黄昏の姫と緑の勇者:転生者チート編   作:nocomimi

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勇者というより怪盗リンク!最終ダンジョンでもとにかくできるだけ戦わずに前進する僕

骸骨剣士は盾を前に構え、僕に向かってきた。左手の重そうな盾を掲げ右手の剣を高々と上げる独特の構えだ。両脚でリズムをとるように体を上下させている。

 

僕も盾を前に出し、じりじりと相手に接近していった。彼我の距離が縮まる。剣が届く間合いに入った瞬間、僕は適当に剣を振り下ろした。

 

その瞬間骸骨剣士は盾を跳ね上げた。僕の剣はあっさりと弾き返され、相手の剣が振り下ろされる。左肩に激しい衝撃が走り僕はたまらず吹き飛ばされた。

 

(これはどうやってもやられるターンなのだから仕方ない。)

 

どうにか手をついて立ち上がると骸骨剣士は剣を下ろして僕の前に立った。

 

「勇無き剣に力は宿らぬ」

 

骸骨剣士は低い声を発した。

 

「確かにそなたは運命に翻弄され勇者となった身。さらばとてそのような不甲斐ない有様ではその緑の衣が泣くわ」

 

だが、不甲斐ないと言われても僕は特段腹は立たなかった。

 

僕にはこの剣士の教えは基本的には必要ないのだ......基本的には。

 

転生を繰り返す前は、一生懸命彼のもとで訓練し七つもの技を身につけたものだ。

 

だが、経験を積んだ今、たった一つの技を除いて他は全て不要であると知ってしまったのだ。

 

だが逆に言うと、そのたった一つが身についていないと、この冒険は完遂できないのも事実。

 

だから、僕は面倒くさいと思いながらもこうして師匠のもとにやってきたというわけだ。

 

「勇を為し力を得るは即ち力を得勇を為すこと。そなたにもしハイラルの危機を救わんとする気骨と孤独な剣の道を追い求める覚悟があるのなら我が奥義を授けよう。あとはそなたの心次第だ」

 

はいはい。僕が頷くと、骸骨剣士は盾を横に下げ、右手の剣を前に掲げた。僕は言われたわけではないが同じ姿勢をとった。二人の剣が触れ合い、金属音を立てる。

 

「活力溢れる敵はたとえ倒してもまた意識を取り戻し立ち向かってくる。そのような相手が意識を失っている間に息の根を止める。それが『止め』だ」

 

挨拶が済むと剣士は説明した。相手が倒れている間に剣を逆手に持ち、高く跳躍してその急所に深く剣を突き立てる。一通り言葉で描写すると、剣士は自分を練習台にしてやってみろと促してきた。

 

二人の剣士は再び剣を抜いて向き合った。僕は思い切って距離を詰め、横斬りで相手の盾を跳ねのけ回転斬りを放った。骸骨剣士がよろめき倒れる。

 

僕は逆手に剣を握り飛び上がって骸骨剣士の胸当ての下に刃を突き刺した。

 

「うむ、良い動きだ」

 

僕が剣を抜くと、剣士はもとより骸骨だからか、何事もなかったかのように立ち上がりながら言った。

 

「奥義『止め』確かに伝えた。そなたに伝えるべき奥義はあと六つ。だがそれは誇り高い獣の魂を持つ勇者の血族にのみ伝えられる」

 

骸骨剣士の姿が次第にぼやけてくる。その声もまた次第に遠くなってきた。

 

「そなたに準備ができたら獣の魂を呼び覚ます風の音を起こす石像を探しそこで私を呼ぶがよい。それまでの間...」

 

そこまで聞いた瞬間、僕はハッと目を覚ました。上半身を起こし周囲を見回す。

 

なんとなんと、僕はフィローネの森の神殿に通じる道の上にいた。

 

おそらくレッスンをサボりにサボり倒してきたので、本来最初にレッスンを受けるべき場所でレッスンを受けたとみなされ戻されたのだろう。

 

だがまあいい。これでもう二度と師匠と会うことはない。

 

冷たいようだが、残り六つの技を覚えたところでただ単に時間を食うだけにしかならないためだ。

 

僕はすぐにミドナに合図して城下町東門前のポータルに飛ばしてくれるよう頼んだ。

 

ミドナが僕を狼に変身させ、僕らはすぐワープし始めた。

 

数秒すると、目的の場所だ。僕はダッシュして跳ね橋を渡り、東門から城下町に入った。

 

城下町に入ると、通行人たちの悲鳴が上がった。

 

だが構わず東通りをダッシュで走り抜け、中央噴水広場に出る。そこから右に折れて、二人の衛兵に挟まれた城の方面に向かうアーチを潜った。

 

さあ、いよいよハイラル城だ。

 

