黄昏の姫と緑の勇者:転生者チート編   作:nocomimi

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世界の裏側を通って敵陣を突破し幽霊を一匹残したまま先に進んだった

砂漠の上空から照らす太陽が熱い。びしょ濡れだった僕の身体はすっかり乾いていた。

 

僕はミドナに頼んで狼に変身させてもらうと、東に進路をとって走り始めた。

 

左手に深い谷間が見える。それに沿ってしばらく進むと、谷間が一旦切れ、新しい谷間が再び現れる。

 

すると、砂地の中から何かが躍り出てきた。小柄な人間の身長ほどの長さでムカデとも芋虫ともつかない細長い身体をしているが、頭部のかわりに異様に大きな牙が三本向かい合わせに生えている。

 

横に飛びのいてそいつの攻撃を躱した。次々とその化け物が砂から飛び出してくる。だが僕は構わず、左右に進路を小刻みに変えて攻撃を躱しながら進み続けた。

 

やがて二つ目の谷間が消えると、僕はやや北に進路を変えた。その頃には芋虫の化物どもは出てこなくなっていた。

 

はるか北東の方には、見張り櫓や焚火のある宿営、さらにその先に巨大な建造物が見える。

 

やがて前方が、下に降りるなだらかな崖となった。僕はそこを降りると、見張り櫓のほうに向かっていった。

 

二つペアで立っている見張り櫓の上にはブルブリンの弓兵が陣どっている。その間にブルブリンどもの宿営があった。巨大猪が二頭立っていてその周囲にも鬼どもがたむろしていた。

 

その向こう側には、建造物群に向かう唯一の道があった。その左右は高い岩壁になっていて、道は頑丈な木製のバリケードで塞がれていた。バリケードの左右にも見張り櫓が一本づつ立っているが、その上は空席のようだ。

 

僕が近づくいていくと弓兵たちが警告の声を上げ、火矢を放ってきた。たちまち宿営にいた鬼どもが巨大猪に跨る。

 

だが僕は彼らを無視し、奥へ進む道を塞ぐバリケードに向かってダッシュした。バリケードの左端に到達すると、ミドナに頼んで人間に戻してもらい、鎖と鉄球を振るってそこに立っていた見張り櫓を粉砕した。

 

鎖と鉄球をミドナに預け、櫓のあった場所に出来た隙間からバリケードの中に入り込む。だがその先にももう一層のバリケードがあった。

 

僕はミドナに頼んで狼に変身させてもらうと、二層目のバリケードの左端に無理やり身体をねじ込んだ。狭すぎて容易には先に進めない。だが僕は、頑張ればここを通れることを知っていた。

 

背後からは、猪に乗った鬼どもの喚き声が聞こえる。だが一層目のバリケードに阻まれてここまではこれないようだ。

 

しばらく奮闘していると、僕の身体はとうとう二層目のバリケードと岩壁の間をすり抜けた。

 

僕はそのまま道を真っすぐ進んだ。道は人の身長ほどの高さの段差が刻まれている壁で行き止まった。段差を登れば先に行けるようになっているのだ。

 

僕はミドナに頼んで人間に戻してもらうと、段差をよじ登って壁の上に登った。そこからは、左右両方に行く経路と、直進する道がある。

 

僕は迷わず直進した。道を進んでいくと、短いトンネルになっている。トンネルの向こうの開けた場所が見えるところまで来ると僕は足を止めた。

 

処刑場のエントランスだろう。百メートルほど前方に、広大な敷地を覆う石造りの壁が横たわっている。中央には入口らしき巨大な木の扉がある。

 

それら全ての背後には恐ろしいほど巨大な建造物が聳え立っていた。また石造りの壁の向こう側やや左に櫓がある。

 

その途端、櫓の上にいた鬼の弓兵が警戒の喚き声を上げた。

 

このまま突っ込んで行ってもいいが、それでは面白くない。

 

僕は、視界の左下に意識を集中すると、地図を思い浮かべながら同時にミドナに話しかけた。

 

ミドナを呼び出しながら地図の中の、ハイリア湖畔の青い円に意識を向け、ワープしたいと念じた。

 

すると、ミドナが現れ、「どうした、リンク?」と返事をした。

 

