SAOエクストラストーリー   作:ZHE

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アニメSAOも今期が最後ですかね? この小説もあと4話です。一緒にゴールインしたいものですね!

そして、いつのまにか鼠のアルゴ/帆坂朋(ほさか とも)なんてリアル本名が出てる(笑
しかも2026年時点で高校3年生、ということは本作時間軸で17歳高校2年生((;゚Д゚))))!?
そっ、そんなバカな……てっきり20歳ぐらいかと……自称おねーさんてウソやん……


……ん? 年齢齟齬の加筆修正? 知らんな。


第118話 戦争の果てに

 西暦2025年1月22日 《ルグルー回廊》、陸堀り場。

 

 光源の少ない洞窟。ドーム状の岩肌に背を預け、俺とアルゴは重なり合うように身を寄せ合い、そして手を結んだまま目をつぶる。

 冷え切った風が凪ぐ。長かった旅もこれで終わりだ。ひとたび眠りにつけば、数時間後に研究員の男達に意識を奪われ、しかるべき処置――すなわち、すべての記憶を失ってから現実世界に復帰するのだろう。

 そう確信した、わずか数十秒後だった。

 

『…………、…………ッ!!』

 

 暗い通路のずっと奥で、人の叫び声のようなものがこだましていたのだ。ズンドコガシャコンと戦闘音まで聞こえる。

 こんな(さび)れたところでもプレイヤー同士争っているのか、あるいは単なる攻略か。いずれにせよさすがは人気タイトルだ。深夜1時だぞ? まったくお盛んなことで。

 しかしどうしようもなくバッドなタイミングである。こちとら頭の中ではとっくにエピローグ気分だったのに、その騒音は今ここで発しないとダメなの? どうしても明日じゃダメ? と問いたくなる。

 ――ああ、もう!!

 

「うるさっ! てか距離近くね!?」

「エエッ!? ほっとこうヨ! 今そーいう雰囲気じゃなかったじゃン! せっかく良さげなムード出てたじゃン!」

「でもほら、ワンチャン知り合いかもしれないし」

「どんなワンチャンだよ、まったク……」

 

 なんて言いつつ、これが昨日の今頃なら……いや、数時間でもズレていれば俺達は連中をスルーしていただろう。

 しかし、メンテが始まるAM4:00まではもう3時間。泣いても笑ってもこの数字は揺らがない。

 削りきった睡眠時間ゆえに激眠いのは相変らずだったが、遠くにあった声が近づくにつれ『このままだと《領主》が危ない!』だの、『今から行けばまだ間に合うかも!』だの慌てたようなセリフが聞こえて来れば事情も変わってくる。

 否、事情が変わるどころの騒ぎではない。

 『領主がフィールドを出歩いている』なんて、それが事実なら思ってもみない豪運である。

 もし族のトップを俺が討ち取ろうものなら、本当にラストのラストでスーパー有名人化の夢が叶うかもしれない。……そんな射幸心に従い、俺達は土壇場で活動を再開することにした。

 というのも、ALO界における《領主》討伐の影響は掛け値なしで絶大で、なんと討たれた種族の資金は討った側の領主館へ無条件で30パーセントも遷移し、さらに街の妖精保護コードを10日間上書きし、占拠した主街区ではアイテムへの課税を好きなようにかけられるそうなのだ。100パーだろうが200パーだろうが。

 これではデメリットが大きすぎる。ゆえに歴史上、領主が討たれたのはたった1度しかないらしい。

 もちろん、そうなると殺られた種族はほとんどログインを10日間封じられたも同然で、あまりにもバランス調整のヘタクソなクソ運営(・・・・)の尻拭いのため、領主は滅多なことがない限り安全エリアを出ることはない。俺もこれらの仕様を盗み聞きした当時は開いた口が塞がらなかったほどだ。

 オンゲーにしては大変珍しいが、もろもろの事情から領主を討つどころか邂逅(かいこう)する機会すら滅多にない。いわんや街の外を出歩くにしても、お忍びでもない限りもっぱら精鋭の小隊がいくつか随伴するのが格例で、おそらくペア単位のプレイヤーでは天地がひっくり返ってもキングは獲れまい。

 だが、何らかの種族が争って消耗した後であれば、あわよくば俺とアルゴだけでコッソリ首を獲る可能性もなきにしもあらず、だろう。

 もちろん、成功確率なんてものには布をかぶせておく。

 こちらもどうせ余命3時間である。

 間違いなく断言できることは、見事《領主殺害》が成されれば一躍時代の寵児となることのみ。

 ちなみに、アテもなく適当に走っていたが、わああ! きゃああ! ひぇええっ!! といった女性の悲鳴も大きくなっているので、彼我の距離は縮まっているとみていい。

 俺は膠着しかかった全身を叩き起こして走りながら、次第に昂っていた。

 