あの有名な「ガ」のつくオッサンに会いに行かねば。

 

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てなわけで僕らは誰にも咎められることなく城に向かう回廊に入った。

 

城の前の橋を途中まで渡り、魔法障壁の前まで来ると、ミドナはそこで立ち止まった。そして三つの結晶石が彼女の周囲を回り始めた。

 

(本当は、結晶石は一つしか手に入れていないのに。返す返すも不思議だ。)

 

やがて三つの結晶石は合体して彼女の顔に仮面のように嵌った。彼女の黒い石の冠とぴったり合わさっている。

 

ところが、彼女は自分で自分を制御できなくなったのか、見えない力であちこちに跳ね飛ばされ壁に叩きつけられたあげく、城壁の向こうに飛んで行ってしまった。

 

僕が見ていると、しばらくしてすっかり変身した彼女が城壁の向こうで立ち上がった。その頭の毛が途方もなく伸びて蛸の触手のように蠢いていて、その伸びた毛が身体を支えて持ち上げているので、体高が十メートル以上にもなっていた。

 

ミドナが変身したその生き物は、触手で地面を蹴って一気に跳躍した。見上げていると、それは魔法防壁の斜面の上に降り立って、どこからか槍を取り出して振り上げた。槍の先端が鈍い黄色い光を発している。槍が防壁に突き立てられ、甲高い衝撃音がするとともに地響きが起きた。

 

槍の刺さった個所から魔法防壁に亀裂が走り始めた。亀裂はみるみるうちに広がる。それと同時に、防壁の内側からも黄色い光が発せられ始めていた。

 

やがて亀裂が防壁全体に広がり、防壁そのものが崩壊し始めたかと思うと、突然消え去った。

 

ミドナの変身した生き物が支えを失い落下した。

 

僕はいつの間にか人間の姿に戻っていた。地面に落ちたミドナを抱き抱えると、どうやら無事らしいとわかった。

 

僕は彼女の顔を覗き込んだ。気絶しているようだ。見上げると、魔法防壁が消滅した直後から雨雲が城の上に垂れ込めていた。ポツポツと雨が降り始め、僕とミドナの顔を濡らした。

 

やがてミドナがゆっくりと目を開けた。目が合って微笑みかけるとミドナも微笑んだような気がした。

 

なんなんだよ...........この雰囲気は。

 

言っておくが僕にはそういう趣味はない。こんな三歳児のようなミドナとなんとなくいい雰囲気になっても困るんだが。

 

僕はそう戸惑ったが、何も言わずにおいた。

 

彼女を放すと、僕は橋の終端にある両開きの扉に手を掛け思い切り押した。重い扉がゆっくりと動く。できた隙間に身を滑らせると、僕は中に入った。

 

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僕にとっては三度目のハイラル城だ。だが正面から入るのは初めてだ。

 

見渡すと、そこは広大な前庭だった。正面には城の堅固な建物があり、植え込みが点在する庭園が右手および左手に広がっている。

 

前庭は北西および北東に斜めに伸びており、それぞれの終端の壁には大きな扉が造り付けられている。上空にはカーゴロックが何羽も旋回していた。

 

今までの転生の経験から、行くべき先はわかっている。

 

僕は前転ダッシュで右手に前進し始めた。植え込みの間にある小道を辿って進む。そして、おもむろに爆弾袋から爆弾を一つ取り出して導火線に点火し、北東の壁の扉の前に立っていた歩哨のボコブリンに近づいた。悪鬼どもは僕を見咎めると身構えた。

 

ボコブリンたちの間合いに入った瞬間、奇妙な異音がした。魔法結界が周囲に浮かび上がってくる。僕の周囲二十メートルほどが閉鎖されてしまった。同時にカーゴロックが高度を下げてくる。怪鳥もこちらに気づいたのだ。

 

だが、僕は慌てずに悪鬼どもと自分の間に点火された爆弾を転がすと、盾を高く掲げた。だが、最初からいた二匹に加え、結界の外側から新手のボコブリンたちが喚きながらこちらに走り寄ってきた。左手から二匹、右手から一匹。

 

五匹の鬼どもが寄ってたかって鉈を振るって斬りかかってくる。鉈の刃が僕の盾に次々当たって金属音を立てた。カーゴロックも僕に覆いかぶさるように降りてきた。

 

だがその瞬間爆弾が爆発した。

 

僕は盾に強い爆風を受けて思わず後退させられたが無傷だった。

 

いっぽう、五匹の鬼どもとカーゴロックは一気に全滅した。

 

実にあっけない奴らだ。

 

魔物どもの死体が崩壊し始めると同時に魔法結界が消失した。

 

僕は壁の扉に近づくと、手をかけて押し上げ、その先に抜けた。

 