雪山の麓で行ったのと同じ技だ。成功した。

 

僕はなんでもないとミドナに合図すると、剣を抜いた。

 

そして後ろにバックフリップした。一回。二回。三回。四回。

 

そして、次は右へサイドホップを二度繰り返す。

 

最後に、後ろに三回バックフリップした僕は、わずかに後じさりした。

 

その途端に僕の身体は砂地をすり抜け落下した。

 

同時に僕はジャンプ斬りを放った。

 

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目の前には、信じがたい光景が広がっていた。

 

下方と左右には見渡す限りの虚空がどこまでも広がっている。

 

そして上前方には、砂漠の処刑場と思しき巨大な建造物が空中に浮いているのだ。その手前に位置している、先ほど見た鬼どもの陣地も同様だ。

 

やはり、この世界の全ては虚空の上に浮いているのだ。

 

僕は、この世界の裏側とも言うべき光景を眺めながら、ジャンプ斬りの慣性力により前進しつつ落下していった。

 

だが僕は慌てなかった。心の中に地図を思い浮かべると、自分が北方に向かって確実に前進しているのがわかった。

 

無限とも思える時間が過ぎていった。だが実際には数十秒もしなかっただろう。

 

僕は気が付くと、石壁に囲まれた二十メートル四方ほどの部屋の中に入っていた。部屋の入り口の、粗い造りの木の扉がガチャリと動く音がする。

 

種を明かせば、僕は虚無空間の中をジャンプ斬りの慣性力で前進し続け、ある地点の直下にたどり着いたのだ。

 

そして、高度を問わず、その地点にたどり着いたら、僕はその部屋の中へ自動的に移されるということを経験的に知っていた。

 

ここで僕は「スキップ」を念じた。

 

次の瞬間、薄暗い部屋の前方に巨大な鬼が巨大な戦斧を構えて立っているのが見えた。近くには、ブルブリンの乗るような巨大猪が横たわっている。

 

目の前にいるのは、キングブルブリン。鬼の王だ。

 

角の生えた兜を被った肥満体の巨漢。

 

オルディン大橋から叩き落したのに、生きていたのだ。

 

僕は懐かしさに胸が一杯になりながらも、すばやく相手に走り寄った。懇ろに再会の挨拶をしてやらねば。

 

「ミドナ、鎖と鉄球を!」

 

僕が合図するとたちまち手に鎖が握られた。それを振り回すと、飛んで行った鉄球がキングブルブリンの頭にぶち当たる。

 

鬼の王が苦し気な吼え声を上げた。鎖をぶん回すと、続けざまに鉄球が鬼の王の頭を直撃し、そのたびに彼は吼え声を上げた。

 

それが二十回、あるいは三十回ほど繰り返されたろうか。

 

気の毒になってきてそろそろやめてあげようかと思った瞬間、キングブルブリンは戦斧を取り落とし膝をついて地面に座り込んだ。

 

がっくりとうなだれた鬼の王は、しばらくするとようやく体を起こし、僕のほうを向いて「オボエテロ」と呟くと、足を引きずりながら部屋の南側にある落とし戸に向かっていった。

 

大鬼が前に立つと落とし戸が開かれた。手下のブルブリンどもが操作しているのだろうか。キングブルブリンは振り返りもせず出ていき、落とし戸が再び閉じられた。

 

次の瞬間、メラメラと火が燃える音がした。キングブルブリンが出ていった落とし戸から炎があがり始めている。

 

それだけではなかった。入ってきたときに使った大きな木の扉が燃え上がっていた。可燃性の液体でもかけたのか、天井に届かんばかりの火勢だ。石造りの壁のそこここに開いている小さな覗き窓からも炎が噴き出していた。

 

僕は慌てずに、戦いが始まったときに横たわっていた大猪を探した。

 

その動物は部屋の隅に静かに佇んでいた。僕は走り寄ると猪に跨り手綱を鳴らして発進させた。その鼻先を北側の木の扉のほうに向け、踵で激しく猪の脇腹を蹴る。

 

猪は身体を反らせて後ろ脚で立ち上がる。次いで醜い鳴き声を上げながら木の扉に突進した。

 

扉は紙細工のように破られた。次いで、大猪はその先にある回廊に突進した。バリケードが次々と破壊される。

 