「ひゃっほーい、こうなりゃヤケだぜ! なあ、アルゴ!!」

「オレっちはどっちかっていうと、終わるならさっきのロケーションの方がよかったんだケド!」

「いーから付き合えよ! あとでチューしてやるからさ!!」

「その発言はさすがにアウトォ!!」

 

 なんてハイテンションなやり取りの最中に目に映ったのは、誰かしらのプレイヤーをターゲティングしたモンスター群だった。その方向は一様にしてこの《ルグルー回廊》の出口を向いているので、やはり先方も慌てているようだ。このまま急ぎ早特定のポイントに向かえば、ガチのマジで千載一遇のチャンスが到来することだろう。

 これはますます楽しみになってきた。この場に来るまでの道中は徒歩だったし、回廊を抜けた先で翅を使われても問題なく追える。

 

「(いたちの最後っぺだ。ナメんなよインテリ共!!)」

 

 大剣のグリップに手をかけると、自分でも想像以上に活力が戻っていることに驚く。

 それに消滅するにしても、爪痕ぐらいは残しておいた方が景気付けになるだろう。俺の性格上、やはり最後の瞬間まで体を動かしていないと気が済まないのだ。地球に隕石が落ちてきても、きっとラスト1秒まで何かしら動いている気がする。

 

「ジェイド、出口までたらふくMobがいるゾ! どーすル!?」

「殺るのは最低限だ! あくまで目標は領主の首!!」

「ったく、マユツバに全力出せるお前サンが羨ましいヨ!!」

「マネすりゃいーじゃん! 人生楽しくなる、ぜェッ!!」

 

 息を吐くと同時に眼前を埋め尽くしていた大群に大剣を振り降ろす。反応の遅れた醜いオーク共はなす術なく一撃で葬られた。

 スピードは落ちない。どころかぐんぐん伸びる。

 そして外の光が近づくと、俺とアルゴはアイコンタクトだけで一気に駆け出した。

 

「うーしトンネル突破ァ! マヌケな連中はどっち行ったッ!?」

「北西っぽいゾ! 飛んでるプレイヤーが2人見えル! たぶんあれはスプリガンとシルフだ!」

「相変わらず目ェいいなオイ! けど2人なのか!? しかもなんたって種族が違うんだよ!!」

「知らン!」

「方角的に狙いはケットシーくせぇけど、俺らみたいに少数で行って大穴狙いかな!?」

「またはオレっちらの早とちり、だナ! 言ったろウ! もともと領主の首なんて都合のいいものが、こんな平原に無防備晒してるわけなのサ!!」

 

 アルゴはダメ押しにそんなことを嘆息するが、俺が「泣き言は3時間後に聞いてやるよん!!」と言ったきり、どちらもはるか前方を直進するマメツブほどのプレイヤーを追うことにメチャクチャ専念した。

 なぜなら、彼女ら――届いた声から察するに1人は確実に女性――のスピードが半端なかったからだ。

 何であれば今まで出会った誰よりも速いのではなかろうか。俺とアルゴも、ことスピードに関して言えばそれなりの自信を持っていたが、数秒でも気を抜けば途端に引き離されそうになる。

 それほど彼らも集中しているということなのだろうが、だとしても全速力で飛ばしても追いつけないというのは、最序盤を除きこの2ヵ月半で初めての経験である。

 

「クッソ速ェぞあいつら! アルゴッ、ついてきてるか!」

「な、なんとカ!」

 

 アインクラッドでは他を寄せ付けない速度で街中を走り回っていたアルゴが、翅を苦しそうに振動させてどうにか食らいついてきていた。

 空気でわかる。この感じ、ただ事ではない。前の2人もタダ者ではない。

 いよいよ現実味を帯びてきたわけだ。

 そうして前進すること20分。お互いちゃっかり移動法をダッシュに変えるなどして翅も回復させ、近づけそうなタイミングでもあえて一定距離のまま尾行しつつ、俺達はゴールの気配を感じ取っていた。

 そしてまた空路に戻り、雲の切れ目に差し掛かると……、

 

「(いてくれよ~目玉商品……)……って、なんだありゃあっ!?」

「ものスゴいプレイヤー群じゃないカ!?」

 

 なんと、2人の先行ペアが突き進む先には、60をもゆうに超す真っ赤な装備で統一された大集団が滞空していたのだ。

 数が多すぎて目の良し悪しなんて関係ない。あれはサラマンダー部隊だろうか。装備のグレードから見るにベテランからライト勢までゴチャ混ぜの集団と推測できるが、目的が単なる遊覧飛行である可能性は極めて低い。

 その奥には、やはりそれぞれの妖精の重役らしき高級な装衣のプレイヤーが向かい合って対談していたのだ。遠すぎて顔までは認識できないが、少なくとも2種族は見受けられる。何らかの交渉か商談中、あるいは同盟でも組もうとしていたのだろうが、こうなれば逃げ場などない。駆けつけた例の2人を合わせてもわずか16人態勢で、対するサラマンダーとは4倍の戦力差である。

