黄昏の姫と緑の勇者:転生者チート編   作:nocomimi

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僕は戦わない。ひたすら戦わない。ヘナチョコでもいい。お宝さえ手に入れば。

僕は天空都市の中央広間から西側の扉に向けて急いだ。

 

途中の床ブロックが脆いことを知っていた僕は、少し助走をつけると目標地点までダッシュした。

 

予想通り、西の扉に近づくと僕が乗った床ブロックがガタリと動き、ゆっくりと落ち始めた。次々と脱落していく床ブロックの上を走って扉の前にたどり着く。

 

扉を開けて向こう側に出ると、先ほど探索した東側のバルコニーと対称的な形でバルコニーが設置されていた。すなわち、本来なら渡り廊下があったと思われる位置で、西側に浮いている棟に向かって転落防止壁が開いており、そこから左手に向けてはバルコニーが建物沿いに延びている。

 

左手に、すなわち南の方向にバルコニーを進んでいくと、床材が剥がれ茂みになっている場所からヘビババの頭が飛び出してきた。素早く茎を切り、剣の一撃を叩きつけ大人しくさせると、先に進んだ。

 

バルコニーの終端に円形の穴がある。だが近づくと案の定ヘビババが飛び出してきた。そいつも茎から切断し剣で叩き伏せたあと、僕は円形の穴の周辺の雑草を引き抜いて綺麗にし、ミドナに頼んでスピナーを出してもらった。

 

スピナーを円形の穴に嵌め込み起動する。ステップを踏みながら回転を加速すると、足元から重々しい作動音と振動が生じ始めた。

 

床材の剥がれた箇所から覗いていた大きな歯車が回転し始めている。懸命にスピナーを回していると、やがて大きな構造物がスライドしているような振動音がして、今いる建物から西側に渡り廊下が伸び始めた。

 

ひとしきりスピナーに取り組んでようやく渡り廊下を伸ばし切ると、衝撃音がして向こう岸のバルコニーと繋がった。

 

ミドナにスピナーを収納してもらうと、バルコニーを伝って今出てきた渡り廊下に入った。

 

上空を見上げると、まだカーゴロックたちには嗅ぎ付けられていないようだ。だが周期的に強くなる風がひどく吹き付ける。渡り廊下の転落防止用の壁は低く、所々抜けている。風に煽られて吹き飛ばされないよう、鉄のブーツを履いて風が収まるのを待ち、風が止まった途端にブーツを戻してダッシュし、渡り廊下を渡った。

 

突き当たりの扉には鎖がかかっており、錠前で閉じられている。

 

東側の建物で手に入れた小さな金属の鍵を取り出して錠に差し込んでみた。果たして鍵が錠前と合致し、捻ると錠前が開いて鎖が落ちた。扉を開けて建物の中に入る。

 

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扉を開けて建物の中に入ると、その部屋の中にも酷い強風が吹いていた。奥行き百メートルほどの細長い部屋だが、右側の壁に直径十メートルくらいの巨大なプロペラが二つもしつらえられていて、それが猛烈な勢いで回転して風を生じさせているのだ。

 

扉の前の床は、十メートル余り行ったあたりに南北に伸びる柵があり、その向こう側を覗き込むと何もない吹き抜けだ。

 

だが、その柵から右手と左手には幅の狭い通路が奥まで続いている。また、吹き抜けの向こう岸に円柱が四本四角形を描くような配置で立っていた。

 

右手の通路を通るには強風を受けながら歩かなければならない。

 

僕はミドナに合図して鉄のブーツを履かせてもらうと、柵の右手にある通路に足を踏み入れた。

 

そこには兜付き豚がうろついていた。僕はクローショットを手に嵌めると豚がこちらを向いて突進してくのを狙って撃った。豚は兜を剥ぎ取られ一瞬「ブヒッ?」と戸惑った声を上げ立ち止まっが、すぐに気を取り直してこちらに突進してきた。

 

僕は剥ぎ取った兜をそいつにぶつけて足を止めると、剣を抜いて突きを連続して繰り出し、屠ってやった。

 

だが、ビュウビュウ吹いてくる右からの風に吹き飛ばされないよう鉄のブーツを履いているのでちっとも歩が進まない。

 

僕はクローショットを手に嵌めると、奥のほうにある蔦だらけの柱を狙って撃った。飛び出した鉤爪が蔦にかかり、僕はたちまち柱の中途に引き寄せられた。このクローショットの力というのは凄まじい。鉄のブーツで人間二人分くらい体重が増えていてもいとも簡単に目標に飛び移れるのだ。

 

(それでいて僕の腕が脱臼しないのが不思議だが...)

