SAOエクストラストーリー   作:ZHE

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第33話 敗者の前進

 西暦2023年5月22日、浮遊城第25層。

 

 俺が剣と戦闘の世界で知り合った、掛け替えのない友に向けられる凶器。

 しかし、絶望にも近いクラインへの視線を遮る黒い影があった。

 

「やぁあああッ!」

 

 女性が刃を煌めかせた。

 ズガアアアアッ! と鳴る爆発音。クラインは真横に降り立った女神に祝福の加護を受け、ボスの剣撃は寸でのところでその軌道を変えた。

 爆音と衝撃の嵐が収まると、そこに盾を構えていたのはあのヒスイだった。彼女の《リフレクション》スキルの1つである《アブソート・エレメント》が防ぎきったのだ。

 ギリギリだった。ボスがメインアームを片手剣に変えていたからよかったものの、両手用大剣のままだったら、彼女1人で逸らしきることはできなかっただろう。

 目をつぶって死を覚悟したクラインを、1人の命を彼女は救った。

 これなら間に合う。あとは俺がクラインを守る!

 

「らあァああああああッ!!」

 

 ポーチから取り出した固形物を左手に、俺は片手で剣を持ち上げて肩に掛けた。

 上空から迫る敵の短槍。それを、肩に掛けたままの両手剣でガギィインッ! と不快な音を伴いつつも受け止めた。『片刃』であるため、左肘も添えてある。

 刃渡りがこちらを向いていない以上俺にダメージはない。しかし俺は押し負けてじわじわと体力が減っていった。

 そして、それらすべてが想定内だった。

 

「このまま押しきる! 下がれクライン!! ヒール!」

 

 パリィンッ! と、左手に握っておいた固形物、《回復結晶(ヒーリングクリスタル)》が弾けると、残り3割近かった俺の体力ゲージの最端が一気に右端まで振り切る勢いで回復した。

 ポーションを使い切った時にだけ使用すると決めていた、取って置きの回復手段だ。

 同時にA、B隊のHPに余裕のある者が全方位から突撃して最大攻撃力のソードスキルを発動すると、中にはクリティカルで命中したものもあったようで、ボスのHPはもうほとんど見えないところまで来ていた。残量はほんの数ドット。

 

『『グオオォオォオオオオオッ!!』』

 

 しかしそこまでだった。辺りに充満した悲痛な叫び声が象徴するように、ペアギルティの振り回す二本の凶器が何かの自然災害のように手がつけられないほど暴れ回ったのだ。

 ゴッガァアアアアアアアアッ!! という残響で、衝撃に耐えきれず宙を舞う。これにより安全圏にいる者はほんの数人にまで落ちてしまった。その上倒れ込むプレイヤーに奴がさらなる追撃を浴びせている。

 

「(ぐっ……これじゃあ、もう……!!)」

 

 勝つか負けるかの境界位置は神のみぞ知るもの。しかしその(はかり)は今、敗北方向へ傾きつつある。

 同時に、俺はまっさきにヒスイのことを心配してしまっていた。

 こんな薄情な男がいるだろうか。戦っているのも、危険に晒されているのも、ヒスイだけではないというのに。されど、本能に逆らわず彼女のことを目で追ってしまった。

 

「(ヒスイ……ヒスイは……ッ)」

 

 なぜ他の誰かではないのか。ボス討伐の(かなめ)である、ヒースクリフやキバオウを気にかけるべきではないのか。討伐の主軸は間違いなく彼らだ。

 だが理屈は通じなかった。彼女に万が一のことが起きたら……、

 

「(いた!! ……)……ヒスイッ!!」

 

 混戦の中で倒れている彼女を見つけると、俺は脇目も振らずに疾走した。

 悪い予感が的中している。ボスのターゲティングが彼女に向いていたのだ。

 俺はボスとの間に自分の体を無理やり割り込ませた。

 続いて大剣を横向きに構える。すると直後にバギイィィイ! と左上から斬られる感覚。

 三半規管が壊死しそうなほどの爆音。だが、左の肩に少しだけヒットエフェクトが残るだけでまだ致命傷ではなかった。受け方が悪かったことから武器の《耐久値(デュラビリティ)》も相当減っただろうが、今は相棒に我慢してもらうしかない。