 俺とアルゴは彼らのだいぶ手前で翅をたたむと、望遠魔法《遠方焦点(スコープ・ファインダ)》を使うアルゴを横目に若干諦めながら歩いていた。

 

「あーあ、終わったなこりゃ。囲んでテキトーに炎でも撃ってれば3分もかからねェだろ」

「これは割り込むのも難しそうだナ。遠目で見た限り、ウワサに聞く領主とやらと特徴が一致して……ち、チョッと待った! ケットシーだけじゃないゾ。シルフ側の領主もいるみたいダ! ツートップがそろい踏みだヨ!」

「へぇ~、じゃあやっぱ目的は同盟かな」

 

 2人してポツンと設置された木陰に隠れながらそう生返事しつつ、頭では別のことを考えていた。

 これほど重要な調印式とあれば極秘中の極秘任務だったはず。ある程度日程に目星をつけたとして、ましてや敵対種族がその場をこうも正確に割り出せる道理はない。強襲に(つど)った大規模な人数からみても、内通者を介した長期的な奇襲計画だったのだろう。

 とすれば、その完全成就のためあらば、俺達が加勢に加わることすら拒否するはずだ。元より『いいとこ取り』狙いなので妨害されて当然なのだが、ここまで圧倒的だと戦闘の終盤でさえ紛れ込む余地はなさそうである。

 アルゴの言葉を借りるわけではないが、完全に無駄足だ。

 それより、なぜか双方が睨み合ったまま停止していることの方が気になるが……。

 という刹那の疑問をトレースしたように彼女が答えた。

 

「ン~何やらスプリガンの男が説得してるみたいだケド、どうもムリくさい雰囲気だナ。サラマンダーの隊長は今にも攻撃したくて武者震いしてる感じがする」

「そりゃそうだろ。そもそも、スプリガンがなんで1人でこんなところにいるのかって話よ」

 

 サラマンダーに慈悲で話の通るプレイヤーは少ない。相応の対価なしに交渉テーブルにはつかない連中だ。これは色眼鏡フィルターをかけて断じているのではなく、1つのアセスメントである。

 そんなことを考えた瞬間だった。

 

「まったくムダなことを……って、おい!? アルゴ上見ろ!!」

「んエっ!?」

 

 急に慌てたような声を上げて驚かせてしまったが、眠たげに空を見上げた瞬間、高速で通過する物体が10以上も見えたのだ。

 ここで空中に姿を晒せる勇気のあるプレイヤーがいるとしたら、間違いなく遠くに見える武装集団と一戦交えるつもりだろう。よほど視野が狭くなっているのか俺達に気づく様子もなく、しかもその速度は落とさずに真っすぐかの地へ向かっている。

 

「うっわ、行くねぇ。色的にシルフパーティか?」

「奇襲がヤバいカラ、領主を守りに来たのかナ……?」

「あの人数見てまだ戦う気があるとか引くわ~」

「向こうも必死なんだロ。レネゲイドだと実感ないケド、領主が討たれるデメリットはシルフが1番理解してるだろうカラ……オオッ、ドンパチ始まったゾ! 増援部隊がむしろ火に油を注いだナ!!」

「うっひゃあ~、こいつはスゲー!! 100人近いプレイヤー戦とか生まれて初めて見たぜ。大人の運動会みたいだな!」

「なにを呑気ナ……し、下ネタ禁止!」

「下ネタじゃねーよ!!」

 

 遠くの方で、大集団によるルール無用の殺し合いが始まった。

 ついハイテンションになって叫んでしまったが、すでにどんな音量で声を上げても聞き取られる心配はなくなっている。

 眼前いっぱいには見たことのない規模の剣戟と、無数に応酬する打ち上げ花火然としたエフェクトが舞い散らばり、なんであれば今から乱戦に混ざっても1分ぐらいは気づかれないほど雑然としていたのだ。サラマンダー側は数で勝るゆえに自滅を恐れ、シルフ、ケットシー側も万が一にも頭領にダメージが入らないよう大技を放てないようだが、それを差し引いても余りある狂乱具合である。

 そしてシルフ達の領主両名には悪いが、勝敗もまた揺るぎないと思われる。

 確かにトップのそば付きとなれば実力も高いだろうし、道案内をしてくれた例の2人とて場慣れした空気は感じられた。おまけに、意外にもその片割れである黒い髪を逆立てたスプリガン風情が、尋常ではない暴れっぷりを見せて場を搔き乱している。

 が、しかしそれでも、7人小隊9パーティオーバー相手では戦力が違いすぎる。

 レッド軍団とて有象無象ではないだろうし、数が多いほど蘇生ローテーションも安定する。それに極論、目標体はたった2人なのだから、数の暴力で押し切ってしまえばいい。

 

