ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
そして左の親指を骨折しました。モンハンがしにくいです
「ベル様っ!今日は
「お金は持ったかい!?今だけの出店も出てるぜっ!」
「え、えっと…?二人とも、どういうこと…?」
朝起きた僕を迎えたのは、二人の少女の大げさな歓待だった。
何が何だか分からず立ちすくむベルに、二人は悪戯が成功した子供の様に表情を緩ませる。
「実は今日は年に一度の怪物祭というお祭りの日なんです。ベル様はオラリオに来て日が浅いですし、サプライズというやつです。
「そういうことさ。僕も下界に降りて短いからね。今回が初なんだよ。……というわけで、今日のダンジョン探索は中止にして、みんなで一緒に祭りを堪能しようというわけさ!」
「はい。実を言うと、リリもこれまでの境遇から参加するほどの余裕がなかったので、一度ゆっくり見て回りたいと思っていたんです」
「そうなんだ…。そういうことなら勿論参加するよ。あ、朝食はどうしよう?」
「そちらでしたらまだ時間もあるので、軽く済ませてしまいましょうか」
そういうわけで、買い置きのパンとスープに、サラダを食べてから街へと繰り出した。
どうやら本当にお祭りの様で、東のメインストリートに沢山の人々が押し寄せているらしい。人を押しのけてまで先へいくつもりもないので、遅れない程度に合わせながら談笑を交わす。
「この
「闘技場かぁ…。飛び入り参加とかも出来るのかな?」
あの断崖の隙間に設立された特殊闘技場や、開けた箇所に堂々と佇む闘技場を思い浮かべる。
突然押し入ってきたテスカト夫婦にネルギガンテ。ドドド三兄弟。冠するものたち。
空を飛び回り死角から強襲する蒼火竜。マスター級最後の闘技場なのに、主力二人の武器種がなく、リリルカがメインに立ち回った二種の轟竜。モスはモスでもモスのモス。
色々な思い出……いや、若干悪夢みたいなものが混ざっている気もする。
「…多分ベル様の考えているようなことは起こりませんよ。それにそこまで強いモンスターは地上には出さないと思いますし。……行っても精々が中層の一般モンスターくらいじゃないでしょうか」
「ああ、そっか。ごめん。闘技場って聞いたから、つい…」
「そっちの闘技場で一体何があったんだい…?」
しかし、そもそもがこうして何度も開催されているのだから、安全対策は万全だと言えよう。それにあくまで調教と言っていた。死力を尽くした狩猟を見せるわけでもないのだ。それならば余計な心配というものだろう。
「
「へえ…。ダンジョンのモンスターでもそうなるんだね…」
「はい。本来ダンジョンのモンスターというのはモンスターとしての気質が強いせいか調教を受けづらいので、地上のモンスターを手懐ける方が一般的とのことですが、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員は高い実力から、ダンジョン産のモンスターでも成功させるそうなのです」
リリの語る内容に相槌を打ちながら、【ガネーシャ・ファミリア】に驚嘆を覚える。
オラリオの事情に疎い僕でも知っている大派閥だ。その構成員の数も物凄く、都市の憲兵として働いている姿をよく見かける。ある意味では最も身近に感じ取れる派閥かもしれない。
だがそれだけではなく、実力者も揃っているらしく、【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】に比べると質では劣るものの、抱える第一級冒険者の数は最多とのことらしい。
これもエイナさんの授業によるものだが、そんな凄い所が主導しているからこそ、他の冒険者やオラリオの市民たちもこうして参加できているのだろう。
軽く出店の軽食なんかを貪りながら歩いていると、そこで意外な人物を見かけた。
「あれ?あの制服って……」
