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「おやおや、これはこれは! 神父に鍛えられて『あれ? 俺って結構強くなったんじゃね!?』と調子に乗っていた所をぱくりとあっさり食べられた最弱冒険者「ほっとけ」に、気になる相手が訓練続きで中々構ってくれなくてヤキモチしてるちびっ子アークウィザード「や、ヤキモチなんてしてませんっ!」、いつも神気くっさい悪臭を撒き散らす駄女神「あ゛?」、よく喋るなコイツと思っているであろう不真面目神父「分かってんじゃねぇか」ではないか! へいらっしゃい!」
屋敷での作戦会議は一旦中断して、神父はカズマ達を率いてウィズの魔道具店へと訪れていた。
理由は単純明快。ウィズの魔道具店でアルバイトをしている元魔王軍幹部の悪魔―――バニルに、悪魔について聞きたい事があったからである。
「あれ? ウィズは居ないのか?」
「あぁ、あのポンコツ店主はまたくだらん品を勝手に仕入れたのでな。吾輩のバニル式殺人光線でのしておいた」
「相変わらず商売能力皆無だな、あのリッチー」
「全くだ。吾輩の手にも余る」
どれだけ月日が経とうとも、ウィズの商売能力が向上する事は無いらしい。哀れなり。
まぁ、
今は、ダクネスを救い出す為の計画に関わる話である。
『
アルダープの悪い噂が広まるだけで未だアルダープが関わったという証拠が無いのは、アルダープの証拠隠蔽能力が高いのではなく、彼がそういう都合が良い能力を使える存在と関わっている―――それが、神父の推測だった。
「現実を捻じ曲げる、或いは有耶無耶に出来る存在……はっきり言えば悪魔をお前は知ってるか?」
「ふむ……その問いに答える前に問わせてもらおう。貴様は何故、そのアルダープとやらが能力を使えるのではなく、能力を使える相手が居る、もしくは道具が有ると踏んだのだ? 貴様の考えで言えば、アルダープがそういう能力を扱えると至るのが普通だと思うのだが」
「あ、それ俺も気になった。」
そう。
ここで重要なのは、神父の推測はあくまでも『アルダープがそういう能力を使える』のではなく、『アルダープは使える存在と関わりを持っている、或いは道具を持っている』だけ、という点だ。
もし仮に神父の推測をカズマが考えたとしたならば、カズマはバニルの言う通りアルダープ本人がそれに関する能力を持っていると踏む。それが妥当だから。
何せこの世界にはチートが存在するのだ。能力から武器、道具まで幅広く。
アイリスという、転生者の血と共に能力を引き継いでいる存在が居るのだから、貴族であるアルダープがそれに該当しているのではないか? と考えるのは、何ら可笑しな事はない。
転生者について多少ではあるが知っている神父であれば、カズマと同じ様な考えに至るのが普通の筈だ。だが、神父はあくまでもアルダープは関わっているだけであると推測した。
「んなもん、別に難しく考えてねぇだけだっつの」
店の中で遠慮なく煙草を吸いながら、神父は答える。
「つか、バイト悪魔はともかくカズマはなんで疑問に思ってんだ。あの屋敷で話してたろ」
「え? なんか話してたっけ?」
「ったく……仮にアルダープ本人がそういう能力、或いは道具を持っているとした場合―――
そう言われて、確かに……と思うと同時に、屋敷での会話をカズマは思い出す。
『証拠を完全に消せるのであれば、そもそもアルダープが関わっているのではないか? という疑いを持たれる様な噂も残さない筈です』
アルダープの証拠隠蔽能力が高いのであれば、そもそも悪い噂なんて残す筈が無い。そういう旨の話をした。
要は、それと全く同じだ。
アルダープが現実を捻じ曲げるという強力な能力を持っているのであれば、そもそも自分の悪い噂を残すというのは実に不可解であり、あまりにも不自然だ。