「(あ〜混ざりたてぇ。残機が1じゃなけりゃなぁ……)」

 

 寝首を掻いて領主だけサクッと2killしたいのはやまやまだが、完全に感知されていない今のうちにグッバイするのが安パイか……、

 だが、悪びれもなく「やっぱムリそうだし逃げよっか」なんてのたまおうとした……いや、攻撃魔法が飛び火する恐れもあるので、きっと彼女も賛成してくれただろう提案を持ちかける直前だった。

 

「(んん~……?)」

 

 首に感じたチクリとした痛みに、振り返る。

 何度か味わったことのある、本能が火急の大事を訴えようとしている感覚だ。

 単に暴れたい衝動、とも違う。せっかくSAOアバターのまま生きた痕跡を残せるチャンスなのに、おめおめと引き下がるやりきれない無念、とも違う。

 今の違和感は、もっと具体的だった。

 視界が捉えた戦闘の中にあった気がする。

 俺は何を視た? 思い出を直接刺激するような……郷愁感がささやくような……強烈な焦燥。

 おそらく、味方のピンチに土壇場で駆けつけたシルフ10名足らずの小隊だ。あの部隊はどこかで……、

 

「(あいつら……まさか……!?)」

 

 そこまで考えた瞬間、俺の思惟(しい)は一気にクリアになった。

 メンバーが1人増えていたが間違いない。先ほど一瞬だけ見えた何人かの顔に見覚えがあったのだ。

 彼らは時間指定型インスタンス・マップ《幽覧城塞・アスガンダル》に到達する直前、クロムのおっさんをゲームオーバーに追い込んだ憎き熟練パーティだ。女隊長の名が『ミカド』だったばかりに俺が勘違いを起こしたことも確かに一因だが、もとはと言えば連中がハイエナまがいの連戦を仕掛けてこなければあんなことにはならなかった。

 フザけやがって。よくもノコノコと姿を見せられたものだ。

 サラマンダー集団に取られる前に、まずはこいつらから血祭りにあげてやろうか。追加メンバーの銀髪女にまで恨みはないが、仇のチームに与したとあれば女性だろうと容赦はしない。

 

「(あ……れ……?)」

 

 殺気をよそに、また一段と強い既視感に襲われた。今度はその銀髪レアアバターの新人シルフとやらに焦点を合わせた時だ。

 新人でもベテランチームのメンバーなだけはある。彼女の剣捌きは見事なもので、鎧をまとっているとは思えない身のこなしで赤いプレイヤーを翻弄(ほんろう)し、しかるべき隙を見つけたら重心を乗せて渾身の一撃を叩きこむ。

 その舞いはどこか芸術的で、敵の攻撃に合わせた反射的対応というよりは、長年(つちか)い染みこませてきた戦闘術をラフに発揮しているようにも見えた。

 しかもカテゴリまで直剣。女隊長と併せて左利きなので、件の名前のことが頭をよぎると、どうしても悪いクセのようにかつての恋人と重ねてしまう。

 さらに目を疑うことに、得物による攻撃が主体ときている。これだけ遠距離戦の台頭した世界で、それも女性が魔法に頼らないなんて。俺の知る限り、そんなスタイルの女はアルゴを含めごくわずかしか出会っていないし、達人級ともあれば片手で数え切れる。

 遠目でもわかる。盾の使い方なんてヒスイそっくりだ。今だって、ほら。

 相対したサラマンダーの攻撃を……、

 

「(弾け……ッ!!)」

 

 知らず内心で応援した直後、信じられないことに俺の記憶する挙動と完璧にシンクロするパリィを決めて、男性の一振りを跳ね退けたのだ。

 衝撃のあまり、ドクンッと心臓が大きく蠕動(ぜんどう)した。

 まるで合わせ鏡である。生き写しである。返しの刃で腹部を突き刺すカウンター方まで、全てのアクションが俺の中の彼女と一致する。まさしくあの戦い方は……盾持ちの左利き……女隊長の名前……ずっと前、ヒスイには1人だけ姉がいると言って……、

 

「あっ……アルゴ……参戦しよう……ッ」

 

 自然と声が震えていた。恐怖ではない。

 

「行かなきゃ……俺、たちは……!!」

「うえっ、やっぱりやるのカ? 状況はわかってるだろうケド、見たところ逆転はなさそうだし、領主殺しの手助けをしようにもジャマとか言われそ」

「いやッ、違う!! つくのはシルフ側だ! サラマンダーどもをブッ殺すぞ!!」

「んなァ!? お前サン正気か……あ、おいコラ!?」

 