大猪は二百メートルほど走るとやっと突進をやめた。僕は手綱を引いて猪を停止させると、目の前に現れた建造物を見上げた。

 

いつの間にか、日が暮れかけている。暗くなり始めた空に浮かぶ巨大なシルエット。

 

目の前には壮麗な円柱の列に挟まれた長い階段があった。その終端に小さな前庭があり、正面の突き当たったところに建物の入り口がぽっかり口を開けている。その後ろには闘技場のような施設を思わせる円形の壁が見える。

 

僕は目の前の階段を登り切ると、建物の入り口から中に入った。中は下り階段だ。

 

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階段を降り切ると目の前が開け、石壁に囲まれた五十メートル四方ほどの空間に出た。

 

以前は立派に立ち並んでいたであろう石の柱の残骸が無残な様子でそこら中に倒れている。正面奥の突き当りにはがっちりとした格子で閉ざされた入り口がある。その上にはハイラル王家の紋章が刻まれていた。だが床はどこもかしこもすっかり砂だらけだ。よく見ると、建物の外から細かい砂が流れ込んでいるのか、ゆっくりとした速度ではあったが砂地が動いていた。

 

柱の残骸の転がっている砂地の真ん中には蟻地獄のような窪みができていて、そこに砂が流れ込んでいる。

 

僕はミドナに声をかけ狼に変身させてもらうと、素早く砂地を前方に渡っていった。

 

途中蟻地獄に差し掛かったが、その縁ギリギリをなんとか通り過ぎて無事通過した。

 

正面奥の扉から伸びていた廊下の残存部分に一旦上がる。砂地の中には例の芋虫お化けどもがうごめいているのがわかったからのんびりとはしていららない。

 

正面扉の方角の左手には、金属製の高い柵によって隔てられた石の床がある。柵は南の方が切れているので、そこから進入していくことは可能だ。

 

その奥には、鎖のつながった巨大なハンドルスイッチが半ば砂に埋もれているのが見えた。鎖は扉の横の壁の中に続いている。

 

僕はそのまま目の前に砂地に飛び降りると、その石の床まで走った。砂地から目的地に這い上がる。

 

僕はミドナに話しかけて人間に戻してもらうと、手にクローショットを嵌めて素早く石造りの床を前進した。

 

左右の砂地からゴソゴソ音がして、小人のような大きさの骸骨どもが這い出てくる。手には槍を持っていた。

 

だが僕はそいつらに構わず、正面の壁際から伸びた鎖の先にある大きなハンドルに向けてクローショットを撃ち、それを手元に引き寄せると、素早くそれを拾い上げて思い切り引いた。

 

すると重々しい作動音がして、正面入口にかけられた扉が両開きにスライドして開いた。

 

僕はすぐにハンドルを手放し、小型骸骨どもが襲ってくるのを回避しつつ東側の砂地に飛び出した。

 

素早く前転すると、正面入り口から伸びた石床の残骸にはい登り、扉が開いたことで出現した階段を駆け登った。

 

左右の壁には燭台がしつらえられて今も炎が点されている。階段を登り切ると、左右に小さな部屋があり、正面には鎖をかけられ錠前で閉ざされた扉があった。

 

僕は左の部屋をまず調べた。壺が散乱しているほか、巨大な甕に油が満たされている。質の良いカンテラ油のようだ。僕は自分のカンテラをそこに沈めて油を補充すると、今度は右手の部屋に入った。部屋の中ほどがまた砂だらけになっているが、向こう岸には立派な木製の箱があった。

 

床から砂地に飛び出すと、思い切って前転した。若干は距離が稼げた。立ち上がると全力で脚を動かして前進し向こう岸に辿り着いた。

 

砂地から這いあがって箱を開けてみると、金属製の小さな鍵が入っていた。だが鍵を仕舞って踵を返そうとした途端何かがざわつく音が聞こえてくる。

 

足元を見ると、木の葉くらいの大きさの黒い虫がこちらに群がってきている。何匹かは既にリンクのブーツに取りついて上に登ってきていた。僕は剣を抜くと回転斬りの要領で身体を回転させた。虫たちが振り落とされて床に落ちる。

 

