黄昏の姫と緑の勇者:転生者チート編   作:nocomimi

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影の領域もダンジョンも一つもクリアしてない僕は聖剣をゲットする

僕は広場にいる敵の配置を確かめた。

 

二匹は広場の出口近くに陣取っており、近くにいる一匹が単独で右手の壁際をうろうろしている。

 

僕は慎重な足取りで、孤立した一匹に近寄っていった。そいつはこちらに気づくと、向きを変えて走り寄ってきた。

 

僕は動かずに敵をじゅうぶんに引き寄せると、いきなりダッシュして相手の脇をすり抜けた。

 

右手の壁際に近寄って進み、大きな木の根っこが壁を走っているあたりで急停止し、壁のほうに向かいながら妖精チビに合図した。

 

たちまち黒い結界が広がる。それと同時に、さっき引き寄せた影の使者がこちらに突進してきた。

 

黒鬼が結界に入りその身体を赤い稲妻が包む。

 

僕は、結界を張ったまま相手にぐいっと近寄った。体を右に向け、横向きに押し付けるように近寄せながらも、頭は逆に左に、すなわち壁のほうに向け、相手が攻撃を仕掛けてくるのを待った。

 

次の瞬間、黒鬼が腕を大きく振り上げた。しかも縦に振り下ろすための予備動作ではなく、横に大きく払おうとしている。

 

チャンスだ。

 

僕は相手に体を押し付けた体勢を保ったまま力を解放した。

 

その途端、僕の身体が大きく跳躍した。

 

結界攻撃においては、相手の身体に合わせて攻撃の狙いが定められる。黒鬼の巨体に加え、彼らが大きく腕を振り上げると、結界攻撃の狙いが自動的に高くなり、その結果高く跳躍できる瞬間があるのだ。

 

敵に一撃を加えたうえ、その身体を飛び越えた僕は、広場を囲む崖の上に降り立っていた。

 

そこはやや急な斜面ではある。だが、歩いてみると間違いなく脚で登れる。成功したのだ。

 

僕は斜面を登ると左に進路をとった。茂みを掻き分けていくと、やがて前方に壁がある場所に出た。

 

心の中に地図が浮かんだ。今まで通ってきたフィローネの地形に加えて、北東のほうに楔型に突き出た地形が浮かんでいる。僕がいる場所のすぐ近くだ。目の前の壁のすぐ向こうだ。

 

だが慌ててはだめだ。僕は今までの転生で、せっかくここまでこぎつけながら失敗したことがある。

 

僕は、その楔型の地形のやや先端のほうに近づくよう自分の位置を調節すると、数歩下がって大きく深呼吸し、そして一気にダッシュして壁に突進した。

 

僕は壁を抜けると、空中に飛び出していた。壁と見えたのは幻影だったのだ。

 

はるか数十メートル下に、さっき心の中に浮かんだ楔型の岩の張り出しが見える。

 

だが狼の姿なら、高所からの落下もある程度は耐えられる。

 

二、三秒すると、僕は狙った通り楔型の張り出しのやや先のほうに降り立っていた。

 

僕はほっと溜め息をついて胸を撫でおろした。

 

(いや、狼だから本当は胸をなでおろすことはできないのだが。)

 

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いずれにせよ、ここまで来れば僕の目的は達成されたも同然だ。

 

僕は先に行く道に顔を向けた。右手には、風の音を立てる石碑があるがそれは無視だ。

 

楔型の張り出しの根元のほうに進むと、壁に大きな洞窟があいている。

 

直進して洞窟に入ると、すぐに高木の生えた広場に出た。

 

崖に囲まれた五十メートル四方ほどの広場だ。そこここに年を経た高木が生えている。森はますます深いらしく、既に高く昇ったはずの太陽の光もほとんど差し込んでこない。

 

これまで進んできた小道は正面の岩壁にぶつかって途絶えている。

 

岩壁には本来あるべきと思われた洞窟の形にぴったりと重なるように、色の異なる丸い岩が嵌っていて、その岩肌はよく見ると木の年輪のようなものが刻まれていた。

 

だが、僕はどうすれば先に進めるのか知っていた。

 

左手の壁際に、さきほど見たものと同じような石碑があった。だが、少し形が違って、中心に三角形を三つ重ねた図形が書かれている。

 