 

僕は円柱の表面の蔦を横に移動しながら下を見た。下方の床にはもう一匹兜豚がいる。

 

僕は円柱の裏側に回ると床に飛び降りた。兜豚が見咎めて突っかかってくるのを盾で受け止めると、クローショットでその兜を剥がし、さらにそれを投げつけて手傷を負わせた。

 

だが、クローショットを仕舞って剣を抜いている間にそいつがまた突進してきて突き倒されてしまった。僕はミドナに合図してブーツを戻すと、再び相手が突進してところでサイドホップして回避し、回転斬りを放ってようやく大人しくさせた。

 

さてここから先は転生者たる僕の知識が生かされる局面だ。

 

僕は円柱の足元にいる現在地から南側に向いた。これまで強風の中部屋を西に向かって半分以上横切ったが、今の場所は幸い強風を受けない。

 

しかしここから先は、南側の壁にある扉に向かって崩れやすい床ブロックの上を渡らなければならない。しかもちょうどその床ブロック群の真正面にはご丁寧にも巨大扇風機が設えられて強風を吹き出している。

 

僕は以前は鉄のブーツを履いた状態での横跳びで強引にそこを渡ったものだ。だが今はもっといい方法を知っている。

 

僕はそこから南に進み、色の違う床ブロック群が橋のように向こう岸にかかっている場所の手前に行った。床ブロック群の端から左手は眼下の空まですっぽ抜けだ。

 

しっかりとした床の縁まで進み、剣を抜いたあと片手でそこにぶら下がる。

 

僕は思い切って手を放した。体が落下していくと同時にジャンプ斬りを放つ。

 

僕の身体は階下にあった小さな張り出しに着地した。高所からの落下でやや身体が痛んだが、ダメージは許容範囲だ。

 

張り出しの目の前には西側の壁に扉がある。僕は扉に歩み寄ってそれを押し上げ、向こう側に出た。

 

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扉の向こう側は、目の前を柵に塞がれた小さな部屋だった。

 

僕は柵の向こう側に何があるのかを知っていた。柵の右端に寄ると、おもむろにクローショットを出し、向こう側のある場所に見当をつけて撃つ。

 

すると不思議なことにクローショットが何かに引っ掛かると、僕の身体は柵を越えて向こう側に引っ張り出された。

 

向こう側の壁にしつらえられた紋章に引き寄せられたのだ。

 

僕は転生を繰り返すうちに、柵というものはときとして見た目より簡単に突破できることを学習していた。

 

クローショットを使うのが方法の一つだ。

 

ともあれ、僕は下の床に降り立ち辺りを見回した。

 

そこは円形の巨大な吹き抜け空間だった。直径は百メートルほどはあるだろうか。

 

数階層にわたって壁に囲まれた吹き抜けだ。一番下には床も何もなくぽっかり口を開けている。その壁にもあちこちに大穴が空いていた。

 

僕のいる場所はその吹き抜けのだいぶ下のあたりにある小さな足場だった。

 

僕は左を向き、壁際前方にあった別の足場の上の壁に設えられた紋章をクローショットで狙って飛びついた。

 

その足場に降りるとちょうどよいことに鳥人間がいる。僕はそいつに近寄って捕まえると、その両脚をしっかり掴んだ。

 

実は意地の悪いことに、ここの壁の中途に仕掛けられた巨大扇風機からは横殴りの強風が吹き出してきているのだ。だから、正当な経路を通るならば、この吹き抜けの最上階層から鳥人間の脚に捕まって、横殴りの風で外に押し出される危険を押して目的地まで降りていかなければならない。

 