僕はその隙に砂地に飛び込んで前転し、立ち上がるとダッシュした。両脚とも太腿あたりまで埋まりながらもどうにか対岸に辿り着いた。

 

鍵を取り出すと正面の扉に向かう。果たして、鍵は錠前にピタリと合った。鍵を捻ると錠前が開いて鎖が地面に落ちた。

 

扉を押し上げて向こう側に出る。

 

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そこは最初の空間と同じくらいの大きさだが、天井が低い。明りがなく極端に暗かった。カンテラを取り出すと点火して前にかざし、素早く前転しながら部屋の奥に向かう。

 

この部屋ではもたもたしていると小型骸骨どもが次々に湧いてきて面倒なことになると僕は経験的に知っていた。

 

早速砂地の中から小骸骨戦士たちがわらわらと湧き出てきていた。構わず部屋の奥に進むと、突き当たりの扉の前に頑丈そうな格子がかかっているのが見えた。その左右に篝火の台がしつらえてある。

 

まず右手の篝火台に歩み寄りカンテラで火を点ける。そして素早く左手の篝火台に向けて前転し、これに火を点ける。

 

その途端にガラガラと音がして扉を塞いでいた格子が引き上げられた。僕はそのまま左手に前転しつつ小骸骨どもの群れの裏を回り込み、再び奥の扉に近づき、素早くそれを押し上げて向こう側に出た。

 

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扉の向こう側は百メートル四方ほどの広い部屋だった。薄暗い中にも、正面に登り階段を経由して大きな入り口があるのが見える。その左右に二本づつ、計四本の燭台があった。燭台の上には青白い炎が点されている。部屋の各所に五メートルほどの高さの石の立像が立っている。東西両方の壁にも扉がしつらえてあった。階段とその周囲は贅を凝らした装飾が施されており、立像も腕のいい職人の手によって滑らかに仕上げられた大理石製のようだ。

 

すると、正面に開いた入り口から何かが近づいてくる物音がした。人のざわめく声のようではあったが、明らかに雰囲気がおかしい。苦しみ呻くような、何かを呪うような暗い声の群れだ。それとともに、奥から空中をカンテラが四つ浮遊しながら部屋に入ってくるのが見えた。

 

この世ならぬものが来たのだ。四つのカンテラは四本の燭台の上にそれぞれ浮遊していくと、小さく一回転し燭台の上の炎を奪い取るようにして自らの中に吸い込んでしまった。それと同時に、奥の入り口の上の天井から格子が降りてきた。格子は頑丈そうなもので、みるみるうちに入り口をすっかり塞いでしまった。

 

四つの青白い炎のうちの三つは、やがてその場所から散るように部屋の外に浮遊していってしまった。だが残り一つがこちらに向かってくる。

 

しかし、僕はその青白い炎をフルシカトすることにした。

 

本来なら、僕は狼になってこいつ(幽霊)と戦わないとならない。そして、計四匹の幽霊を倒さねばならないことになっているのだ。

 

ところが、僕はそれを一部省略して先に進む方法を知っていた。

 

僕は右手の壁際に進むと、東側にあった扉を押し開けて外に出た。

 

立っている場所から数メートルで途切れた石の床の先に、奥行十数メートル、幅三儒メートルほどの流砂だらけの中庭があった。

 

中庭の右手は高い建物の壁があり、正面には二メートル以上の高さの通路が横向きに通っている見える。中庭の左手も到底乗り越えられそうにない高い欄干が進むのを阻んでいる。

 

また左手には、壁の中を通る通路が見えたが、僕はこの通路は行き止まりであることを知っていた。

 

ただ、中庭の右手奥のほうに、流砂に呑み込まれるのを免れた大きな石の柱の残骸が手前に向かって倒れている。

 

僕はミドナに頼んで狼に変身すると、砂地に飛び込んだ。正面にある蟻地獄状の窪みを回避しつつ右に進んだ。足が沈む前に素早く前進し、石の柱に向かう。

 

石の柱の前に到達したところで僕はミドナに再び合図し人間に戻った。そして、こちらに向かって倒れた石の柱の天辺に素早く手をかけてよじ登ると、対岸の石造りの通路に向かって跳躍した。

 

果たして、両手の先が通路の縁に引っ掛かった。僕はなんとかそこに這い上がると、周囲を見渡した。

 