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そこは荒涼とした中庭だった。

 

目の前の左右には粗い作りのバリケードが建てられ、十メートルほどは中庭の中心部分に向けて進む以外にない造りになっている。

 

だが、僕は転生の経験からここにも魔法結界を発生させるトリガーがあることを知っていた。

 

草の上を摺り足で歩きながら、バリケードに挟まれた領域から抜け、一歩足を踏み出す。

 

その途端、覚えのある異様な音が聞こえた。反射的に振り返ると黄色く輝く魔法結界がいましも浮かび上がろうとしていた。僕は来た方向に踵を返し、全力で地面を蹴ると前に飛びこんで前転した。

 

草地に尻餅をついて顔を上げる。閉じ込められることは回避できたようだ。僕は立ち上がると結界のほうを見た。中庭の中央部分が直径二十メートルほど円形に囲われている。そのこちら側の終端と、左側に設置されたバリケードとの間には僅かな隙間があった。

 

僕はミドナに頼んで狼に変身すると、その隙間にそろそろと滑り込んだ。

 

隙間を通り抜けると、魔法結界を右手に見ながら前進していった。結界の裏手の前方右手の壁に鉄の縦格子が嵌った出入口がある。見ると、その格子の向こう側にはボコブリンが何匹もたむろしていた。そしてガラガラと鎖を巻き上げる音とともに、格子が引き上げられつつあった。

 

僕はダッシュすると、なだれ込んでくるボコブリンたちの脇を通り過ぎ、戸口をくぐった。その先は左に伸びる細長い庭園だった。丸く刈り込まれた植え込みが点在するなかを猛ダッシュで進んでいくと、その終端には左手にもう一つ同じような格子のかけられた戸口があった。

 

戸口の周りを調べると、右手の地面近くの壁から鎖が伸びており、その先端に大きな鉄のハンドルスイッチがついている。ハンドルを咥えて引っ張ると、ガチャリと作動音がして格子がゆっくりと引き上げられた。

 

僕はハンドルを置いて戸口を抜けた。

 

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その先はガランとした中庭が右手に広がっている。足元は石畳だ。斜め向かいの隅には松明台の上に明りが点されていた。

 

だが僕は知っていた。ここにあの懐かしい奴が待ち伏せているのだ。

 

僕は中庭の中ほどまで進んだ。その瞬間、奇妙な異音がした。見回すと、周囲二十メートルほどに魔法結界が一瞬にして形成された。

 

目を上げると、中庭の上を横切るようにかけられている石造りのアーチの上に巨大な人影があった。そいつはそこから飛び降りてくると、地響きを立てて僕の目の前に着地した。

 

角のつけられた鉄兜に、山のような肥満体。手に持つのは巨大な戦斧。キングブルブリンだ。

 

鬼の王は唸り声を上げて立ち上がると戦斧を持ち上げた。

 

僕はミドナに頼んで人間に戻してもらうと、この古き友に駆け寄った。

 

「鎖と鉄球を!」

 

僕が叫ぶと手に鎖が握られた。それを振り回すと、あいさつ代わりに鬼の王の頭部に思い切り鉄球を叩きつけた。鬼の王が苦痛の吠え声を上げる。

 

鎖をブン回し、何度も何度も鉄球を叩きつける。そのたびごとにキングブルブリンは苦し気な唸り声を上げた。

 

以前と同じ展開だ。胸が痛むが仕方がない。

 

数十回も鉄球が叩きつけられただろうか。それにしても驚異的なタフさではある。しかし、しまいにはキングブルブリンは大きくのけ反り、構えを解いた。

 

すると、鬼の王は僕に向き直り、自分の鍵の束を帯から外して僕に差し出した。

 

こいつ、意外とものわかりのいい奴なのだ。僕は有難く受け取っておいた。

 

鍵を僕に渡してしまうと、キングブルブリンは首から紐で下げた角笛に口を付けて吹き鳴らした。すると魔法結界が消え去っていく。しばらくすると、白い巨大な猪が中庭の戸口から入ってきて鬼の王のもとまで走ってきて止まった。キングブルブリンは戦斧を肩に担ぎ、猪に乗ると言った。

 

「オレタチハツヨイモノニシタガウ。ソレダケダ」

 

相手が人間の言葉を喋るのを聞いて、ミドナも唖然として口を開けた。鬼の王が手綱を鳴らし、白い大猪を走らせる。彼は中庭の戸口を抜けてどこかに走り去ってしまった。

 

「あいつ、喋れたんだな」

 

ミドナがポツンと言った。

 

だが、僕は最初から知っていたから驚かなかった。

 

鍵さえ手に入れればこの区画に用はない。

 