だが僕はもうそんな面倒はとらないことに決めていた。

 

パニックになった鳥人間がしゃにむに羽ばたく。だが構わず僕は床を蹴って飛び出した。

 

鳥人間の揚力により、十メートルほど進みつつもゆっくりと落下する。

 

すぐ下の階層に設えられた、出口扉に通じる床が見える。

 

僕は確実に着地できる地点まで浮遊すると鳥人間の脚を放し下に降り立った。扉まで進み、それを開けて中に入る。

 

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そこは直径三十メートルほどの円形の部屋で、真ん中に十メートルほどの穴が空いており、その中で巨大なプロペラが回転して風を起こしていた。

 

だが、次の瞬間背後で作動音がした。扉に鉄格子がかかったのだ。

 

プロペラの真上には、ひときわ大きな鳥かご型スイッチが下がっている。以前に見たものの四倍くらいだ。

 

僕はクローショットを手に嵌めると、スイッチを狙って撃った。鉤爪が引っ掛かり僕はたちまちスイッチにぶら下がった。だが、重みが足りないのかスイッチが作動しない。ミドナに頼んで鉄のブーツを履かせてもらうと、やっとスイッチが動いた。

 

すると、足の下のプロペラの回転が次第に遅くなり、最終的に止まった。穴を通して下を見ると大きな部屋があるようだ。

 

僕は、ミドナに言ってブーツを戻してもらうと、クローショットの鎖を伸ばした。位置が下がり、僕は床の穴から下に抜けた。下は五十メートル四方ほどの四角い部屋で天井も高いようだ。

 

鎖が伸び切ったところで鉤爪を開いて下に飛び降りた。

 

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降り立った部屋で周囲を見回す。

 

その三方の壁には、高い所に大穴が空いていて、野外に繋がっている。残りの一方の壁には穴は空いておらず、その代わり頑丈そうな大きな柵のかかった小部屋があった。

 

(その小部屋の中に僕の目指すものがあるのだ。)

 

僕は心に「スキップ」を念じた。

 

次の瞬間、上空に、背中から翼が生えなおかつ二本づつの腕と脚を備えた奴がホバリングしているのが見えた。

 

外見は蜥蜴男に似ているが、もっと原始的な顔をしている。片手に円盾、片手に剣を持っていて、兜も被っている。

 

ガーナイルだ。

 

僕は剣を抜くと、誰もいない目の前の空間に向かって縦斬り、横斬り、縦斬り、突きの四連続斬りを繰り出し、次いで素早く百八十度方向を変えた。

 

前方上方の壁の中途には、あの柵のかかった小部屋が見える。

 

僕はクローショットを手に嵌めると、柵の真ん中あたりのわずか上に見える小部屋の天井にしつらえられた金属の浮き彫りを施した紋章を狙った。

 

ギリギリの距離だ。

 

頼む。届いてくれ。

 

ガーナイルの羽音が響く。奴はいずれ、武器を構えてこちらに突進してくるだろう。喰らったら手痛い打撃だ。

 

だが僕はその恐怖感を抑え、深呼吸し、目標とする紋章を狙った。

 

その刹那、クローショットの狙いが合った感触がした。理屈では説明できない。視界に黄色い三角が円形に並んだマークが現われ、その狙っていた紋章の周囲で回転したような気がしたのだ。

 

僕はクローショットを放った。飛び出した鉤爪が目標としていた紋章に引っ掛かり、僕は引き寄せられた。

 

小部屋の中の天井の紋章に到達すると僕はすぐに鉤爪を開いて床に飛び降りた。

 

そこには大きな木の箱がある。僕は手をかけて蓋を開いた。中にはクローショットが入っていた。

 

そう、もう一つのクローショット。これでダブルクローショットとなったわけだ。

 

一安心した僕はこれまでの行動を思い返すと(「セーブ」とも言うらしい)ごろりと寝転がって目を閉じた(「セーブリセット」とも言うらしい)。

 

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ふと気が付くと、僕は東側の棟の部屋最初の部屋にある、小さな金属の鍵を取った箱のある足場の上にいた。

 

これは数少ない例外だが、天空都市では入口に戻されるかわりにこういう現象が起こる。

 