「ふむ、確かに一理ある。だが、単にアルダープに抜けている面があるとも考えられるのではないか?」
バニルの指摘も確かだ。
不可解であり不自然ではあるが、単純にアルダープ本人が気が抜けている面があるという視点を持っていれば、不可解も不自然も消え失せる。『そういう人物』だからという納得が生まれるからだ。
神父はそれを確かにな、肯定して、だがなと続ける。
「俺はアクセルの住人について調べ尽くしている。貴族は特に調べ尽くした、相手が面倒だからな。だからとことん調べ尽くしてる。その人格まで細かく把握している。アイツは典型的な利己主義であり、自己保身に走りがちだ。
「要するに自分の利益、自分の利権、自分の安全が第一なんだよ。そんな精神をしている奴は、基本的に自分の安全や利権に関わる事に手抜きはしないし、見落としもしない。何せそれが第一の思考かつ視点であり、自分が行動を起こす際の絶対条件だからだ。
「それに俺は何度か会話した事があるからな、だからアイツの人格は理解してる。それを前提にして考えれば、自己保身が第一のアイツがそんな間抜けな手抜きをするなんて有り得ないんだよ。絶対にだ。
「随分と確信的だ? 当たり前だろ、自分が楽する為の仕事に全力を尽くしてんだからな。自分の不真面目を見過ごせるように真面目に仕事取り組んでんじゃねぇぜ、伊達にな。
「話を戻すぞ。そんな人間は手抜きも見落としもしない。であれば誰がやったのか? そう考えればアルダープに依頼、或いは命令された第三者か、意思を持たない道具がそれをやったと考えるのはごくごく普通で妥当な事だろ」
「おぉ……」
パチパチパチと、無意識に拍手を送ってしまうカズマパーティ。
名探偵には及ばないにせよ確かな推理であり、これにはバニルも良い顔で納得せざるを得ない。
「良い推理だ、不真面目神父よ。では最初の質問に答えよう。現実を捻じ曲げる能力……より正しく言うのであれば、
「……お前と
「うむ。吾輩と同じ『地獄の公爵』と呼ばれる悪魔―――名を『マクスウェル』。『辻褄合わせのマクスウェル』の異名を持つ悪魔だ」
辻褄合わせのマクスウェル。
七大悪魔の第一席であるバニルと並んで『地獄の公爵』。真実を捻じ曲げる能力によって、相手の記憶や認識を改竄する事が出来る悪魔である。
「其奴をアルダープが使役している可能性がある……と?」
「そこまでは分からん。だが、記憶や認識の改竄とあらばマクス以外にはなかろうと吾輩は思っている」
「仮にそのマクスウェルが犯人であるとして、アルダープが使役出来ると思うか? 或いは契約だ」
「どちらも可能だ。
大いなる力には、大いなる責任が伴う。
どうやら悪魔の間でも、この概念は通っているらしい。ありがたいご都合主義だな、と神父はメタ的なツッコミを飛ばしながらも、その言葉に安堵した。
「なるほど。……なら問題無いな。俺が手を汚す必要も無さそうだ」
「今なんかすっごい物騒な発言しなかった? 神父さん何するつもりだったの!?」
「あ? んなもん■■■■■を(規制住み)して(グロテスク)の後に(ゴア)で(規制に規制を重ねても規制が足りない様なグロテスクでゴアな文章内容)」
「ストップストップストップ!!!!!!!!!!! 神父さんそれ以上はダメだって!」
「もしくは精神崩壊させた方が良いかもな。ひっ捕らえてクイズでもやらせるか」
「精神崩壊させる様なクイズって何!? 何させるつもりなんだよ!」
「互いに23音で問答を繰り返すリポグラム」
「おっけい止めよう。トラウマで文字が見れなくなる」
「ジジイとやったからな、失言半減質疑応答。もう思い出しくたくねぇ」
オレはめっちゃ好きだったんだけどなー、とは祖父の談である。
まぁ、どちらにせよアルダープに助かる道は無い事だけは確かである。