人混みの中をするすると掻き分けて進むのは、少し前にも見た緑色の制服に白いエプロンをかけた緑髪のエルフ。
確か…そう。リューという名前で呼ばれていたはずだ。
「あのお店のウェイトレス君だね。でもそれがどうかしたのかい?彼女たちだって祭りを見て回りたい日だってあるさ」
「あ、いえ。僕は知らなかったですけど、オラリオに住んでらっしゃるなら今日が怪物祭だということも分かっていたはずです。見て回るつもりなら制服は邪魔ですし、抜け出してきたというのなら制服はバレちゃいますよね。だから、何かあったのかなと思いまして…」
「成程…。それは確かに。気になるんなら直接聞いてみた方が手っ取り早いこともあるぜ?……おーい!そこのエルフのウェイトレスくーん!」
僕が疑問を呈するや、即決と言った様子で神様が声を上げながらその人物へと声をかけた。
この人混みの喧騒のなかでも聞こえていたのだろう。すぐに気づいてこちらと顔を見合わせる。
流石に声をかけてしまった以上知らぬ存ぜぬなど出来やしない。
「あなた方はこの前の……。ヘスティア様に、クラネルさんとアーデさん。おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます、リュー様。その姿のままどうやらお急ぎのご様子…。何かあったのですか?」
そう言うと、リューさんは事情を話し始めた。
「実を言うと、シルは今日開催される怪物祭を見に行ったのですが、その際にこの財布を忘れてしまって…」
取り出されたのはがま口の財布。確かにそれはおっちょこちょいとも言えるだろう。お金がなくても、闘技場には入れるかもしれないが、何もなしでは楽しさも半減だろう。
「シル様はお一人で向かわれたのですか?見た所、お仕事は本日もある様ですが……」
「ええ。
そう言って、周囲の群衆を見る。確かにこの人混みのなかでたった一人を見つけるというのも困難だろう。
そう思った時には自分から申し出ていた。
「それでしたら、僕たちがお届けしましょうか?」
「有難い申し出ですが…。よろしいのですか?」
「はい。どの道僕たちもその怪物祭へいくつもりですし…。……それでいいですよね?」
「ええまあ、知らない仲ではありませんし…。あの日かけた迷惑を考えれば可愛いものです」
「うっ、それを言ったら僕が何か言うわけには行かないじゃないか…。あっ、勘違いしないでくれよ?そんなことがなくても僕から声をかけたんだから、その程度お茶の子さいさいさ」
二人の賛同も取れたことだし、シルさんの財布を丁重に受け取って、祭りの中心地へと踏み出した。
―――…
あれから特に何事もなく、屋台を見回りながらシルさんの捜索もしてみたが、これだけの人がいるからか、そう簡単には見つからない。
既に
「財布がないことに気づいて、裏道を通って帰ったのかも…」
「ですね。行きならばまだしも、どこかしらに近道があってもおかしくはありません」
「うーん、でもどうするんだい?もう時間的に始まっちゃうぜ?」
闘技場前のガネーシャ・ファミリアの構成員が呼びかけるのは、あと幾ばくもしない間に調教が開始するというものだった。
「神様、僕が一回戻ってみます」
「でも、ベル君は怪物祭は初めてだろう?」
「それはそうですけど、引き受けたのは僕ですし、あの酒場との縁も元々僕が繋いだようなものです。それに、当日まで祭りを知らなかった僕よりも、リリと神様の方が楽しめるでしょう?」
「でも…」
「大丈夫です。今年しか無いわけじゃありませんし、、急いでいけば最後の方には間に合うかもしれないので。気にせず楽しんでください。リリ、神様のことを頼んだよ」
「代わりに私が行く、と言っても断るんでしょうね。分かりました。もしかしたら入れ違いになる可能性や、既に闘技場にいる可能性もあるので、その際はこちらで引き留めておきますよ」
「うん。ありがとう。それじゃ、急いで行ってくる!」
リリの呆れたような声を聞き届け、僕は来た道を引き返していくのだった。