近寄るとメロディが聞こえた。僕は目を閉じてメロディに耳を傾け、次いで、首筋を高く反らしてそのメロディを模倣して吠え始めた。メロディは単純なものだった。それを何度か繰り返す。

 

吠え終わったあと、異様な笑い声が聞こえてきた。

 

頭上を見ると、木々の間を通って奇妙な案山子が一体降りてくる。体格は小さめで子供のようだ。片手にカンテラ、もう片方の手にブリキ製の小さなラッパを携えていた。

 

大きな木の実でできた案山子小僧の頭には骸骨を思わせるような形の眼窩と口が彫られており、その上には藁で編んだ尖り帽子が乗っている。

 

幽霊案山子小僧はラッパのマウスピースを口に当てると音を吹き鳴らした。それと同時に頭上の木々の枝から次々と案山子たちが降下してくる。こちらはもっと体格が大きい。手には何も持っていないが、見るからに悪そうな雰囲気だった。 

 

幽霊案山子は小馬鹿にするような笑い声を上げると踵を返した。見ると、行く手を阻んでいた岩壁に、いつの間にか洞窟がぽっかり口を開けている。案山子小僧はその洞窟の中に走り込み向こう側に行ってしまった。

 

僕はダッシュして後を追った。面倒だが、あの案山子小僧と追いかけっこするのが先に進む鍵なのだ。

 

洞窟は短く、すぐに目の前が開けた。同じくらいの大きさの広場だ。向こう側半分は浅い泉になっている。右手に、先に通じる短い洞窟があった。正面、そして左手には、最初の広場で見たようなのと同じ形で、岩壁に開いた洞窟とおぼしき形にぴったりと色の異なる岩が嵌まっている。

 

案山子たちが後を追ってくる。だが僕は構わずに右に進路をとった。右手の洞窟は浅い泉の手前にある。洞窟を駆け抜けると、向こう側はところどころ大きな茸が生え、苔むした岩が目立つ広場だった。

 

奥のほうにまで小道が続いているが、岩壁で行き止まっている。右手にはやや高い岩棚があり、その上に高木が一本植わっている。

 

岩棚に走り寄ってその上に目をやると、あの幽霊案山子が高木の根本で踊っているのが見えた。岩棚に前足を掛け段差を登ると、僕はここを先途とばかりに幽霊案山子小僧に突進し体当たりを喰らわせた。

 

相手がギャアと悲鳴を上げ後ろによろめく。その途端にいましも僕を襲おうとしてきた案山子どもがバラバラに崩れ霧散してしまった。

 

だが案山子小僧はまだ死んではいなかった。驚くほどの早さで僕の脇をすり抜けると、入ってきた洞窟を走り抜けて向こうに行ってしまった。

 

僕は岩棚を降り、来た道を戻って走り始めた。だがまた後ろから四匹ほどの案山子どもが追ってくる。僕は洞窟を出るまで走った。以前通った広場に戻ると、浅い泉の向こうにある二つの塞がれた洞窟のうち右手の一つが開いている。

 

僕は泉に足を踏み入れ、開いた洞窟の中に進んだ。洞窟を抜けた先は木の少ないガランとした広場だ。左手の壁には洞窟の入り口があるが今は塞がれている。右手には先に続く洞窟が見えるほか、奥には粗い石段があって、それが五メートルほど高い場所に設置された横向きの通路に続いている。近づいて見てみるとその通路は巨大な木の幹を横倒しにして削り出したようだ。 

 

そこで僕は気づいた。

 

おっと、こっちではない。 

 

目の前にある巨大な木の幹を横倒しにして作った通路は行き止まりになっているということは思い出した僕は、来た道を戻って浅い泉の広場まで戻った。

 

今度は泉と接していないほうの洞窟に入ってその先に抜けた。すると、最初は塞がっていた突き当りの壁に今は洞窟がぽっかり口を開けている。僕は迷わず洞窟に駆け込みその先に抜けた。 

 

次の広場は、右手にやや深い池がある。池の対岸には高台があり、そこに人影があった。あの幽霊案山子小僧だ。水面から高台への高低差は大きく、こちらからでは到達できそうにない。だが、池の左手奥に洞窟がぽっかり空いており、向こう側に行けそうに見えた。僕は池に飛び込むと洞窟を目指した。しかし、四匹ほどの案山子の化け物どもが次々と周囲に降りてきた。