(実は、ここで最初に鍵を取ってから中央棟に戻る際に僕はある技を行った。本当なら竜に見つかって、渡り廊下を壊されてしまうところなのだが、転落防止塀から階段の手すりに飛び乗り、中央棟の扉の前の床を通らずに戻ったので、竜に見つからずに済んだというわけである。そしてその技を成功させると、寝落ち(「セーブリセット」とも言うらしい)した後の開始地点がここになる。)

 

ともあれ僕は、サイドホップを二度繰り返して開いた宝箱の蓋の上に乗ると、ジャンプして足場の欄干の上に乗り、そこからジャンプとジャンプ斬りを駆使して間隙を飛び越え、床の上に降り立った。

 

西側の扉に走り寄り、それを開けて向こう側に出る。

 

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出たところは渡り廊下だ。

 

風が止んでいる間に前転ダッシュで渡り切ると、突き当たりの扉を開けて中央広間の部屋に入った。

 

前方の左手にある蔦だらけの円柱をクローショットで狙い撃って飛び移ると、蔦にしがみついて横移動し、裏側に回ってから飛び降りた。

 

細い床ブロックの列を伝って中央広間のフロアに戻る。

 

前方左にあった円柱に近づいた。その円柱は蔦だらけで、しかも途中で崩壊し天辺に乗れるようになっている。

 

僕はクローショットを手に嵌めて円柱を狙った。以前からそのフロアをうろついていた兜豚が僕を見咎めてブヒっと鳴いたが、僕はクローショットを撃って鉤爪を円柱の蔦に引っ掛け、どうやら襲われる前に上に避難することができた。

 

僕は蔦に両手足をかけて登り、円柱の天辺にまで這い上がった。

 

そこから上を見上げると、天井のプロペラを納める円形の穴の内壁の一部に蔦が生えているのが見える。プロペラは止まったままだ。

 

僕は蔦をクローショットで狙って撃った。撃ち出された鉤爪が引っ掛かり、僕はたちまち狙った場所に引き上げられた。

 

僕は蔦を伝って穴の内壁を這い上がった。そこはプロペラの穴よりやや大きい直径の円形の部屋だ。

 

バックフリップし、停止したプロペラの一枚に乗る。クローショットを手に嵌め天井を見上げる。天井は金属製らしき床材でできていると見える壁際の縁を除いて一面金網が貼ってある。

 

その天井の床材に一辺一メートルほどの四角い穴が空いている。自分から見て右手上方のあたりだ。僕はその穴の左上周辺にクローショットの狙いをつけて撃った。ちょうどそこは金網のギリギリ周縁で、鉤爪が引っかかって僕は引っ張り上げられた。

 

こんなところにぶら下がってどうしようというのか?

 

実は今の僕はダブルクローショットを持っているのだ。

 

僕は今使っているクローショットの鎖を伸ばしてやや高度を下げた。そして左手に嵌めたもう一つのクローショットで、天井の縁に空いた穴の向こうへ狙いをつけた。穴のやや左上だ。

 

左手のクローショットで狙いを探っているうち、僕の中で感覚が起こった。小さな三角を組み合わせた黄色い印が浮かび上がったような気がしたのだ。

 

その瞬間僕は左手のクローショットを撃った。飛び出した鉤爪が、天井の上のフロアの、さらにそこの天井にあったなにかに引っかかり、僕は身体ごと引っ張り上げられた。

 

成功だ。

 

気がつくと、僕は上層の部屋の天井にしつらえられた小さな丸い金網からぶら下がっていた。

 

僕はやや右手に方角を変え、クローショットの鉤爪を開くと、すかさず剣を抜いてジャンプ斬りを放った。

 

落下した僕は上層の部屋の床に降り立った。

 

本来なら、この部屋に到達するためには気が遠くなるような道のりを経ないとならなかった。

 

だが転生を繰り返して経験を積んだ僕は、次第にその道程を短縮することを覚え始めた。

 

最初に中央広間の部屋に入ってきた技で天井のプロペラを止めたのが手始めだ。だがそれでもこの部屋に入るためには竜男と戦ったり狼に変身して綱渡りしたりといろいろな苦労が伴った。