 食い気味に言いたいことだけ言うと、ゴウッ!! と、風圧と俊足の反動で雑草ごと地面がえぐられる。

 衝撃波にあおられたアルゴの冷静なツッコミすらシカトし、あらゆる衝動の説明を後回しにした。

 高速詠唱。スペル9句、闇属性の《秘めたる狂性(ロードブハイド)》を発動。

 視界が赤く点滅するより速く、4枚翅が最高速で振動した。

 スラスターを吹かせたかのごとくスピードで乱戦に突入し、ズンッ!! と出会い頭に一閃して名も知らぬ男の首を切断。あまりの斬撃余波に縦回転しながら錐揉むそのアバターは、他の真紅のプレイヤーに激突すると跡形もなく消滅した。

 開幕からド派手な登場でいきなり5人ほどの敵を釣る。開戦前に交渉を試みたスプリガン同様、「なぜ無関係な種族が明らかな劣勢側について敵対してくるのか?」と、探りあぐねるような顔をしていたが、無論彼らにも説明をくれてやる時間はない。

 

「(クソ、数が多すぎるっ!!)」

 

 そう吐き捨てたいところだったが、しかし幸いなことに、近づくだけで発動する弱体化のデバフ魔法はきちんと奴らに適用された。

 相手からすればドーピングと弱体化魔法を同時に発動したように見えたらしく、その狼狽を利用し俺は矢継ぎ早に兵士を斬り倒していく。奇襲をかけた俺達側――すなわち、列の後方に陣取るそいつらは当然メイジクラスで、たいした物理防御を備えていなかったようである。

 しかし、さすがに5人目に移ろうとした頃には、混乱に乗じて戦列を搔き乱すふとどき者に気づいたようだ。

 「インプとケットシーだ! 紛れ込んでジャマしてきてる!」だの、「メンドくせぇから赤以外はみんな敵だと思え!!」だの、各々が俺とアルゴに警戒するよう声を掛け合っていた。

 だが、俺にはそれすら眼中にない。

 無作為に飛び回る途中で、包囲されたことで仕方なく応戦する2名の領主……つまり本来の殺害目的のすぐそばを過ぎ去ったわけだが、すでに彼女らにも興味はなかった。

 あの女騎士はどこにいる? かつての恋人に似た戦い方をする、白銀のシルフは……、

 

「カオスすぎだろ、ジャマくせェ……が、ぁッ!?」

 

 イラ立った直後、ゴッ!! と後頭部への蹴りの一撃を決められ、俺は捜索の中断を余儀なくされた。

 翅を器用に振動させて態勢を整える。

 新手だ。見ると、俺をタゲった目の前の大男もまた真紅の甲冑に身を(くる)み、これまでに見たことのない禍々しいマゼンタの大剣を構えていた。

 装備、佇まい、あらゆる面から彼はリーダー格だと推測できる。

 凄まじい加速アシストに物を言わせて鋭角カーブし続けていた俺を捉えたのだから、指揮を執るだけでなく彼自身が腕の立つ戦士なのだろう。

 奴の部下が「ジンさんが行った! オレらは他に集中しよう!」なんて抜かしているので信頼も厚いようだ。

 そんな男は、無駄なくホバリングしたまま無駄口を叩きだした。

 

「こちらも満を持したつもりだが、横槍の多い日となったものだ。……何者だ。領主狙いならまだしも、ただ死にに来たか?」

「ンだテメェは。どくか死ねよ」

「む……?」

 

 俺の罵倒に眉をひそめるサラマンダー野郎。

 そうだ、こいつらとは会話できないのだったか。こんなことをしているヒマはない。

 

「(やり手だ……背中は見せらんねェか。殺すしかねーな……)」

 

 避けられない戦闘と断定し改めて敵を識別する。

 恐ろしいことに、彼の武器は《レンジェダリィ・ウェポン》と呼ばれる伝説の剣だと推測できる。俺も絵でしか見たことはないが、確かサーバに1本ずつしか用意されていない2種の魔剣のうちの一振りだ。

 人生1度は手合わせしたい相手ではあるものの、ただしこの武器にも厄介なエクストラスキルが設定されている。

 名は《霊妙転位(エセリアルシフト)》。その効果は、『初めに触れる武器や防具を素通りさせる』というシロモノで、これを持つ者と相対した時点で物理攻撃戦に持ち込むのはナンセンスでしかない。その特性上ノーガードで剣を受ければ裸の肉体に魔剣が食い込むのと同様。HPゲージなんてものは一瞬にして蒸発してしまう。

 しかし孤立した俺に選択肢などなかったし、伝説武器の所持者とまみえることになる想定もある程度してきたつもりだ。

 問題があるとすれば、剣の性能よりもこの男だろう。

 魔剣《グラム》を操るということは、男の名は『ユージーン』だと予想される。最大勢力の妖精種の中で最強のプレイヤーだと呼び声が高く、その武勇伝はアルヴヘイム全域で轟いている。すでに勝った気でいるのかザコ連中も俺に見向きもしない。

 

「(こいつはトンでもない得物に出会えたものだ……)」

 

