黄昏の姫と緑の勇者:転生者チート編   作:nocomimi

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聖剣の力濫用してやりたい放題編
聖剣を手に入れただけでは飽き足らない僕は更なるアイテムを不正にゲットしに行く


僕は目の前に刺さっている剣に近づいた。柄と鍔に美しい装飾が施された長剣だ。

 

だが途端に妖精チビが僕の背中から転げるように飛び降りた。 

 

やにわに剣の刀身から強烈な光が発した。

 

妖精チビは悲鳴を上げて顔を覆い、慌てて後ろに飛びのいた。

 

光と同時に、物凄い風圧が僕を襲う。

 

剣から発する力が僕の身体から何かを引き剥がしている。まるで、寸法の小さすぎる服を誤って着てしまったあと、誰かがそれを力づくで脱がそうとしているかのようだ。

 

だが突然それは終わった。剣は光を発するのをやめ、風は収まった。

 

僕は二本の脚で立っている自分に気づいた。人間に戻されたのだ。

 

そして僕は再び勇者の服を着ていた。

 

僕は台座から剣を引き抜いて右手に握ってみた。

 

剣を左右に振ってみると実にいい感じだ。

 

これだ。これが必要だったのだ。

 

この剣はトアルの鉄の剣など比べ物にならないほど威力も高い。

 

また、これがあれば、狼と人間との間を自由に変身できるようになる。

 

なにより興味深いのは、この剣を手に入れた途端に、ミドナとかいう妖精チビの態度がガラリと変わることだ。

 

「剣が持ち主と認めた...!」

 

妖精チビが呟いた。それ以降の彼女との会話は上の空で聞き流した。

 

なぜかミドナが肩にしなだれかかってきた。なにやら鏡がどうとか言っている。

 

適当に頷いておくと、彼女は恥ずかしげなしぐさをして僕の影の中に姿を消した。

 

すっかりしおらしくなっちゃって..まあ。

 

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僕は達成感の余韻に浸りながらも考えた。

 

フィローネの影の領域に戻らねばならない。

 

僕はミドナを呼び出すと、フィローネの森南に戻りたいと告げた。影の使者たちと戦った場所だ。

 

僕はすぐに狼の姿に変えられた。ミドナが浮かび上がってクルクルと回転する。僕の身体は黒い破片のようになって上空に吸い込まれていった。

 

何秒かすると、目的地についた。フィローネの泉の南側の広場だ。

 

僕はすぐにダッシュして、広場から出て泉の脇を抜けると洞窟に入った。

 

洞窟には黒いデクババが生えている。それを通り過ぎたところで停止し五感を集中すると、手のひらを二つ合わせたくらいの大きな蟲が地面を蠢いているのが見えた。

 

僕はすぐにミドナに顔を向け合図した。結界が広がり、蟲の身体を赤い稲妻が包む。そこで力を解放すると、僕は魔法の力を借りて跳躍した。蟲が致命傷を負って倒れ、その遺骸から輝く光の塊のようなものが浮上した。光の雫だ。

 

雫はとりあえずそのままにしておくことにした。浮上してから回収できる高さに降りてくるまで何秒かかかるのだ。

 

洞窟をもう少し進んで、もう一匹蟲を片付け、やはり雫を放置し先に進んだ。

 

今度は柵に突き当たったところで左に進路をとり、油売りの小屋に向かった。

 

小屋の裏手にまわり、わざと壁に体当たりする。ジジジ...という音が聞こえた。

 

そこで意識を集中すると、例の蟲が空中をゆっくりと飛んでいる。僕はミドナに合図して結界を出させ、そいつが赤い稲妻で包まれた途端に襲い掛かった。

 

落ちた蟲の遺骸から光の雫が出る。それもそのままにしておき、僕はミドナに顔を向けた。

 

「どうした、リンク?」

 

ミドナが聞いてきた。僕は人間に戻りたい、というニュアンスを込めて唸った。するとすぐに彼女は僕を人間に戻してくれた。

 