僕はそこでこれまでの行動を思い返し(「セーブ」とも言うらしい)、その場にゴロりと寝転んで目を閉じた(「セーブリセット」とも言うらしい)。

 

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気がつくと次の瞬間僕は城の正面扉から前庭に入ってすぐの場所に立っていた。

 

上空を見上げると、まだ二、三羽のカーゴロックが周回している。僕は植え込みの縁に身を寄せ、身を低くしながら城の前面の扉に向かって進んでいった。建物の前の短い階段を上がると、エントランスに散乱した箱や樽がの間をすり抜けて扉の前に向かった。

 

鍵を取り出して扉にかけられた錠前に差し込んでみる。鍵を捻ると錠が開いて鎖が落ちた。

 

ドアノブを回すと、扉を開けて建物の中に入った。

 

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内部は薄暗く、短い廊下の先に直径五十メートルほどの大広間がある。向こう側突き当りの壁には高所に小さなバルコニーが複数しつらえられている。

 

僕は剣を抜いて前進した。この広間にも魔法結界のトリガーが仕組まれているのを知っていたが、引っ掛かる気は毛頭なかった。

 

僕は廊下から広間に入る直前の辺りで微妙に立ち位置を調整すると、やや左に方向を向けてジャンプ斬りを繰り出した。

 

その途端異音がして、瞬時に魔法結界が周囲に浮かび上がってきた。だが僕は着地と同時に逆方向を向いて全速力で前転ダッシュした。

 

どうやら閉じ込められずに済んだようだ。直径三十メートルかそれ以上はありそうな巨大な結界が形成され終わったときには、僕はその外に出ていた。

 

僕は結界に吸い込まれないよう用心しつつ、左に進んでいった。前方には広場の左隅のあたりに木製の大きな講壇が西側の隅に置いてあった。

 

だがその周辺にボコブリンどもが数匹たむろしている。僕に気づくと喚き声を上げた。

 

僕は剣を抜くと敵の群れに近寄り素早く回転斬りを放った。跳ね飛ばされ倒れた連中が気を取り直して起き上がる前に、僕は素早く講壇に登り、クローショットを両手に嵌めると正面から一つ左手のバルコニーの上にあったシャンデリアを狙って撃った。

 

鉤爪が引っ掛かり、シャンデリアに飛び付いてぶら下がると、鎖を伸ばしつつ、正面バルコニーの近くのシャンデリアにもう一つのクローショットの狙いをつける。

 

目標のシャンデリアにクローショットを撃って飛び付く。さらに正面バルコニーの真上のシャンデリアに狙いを付けて撃ち、飛び移ったあと、僕はクローショットの鉤爪を開いて飛び降りた。

 

バルコニーの正面の壁には扉がある。僕は扉に手をかけて開けた。

 

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だが、一歩足を踏み出した途端にもはや聞き慣れた異音がして、たちまち周囲に魔法結界が発生した。

 

こればっかりはしょうがない。部屋に入ってすぐだからだ。

 

部屋は四十メートル四方ほどの大きな広間だった。突き当りには高い段差の上に左右に伸びる通路が続いている。段差の手前に異様に背の高い人影があった。全身を鎧で固め、兜を被り顔は面甲で覆われている。人の身長と同じくらいの長さの大剣を持ち、巨大な盾を掲げている。

 

タートナックとかいうスカした鎧武者だ。

 

僕が近づくと、鎧武者は盾を上げて剣を構えた。

 

僕は敵に駆け寄り、その脇を走り抜けながらフェイントの横斬りを放った。敵が律儀に盾を上げてそれを防御する。

 

だが僕は相手の斜め後ろに回った途端に回転斬りを放った。

 

フェイントに気を取られた鎧武者は見事に引っ掛かった。斬撃がその脇腹を直撃する。さらに僕は相手に向き直り、縦斬り、横斬り、縦斬り、突きと矢継ぎ早に繰り出し、損傷を与えられるだけ与えた。

 

いくつか鎧の部品を失ったあと、敵はようやく気を取り直して盾を構えた。

 

だが僕は一度相手に背を向けて走り、距離を取ると、再び踵を返して相手に駆け寄り、脇を通り抜けながらフェイントの横斬りを放った。

 

また引っ掛かった。鎧武者が盾を上げたところで、僕はその後ろに回り込みまたも回転斬りを食らわせた。そこからはひたすら剣を振り回して連続して斬撃を食らわせた。

 

転生を繰り返す前は、この鎧武者には手を焼かされたものだ。だが今の僕は違う。こいつの手の内を知り尽くしている。

 

再び敵が立ち直ったところで僕は少し後じさりし距離を取った。鎧の部品どころか兜も壊れてしまった敵がそれでも「フンッ!!」と気合を入れて大剣を振り下ろす。

 