 それともこの場合は獲物と評するべきか。

 いずれにせよ、俺に臆する理由はまったくなかった。

 『ALO最強』の肩書きは結構だが、かの浮遊城で2年の地獄と本物の英傑達を目の当たりにしてきた俺からすれば、所詮はプライドの高いサラマンダーが身内を持ち上げるために用意した安い惹句(じゃっく)でしかない。

 だいたい、勝敗なんてものはコンデションから時の運まで振れ幅が大きいものである。

 男も戦う相手の戦闘力にしか興味がないのか、相対的な評価を気にする風でもなく、あくまで1人の戦士として話しかけてきた。

 

「《キャンセラー》……ヨタ話だと思っていたが、実在したとはな。噂を聞いてからしばらくは、斬りたくてウズウズしたものだ」

「よくしゃべるなぁッ!!」

 

 ゴウッ!! と、まずは一合。大剣の全力振りを防がれたわけだが、やはり《エセリアルシフト》は使われていない。剣の運動方向が悪かったからだろう。

 剣の動く方向、すなわちこのスキルが真価を発揮するのは『彼が攻撃する』時に『俺がガードする』場合だけ、ということになる。その見極めを誤れば、防御行為が意味を成さず自らのスキルによって不利になってしまうわけだ。

 《エッケゼックス》や《マリン・エッジダガー》同様、手元のグリップなりガード、ポメルなりに細工が施されているはずだが、攻防入り乱れるゼロ距離の白兵戦中ではシビアなタイミングを求められるわけである。

 であれば必然、俺の答えは超インファイトだ。

 

「おッるァああああっ!!」

「む、う……ッ!?」

 

 猛然と腕を振るい絶え間なく金属をカチ合わせる。さすがに翅の使い方も剣捌きも一流らしく一方的なラッシュとまではいかないが、冗談のように重い《タイタン・キラー》を正面から受けているのだ。エクストラスキル封印の役目は十全に果たしている。

 あとは離される前にこいつのHPを全損させればいい。

 しかし、シルフ・ケットシー連合の数的な不利状況が脳裏をかすめ、俺が功を急いだ瞬間だった。

 真紅の男は、大上段に構えた大剣をフェイントに、膝を使って打撃による搦め手を使ってきたのだ。

 反応が遅れ、直撃によろめく。

 時間にすれば数瞬だったが、スキル発動には十分だった。

 奴の大剣が光を纏った、その時……、

 

「ジェイドぉ!!」

「ッ……!?」

 

 透き通った女性の声で名を叫ばれた。

 聞き覚えのある、女の声。この混乱のさなか、戦場のどこから発せられたのか、そして誰が発したのかを確認している時間はない。

 しかし俺の脳と全身は、このワンフレーズの声だけで《ロードブハイド》適用中以上の覚醒現象に見舞われ、刹那の瞬間でさえすべてがスローに感じた。

 魔剣とその使い手の動きがゆっくりと映し出される。明晰夢の中で客観的に相手の行動を観測するような全能感。

 倒すためにどんな戦法が有効か。あるいは、いかようにすれば最適な挙動となるか。

 初速を与えた時点で仮想世界における行動の選択肢は有限であり、網膜への信号密度が一定値を超えると、攻撃法はおろかコンマ数秒先の未来さえ把握してしまうシステム外スキル。

 久方ぶりに脈動する、《後退する修正景(リビジョン・バック)》現象。

 集中が最大まで高められた瞬間、上段一点に突きを放っていた。

 

「ぐうッ……!?」

 

 ザグンッ!! と、鋭い斬撃音。

 サラマンダーの男がうめく。《タイタン・キラー》の剣先が相手の刀身の下、グリップを握る5本の指に直撃していたからだ。

 ガード不可攻撃のガード。

 《エセリアルシフト》は刀身部分(・・・・)にしか適用されない。剣の性能を過信したわけではないだろうが、現に俺はしのいだ。

 

「(いや、まだだッ!!)」

 

 結果を見届けるより早く翅を振動させた。

 反撃がクリーンヒット。捻転力を利用して生まれた蹴りは、羽音のような振動音だけを発して、まだ《エセリアルシフト》適用中だった刀身を透過し、さらに相手の顔面へクリーンヒットしたのだ。

 足蹴(あしげ)にされ、大きくのけぞった胴体にすかさず連撃。たちまちHPが逆転すると、男はとっさに手元を爆破させる魔法で距離を稼ぐ。

 両者の視界がふさがったその瞬間、俺の行動は迅速だった。

 右手で《タイタン・キラー》を背に収め、左でウィンドウを素早くタップ。クイックチェンジでインベントリから直接《エッケゼックス》を具現化させると、炎塵を突っ切って前進したのだ。

 それは第三者視点であればまさしくギャンブルだった。しかし、同時に確信もあった。

 視界が回復した先では、やはり奴の得物もエフェクトを発していた。《グラム》が持つ本来の性能を引き出さんがために。

 そして……、

 