(考えてみれば、この妖精チビはかなり有能だし親切なやつだ。最初の態度のせいで第一印象が悪かっただけだな。)

 

僕は人間の姿で油売りの小屋の扉を開き中に入った。

 

内部は酷い有様だ。ゴミなのか紙なのかよくわからないものが散らばって、家具や道具も実に雑然と置かれている。

 

僕は部屋の隅に身を寄せるとミドナに狼に変えてくれるよう頼んだ。すぐに僕の姿が狼になる。

 

そして部屋の奥に顔を向け五感を集中すると、箱の上にあの油売りの男が登っていて震えているのが見えた。

 

「あ..ありえねえ..何なんだよあのでかい虫は...」

 

男が呟く。同時に、どこからか雷を纏った小さな生き物が二匹飛び出てきた。意識を集中すると蟲どもだとわかる。

 

僕はすぐにミドナに合図して結界を出させると一匹づつ確実に仕留めていった。

 

すぐに部屋の隅に下がってミドナに合図し、人間に戻してもらうと、蟲どもの遺骸から落ちて来た光の雫を回収した。

 

そのまま扉に手をかけて外に出る。小屋の裏手に回り、そこに浮いていた雫も回収すると、再びミドナに合図して狼に変身した。

 

この雫集めがまた面倒なのだが、仕方がない。僕は先ほど通り過ぎた柵のほうに走って戻ると、柵の右脇の地面を掘って向こう側に抜けた。

 

意識を集中するとそこにも二匹の蟲がいるのが見える。慎重に距離を詰めたあとミドナに合図し結界を出させ、一匹づつ仕留めた。今回は虫たちの遺骸から出てきた光の雫が降りてくるのを待つ。

 

降りてきた光の雫を二つ回収すると僕は柵の向こうの小洞窟に飛び込んだ。しばらく進み、最初の燭台の背後にある穴を掘って向こう側に出る。すると出口はもうすぐだ。

 

洞窟から抜けると、迷わず左手に岩壁に向かって突進し体当たりした。またジジジ..と羽音が聞こえる。

 

意識を集中すると、蟲の姿が見える。僕は慎重に距離を測るとミドナに結界を出させ、敵を捕らえた瞬間に力を解放した。

 

蟲が致命傷を負って落ちる。僕は少し待つと蟲の身体から出てきた雫を回収した。

 

今度は、北方の盆地のほうに顔を向ける。盆地は変わらず毒霧で満たされている。

 

だが僕は知っていた。この毒霧、実は見掛け倒しで、カンテラを振りながら前転を繰り返せば簡単に抜けられるのだ。

 

僕はミドナに頼んで人間に戻してもらった。そして盆地の際に立ってカンテラを取り出して着火した。

 

カンテラを振り、そして前転ダッシュを二度繰り返して毒霧に飛び込んでいく。

 

二度目の前転ダッシュが終わった瞬間、すぐさまカンテラを振る。このタイミングが少しでも遅れると毒霧を吸い込んでしまい気絶することになるから僕は真剣だった。

 

そしてまたすぐさま二回連続前転ダッシュ。このサイクルを数回繰り返すと、僕はほどなく向こう岸の地面に到着した。

 

うまく行かないときもあるが、上首尾に行けばこんな毒霧なんてことないのだ。

 

カンテラを仕舞い、到着した場所を見渡す。前通ったときには、そこの地面に蟲どもが二匹潜んでいた。

 

だが、その時僕が見逃してやったせいか、今は安心したように地面の上をうろつき回っている。

 

僕はミドナに合図して狼に変身すると、すぐさま蟲どもに飛び掛かって一匹づつ倒し、雫を回収した。

 

僕は狼姿のまま前方にある洞窟に入った。

 

洞窟を抜けると、向こう側の広場に入った途端、魔法結界の柱が背後に落ちてくる音がした。

 

(考えてみれば、僕は一度この広場に来て閉じ込められたはずなのに、簡単に入り口から入れるというのもおかしな話なのだが....)