 

しかし、今や何の苦労もなく広間からストレートにここまで来る方法を僕はマスターしたのだ。

 

ともあれ回想に浸るのもここまでにしよう。

 

その部屋は、下から見たとおり床のほとんどが金網だ。そして部屋の天井の中心を軸として、巨大な板が上下に渡されている。

 

部屋の奥には兜付き豚の巨大版が二匹も陣取っていた。だが部屋の奥に黒い石のような素材でできた巨大な箱がある。

 

僕は素早く黒い箱に走り寄り、手を伸ばして蓋を開けた。内部には黒い金属でできた大きな鍵があった。

 

これは重要な鍵だ。僕が鍵をポーチに仕舞っていると、一匹の巨大兜豚が襲ってきた。

 

僕は跳ね飛ばされた。だが、ここで戦って時間を無駄にするのは気が進まない。

 

僕は先程入ってきた床の四角い穴に走り寄ると、そこから下の部屋に飛び降りた。

 

下の部屋の、プロペラの穴の周囲の通路にいた兜豚の小型版がこちらを見とがめて威嚇の声を上げた。

 

だが僕はすぐにクローショットを天井の金網に向けて撃った。たちまち身体が引き上げられ、金網からぶら下がった。

 

僕はそこから鎖を少しづつ伸ばしていった。やがて床の穴を通り抜け、中央広間の天井辺りまで降りていった。

 

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僕はクローショットの鉤爪を開いて飛び降りると着地と同時に前転した。

 

すると、うろついていた巨大兜豚がブヒっと鳴いて襲ってきた。サイドステップして回避すると、僕は剣を抜いていきなり回転斬りを放った。化け物はあえなくこと切れた。

 

僕は剣を収め、今度は北側の短い階段を登って、北側の扉を開けて外に出た。

 

いよいよ北側の棟の攻略である。

 

目を上げると、百メートルほど北に未踏破の棟が見える。

 

また、今いるバルコニーの上方から北棟に向けて細長い構造物が渡されていて、その下に巨大な板がこちらに正面を向いてぶら下がっている。板の表面には金網が張ってあった。クローショットが引っ掛かるのだ。

 

だが、本来なら、この巨大な板を回転させなければ、北側の棟には移動できないのだ。

 

そしてそのためには、中央広間の上部に位置する部屋の天井の金網からクローショットでぶら下がり、そこからダブルクローショット、つまりもう一つのクローショットで中央広間北側扉近くの天井にしつらえられた鳥かごスイッチを撃って飛び移り、鉄のブーツを履いてそれにぶら下がって起動させないとならない。

 

だが僕は、転生を繰り返すうち、この板が固定されたままでも北側の棟へ行けることを知ってしまっていた。

 

僕はまずバルコニーのほぼ真上に位置する回転金網板を狙ってクローショットを撃ち、そこに飛び付いた。そこから一つ北に位置する板の左側の上の端を狙ってクローショットを撃った。

 

鉤爪が目標に引っ掛かり、身体が引き寄せられる。僕は飛び移ると、その先で半ば自動的に板の上によじ登ってその上に立った。

 

うまくいった。

 

次の板も同様に、横向き、すなわちこちらに正面に向いてぶら下がっている。その上の端を狙い、同様に飛び移ると板の上によじ登った。

 

だがそのもう一つ先の板は、進路と平行になって止まっている。僕は、立っている場所からその金網の上端中を狙ってクローショットを撃ち、飛び移ると、やはり僕は板の上によじ登った。

 

そこから、すぐに今までいた板のほうを振り返り、その金網の中ほどにもう一つのクローショットを撃った。僕は今までいた横向きの板に戻った。ただし今度は板の上に立っているのではなく、金網にぶら下がっている。

 

僕はそこから、もう一度縦向きの板の、真ん中を隔てる棒のやや右側にある金網に狙いをつけてクローショットを撃った。

 

僕は再び飛び移った。そして、思い切り身体を右に向け、その一つ先の板の金網の上の端を狙った。

 