 一瞬の硬直。それは、懐まで飛び込んだ人間に行える最後の邀撃(ようげき)のチャンスだった。

 声にならない声を喉の奥から絞り出しながら、その場で垂直にジャンプした。《両手剣》専用ソードスキル、空中回転斬り《レヴォルド・パクト》を発動して巨大な敵に迫る。

 巨体は目の前にあった。

 

「(これで……ッ!!)」

 

 体力の残量的にも、プレイヤーの精神的にも、攻撃のチャンスも、何もかもがこれっきりだ。この一撃が通れば奴を殺せるし、この攻撃が通らなければ俺は殺される。

 いや、それだけではない。結果的に攻略が滞り、送る必要の無かった多数の生け贄を茅場の元に送らなければならないかもしれないのだ。

 ――いや、考えるな。確実に決めきる!

 

「消えッろォおおおおッ!!」

 

 視界の中で世界がぐるぐると回転する途中、とうとう俺の刃が敵の中央、つまり『胸』に当たる部分でズガァアアアアアアッ!! と、甲高い金属音をあげながら止まった。そこに下げられていた金色の仮面にぶつかったのだろう。

 命中した。しかしそう確信した瞬間、それが間違いだったと気付いた。

 

「(こいつ槍でッ!?)」

 

 俺の眼前で相棒が斬り込んでいたのがはっきりと目視できたが、その対象は決して弱点部位である金色の仮面ではなかった。

 奴は黒い靄の中で、自分の胸の前の位置で短槍を地面と平行になるように構えていたのだ。

 リアルに忠実なこの世界では、足場が無く運動エネルギーを与えようがない空中戦などにおいては、ユニットの筋力値いかんに関わらず質量が軽い方が吹き飛ばされる。

 そして当然、俺は巨人のペアギルティよりも軽い。

 結果、俺は為す術もなく奴の左手の得物に弾かれて無防備にも再び空を舞った。

 

「(ああ……)」

 

 まぶたを閉じながら現実を直視する。

 死亡宣告に近い。

 届かなかったのだと、悟ってしまった。俺の力も、意志も、決意も届かず、また足りていなかった。

 俺がこの世界に来てすぐのこと。まだSAOが平和だったあの時、片手剣を振りながら敵を倒していた時の自信と万能感はもう存在しない。この仮想空間も茅場の世界と化してから、ひたすらのしかかる罪悪感と、底が見えない深い劣等感。

 脳内のヒーロー像をなぞれない自分を、他でもない俺自身が1番信用していなかった。

 そんな自己不信な人間が、大層なことを成し遂げようというのが間違いだったのかもしれない。

 旧友を捨て、この世界に馴染めない多くの人間を捨てた俺への罰。それを『死』という形で償えと言われたのなら、俺に選択の余地など無い。

 元々、俺の人生に有意義なものはない。現実世界で培ったキャリアなど、聞かれるだけ空しくなる。今となっては、また会おう約束した1人の友達と……もう会えなくなることだけが心残りだった。

 

「(カズ……)」

 

 時間にして一瞬だったのか、1秒だったのか、それとももっと長かったのかはわからないが、俺は死ぬ間際に友のことを思い出した。

 

「……、……、……」

 

 しかし、耳元で何かを囁かれた気がして目を見開くと、そこには俺と位置を入れ替えるかのようにプレイヤーがボスに迫っているのが見えた。

 俺は未だ空中にいる。

 では、今すれ違った人物は……、

 

「(ヒ、スイ……!?)」

 

 スローモーションのように流れる。世界が止まったように思考が加速する。

 失敗した俺に代わって、ヒスイ自身がとどめを刺すために行ったラストスイッチ。

 もし神が存在するというなら、この際何を投げ出してもいい。代償が必要なら俺がすべて支払う。

 