 

僕は前方右手のほうで孤立している影の使者に近寄ると、ミドナに結界を出させてその中に敵を捕らえて一撃で倒した。

 

さらに、二匹固まっている連中に接近し、すぐにミドナの結界に入れて一挙に殲滅した。

 

影の使者たちの身体がバラバラになって上空の渦巻に吸い込まれる。

 

僕はすぐに走って広場から抜け、以前タロを助けた巨木の神殿前に至る回廊に出た。

 

巨木の根を使った通路を登っていき、巨木の足元にある広場に到達した。

 

すると真ん中あたりに置いてある切り株の上に白い光の塊が見える。意識を集中すると、猿だ。

 

それと同時に、蟲どもが二匹どこからともなく現れた。

 

だが僕はそいつらを完全に無視し、広場の隅に身を寄せるとミドナに合図して人間に戻った。

 

僕は広場の奥、巨木の根元に歩み寄った。そこには蜘蛛の巣が濃く張った洞の入り口がある。

 

カンテラを取り出して蜘蛛の巣を焼き払うと、僕は洞の中に進んでいった。

 

僕は知っていた。これは最初のダンジョンなのだが、聖剣さえ先に手に入れていれば、影の領域を解決しなくても入れるのだ。

 

だが、それと同時に、僕はこのダンジョンをクリアする気も毛頭なかった。ある道具を手に入れたらすぐにおさらばするつもりだったのだ。

 

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奥に入ると幅十五メートルくらいの部屋に出た。入り口左右に燭台が置いてあり、そこにはまだ火がついていた。

 

部屋の中を見回してみた。奥行は五十メートルくらいで、翼のような装飾のついた木のポールが何本か置かれている。

 

奥の突き当りにある高い舞台の下から猿の鳴き声が聞こえてくる。檻が置いてあってその中に閉じ込められているのだ。檻の脇にはボコブリンがいる。

 

僕は連続前転してダッシュして食人鬼に駆け寄ると、いきなりジャンプ斬りを叩きつけた。聖剣の威力はてきめんで、鬼は一撃で崩れ落ちた。

 

次に回転斬りを放って檻を叩き壊す。

 

すると解放された猿は突き当りの舞台から下がっている蔦をよじ登って、上からこちらに来るよう手招きをし始めた。

 

ミドナが何か言ったが僕は聞き流し、今度は踵を返して途中に生えていたデクババのほうに向かった。

 

デクババに剣を二度ほど叩きつけて退治すると、その花弁から出てきた種入りの実を地面から拾い上げ、抱えて先ほどの舞台の下に持っていった。

 

舞台から垂れ下がった蔦には、人間の頭ほどの大きさの毒蜘蛛が二匹取り付いている。

 

僕は手近の蜘蛛によく狙いを定めると、デクババの実を思い切り投げつけた。

 

実がぶち当たると蜘蛛はあえなく転げ落ちて痙攣を始めた。

 

僕は部屋の中を戻り、もう一本生えていたデクババを刈ると、その実を持って舞台の下に戻り、もう一匹の蜘蛛に投げつけた。

 

蜘蛛どもを退治すると、僕は蔦に手をかけて登っていった。

 

猿のいる場所まで行くと、猿はその先の扉の前でしきりに鳴きかけてくる。

 

扉を開けて次の部屋に入った。

 

今居る場所からは階段で床に下るようになっていて、そのすぐ先にまた階段があり、部屋の中央にある小高い舞台に登るようになっている。その舞台の前方、右および左の壁に、前の部屋で見たのと同じような舞台が張り出しており、またその奥の壁にはそれぞれ扉がついている。

 

僕は階段を降り、次いで中央の小高い舞台への階段を上っていった。

 

それと同時に、天井からとんでもなく巨大な蜘蛛が逆さにぶら下がりながら降りてきた。

 

大きさは胴体だけでも手押し荷車ほどある。背中にはまるで髑髏の眼窩を思わせる大きな丸い文様が二つついていた。

 

ミドナが悲鳴を上げた。

 