 

僕は犬かきして前進した。数メートル先にあった岸に近づく。だが案山子どもが襲ってくるのを見越してやや右に進路を変え、案山子どもから僅かに距離をとり、岸に前足をかけて這い登った。

 

すぐに案山子どもが近づいてくる。僕は体を一回転させた。案山子どもの攻撃が弾き飛ばされる。僕は素早く牙の一撃を振るって案山子どもを撃破していった。 

 

敵が全滅すると、僕は岸から続く石段を登った。やはりだ。さきほど見えた高台の裏手に通じている。高台の端では幽霊案山子小僧が気持ちよくラッパを吹きながら踊っている。僕はここを先途と殺到すると、必殺の一撃を喰らわせた。

 

案山子小僧はまたも悲鳴を上げて吹き飛んだ。だが、何事もなかったかのように立ち上がると、薄気味の悪い笑い声を立てて高台から飛び降り、僕が入ってきた洞窟のほうに走り抜けていった。

 

僕も後を追って高台から飛び降りた。洞窟を抜けて、最初に案山子小僧を攻撃した場所に戻る。周囲にまたお化け案山子どもが降りてくる。僕は構わず前進し、二番目に入った広場に戻った。見ると、浅い泉の向こうにある左側の洞窟が開いている。右側のもう一つは閉じていた。

 

僕は開いているほうに入っていった。洞窟を抜けると今までとは様子の違う広場に出た。広々としているだけでなく、突き当りには明らかに人工物と思われるアーチ状の出口がある。だが、今はレンガが積まれて塞がれている。右手には洞窟があり、その上には岩とも木ともつかぬ材質でできた張り出しがあった。

 

張り出しの上に動くものがあった。案山子小僧だ。その時また案山子どもが四匹降ってきた。僕は横っ飛びして包囲から逃げると、迷わず右手の洞窟に入っていった。

 

洞窟を抜けると、そこは見たことのある広場だった。奥に粗い石段があり、高所にしつらえられた通路に至るようになっている。一瞬既視感があったが、さっき幽霊案山子小僧が見えたのだから間違いない。

 

石段に駆け寄ると前足をかけて這い登っていく。だがそうしているうちに案山子どもが三匹降り立ってきた。

 

しかし僕は知っていた。

 

身体が右または左にある壁に接しながら段差をよじ登ると、僅かだが早くよじ登れるのだ。

 

そのようにして、僕は身体を左に寄せて壁ギリギリで段差をよじ登った。素早く一番上まで登ると、通路に上がった。通路を進むと、岩壁に穴が開いて先に進めるようになっている。

 

だが、案山子どもがまたも周囲に降り立ってきた。僕は強引に速度を上げて押し通った。洞窟に飛び込んで走り抜けると、前方では案山子小僧が張り出しの終端で踊っている。僕は追いすがる案山子どもを無視して、目標に飛び掛かった。

 

案山子小僧がまたも悲鳴を上げて倒れた。だが即座に起き上がり、笑い声をたてると跳躍して張り出しの下の地面に飛び降り、右手の壁にあるアーチ状の出口に向かった。

 

出口を塞いでいたレンガが消失し、案山子小僧は出口を通り抜け向こう側に走っていった。

 

僕は敵を追って跳躍し地面に降り立つとアーチ状の出口をくぐった。その先も同様の雰囲気の広場で、木の根や苔で覆われた壁のところどころに直線的に切った石を積んだ石壁が露わになっていた。大昔には壮麗な建物があったのかも知れない。広場の左手にまた洞窟があるのを見つけ、僕はそこに向かった。

 

その洞窟を抜けると、ひときわ広い円形の広場を見下ろす場所に出た。直径は二百メートルはありそうだ。かつては美麗であったであろうが、今は苔むした石壁で囲まれ、各所に大きな岩や、昔は演説台として使われていたと思しき平らな台が置かれている。中央には高い円柱が立っていた。幽霊案山子小僧はその上にいた。

 

僕が広場に降り立つと、案山子小僧は悔しそうに地団太を踏んだ。そして跳躍して奥の床の上にあった平たい岩の上に立つと、ラッパを口に当てて吹き鳴らした。

 