●●●
「おや?」
「ん?」
さて、ベルを見送り闘技場の席へと向かったリリとヘスティアだったが、やはりメインイベントなだけあって人は多い。
どこに腰掛けようかと視線を彷徨わせれば、何やら人が開けた箇所があった。そこには奇妙な文様状の軽鎧に、極東でいう笠状の防具を仮面の上から被る人物と、灼炎の頭髪を持つ女神が着席しており、リリルカは笠の人物と、ヘスティアは女神と目が合った。
周囲の人々はその全身を隠しながらもどこか妖しげな風体から遠巻きに見ていたがリリルカにはその正体が分かった。
惨爪竜オドガロンのマスターランク装備。EXガロンβシリーズを身に着けている。その時点で該当人物はごく限られ、ましてやここは新大陸ではないし、隣にヘファイストス様がいることも踏まえれば、そんなものを身に着けているのは唯一人だ。
「おはようございますヴェルフ様。ヴェルフ様も怪物祭に興味が?」
「よっ、リリ助。俺の場合怪物祭自体に特別興味がある訳じゃないが……まあ、隠すほどでもないな。丁度祭りだったんだから、ヘファイストス様とのデートだ」
「やはりそうでしたか……ところで、何故EXガロンβで彷徨いてるのですか?到底デートには向かない格好だと思うのですが……」
見た所武器は持っていないものの、このおどろおどろしい外見はそういうのには不向き。というよりも、この外見で武器を持って街を徘徊していたら、危険人物に間違われてもおかしく無いだろう。
「あー、そりゃまあ、俺の外見を隠すためだな。いつものだとバレちまうし、かといってヘファイストス様はオラリオでも有名だろ?下手に顔が割れたら面倒だからな。これなら顔は隠せるし、悪い虫も寄ってこない。いいだろ?」
「別の意味で注目されてますが……」
まあ、とはいえ全身鎧でヘファイストス様と歩くのもそれはそれで目立つので、それならいつもとは異なる装備に注意を向けさせるというのも間違いではないのかもしれない。
「ま、そのおかげでここも空いてるしな。よかったら座れよ。…ところでベルはどうした?知らないってのもお前等がいる以上ないだろうし、あいつ祭り事好きだろ?」
「ええ。途中までは一緒だったのですが、落とし物を届けるためにメインストリートを戻っていきました。豊穣の女主人という店の店員で、鈍色の髪の少女なのですが、見た覚えは?」
「そうか…。お人好しは土地が変わっても相変わらずってとこか。…しかし見覚えといってもな、流石にそれだけじゃ分からねぇな。そもそも俺はその店には行ったことねえし」
ひょいと座るリリとヴェルフが言葉を交わす合間にも、神友同士も交流していた。
「やあヘファイストス。なんとなーく聞いてはいるけど、ヴェルフくんと付き合ってるんだって?」
「……何よ。からかうつもり?」
「まさか!僕が神友の幸せを茶化すような神に見えるのかい!?」
「……はあ、調子のいいことを言って……」
「まあ、他ならぬヘファイストスだからね。いやあ、それにしてもあのヘファイストスがねぇ…。これでも僕は心配してたんだぜ?前にアフロディ「その名前は出さないで」…ご、ごめん…」
調子に乗ったのか、元カノの名前を出そうとしたヘスティアが威圧によりしぼむ。
「こ、こほん。ヘファイストスはデートかい?普段君はこういうのには興味なさそうだし…」
「ええ、そうね。ヴェルフの工房から幾つかの武器を運ぶついでに、見て回らないかって提案されたの」
「その武器は?」
「観客席に持ってくるわけないでしょ。ガネーシャの
円形闘技場の中央に、布をかけられたカーゴが運ばれ、象を模した仮面をつけた人物が躍り出る。
直後、その布が取り払われ、モンスターの姿が顕になると同時、団員によって解き放たれる。
怪物祭が怪物祭たる所以、
因みに、今回流石にフレイヤ様は仕掛けません。
そもそも捕まえてあるモンスターが良くて中層レベルなので、まるで何の障害にもならないし、そもそも新大陸の経験で色々と完成してるので…