「リンク、早くそいつを倒せ!私そういうの無理なんだよ!」

 

ああ、はいはい。

 

僕は剣を抜いて小高い舞台に駆け登り、降りてきた蜘蛛と対峙した。だが僕はまだこちらからは仕掛けなかった。

 

こいつは、攻撃体勢を取ったとき以外には斬りかかっても刃が徹らないのだ。

 

僕は身構えたまま待った。やがて巨大蜘蛛がカチカチと牙の音を立てながら上半身を上げて攻撃体勢を取った。

 

その瞬間僕は回転斬りを放った。聖剣の刃が敵の胸辺りにぶち当たる。回転の勢いで、さらに二撃目の斬撃が蜘蛛の胸を抉った。

 

巨大蜘蛛は呆気なく痙攣を始めた。

 

「ミドナ、もう終わったよ」

 

僕が言った。彼女は恐る恐るの様子で出てきた。

 

「ほ...本当に倒したのか?お前が?」

 

彼女は尋ねる。

 

「ああ。こいつはそんな強敵じゃないからね」

 

僕は答えた。

 

「だって、お...お前..ただの田舎村の若者じゃなかったのか?」

 

ミドナはまだ半信半疑だ。

 

「もちろん僕は田舎村の若者さ」

 

僕は剣を血払いして納めた。

 

僕は自分が転生者であることはまだ明かさないつもりだった。

 

それはまた、ミドナに対してある厳しい真実を告げることに繋がるからだ。

 

遅かれ早かれその時は来る。だがまだ、今はその必要はない。僕はそう思った。

 

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僕はカンテラを取り出すと、小高い舞台の上にあった四つの燭台に火を点けた。

 

するとたちまちガラガラと音がして、今いる舞台の北側にあった隠し床がせり上がってきて、部屋の北端にある扉に通じる張り出しに至る通路となった。

 

猿も北側の扉の向こうに行きたがっている。僕は隠し床を渡り、北の扉に手をかけて開け、向こう側に出た。

 

扉の先は野外だった。扉の前に狭い床があり、そこから長い吊り橋が北のほうに伸びている。その先にはもう一本の巨木があり、その側面にも扉がしつらえてあった。

 

猿は迷わず吊り橋を渡っていった。どうやらこの先に仲間がいるらしい。

 

そこから先に起こった出来事を僕は無理やり「スキップ」した。目の前の吊り橋は無残に破壊されている。

 

ミドナが姿を現した。

 

「あぁあ、先に行けると思ったのにあいつなんてことするんだよ」

 

僕は何も言わなかった。別の不正な方法で、この吊り橋の先にある場所に行けることを僕は知っていたからだ。

 

僕は踵を返して、出てきた扉を開けると部屋の中に戻った。

 

猿もついてきた。猿は隠し床を渡り、中央の舞台に走るとついてくるよう手招きする。

 

猿に近づくと、そいつは天井からぶら下がっている、西側の壁に行き着くロープに器用に飛びつき、その中央まで移動すると、両足でロープをつかんで逆さになり、しきりに鳴きかけてきた。

 

僕は迷わず舞台の端に行き、猿に飛び付くとその手を握ってぶら下がり、勢いをつけて向こう岸に飛び移った。

 

向こう岸の扉を開けて、猿とともに向こう側に抜けた。

 

そこは暗い通路の中途になっていた。右手は岩壁に行き当たっており、左手には遠くに光が見える。

 

迷わず左手に進み、しばらく行くと蜘蛛の巣が通路を塞いでいる。カンテラで焼き払いさらに前進する。

 

大きな部屋に出た。その部屋は天井が高くかなりの広がりがあり、ところどころが深い沼になっていた。入口から二十メートル四方ほどは広場になっていて、真ん中にデクババが生えている。そこから北のほうに向けて、数か所床が脱落した小さな橋が沼の上にかかっており、その先には同じような広場があり、数段の階段の上に扉がある。また、そこから西方にも同じような壊れた橋が伸びており、その先にも同様の扉があったが、そこには鎖がかかっており錠前で閉じられていた。