通路の左手は巨大な円形シャンデリアに阻まれている。前方には同じような砂地の中庭があり、その向こうには別の建物の壁がある。こちらに面した扉から通路が途中まで伸びたあと崩壊している。

 

その扉のところまで行きたいが、普通に砂地に入ったのでは到底たどり着けないだろう。

 

僕は再びミドナに頼んで狼になると、目の前の砂地に降り立った。石造りの通路の足元を左手に進む。途中にあった蟻地獄状の窪みの縁を注意深く通り過ぎると、シャンデリアのある場所の向こう側に、砂地と同じ高さに石床の残骸が少し広がっているのが見えた。

 

僕はその石床の残骸まで辿り着き、這い登って一息ついた。ここまで来れば安心だ。

 

石床の残骸から左、すなわち元来た方向を見ると、石造りの通路はそこでスッパリと切れていて、その奥には二メートル四方ほどの四角い檻のような箱が置いてある。

 

僕は通路の切れた場所に入り込み、その檻を乗り越えて向こう側に行くと、ミドナに頼んで人間に戻った。次いで、檻に手をかけて東側に押していく。檻は少しづつ動いていき、最終的に通路の欠損部分にぴったり嵌った。

 

僕は檻に手をかけてよじ登った。左手、すなわち檻に接した北側の壁から、鎖の繋がった金属ハンドルが出ているのが見える。僕はハンドルに手を掛けると、それを勢いよく引き始めた。すると、その動きに応じて、背後の巨大シャンデリアを天井から吊っていた鎖が少しづつ巻き上げられ始めた。

 

鎖を引きつつも、僅かに自分の位置を西に向けて動かした。というのも、東側の中庭にはあの芋虫お化けどもが沢山いて、うっかり近づくと喰いついてくるということを経験的に知っていたからだ。

 

鎖をきっかり十二回引くと、ガチャリと音がした。背後のシャンデリアは通路の上の一定の高さで固定されている。

 

僕はハンドルを手離し、素早く通路を南に向けて進みシャンデリアの丁度真下に来て止まった。するとガラガラと音がしてシャンデリアが再び降りてくる。僕はちょうどシャンデリアの底面に空いた穴の中にすっぽりと嵌る形になった。

 

シャンデリアの内部をよじ登り、東側の縁まで行くと、先ほどは行きたくても行けなかった東側の建物の扉口から伸びてきていた廊下の縁がだいぶ近くに見える。

 

僕はそこから跳躍し、目的の廊下に飛び移った。そして前進して扉に行き着くと、扉を押し上げた。

 

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先に進むと短い廊下の突き当たりが木の柵で塞がれている。剣の一撃で柵を壊して中に入ると、直径五メートルほどの円形の狭い部屋だ。

 

部屋中に骸骨が散らばっている。中に進むと隅にあった人骨がひとりでに動き、急激にまとまり始めている。すぐにその人骨が人の形をとって立ち上がった。さっきのちっこいのとは違い大人の大きさだ。左手に円盾を、右手に剣を持っている。しかも肩に防具までつけている。

 

それと同時に、右手の奥にあった扉に上から格子が自動的に下がってきた。閉じ込めるつもりらしい。

 

だが僕はミドナに頼んで鎖と鉄球を出してもらった。鎖をぶん回して鉄球を叩きつけると、骸骨は一たまりもなく崩壊した。それと同時に、扉を塞いでいた格子もあっさりと上がった。

 

僕は鎖と鉄球をミドナに預けると、南側の扉を押し開けて向こう側に出た。

 

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その先は階段になっていて、登った先にはところどころが砂地になった二十メートル四方ほどの部屋があった。突き当りの壁には一面に不気味な偶像が彫られており、その前に六本の篝火台がある。一本が手前中央に、五本が壁際に立てられていた。

 

砂地を渡って手前の篝火台に近づくと、カンテラを取り出して火を点け、篝火台に点火した。次に奥の右端の篝火台に近づき点火する。これは暗記ゲーだ。

 

思ったとおり機械の作動音がして西側の仕掛け壁が動き始めた。壁がすっかり開いてしまうと、僕は砂地を横切って新たに出現した進路に進んだ。

 