「(頼むよ神様……こいつだけは……っ!!)」

 

 そう願った直後。

 

「セアァアァァアアアアアッ!!」

 

 ビキイイィイイイイン! と、鼓膜を揺らすひび割れた金属音が反響した。

 響く斬撃音に遅れてドサァ、と空中から倒れ込む彼女にダメージは見受けられなかった。

 

『『ガコォ……ァァ……』』

 

 一陣の風がどこからともなく舞い降りると、ボスを覆い尽くす視界攪乱の真っ黒な霧が晴れ、8メートルの巨人の胸の中央に掲げられていた金色の仮面は縦にひび割れていた。

 そして数瞬遅れてやってくる。

 全域を震わす、バリィイイイイイン! という決定的な爆発音。

 あまりに美しい光の雨を爆心地から広範囲にばら撒きながら、ペアギルティがその姿を完全に消し去った音だ。

 上半身だけ起こし、俺はそれを呆然と眺めていた。しかし間もなくして、ボスに与えたダメージとボスによって与えられた防御値の合計分が比率で計算され、『経験値』という形でプレイヤーに割り振られた。

 この時フロアにいないプレイヤー、つまり途中で逃げ出した参加者には与えられない。それらは消滅するのではなく、この場にいるプレイヤーに攻略に貢献した割合別で()てられる。

 ようするに、途轍(とてつ)もない量の経験値が30人という少ない攻略メンバーに凝縮されて与えられたのだ。数値化され、視覚化されたその結果には唖然としてしまう。俺達は果てしない量のドロップアイテムと共に大幅な強化を受けることになった。

 遅れてやってくる現状の理解と無限に近い安堵感。

 

「ゼィ……ゼィ……終わった……んだ……」

「やっと、死んだ……」

「……ハァ……ハァ……これで……やっと……ッ」

「やった、やったぁあッ!」

 

 うわァあああっ!! と、泣いているのか叫んでいるのか喜んでいるのかも判別できない声の応酬がフロア内を包み込んだ。

 中には号泣する者や、勝利を噛みしめながらも悲痛な趣の者、またヒースクリフのように達観した表情のまま立ち竦んでいる奴もいる。しかし片膝を立てて(うつむ)きながら座り込む俺は、この結果を見て手放しに喜ぶことはできなかった。

 

「(何人……死んだんだろうな……)」

 

 汗がひどい。もう頭をあげる元気もなかった。

 俺と同じことを考えている奴もいるようで、次第に空気は重くなっていった。ついには1分とたたずに大声で喜ぶプレイヤーはいなくなってしまい、しばらく数人の(すす)り泣く声だけがこの場を支配する。

 だが静寂を遮る声がした。

 

「討伐隊の諸君」

 

 変わらぬ声調に怖気すら走る。この声だけで発言者が誰か理解しながらも、俺を含む全員が(こうべ)を上げて彼を注視した。

 人間味のない声で、構わず彼は言葉を続ける。

 

「厳しい戦いだった。しかしよく生き延びてくれた。この勇姿は今後長きに渡り、多くのプレイヤーの中で称えられるだろう。今回、私に従ってくれた諸君らの奮闘に心から感謝する」

 

 それでも彼は「しかし」と言葉を繋いだ。

 

「そうであるためにも、諸君らはここで歩みを止めてはならないはずだ。攻略組として提示せねばならない。失った戦友を弔うこともするだろう。だが、今しばらく、そのことを忘れる義務がある」

 

 まくしたてたそれを傾聴していた男が、堪えきれずに片手を上げながら異論を表明した。

 

「悪いがいいかのう? ……あんたら血盟騎士団は異常や。……ワシはもうごめんだ。回りくどいのは無しじゃ……アクティベートはあんたらでやってくれ。正直……ワシはもう嫌だ……ボス戦もこれっきりにする。復讐はした……もう攻略にも、参加しない」

 