 

僕はまず橋を渡って、北方の広場につくと、その突き当たりの壁の扉を開いた。

 

その先は野外だった。木を彫り込んで作った幅二メートルほどの通路が北に続き、途中には長さ十メートルほどの橋がかかっていて、そこから北の突き当たりにある別の巨木の壁にしつらえた扉に向かうことができるようになっている。

 

橋は壊れてはいなかったが、奇妙なつくりをしていた。橋の真ん中にやぐらのようなものがあって、その天辺に風車がついているのだ。

 

だが僕は気にせず、連続で前転してダッシュすると、橋を渡って向こう側の通路を前に進み、突き当たりの扉を開くと、そこも天井の高い広い部屋だった。

 

右手を見ると大きな宝箱がある。歩み寄って蓋を開けると中には小さな金属の鍵が入っていた。

 

鍵をポケットに入れ踵を返すと、僕は入ってきた扉を開けて外に出た。

 

また連続前転を繰り返して南に戻る。橋を渡り、突き当たりの扉を開けると、中に入った。

 

僕がいる広場の端には枯れたデクババの実が落ちている。

 

僕はそれを拾うと、広場の西側の、壊れた橋の近くまで持っていった。

 

壊れた橋の上から、中ぐらいの大きさの蜘蛛がぶら下がってきている。僕はデクババの実を投げつけて蜘蛛を退治すると、思い切り跳躍して向こう岸に残っていた橋の残骸に飛び付いた。

 

よじ登ると、西側にあった扉に近づいて、鍵を錠前に差し込んで開錠した。

 

扉を開けると、その先の部屋は、天井が広く開いているようで、空からの光が差し込んで明るかった。入ってきた場所から通路と吊り橋が西に延びていて、そこから階段を下って数メートル下の床に降りるようになっている。猿はいきなり跳躍して床まで降りると、部屋の真ん中あたりにある太いポールに駈け寄った。見ると、ポールの上に檻が置いてあって、その中に猿が閉じ込められていた。

 

僕は吊り橋を渡った。ところが橋を渡り切ると、綱が切れたのか床板のほとんどがいきなり脱落してしまった。

 

だがそれは想定ずみだ。僕はバックフリップすると、橋の下の床に降り立った。

 

そして迷わずポールに駆け寄ると二度体当たりした。

 

ポールは大きく揺れ、その上に乗せられていただけの檻はとうとう地面に落下し、格子が外れてバラバラに壊れた。閉じ込められていた猿の無事を確かめようとリンクが走り寄ると、猿は元気に鳴きながら飛び出してきた。

 

するとボコブリンの喚き声が聞こえてきた。見ると、部屋の南側にある高台の上に悪鬼が二匹いた。どうやら自分たちの獲物を勝手に解放されて腹を立てているようだ。悪鬼どもは高台から飛び降りて無様に着地したが、手に手に鉈を持ってリンクのところに走り寄ってきた。

 

僕は剣を抜くと、食人鬼どもを十分引き寄せたタイミングで横に払った。

 

二匹の鬼どもは一撃で後ろに吹き飛び、すぐにこと切れてしまった。

 

やはり聖剣の威力は凄まじい。

 

僕は鬼どもの遺骸が崩壊していくのを見届けもせずに、踵を返した。

 

入ってきた扉から続く通路は、壊れた吊り橋を経由して、部屋の北西にあるゆるやかな階段で終わっている。僕はその階段を登ると、壊れた吊り橋の手前まで移動してそこで待った。

 

猿どもも追ってきた。猿のうち一匹が吊り橋を吊っていたロープに飛びつくと、もう一匹も後に続いた。二匹が、二メートルほどの間隔を開け、足を使ってロープに逆さにぶらさがった。

 

僕は猿たちの助けを借りて橋の向こう岸に飛び移った。入ってきた扉を開けて向こう側に出る。

 