だが隙の多い縦斬りだ。ギリギリの距離を保っていた僕の目の前の床に剣先が食い込む。

 

その途端僕は渾身のジャンプ斬りを繰り出した。敵に斬撃がぶち当たる。着地するが早いが回転斬りを放ち、さらに二、三発突きを喰らわすと、とうとう武者の鎧が全て崩壊した。

 

すると鎧武者は唸り声を上げて大剣を投げつけてきた。盾を上げてそれを受ける。

 

武者は、盾を落とすと、自分の胴巻きと肩当てを剥ぎ取りかなぐり捨て、腰に提げた長剣を引き抜いた。

 

鎧武者はこちらに迫ってくると、縦斬り、横斬りを放った。僕は盾を上げて防ぐ。さらに突きが来る。それも盾で防いだ。

 

鎧武者は僕から目を離さないまま左右に運足し、隙を伺っている。

 

な~にスカしてるんだ。僕はそう思いながら敵に走り寄り、脇を駆け抜けながらまたフェイントの横斬りを放った。

 

防御に気を取られた相手に隙が出たのを見逃さず、僕は回転斬りを放った。斬撃が武者の胴を払う。手応えがあった。さらに相手に向き直り、僕は縦切り、横斬り、縦斬り、突きと放った。全てヒットし、敵は苦し気な唸り声をあげた。

 

やっと立ち直った敵が長剣を差し上げて僕の斬撃を防ぐ。だが僕は縦切り、横斬りを放ち、わざと防御させたあとジャンプ斬りを繰り出した。

 

それも防いだ武者だったが、体重の乗ったジャンプ斬りを受け止めたせいでやや後ろにのけ反った。その隙を逃さず、僕は縦切り、横斬り、縦斬り、突きを連続して放った。

 

胴体に立て続けに斬撃を喰らったあと、やっと立ち直った敵がまた長剣を差し上げて僕の斬撃を防ぐ。だが僕は同じように縦切り、横斬りを放ったあとジャンプ斬りを繰り出した。ジャンプ斬りを受け止め切れず隙を見せた武者に、僕は畳みかけるように斬りつけた。

 

縦斬り、横斬り、突き、突き....

 

一方的にやられ続けてやる気を無くしたのか、武者は呻き声を上げると剣を放り出してうつ伏せに倒れた。

 

僕は剣を納めると部屋の中を捜索した。部屋の東側に燭台と大きな油入れが置いてある。僕は自分のカンテラを取り出して油入れから油を補充した。

 

僕は部屋の奥に行った。そこには、幅五メートルほどの塀のようなものが立っていた。その裏側には、周りの床と色の違う隠し床があった。高さは周囲の床と同じだったが、仕掛けによってせり上がってくるのだ。

 

僕は隠し床の右の端に立つと、振り返って油入れの横の燭台めがけてブーメランを放った。

 

飛んで行ったブーメランが燭台の火を消すと同時に隠し床がせり上がる。僕は戻ってきたブーメランを受け止めてベルトに挟むと、段差の上に進んだ。

  

右手と左手に廊下が伸び、その先に扉がある。僕は左を選んだ。窓からの弱い明かりで照らされた薄暗い廊下の突き当りの扉を開けて先に進んだ。

 

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その先は長い廊下だった。やや左手にカーブしている。全ての窓が塞がれており、入口と、遠くにある向こう側の扉の左右に立つ燭台の明りに照らされているが、光量が不十分で真ん中あたりは暗い。

 

ところどころ壁際に巨大兵士の鎧が飾られている。五、六十メートルほど進むと向こう側に格子がかけられている扉がある。

 

僕は自分のカンテラに火を点けてかざした。扉の手前には、壁沿いに左右二つづつ、火の消えた燭台がしつらえられていた。

  

僕は以前の転生の経験から、どうやって燭台のパズルを解けばいいのかを覚えていた。

 

左奥、右手前、左手前、右奥の順番だ。僕は急ぎ足で目的の燭台に向かった。

 

だが、一つ目の燭台に火を点け終わり二つ目に向かっていたとき、天井から騒がしい羽音がして僕は顔を上げた。吸血蝙蝠たちの群れが頭上に降りてくる。

 

だが僕は構わず、素早く移動しながら燭台に火を点けていった。四つの燭台に火がつくと同時に、扉にかけられた格子が引き上げられ、加えて不思議なことに、蝙蝠どもも大人しくどこかに引き下がっていった。

 

僕はドアノブに手をかけて扉を開けると、先に進んだ。

 

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扉の向こう側は同じくらいの長さの廊下だ。右手の壁にしつらえられた窓からの明かりのお陰で先ほどよりやや明るい。前方を見渡すと左手にカーブしたうえで行き止まっているようだ。廊下の右手の中ほど、そしてその向かい側の壁にも扉がしつらえられていた。