すると四匹ほどのお化け案山子小どもがまたぞろ湧いて出てきた。

 

ああ面倒くさい。だがここは辛抱だ。

 

ここを乗り越えられれば冒険が大きく進展するのだ。僕は知っていた。

 

そのためには、案山子小僧がラッパを吹いている瞬間を狙って攻撃しなければならない。それ以外のタイミングで攻撃すると、奴は掻き消すように姿を消して瞬間移動してしまうのだ。

 

僕は敵をまとめて引き寄せたあと、案山子小僧がいる岩の近くで足を止めた。だが、本命には目もくれず、目の前の一匹に襲い掛かって首をもぎ取り破壊した。残りが腕を振り上げて襲ってくるのを回転攻撃で弾き、それでも立ち上がってくる個体に片端から体当たりする。そうしながらも僕は待った。

 

敵の大部分が倒れた瞬間、案山子小僧が大きく息を吸ってラッパを吹き鳴らした。僕はその刹那、案山子小僧のほうに向きを変えて、相手がいる岩の上に飛び乗った。案山子小僧は慌てて逃げようとしたが僕のほうが一瞬早かった。狼の一撃を受けた相手は悲鳴を上げて岩の上に転がった。だがすぐ立ち上がると、飛び上がって別の岩の上に立った。

 

だが、僕は知っている。奴はラッパを吹いている間は逃げられないのだ。案山子どもがまた降りてきて襲い掛かってくる。数を増やしており、一度に六匹降りてきた。

 

僕は意図的に遅い速度で逃げた。増援を呼ばれないよう、案山子どもの攻撃を避けながらこちらからは仕掛けずに広場を走り回った。案山子小僧のいる岩を特定すると、近づきつつも意図的に標的を無視し、案山子たちを相手にした。

 

六匹を引き寄せたあと、振り返って縦に並んだ二体を強烈な体当たりで撃破した。さらに右手にいた個体の首筋を嚙みちぎる。残り三体が襲い掛かってきたところでバックホップして回避した。体当たりして一匹を破壊し、もう一匹に飛び掛かって押し倒す。その瞬間案山子小僧が息を吸った。

 

僕はまたも方向転換し案山子小僧に向かった。床から一気に飛び上がり岩の上の相手に襲い掛かる。鋭い一撃で案山子小僧はギャアと喚いた。だが立ち上がると跳躍して別の岩の上に降り立つ。

 

案山子小僧はラッパを吹いて増援を呼んだ。一度に呼ぶ数がますます増えている。次々と突進してくる案山子お化けの脇をすり抜け、まっすぐ親玉に向かった。

 

挑発するように案山子小僧が踊るその岩の前で、僕はミドナに合図して結界を出した。追いすがってきた案山子どもが次々結界に入る。手近にいた個体が僕を狙って腕を振り上げる。

 

ギリギリまで待ったあと力を解放した。魔法の力で跳躍し、僕は七、八匹の案山子どもを一気に殲滅した。地面に降り立つと、案山子小僧が大きく息を吸う音が聞こえる。

 

僕は相手に向き直り力を溜め、そして飛び掛かった。案山子小僧が打撃を喰らって悲鳴を上げ、倒れた。

 

案山子小僧はむくりと起き上がると跳躍した。だが、周囲を見回してももはや他の岩の上には降り立っていない。かき消すようにいなくなってしまったのだ。あれほどいた案山子どもも消えている。ただ、薄気味悪い笑い声だけが聞こえる。それもやがて遠ざかり、聞こえなくなっていった。

 

追いかけっこが終わったのだ。

 

見ると、広場の壁のひと隅にあった、さっきまでレンガで塞がれていたアーチ状の出口が開いている。僕は出口に入り、先に進んだ。

 

石積みの壁に挟まれた小道を抜けると、すぐ別の広場に出た。一辺三百メートルはありそうな四角い広場で、三方を石細工の壁で囲まれている。右手の壁は大理石のファサードになっていて、その下にある扉を守護するがごとく大槌を持った高さ五メートルほどの巨大な石像が二体立っている。

 