そうして僕は沼の部屋に戻った。猿たちの導きに従って、壊れた橋を飛び越え、さらにもう一つの橋を通って、暗い通路に入り、最初から二番目の部屋に戻った。

 

僕は自分が立っている西側の舞台の上からわざと右側の地面に飛び降りると、南側の階段を登って中央舞台の上に立った。

 

僕が移動している間に、猿たちは(感心なことに)天井から真ん中の舞台に移るロープに飛びつくと、一匹はそこにぶら下がり、もう一匹は向こう岸に行き、さらにその東側の扉に通じるロープの真ん中にぶら下がった。

 

僕は東側の扉の前へと猿の助けを借りながら飛んで移動した。

 

扉の前には濃い蜘蛛の巣がかかっていた。それをカンテラで焼き払い、扉を開けて中に入る。

 

入ってきた場所から少し斜面を下ると地面に降りるようになっていた。部屋の四方には高い木道がしつらえられていたが、突き当たりに階段があって登れるようになっている。

 

ヘビババが地面から顔を出したが、無視だ。僕は向かいの階段から木道に登った。木道を上り、蔦をよじ登って低い段差を登り、北側の壁にしつらえられた扉を開く。

 

その先は野外だった。手すりのついた通路が右手に伸びていったあと、北に曲がって、以前見たのと同じような、風車のついた橋に至っている。

 

僕は通路を進み、橋の前に出た。橋は、風車が風を受けるたびに九十度回転して止まる仕組みだ。その橋の先にもう一つ同じ橋があり、その先がまた通路になっている。

 

僕は橋に接する通路の右端に立った。橋は、あいにく通路と直角の角度で止まっている。

 

本来は次に風が吹くまで待つことになる。

 

だが僕は、そこでミドナに話しかけた。

 

「どうした、リンク?」

 

僕は何でもないと答えた。すると風が吹き、橋がこちらに向かって回転を始めた。

 

僕は、橋が回ってくるのに合わせ、立っている場所から一歩進んだ。

 

本来なら、その先足元は底の見えないほどの奈落だ。

 

だが僕の身体はふわりと浮き上がると、橋の欄干の中にめり込んだ。

 

そう。君の読み間違いではない。僕の身体は欄干の中にめり込んだのだ。

 

僕はそのまま慎重に前進していった。橋の真ん中あたりまで来ると、剣を抜き、身体を直角に回転させ橋の外に向く。

 

やがて再び風が吹き今いる橋が直角に回転し止まった。もうひとつ先の橋の終端が目の前に見える。

 

僕はそこから跳躍し、空中でジャンプ斬りを繰り出した。

 

ジャンプ斬りの勢いでわずかに飛距離が伸び、僕は二つ目の橋の縁にどうにか降り立った。

 

僕は走って二つ目の橋を渡り切ると、その先の通路を前転を繰り返しながら駆け抜けた。突き当たって左手に曲がるところに猿の閉じ込められた檻がぶら下がっていた。

 

だが僕はそれを無視した。

 

というより、もうこのダンジョンで猿を救出することはない。

 

それどころか、あるものを手に入れたら、もうこのダンジョンそのものに用がないのだ。

 

僕は通路を道なりに左に曲がった。通路は、さっきと同じような二つ一組の橋に繋がっている。

 

僕は一つ目の橋に足を踏み入れ、その終端まで進み、左側に位置を占めて少し右を向いて待機した。

 

やがて風が吹いて、橋が回転し始めた。僕は今いる橋の終端から走って飛び出した。

 

辛うじて二つ目の橋の欄干に足をかけて飛び越え、橋の上に降り立つことができた。

 

成功だ。

 

僕は二つ目の橋を走り抜けて向こう側の通路に出た。通路は突き当りで右に折れている。(左側は先刻破壊された吊り橋となっている。)

 

僕は右に曲がって壁の扉を開け、向こう側に出た。

 

この部屋がこのダンジョンで最後の部屋となる。

 

僕はここであるアイテムをゲットし、そして二度とこのダンジョンを訪れないことを心に決めていた。

 

(つづく)

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