリーを書くこともあるのでもし良ければご覧下さい。

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