突き当りにあった扉を押し上げて向こう側に出ると、五十メートル四方ほどの広い部屋だ。壁にはずらりと青白い光を放つカンテラがかけられている。僕はミドナに合図してすぐ狼に変身した。

 

部屋の中央まで進むと、感覚を研ぎ澄ませる。左手から強い気配がする。感覚を集中して見ると、やはりそこにいた。敵もこちらに気づき、鎌を持ち上げると呪詛の言葉らしき何かをつぶやき、空中を浮遊しながら近づいてきた。だが僕が身構えた瞬間、敵の数が一挙に四つに増えた。

 

四体に増えた敵はリンクの周囲を回り始める。だが僕は慌てなかった。焦らず待ち、包囲網が狭まると同時

にミドナに合図して結界を出させた。

 

幽霊たちが威嚇の声を上げながら武器を振り上げる。その時、白い幽霊たちの中で青色が濃い奴が一匹だけいた。そいつが結界に捕えられるのを見計らって僕は力を解放した。

 

魔法の力で急激に方向を変え真っすぐ敵に飛び掛かった僕は敵の身体の中心に強い一撃を加えた。

 

手傷を受けて倒れながらもすぐに立ち直った幽霊は、また姿を四つに増やして僕の周囲を回り始めた。

 

だが同じことだ。僕は落ち着いて待つと、奴らが回転するのを終えてこちらに迫ってくると同時にミドナに頼んで結界を出させ、青っぽい奴を捕えた瞬間に攻撃を仕掛けた。僕は跳躍して飛び掛かり、本命の敵に一撃を与えて叩き落すと、上からのしかかってその身体の中心にあった魂の塊を奪い取った。幽霊は断末魔の声を上げながら萎んでいく。その手に提げられていたカンテラが割れた。そこから青白い炎が放たれ、どこかに飛んでいく。

 

僕はさらに、そいつの残していった服から漂う何とも微妙な臭いを嗅いで記憶した。

 

とりあえずここはこれでよし。

 

僕は部屋の北側に進みそこにあった扉をミドナに開けてもらって外に出た。

 

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そこは、さっき通過した一つ目の中庭を見下ろすバルコニーのような場所だった。最初に白い光を四つ見かけた部屋のある建物に面している。

 

僕は下に飛び降りると、砂に沈まないよう素早く中庭を横切り、中庭の西側に残った床の残骸に這い登った。

 

だが、ここから先も僕は真正面からここを攻略することなど決してしないと決めていた。

 

僕は一旦、目の前の扉に近づいてミドナにそれを開けてもらった。すると、最初に倒した幽霊のカンテラから飛んで行った青白い炎が部屋の中に入り、それがもともとあった燭台の上に戻った。

 

僕はまたミドナに扉を開けてもらって外に出た。そして、立っている場所から見て北側にある、壁の中に入る通路へ進んだ。本来なら行き止まりだが、さっき檻を動かしたことで通れるようになったはずだ。

 

通路の奥に進み、翼の生えた頭蓋骨のお化けがうろついているのを無視して道なりに右折する。さらに突き当たると予想通り右に出口が開いていた。

 

そこから出ると、右側に半分崩れた階段がある。西側の建物の二回に登るようになっているのだ。僕は階段を駆け登り、突き当たりを左に進んだ。すると右手に扉がある。扉をミドナに開けてもらうと、その先は最初に四つの白い光を見た部屋の二階部分だ。

 

足元は少し先に張り出した足場で、ちょうどジャンプすれば届くくらいの距離に巨大シャンデリアがぶら下がっている。

 

僕は助走をつけて跳躍しシャンデリアに飛び移ると、真ん中の穴から落ちないよう注意しながら向こう側に回り込んだ。

 

その先には、さっきまでいたところと同じような張り出しが西側の壁の二階部分から出ている。壁には扉もあった。僕はシャンデリアの端からジャンプしてその張り出しまで飛び移り、扉をまたミドナに押し上げてもらった。

 

鎖が落ちる金属音がした。(実はこの扉は向こう側が鎖と錠前で施錠されているのだが、なぜか逆方向からは簡単に開けられるのだ。)

 

 

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向こう側に出るとその先は真ん中が窪んで低い床になっている部屋だ。廊下が窪みの右手を回り込み、左手に曲がっている。