 

廊下の向こう、突き当りに人影が見える。全身を銀色に光る鉄の鎧で固め、戦斧と円盾で武装した竜男。二匹いる。

 

僕は爆弾袋から爆弾を一つ取り出し導火線に点火すると、手に持って右手の扉に近づいていった。たちまち竜男どもが見咎め、駆け寄ってくる。

 

僕は爆弾を下に転がした。竜男どもが僕の左右をとり、今しも襲い掛かろうとしたところで爆弾が爆発した。

 

僕は激しく吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。だが同時に、二人の竜男どもはあっけなくこと切れた。

 

僕は頭を振って立ち上がった。ダメージは喰ったが、時間は節約できた。

 

僕は扉を開けた。

 

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出た先は城壁の上だ。通路が建物に沿って登り坂になりながら左手、すなわち東に伸びている。いっぽう、正面にも城壁が真っすぐ伸びていてその突き当たりに高い見張り塔があった。

 

僕はまず目の前の見張り塔のほうに進んだ。

 

その瞬間、異音がして城壁上の通路の前方、見張り塔の手前と僕の背後に魔法結界が現れた。

  

その刹那羽音を聞いて目を上げると、翼を持ち円盾と剣を下げた魔物が上空にいた。ガーナイルだ。

 

僕はブーメランを抜き放つと敵に投げつけた。高速回転をしながら蜥蜴騎士にブーメランが向かっていく。警戒した相手が円盾を上げた。

 

次にクローショットを右手に嵌め、敵の盾についた金属紋章を狙って撃つ。飛び出した鉤爪が引っ掛かりたちまちガーナイルが引き寄せられた。クローショットを手離すと、僕は剣を抜いて袈裟斬りに斬り下ろした。間髪を入れず横斬り、縦斬りから突きを放つ。

 

四度の斬撃を喰らった敵がようやく立ち直った。

 

だが僕はここで、盾アタックの奥義を覚えてこなかったことを後悔した。その奥義があればこいつをワンターンで屠れるのだが。

 

だがまあいい。僕は相手に地上戦を仕掛けるのを避け、ひたすら距離を取って逃げ回った。

 

やがて諦めたガーナイルは再び羽ばたいて飛び上がった。

 

僕はすぐにブーメランを抜き放つと敵に投げつけた。ブーメランの風で警戒し、相手が円盾を上げる。間髪を入れずクローショットを右手に嵌め、敵の盾を狙って撃った。

 

鉤爪が引っ掛かりたちまち敵が引きずり降ろされる。クローショットを手離すと、僕は剣を抜いて突きを放った。さらに二度、三度、そして四度。

 

とうとう蜥蜴騎士は口からだらりと舌を出して剣を取り落とし、倒れた。

 

血払いして剣を鞘に納めると、僕は見張り塔のほうに向かった。通路の突き当りに小さな戸口があり、見張り塔内部の小部屋に通じている。足を踏み入れてみると、大きな木の箱が中に置いてあった。

 

蓋を開くと小さな金属の鍵が入っている。僕は鍵を仕舞うと踵を返して通路を戻った。城の建物に突き当たったところで右に曲がり、坂を登って頂上に行き着くと、扉を塞いでいた錠前に鍵を差し込んで捻る。錠が開いて鎖が落ちた。

 

だが僕はそこで中に入らず、歩いてきた城壁上の通路をさらに東のほうに進んだ。道は下り坂になっている。それが突き当たって右に折れた先に伸びた通路の突き当りにもう一つ見張り塔があった。

 

その見張り塔の壁の通路が突き当たった個所には格子のかかった戸口があり、その中に小部屋がある。

 

僕がその見張り塔に近づくと、その格子がガラガラと引き上げられ、内部から蜥蜴男どもが次々と飛び出してきた。

 

ふと目を上げると、見張り塔の頂点近くと中央辺りにある歩哨窓からブルブリン弓兵たちが現れ、火矢を弓につがえ僕に狙いを定めた。

 

包囲したつもりらしい。

 

だがその瞬間、鷹の鳴く声がした。上空を見上げると、鷹が城壁の上を通り過ぎ何かを落としていった。

 

途端に僕の前方にいた蜥蜴男どものただ中で爆発が起こった。六人ほどの魔物が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。それと同時に見張り塔の二つの歩哨窓に立って弓を構えていたブルブリンたちがゆっくりと倒れ始めた。胸に矢を受けている。弓兵どもは窓から転がり出て転落していった。

 

城壁から見下ろすと、モイがちょうど戻ってきた鷹を腕に止まらせたところだった。ラフレルやアッシュ、シャッドもいる。モイが鷹に爆弾を運ばせ、またアッシュが弓矢で援護射撃してくれたようだ(クッソ生意気な女だが腕は確かなようだ。)