その正面には崩れ果てた階段がある。何もかもが苔むしているが、彫刻の精巧さや建造物の巨大さから、大昔にはさぞかし壮麗な神殿がここにあったのだろう。

 

広場の中央あたりで床を見ると、三角形を重ね紋章が描かれた二メートル四方ほどの床板がある。

 

僕は紋章の上に立つと、大きく首を反らして遠吠えをした。この隠された森で最初に入った広場で吼えたのと同じメロディを二度繰り返したあと様子を見る。

 

すると足元の紋章が光を発した。

 

次に、僕のいる場所から石像の鎮座しているところまで並んだ同じ大きさの床板が光を発する。気が付くと光る床板以外の場所の床は消失し、深い奈落になっていた。

 

僕のいる紋章の床板と、その左右一枚づつ、計三枚の床板が一行をなし、僕の背後側にももう一行同じ枚数が並んでいる。そのさらに後ろには中央に一枚床板がある。

 

前方には、さらに左右一枚づつを加えた計五枚の床板が一行となり、その同じ枚数がもう一行向こう側にも配置され、その端から数えて二番目と四番目の床板に石像が乗っていた。その後ろには、五枚一組の真ん中が欠けた四枚の床板が並んで終端となっている。 

 

やがて像がまるで命を得たように動き始めた。体に彫り付けられた文様が青い光を発し始めている。手にした大槌の石突きで床を打ち鳴らすと、跳躍して僕のいる列の二つ前と二つ後ろの床板にそれぞれ降り立った。重い像の着地で地響きがした。

 

次の瞬間前後の石像がそれぞれ言葉を発しはじめた。

 

「我ラハコノ地ヲ.....」

 

ああ、はいはい。

 

僕は石像の言葉を無理やり「スキップ」した。

 

やるべきことはわかっている。

 

僕はまず右に動いた。すると前方にいた像が全くの逆方向に動く。一方で後方の像はそのままだ。

 

僕は一つ後ろに下がった。前方の像は一つ向こう側に行く。後方の像はやはり動かない。

 

次に、一つ左に行った。二つの像はともに動かない。前方の像は僕と逆方向に動こうにも行く手を阻まれている。

 

僕は一つ前方に飛び、もといた床板に戻った。すると後方にいた像が追随した。こちらの像は僕と同じ方向に動くのだ。前方の像は僕と逆に、こちら側に一つ動く。

 

もう一度右に飛ぶ。前方の像は一つ左に、後方の像は同じ右手に移動する。今度は前に一つ動くと、前方の像は一つこちら側、後方の像は後ろからついてくる。

 

前方の像は、五枚一組の行の手前側の左端にいる。僕はもう一つ前進した。前方の像は動かないが、後方の像が追随してくる。

 

とうとう二つの像が同じ行に位置した。

 

次に僕は左に一つ進んだ。すると左右の像がそれぞれ内側に動いた。もはや二体が隣りあわせだ。

 

さらに左に動くと、どちらの像も動かない。かちあってしまうと二体の像はそれ以上進めなくなるのだ。

 

僕は今度は向きを変え正反対に一つ動いた。左右の像はたちまち分かれる。片方は左端、もう片方は右から二番目の床板だ。

 

僕はもう一つ右手に動いた。右の像のみが同じ方向に追随する。二つの像は、五枚一組の行の手前側の両端にそれぞれ配置された。

 

次に、二つ一気に手前側に移動すると、今度は右手の像は動かないまま、左手の像が一番向こう側の列の左端に降り立った。

 

最後に僕は左に一つ、前方に一つ飛んだ。右手の像は僕に追随し、左手の像は僕と鏡像の動きを行って、見事元いた床板に降り立った。

 

途端に石像たちは深い唸り声を発すると動かなくなった。謎が解けたのだ。 

 

石像たちに守護されていた扉が消失した。その向こうには新たな広場が見える。

 

僕は迷わず前進して出口をくぐった。短い階段を上り、向こう側に出ると、そこは石垣とその上に林立する高木に囲まれた円形の広間だった。

 

広間の中央には、四角い台座の上に剣が一本刺されて立っている。

 

ああ、やっと、やっとたどり着いたのだ。

 

僕は知っていた。

 

この剣を手に入れることこそが、この冒険を早く完了するための最大の鍵だったのだ。

 

(つづく)

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