だが、その時カーゴロックの不吉な鳴き声が聞こえた。とうとう奴らに見つかったのだ。

 

僕は急いでクローショットの狙いを変え、近づいてきた怪鳥を狙って撃った。鉤爪が直撃し、一時的にだが相手が怯んだ。

 

僕は焦る心を抑えながら再びクローショットを目標の金網の上端につけた。

 

狙いがついたのが分かった。鉤爪を放つと、それが金網に引っ掛かり、僕は飛び移ると金網を張った板の上によじ登った。

 

北側の棟はもうすぐだ。扉の上方の壁には巨大な円形の金網がついている。

 

僕はその円形の金網めがけてクローショットを撃ち、飛び付いた。

 

鉤爪を開いて飛び降りる。そこは金網の裏にしつらえられた巨大なプロペラの力で風を送る吹き出し口のようだ。

 

そこからバルコニーに飛び降りると、僕は扉を開けて向こう側に出た。

 

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内部に入った途端、聞き覚えのある羽音が聞こえた。

 

目を上げると、そこは直径百メートルほどの巨大な円筒形の部屋だった。上空には以前戦いそうになって僕のほうから逃げた、あの蜥蜴騎士がいる。ガーナイルだ。

 

しかも二匹いた。蜥蜴騎士たちは僕の十メートルほど上方で背中から生えた羽を羽ばたかせながら、感情のない目でこちらを見据えていた。

 

だが僕は体の向きを百八十度変え、入ってきた入り口扉の上の円形の金網を狙い撃った。僕はすぐに引き寄せられて金網に飛び付いた。

 

目を上げると、先ほど渡ってきたのと同様の、金網を張った巨大な四角い板が部屋の天井からぶら下がっている。

 

僕はその金網を狙って撃った。そうして四角い板に飛び移り、そこから周囲を見回した。すると、正面の壁から突き出た張り出しにクリスタルスイッチが設置されているのが見えた。

 

僕はクローショットでそのスイッチを狙って撃った。するとスイッチが変色し、作動音が鳴り始めたと思うと、僕が今しがみついている四角い板が回転し始めた。

 

ガーナイルたちは、何もしてこない。僕は何度も繰り返された転生の経験で知っていた。こちらから攻撃せず早々にその場を退出すれば、奴らは見逃してくれるのだ。

 

目を上げると、やや上方の壁に食い込んだ形で半円形の小部屋がしつらえられていて、その上からぶら下がった棒を中心として巨大な四角い金網つきの板が回転していた。その板は回転しながら半分が小部屋の中を通っている間、もう半分がその外に露出するという設計になっている。

 

互いの板の回転の周期を見ながら慎重にタイミングを計ったうえで、こちらの板が向こう側に回っていった時に僕は上方の板を狙い撃った。

 

クローショットの鉤爪がかかり、僕は次の金網つき板に飛び移った。

 

僕はそうしていくつかの板を伝って部屋の上方に登っていった。

 

やがて、僕は部屋の天井の中央から出ている棒の一番上に設置された金網つき四角板に到達した。それは停止していたので狙うのは容易だった。

 

その板から見ると、同じ高さの壁から張り出した箇所にクリスタルスイッチがついている。それをクローショットで狙い撃つと、スイッチが変色して作動音がした。 自分が今いる四角板がゆっくりと回転し始める。

 

ここはもう部屋の最上層だ。板の回転に従って、その裏側にあったものが見えてきた。壁の丁度同じ高さに足場があり、その突き当たりに頑丈そうな扉がしつらえられている。鎖がかけられゴツい錠前で厳重に施錠されていた。

 

扉の上の壁には金属の浮き彫りを施した紋章がついていた。僕はそれをクローショットで狙い撃って飛び付いたあと、扉の前の足場に降り立った。

 

さてと、これから出てくる敵は竜だ。

 

残念ながら、こいつとの戦いは避けて通れない。

 

だが、あの竜を倒せば冒険が大きく進展する。

 

僕は錠前に黒い鍵を差し込んで捻った。果たして、重々しい音を立てて錠前が開き、鎖が外れて床に落ちた。僕は扉を押し上げると向こう側に出た。

 

(つづく)

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