「ぬゥ!!」

「お……らあァアアッ!!」

 

 ズガァアアアアアアッ!! と、2本の業物が最大速でぶつかり合った。

 稲妻がほとばしる。閃光はもはや爆発に近かった。

 だが、《エッケゼックス》のデュラビリティはとうに限界を迎えている。酷使に次ぐ酷使を続けてきたことで、前回の戦いではブレードにヒビが入っていたことを覚えていた。

 結果、わずか一合で伝説の宝剣は砕け散る。

 本懐を果たし硝子のフレークと化した現象に、驚いたのはむしろサラマンダー側だった。

 今までの小細工と違い、エクストラスキルを発動した本気の一閃を『刀身部分で止められた』うえ、しかも対戦相手は愛刀が破壊されたことにまったく動揺していないからだろう。

 俺はすかさずタイタン・キラーを背から再抜刀。ようやく構え直した男に対しほぼ真下から弧を描く、(すく)い上げるような斬撃が見舞われた。

 ガチン! と、高い音を立てつつ宙を舞う魔剣《グラム》。

 すると反動で体勢を崩した俺を流し見て確認し、男は翅で高速反転。攻撃魔法を唱えながら打ち上がった剣を追った。

 

「(させるかっ!!)」

 

 奥歯で食いしばり、肩甲骨の筋を限界まで絞る。

 俺の体は空気の衝撃を生むほど加速され、空中の《グラム》に急速接近する。ドーピングの加速アシストだ。

 そして敵が弾かれた大剣を掴み直そうとする、直前。俺は片手だけで自分の得物を数メートル先の背中に投げつけた。

 回転物がズン! と背に突き刺さったことで相手の動きが鈍る。

 《詠唱失敗(チャント・ファンブル)》こそ起きなかったが、巨躯を追い越した先に魔剣を手にしたのは俺だった。

 魔剣《グラム》が、俺の手に渡る。

 

「くっ……ぬああッ!!」

 

 男は愛刀を奪われたと見るや、即座に左手をかざす。警戒する余裕すらない。奴の手の平がオレンジ色に発色すると、わずかに散ったスパークの後に凄まじい爆発が起きた。

 周囲の戦闘音をかき消すような轟音。自らをも爆破のダメージを負う炎属性の《異常爆発(デトネーション)》だ。

 されど、タダでくらうつもりはない。俺は咄嗟(とっさ)に非実態の《魔法減殺の盾(スワロゥ・パーム)》を展開していたのだ。

 左腕に衝撃。しかしその大魔法すら凌ぎきると、粉塵を振り切ってなおも猛進した。

 

「ンなモンかよォッ!!」

「なにっ!?」

 

 ズンッ!! と、重厚な金属が腹部を貫通する。

 その驚愕には2重の意味が含まれていたのだろう。伝説の大剣である《グラム》のスペックを機能させ得るステータス要求の高さから、奪われたとしてもまともに扱えるはずがないという予想。およびスリップダメージで体力の減った、パッと見では盾なしのインファイターへの大魔法による近距離邀撃。

 単純に見れば決定的な王手のはずだった。それが今、互いのHPはレッドゾーンに陥り、むしろ窮地に立たされているのは……、

 

「ぐ、こんなっ……無名インプごときにィィ!!」

「るっせ、死ねやァッ!!」

 

 男が背に刺さったままのブレードに手をかけると、2つの気合と同時にゾブン、と2本の大剣が図体から引き抜かれた。

 愛刀が入れ替わる。一合だけカチ合うと、物理的に上を取ったのは俺だった。

 構えは大上段。ポメルに力を加えるとやはり半回転した。スキルの発動条件は砕け散った《エッケザックス》の《あまねく魔法の追放(ソーサリィ・マグバニッシュ)》と同じだ。

 奴も俺の剣を寝かせて防ごうとした瞬間、気づく。

 ――手遅れだよ、楽しかったぜ。

 

「あっばよォオオオオッ!!!!」

 

 ズッガァアアアアッ!! と、一切の抵抗(・・・・・)を受けなかったフルスイングが、サラマンダーの胴にクリティカルヒットした。

 叫び、きりもみ、目を覆う炎の尾を残して男は焼尽四散した。

 戦場に一拍の間が流れる。

 将軍格のオーバーキル。広がる動揺と勝利への不信。ましてや《レジェンダリー・ウェポン》持ちの手練れが消えてからは、戦線の瓦解は芋づる式だった。

 そこへ追い打ちをかけるようにスプリガンの黒剣士が面白いぐらいの人数を屠りだすと、わずかに生き残っていたシルフ連合側も場の勢いに(たの)んで決死の反撃を試みる。やがて倍以上開いていた人数が拮抗し、まだ戦えそうな兵まで一気に引け腰となると、残り数人となった取り巻きは敗北を確信したのか、すでに壊滅した指揮のもと尻尾を巻いて逃げてしまった。