 

僕はその部屋にはろくでもない幽霊鼠がいることを知っていたので、ダッシュして窪みに降りると前方にあった階段から再び廊下に戻り左側に走り込み、行き着いた先の扉をまたミドナに押し上げてもらって外に出た。

 

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その先にあった廊下を進むと、壁に突き当たってからやや左に折れ、また直進している。その角っこあたりに、ひょろりとして赤い涎掛けみたいなものを首につけた骸骨が立っていた。手には太い長剣を手にしているが、明後日の方向を向いているところを見ると僕には気づいていないようだ。

 

だがそいつの向こう側には小骸骨どもが何匹かいて、僕の方を向くとゴソゴソと歩いてきた。僕は背の高いほうの骸骨の背後でミドナに合図して結界を出させると、思い切り力を溜めて解放した。

 

僕は弾かれたように跳躍して周囲にいた小骸骨を一気に殲滅し、さらに赤い涎掛けの骸骨にも致死的な一撃を与えて着地した。

 

骸骨どもが全て倒れると、僕は意識を集中して突き当りの右手の角を嗅ぎ回った。床板が一メートル四方ほど欠損砂がかぶっている箇所がある。そこを掘ると、金属のハンドルスイッチが出てきた。

 

それを咥えて引っ張ると、ガチャリと音がした。左手にあった壁がガラガラと開き始めた。隠し部屋だ。

 

部屋の中を凝視すると、何か浮遊するものが見える。幽霊だ。幽霊は手に持ったカンテラを持ち上げると空中を漂いながらこちらに迫ってきた。

 

僕はミドナに合図を送り、結界の中に敵を誘い込んだ。幽霊がいましも一撃を加えようと武器を振り上げた瞬間に襲い掛かる。痛撃を加えられた幽霊がよろめく。僕は間髪を入れずもう一度ミドナに合図した。体勢を立て直した幽霊がこちらに向き直った瞬間にはもう結界が広がっていた。

 

僕はわずかに敵に近づくと、力を解放した。空中を飛び敵の身体の中心に一撃を与える。幽霊が墜落すると、僕は上にのしかかって魂の塊を食いちぎった。

 

幽霊は悲鳴を上げて萎んでいく。そのカンテラが割れて青白い炎が飛び出した。

 

僕は踵を返すと南に進んだ。突き当りの扉を開けて進む。意識を集中しながら廊下を走り、幽霊鼠に足止めされないよう、そいつらが飛んでくる度に回転攻撃で弾き飛ばした。部屋中央の窪みを回り込む廊下を走り抜けて東側の扉を開け向こうに出る。

 

二つ目の青白い炎が宙を飛び、もう一つの燭台の上に戻っていくのが見えた。

 

僕は一階に飛び降りると、意識を集中し鼻を効かせながら西側の壁の扉の左あたりを探った。そこにあった砂だまりを前足で掘ってみると鎖で壁の向こうと繋がった鉄製のハンドルが出てきた。ハンドルを口に咥えると引っ張った。

 

ガタンと音がし、西側の扉のすぐ前の床が段刻みに落ちていく。やがて地下に向かう階段が出現した。西側の扉のちょうど下に位置する場所に導いているようだ。

 

僕はその階段に入た。突き当りに扉がある。ミドナが扉を押し上げてくれたので向こう側に入る。

 

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そこは直径十メートルちょっとの円形の部屋で中央に円柱がある。

 

だが入ってきた扉以外には進めそうな出口はない。だが、中央の柱をよく見ると、左側の床近くの高さから大きな直角台形のハンドルのほうなものが突き出ている。

 

僕は近づくとそのハンドルを頭で押してみた。果たして手ごたえがあり、ハンドルが動くとガタンと音がして円柱が回転した。すると部屋の壁の北側の一角が開いた。隠し部屋があったのだ。

 

だが、頭蓋骨の左右に蝙蝠の羽が生えたような化け物が空中を飛びながら近づいてきた。邪魔な奴だ。僕はミドナに結界を出させてそいつを捕え、跳躍し一撃で噛みついて屠った。

 

だが、先ほど出現した隠し部屋の中に人影が立ち上がるのが見えた。あの涎掛けの骸骨人間だ。長剣を引き摺りながら近づいてくる。僕は距離を取るとミドナに頼んで人間に戻った。