 甲冑のバイザーで顔は見えないが、初老の男性だったらしい。彼はそう言って締めくくると、再び(うつむ)いて喋るのを止めた。

 ヒースクリフはその後も激励を二、三言飛ばすが効果が薄いことを悟り、団員を集ってアクティベートに向かっていった。

 フロアは彼について行かなかった1人の騎士団員を含み、20人近くのプレイヤーがまだ座り込んだままの状況になる。俺もその1人で、『自分の命が最優先』であるはずのソロプレイヤーも――今回の再攻略時に逃げなかった3人のことだ――みんな動こうとはしなかった。

 ヒスイはともかく、フードをかぶりレイピアを持った根暗なソロの男は、俺と目が合う寸前に顔を背けてしまった。感じの悪い人間、とは思わない。彼も仲間を失ったかもしれないからだ。今は慰め合う気にもならないのだろう。

 しかし、またも意外なことに俺は形容しがたい飢餓感に襲われると、なわばりを徘徊する獣のように殺戮場所を求めて立ち上がった。

 座り込む奴らに向けて演説じみた感覚を味わいながら、声を無理やり絞り出す。

 

「俺は行くよ……まだ25層だ……」

 

 それだけを言う俺も、思い出したように立ち止まると、向きを変えてクラインの目の前に立って「無理はすんなよ」とだけ残した。

 そして今度こそ上層階への階段を目指す。

 部屋の奥には、ボスを倒すことで解放される扉が異彩を放っていた。そのまま扉をくぐると次層への往還階段を進む。踏みしめるように上っていたからか、はたまた俺の心境がそうさせたのかは定かではなかったが、螺旋状に巻かれる階段はいつもより格段に長く感じた。

 しかし虚ろな目のまま上っていると、いつの間に近づいていたのか真後ろから誰かに抱きつかれた。そのまま腰から手を回されて動けなくもなる。

 

「なっ……おい……!?」

 

 強引に意識を現実に引き戻された俺は、さすがに我が身に降りかかった突然の現象に対処すべく、少し苛立ちながらも歩くのを止めて振り向こうとする。

 しかし、そうする前に確信にも近い解を得た。

 

「ひ、ヒスイ……なのか?」

 

 俺にハラスメントをはたらくプレイヤーはヒスイだった。場違いではあるが背中に確かな柔らかい感触がある。

 しかし、彼女が攻略意識を取り戻したことは理解できるが、俺にだきつく理由はまるで不明だった。何もかもが突然すぎる。

 呼びかけにもしばらく答えようとしなかった彼女の体温を背中で感じると、悔しいほどに鼓動が速まるのを感じた。しかも俺の視界の端にハラスメントコードが出現していない。ということは、俺のバイタルは彼女のハグに対しまったく不快感を持っていないということだった。

 

「なあヒスイ……」

「なんで、いつもあなたなの……」

 

 しかし我慢できなくなったのか、ついには吐き捨てるように彼女から口を開いた。俺の頭は随分とお粗末だが、この時ばかりはボス戦における最後の一瞬の話だろう、と理解できた。

 だから俺はヒスイからゆっくりと離れると、改めて正面を向いて彼女に話しかける。

 

「理由なんて……ないだろ。俺は討伐隊のメンバーとして仕事をした。救われたとしても、それはお互い様だ」

 

 苦しい言い訳だった。

 彼女はそんな俺を見透かしたかのように、言葉を否定する。

 

「いいえ、違うわ。あなたはいつもそう……お互い様、お互い様って。でもあなた言ったじゃない。……ソロをしているなら絶対、『自分が死なない』選択をするべきだって。ソロをする理由があるなら、生き残ることを優先しなきゃダメだって。なのにあなたは……ジェイドはいつもあたしに限ってそれを破る。さっきもそうよ」

「……うっ……」

 