 戦域から光が消え、音も止む。動く者さえも。

 

「ハァ……ハァ……終わった……のか……?」

 

 肩で息をしながらつぶやき、嘘のように静まり返った周囲を見渡した。

 途中で何度か回復してくれたアルゴも生き残っている。HPは皆半分を下回っているが、俺達を合わせて9人生存、といったところか。

 そして俺が『シルフ側に付こう』としたきっかけ。シルバーとグリーンメッシュの長いサイドポニーをなびかせ、同じく息を整えている女シルフと目が合った。謁見(えっけん)できる機会の少ない他種族の領主ですら歯牙にもかけない。

 彼女は武器を握ったまますごい形相をしていた。まるで生霊でも見てしまったのかのような表情である。指折りの美人だが、せっかくの整った顔が台無しだ。

 女性は涙を一筋流しながら問うた。

 

「そんなっ……ジェイド、なの……?」

 

 問われた瞬間、俺も目を見開いた。それはずっと待ち望んだ言葉だったからだ。

 俺の顔を知っている。姿は違えど、もうこの現実に疑いはない。数分前に俺が感じた直感は間違っていなかった。

 

「ヒスイっ!!」

 

 周りのことなど一切気にせず、俺は女性を抱きしめた。

 華奢(きゃしゃ)な腕が腰に回ると、そのしぐさすら懐かしく感じる。手の位置なんて、ずっと昔から知る彼女のハグとまったく同じだ。

 そしてしばらくの間、泣きながら何度も俺の名を呼んで他の生存者を混乱させていた。

 さしもの彼女とてアルゴの面映ゆい表情には気づかなかった。あるいは俺も、都合よく今までのことを忘れて安堵と達成感を味わっていた。

 しかし、ほとぼりが冷めるころ、ようやく周りの音が耳に届く。抱きしめていた体を名残惜しく離すと、ホバリングで寄ってきたスプリガンの男が口を開いた。

 

「ジェイドと……アルゴだな? どうして2人が……それに、お前らの顔なんてソードアートの頃とそっくりじゃないか?」

 

 突発の協力者に対しわずかな敵愾心(てきがいしん)すら見せないだけでなく、こう発言したことにまず驚いた。

 仰天顔は全員同じだ。俺達がSAOサバイバーであること、そして乱入したスプリガンや、抱き合っていた銀髪シルフの女性までもがサバイバーと顔見知り。ここまで予想できる者はいないだろう。

 俺を……正確には『俺の顔』を知っているということは、このスプリガンの鉄砲玉男も同様にサバイバーだったわけだ。

 そして彼の戦いぶりから、「たぶん攻略組だったんだろう」と予想を立てたその時、黒コートのポケットからプライベートピクシーらしき小さな妖精の女の子が顔をのぞかせた。

 

「(なに……ッ!?)」

 

 そして三度(みたび)驚いた。その顔には見覚えがあったのだ。

 前線が75層に移って数日後、わずか数時間だけ行動を共にしたにすぎないが、彼女のインパクトが強烈過ぎた。

 メンタルヘルス・カウンセリングプログラム、試作1号機《ユイ》。なぜピクシーをユイの顔にカスタマイズしたのかはわからないが……いや、そもそもなぜこの男はユイの顔を知っているのだろうか。コミュニティしたのはわずか3日程度で……、

 

「(え……えっ、まさか……!?)」

 

 口を開く直前、そうしたもろもろの疑問は小さな妖精によってすべて解決した。

 

「……パパ、この人たち……ケットシーの人も、新規のアカウントじゃありません! パパと同じ、《ナーヴギア》からデータを引き継いでログインしています!」

「なんだって!?」

「う、お……わかるのか、ユイ!? てかホンモノ? 『パパ』ってことは、こいつやっぱキリトか!?」

「はい、どちらも正しいですジェイドさん。……ひどいディストーションがかけられていて、言葉がわかるのはわたしだけのようですね」

 

 俺と会話できているのは小さな妖精だけ。染みついた二刀流が見当たらないが、キリトと判明した男もセリフを聞き取れないせいか首をかしげている。

 そこまで話し終えた直後だった。

 没頭する俺達のほとんど真横から、片刃の長刀を佩剣(はいけん)する和服の美人ネーチャンが「盛り上がっているところ悪いが……」と断ってから割り込んできた。

 

「我々にもわかるように説明してくれるとありがたいのだが」

 

 ごもっともなお言葉に、俺はようやく勝利を実感した。末端兵とは比較にならない影響力を持つ人物と、近づいても襲われずに会話できるこの状況に。

 今回の集団戦だけではない。

 俺達は、全ての戦いに勝利したのだ。

 

「(さて、どこから話したもんか……)」

 

 なんてのんびり考えながら、俺は長かった戦いを噛みしめるように口を開くのだった。

 

 

 

 


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