 

剣を抜くと、僕は素早くそいつに駆け寄ってジャンプ斬りをくらわした。だがそいつが耳障りな声で叫ぶので、一瞬体が動かなくなってしまった。

 

その隙にそいつが大剣を振り上げてきた。まったく卑怯な奴だ。僕はすんでのところでサイドホップして回避すると、回転斬りを叩きつけてどうにかそいつを眠らせた。

 

隠し部屋の奥には大きな木箱があった。開けてみると小さな金属の鍵が入っている。鍵を仕舞うと僕は踵を返し、円形の部屋の中央を向いた。天井に目を上げると、縦一メートル半、横一メートルほどの穴が開いている。さっきは無かったが、スイッチを操作することで開いたのだろう。

 

穴の向こうには、この部屋の中央の円柱の延長とみえる柱があり、その柱のこちらに向いた箇所にクローショットが使えそうな灯篭が嵌っていた。

 

僕はクローショットを手に嵌めると灯篭に狙いをつけて撃った。たちまち飛び出した鉤爪が目標に引っ掛かる。僕の身体は上の部屋に引き上げられた。

 

そこは下の部屋と同じような造りの円形の部屋だ。僕は床に降り、ミドナに頼んで狼に変身すると、その部屋の北側にあった出口に進み扉をミドナに開けさせて向こう側に出た。

 

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向こう側は直径五十メートルほどの円形の部屋だ。見回すと青白い炎のゆらめくカンテラが部屋の壁にずらりと下がっている。

 

右手の壁際に何かがいる。感覚を集中し目を凝らすと、青白い炎を奪っていった幽霊のうちの一匹だ。

 

幽霊がこちらに気づいたようだ。同時に床に転がっていた頭蓋骨のうちの二つから蝙蝠のような羽が生え、浮上し始めた。

 

僕は迫ってきた幽霊が振り下ろしたカンテラを咄嗟に後ろに飛びのいて躱すと踵を返して走った。頭蓋骨の化け物と幽霊が追ってくる。僕はやや距離をとった地点でミドナに合図した。ミドナから結界が広がると、追いついてきた幽霊と頭蓋骨の化け物たちがこちらを取り囲んだ。

 

その瞬間力を解放した。敵が動けなくなり、僕は空中を飛び回って頭蓋骨の化け物二匹を叩き落し、さらに幽霊にも痛撃を与えた。

 

よろめいた幽霊だったが、すぐこちらに向き直った。頭蓋骨の化け物二匹が床を転げまわっている。僕は後じさりしながら再びミドナに合図した。結界が広がったところに幽霊が飛び込んでくる。幽霊がカンテラを振り上げた途端に僕は飛びかかった。二度目の痛撃に幽霊はたまらず地面に落ちる。すかさず襲い掛かり、その身体の中心から魂の塊を食いちぎった。

 

幽霊は断末魔の声を上げながら萎み、その手に提げられていたカンテラが割れた。そこから青白い炎が放たれ、どこかに飛んでいく。

 

僕は踵を返し、部屋の南側の扉に向かった。これをミドナに開けてもらって向こう側に出ると、部屋の一階部分の床に開いた穴に入り、地階部分に降りた。円柱についているハンドルを最初に回したときと逆に押して回す。東側の扉を塞いでいた仕掛け壁が開いた。

 

僕はミドナに東側の扉を開けさせて外に出て、階段を登った。

 

さっきの幽霊を倒したことで解放された青白い炎が宙を飛び、燭台の上に戻っていく。

 

三本の燭台に火が灯った瞬間、ガラガラと音がして、北側の入り口を塞いでいた頑丈な格子がひとりでに引き上げられた。

 

本来なら、四体の幽霊を倒さねばならないが、どうしてか上述のような行動で攻略していくと、三体の幽霊を倒しただけでこの格子が開き先に進めるということを僕は経験的に知っていた。

 

まあ、置いてきぼりにされた一体の幽霊には申し訳ない。寂しいとは思うが、これからもこの施設の番人をしてもらおう。

 

僕は階段を登り、こうして開いた処刑場への入り口に進んでいった。

 

(つづく)

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