 

ラフレルは肩に小型大砲のようなものを抱えている。シャッドはこの非常事態なのに後生大事に本を抱えていた。変な奴だ。

 

僕が彼らに手を振って挨拶すると、四人はどこかに走っていなくなってしまった。

 

僕は見張り塔の方まで走っていった。戸口から中に転がり込むと、内部にあった巨大な黒い箱の蓋を開ける。箱の中身は大きな黒い金属製の鍵だった。鍵を素早くポーチに仕舞った。 

 

城壁の上を走り、突き当たりで左手に折れて坂を登る。僕は城の建物の壁についた扉を開けて中に入った。

 

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部屋の中は薄暗い。

 

だが僕はすぐ部屋を少し奥に入り、そこで直角近く左にターンしてダッシュした。

 

足元の床が突然切れて奈落になっている。僕はそこを飛び越えると、向こう岸の床ブロックに足をかけた。その途端床ブロックがガタリと動いて、下にずれ始めた。脱落しそうだったのだ。

 

僕は構わず遮二無二進んでその先のブロックにどうやら這い登った。そのブロックはまだ固定されているようだ。

 

そこから周囲を見回すと、一メートル四方ほどの四角い床板が並ぶフロアは奥行十五メートル、横幅四十メートルほどだった。

 

部屋の西側の奥に先に進む通路と思われるものがある。だがフロアのところどころの床が、今通ってきた場所と同様に抜けている。うかつに足を踏み出したら床ブロックごと奈落に落ちるのだ。

 

僕は立っている場所から北西の方角を向き、歯抜けのようになったブロック群れの残りをダッシュで飛び移る経路を確認すると、駆け出した。

 

間隙を飛び越え、向こう岸に飛び移ると前転ダッシュする。それを繰り返し僕はとうとう部屋の西側の床まで到達した。

 

(本来なら、狼の姿になり、幽霊鼠を倒し、そして兵士の幽霊から道を教えてもらわなければ通過できない部屋なのだが、僕は転生の経験からズルして通る方法を知っていたというわけだ。)

 

僕は進路を見上げた。部屋の北西の隅から北に向かって登り階段か伸びている。だが、階段は始点からしばらく行くと右から崩れ削れてしまっており、数メートルで切れていた。そうしてできた間隙の向こう側に、階段の残骸が飛び飛びに続いている。

 

僕は階段を登りその縁に立った。足の下は底の見えない奈落た。一・五メートルほどの間隙を隔てて正面向こう側に三段分ほど残った階段の残骸がある。

 

僕は助走をつけて向こうに飛び移った。

 

さらにその先は、やや右側に寄った場所に同じような階段の残骸がある。少し右に横移動し、僕は再び跳躍し間隙を飛び越えた。次には左手側に寄った残骸がある。そこに飛び移ると、その先の階段はは終端まで続いていた。その左側がやや崩れているのを見て、僕は右に横移動し、掛け声をかけて飛び移った。だが距離が長い。

 

それでも何とか向こう岸の縁に手でしがみついた。

 

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這い上がって階段を駆け登ると、そこは広めの踊場だった。対角線の位置に、右手に向かう階段の入り口がある。

 

だが、階段の前には半月刀を提げた蜥蜴男が二匹控えていた。さらに踊場に一歩足を踏み入れた途端に異音がし、魔法結界か背後と前方の階段の入り口に現れた。

 

僕は反射的に剣を抜くと走り出した。魔物どももこちらに気づいた。僕は相手方に殺到するといきなり回転斬りを放った。吹き飛んだ二匹のうちの一匹を目掛けて、さっそく教わったばかりの「止め」をかける。飛び掛かって逆手に持った剣を突き立てる恐ろしい技だ。エグッ。

 

そいつを56したところで、もう一匹目が立ち直って起き上がった。僕はジャンプ斬りを繰り出しそいつも床に叩き伏せた。

 

剣を血払いして納めると、踊り場を横切っているうちに魔法結界が消えていった。僕は部屋の隅に進んでその先の階段を覗き込んだ。だがそこは一見して普通には渡れないとわかるほど破壊されていた。だが一定間隔を置いて、蔓草の形をした金属の装飾に覆われた灯篭が壁にはめ込んである。

 

僕はクローショットを両手に嵌めた。前方十メートルほどの左側にあった灯篭を狙い撃つと、飛び出した鉤爪が引っ掛かり僕はすぐさま引き寄せられ、灯篭にぶら下がった。

 

そこから今度は前方右側の灯篭をもう一つのクローショットで狙って飛び移る。さらに左側に飛び移り、最後には階段の終端近くの右側の壁の灯篭にまで辿り着いた。その下には階段がわずかに残っている。