 俺は目の前が真っ黒に染まる錯覚を覚えた。

 いつもより魅惑的に響く彼女の言葉を1つ1つ反芻(はんすう)していくと、どうしても冗談やからかいで言っているのではなく、本気の声色だったからだ。

 同時に、卒倒しそうなほど目の前の女性を愛おしく、抱きしめたい欲求に駆られた。

 しかし幸か不幸か、俺は直前で正気に戻ることができた。

 踏み出しかけた足を引っ込め、彼女の潤んだ瞳を覗き込む。俺の思い過ごしで勝手な妄想かもしれないが、俺は何となくヒスイが言わんとする言葉をトレースすることができた。だが、こんな俺に思ったことを口に出す権利はなかった。

 まだ服の裾を引っ張るヒスイの手を握り返しながら離すと、1歩だけ後ろに下がって互いの顔が確認できる位置で止まる。俺は極度に緊張した中、できるだけ相手に悟られないように言葉を引っ張ってくる。

 

「ああ〜……ほら、たまたまだって。あん時は必死だったし、ヒスイだって……俺のこと、何度も助けてくれたじゃねぇか……」

 

 度胸なし。甲斐性なし。

 精神との戦いに敗れ、目をきょろきょろと忙しなく移動させながら情けなさすぎる逃避行を実行した。何とも無様であったが、その手のスキルを上げてこなかった俺には限界だ。もう無理である。

 もちろん、勘のいいヒスイは追い討ちをかけようとはせず、俺の意を汲み取って若干以上に軽蔑の目を向けつつ1歩引き下がる。

 

「……はあ、せっかく。……まぁいいわ、とにかくあの時はありがとう。それにしても、あたし結構助けられてるわね。そこはホントに反省しなくちゃ」

 

 ヒスイはそれだけを言うとくるりと向きを変え、今来た道を逆走しだした。

 

「意気地なし……」

「ん……なんて?」

 

 小さく呟いた彼女の言葉が聞き取れず聞き返してみたが、聞き取らせる気がなかったのか答えてはくれなかった。

 

「何でもないです~。それより、あたしはあの部屋に残るメンバーを叱ってくるわ。あたしの声聞けばやる気も出るでしょ、たぶん……」

「そういや、ヒスイは『そういうこと』も含めてソロやってるんだったな。まあ、止めないけど今回だけは厳しいと思うぜ」

 

 ヒスイは戦いで傷ついた人の心のケアもしている。いつしか芽生えた、彼女なりの責任感でやっているのだろう。

 しかし、この戦いばかりは死者を出しすぎている。普段はアスナやヒスイが最前線で激励を飛ばすと、攻略組集団はドーピングさながらな活気と熱意を見せるが、この瞬間に限ってそれはあり得ないはずだ。

 レイドが崩壊してから再攻略時にボスに牙を剥いたプレイヤーの中には、『復讐』を目的にペアギルティに対峙していた連中だっていた。そして彼らは、復讐を成し遂げた後の無気力感に襲われるか、あるいは深い喪失と絶望を味わっているだろう。

 俺がこの場でヒスイを突っぱねたのも、辿れば理由は同じである。

 そう。仲間を持つということは、同時に弱点を持つということにもなりえるのだ。

 

「(でもカズ達は絶対に守る……)」

 

 誰にでも分相応という境界がある。喫緊(きっきん)の目標はカズを守り切る力を得ることである。残念ながら彼女ではない。

 そして同時に、それを為すにはどうあるべきかを考える。身の丈を弁える。少なくとも、守りたい者を抱えているのなら、ここで後ろを向いてサジを投げるわけにはいかないだろう。

 俺はスーパーマンではない。救える人には限度がある。まだ実感は湧かないが、集団行動をするならいつかその覚悟を持たなければならない。

 

「(やってやるよ……)」

 

 この地獄を終わらせる、そのための攻略組だ。ヒスイだって、俺の前を進むヒースクリフ達だって、それを目標に自分に打ち勝った。今後の攻略に遅れが出たとしても、少しでもその時間を短くするべく、やれる奴がやれることをすればいい。

 だから俺は次層への螺旋階段を上る。

 新しい街での新たな戦いは、100層を迎えるか、俺が死ぬまで終わらないのだから。

 

 

 

 


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