 

鉤爪を開いて降り立つと、僕は階段を駆け登って先に進んだ。

 

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そこも広い踊り場だ。たちまち異音がして背後に魔法結界が浮かび上がった。対角線上の向こう側にやはり階段の入り口があったが、その前も魔法結界で塞がれており、さらに大型動物の頭蓋骨を兜替わりに頭に被った蜥蜴男たちが二匹立っている。

 

ここでも短期決戦を期して僕は剣を抜き敵影に駆け寄った。手近の相手がこちらを向いた途端に回転斬りを放った。そいつが吹っ飛んだところでまた上から飛び掛かり「止め」をかけた。

 

エグい方法でそいつを56したあと、もう一匹が一丁前に身体をリズミカルに上下させながら近づいてきた。そいつも回転斬りで吹き飛ばすと、剣を逆手に持って胸に切っ先を突き立て、同じように止めを刺してやった。

 

僕は剣を納め、踊り場を横切って隅にある階段を見上げた。階段が破壊されているだけではない。壁の左右にレールが取り付けられ、その上を棘付きの大型独楽のような装置が行き来している。ああ実に面倒な場所だ。

 

僕はミドナに頼んでスピナーを出してもらい、それに足を掛けると、起動させる前に行く先をよく睨んだ。

 

右側の壁にはレール上に棘つき独楽装置が一つ。左側にはそれが二つ行き来している。左側には階段の残骸がいくらか残っていたが、そこに立ったら独楽装置が襲ってくることは明らかだった。右側のレールから始めるべきというのはすぐ分かった。右側のレール上の独楽装置は階段の上半分ほどのところを行き来している。その独楽装置の動きは左側の二つと互い違いだった。右側の独楽装置が向こう側に進むタイミングに合わせて進むことができれば、最後に左側にスピナーを飛ばして飛び移って左側のレール沿いに階段上まで行くことができるはずだ。

 

僕は意を決してスピナーを起動させ、右側に体重をかけ移動させた。右手の壁のレール上の独楽装置がこちらに近づいて動いているときを狙って、スピナーをレールに乗せる。

 

たちまち僕は高速移動し始めた。みるみるうちに棘付き独楽装置が目の前に近づいてくる。

 

だが独楽装置が反転し向こう側に動き始めた。僕のスピナーはその後を追う。だがスピナーのスピードが速い。独楽装置の棘の回転が目の前に近づいてくる。左側を見ると、こちらとは互い違いに動いていた独楽装置が横を通り過ぎた。僕はすぐさまステップを踏んでスピナーをレールから飛び出させた。

 

左側のレールに移ったスピナーが高速で昇っていく。階段の終端から先はレールが並行になってその先の部屋の壁の途中で切れているのが見えた。スピナーが昇り切ると、僕は部屋の床に飛び降りた。

 

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いよいよこの城の頂上は近い。いまいる場所は東西に細長い部屋だった。僕が立っていたのは東側の端で、奥を覗くと部屋の中ほどの左手、すなわち南側に巨大な扉があり、それが太い鎖とゴツい錠前で閉じられていた。だがその扉の近くに背の高い人影が立っているのが目に入った。

 

鎧武者だ。さっき戦った奴と同じような鎧兜に身を固め、巨大な盾と剣を下げている。

 

だが僕は彼と戦う気はさらさらなかった。

 

怖いからではない。ただ単にめんどくさいからである。

 

南側の巨大な扉の左右に太い柱があり、扉の左側の柱の陰から灯篭が見え隠れしている。

 

僕はクローショットを右手に嵌めると、用心深い足取りで部屋の中ほどまで進んでいった。

 

クローショットを掲げて扉の左側を狙う。摺り足で進むと、柱の陰にある灯篭が見えて来た。その途端鎧武者が僕に気づいてこちらを向いた。

 

僕は灯篭に狙いをつけてクローショットを撃った。その瞬間、異音がして鎧武者を中心に魔法結界が浮かび上がってくる。だが一瞬早く鉤爪が灯篭に引っ掛かり、僕は瞬く間に引き寄せられ灯篭にぶら下がった。

 

今や、鎧武者の周囲十メートル四方が結界に閉じ込められていた。鎧武者は盾を掲げ剣を構えて僕のほうを威嚇したが、もはや僕には何の関係もない話だ。

 

扉の横に降り立つと、僕はポーチから大きな黒い鍵を取り出して扉を塞ぐ錠前に差し込んだ。

 

さてさて、やっとあの『ガ』のつくオッサンに会える。

 

鍵を捻ると果たして錠前が外れ、鎖が床に落ちた。

 

鎧武者の刺すような視線を背中に受けながら僕は重い扉を押し上げ、向こう側に出た。

 

(つづく)

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